この前の記事からの流れで
SSが久しぶりに書けたのでのっけときます。
このジャンル売国マゾ系? というのが一般的なのだろうか。
文字コラでもほとんど見たことはないです。
でもたぶん潜在的な需要はあるんじゃないかなぁと思います。
ただネタがアレなだけに、大っぴらには公開しにくい類かもしれません。
ちょっと思い出したのがその昔、とあるMMOで反日イベント的なものがあったような気がします。
実際○国開発のMMOは結構あるような気がします。
日本である場所が狭くて邪悪な場所だったりなぜか半島がでかくて一番発展してたりと。
さりげない(?)悪意でアピールしてくれます。
これをふまえて妄想。
A国人のロリなエロカワなゲーム配信者。
基本的にはA国製ゲームしかプレイしない。
貢がせたりB国を強烈disったりして自分勝手に振舞う。
例
・スプラトゥーンのようなFPSゲームで
A国キャラ優遇。衣装も可愛く武器も強い。
B国キャラは不細工で弱い。いいことなし。
クエストモードでどうみてもB国の領地を攻める。最終目標は国旗。
定期的にB国侵略イベント開催。
A国とB国チームにわけて対戦。当然敗北のB国チームをインクがなくなるまで馬鹿にしながら搾精。
・格闘ゲームで
世の中は技術革新時代。戦闘武器も劇的な進化を遂げている。
そんな折、世界一を決定する大会が開催される。
各国の猛者たちが、選りすぐりの武器を使用する中、
なんとB国の武器は――竹槍。
『テンガイサコク』なんていう馬鹿げた制度で時代遅れになったB国。
『ノーミン』出身のモンジローが、B国の誇りをいやいや背負って竹やり一本世界と戦う。
キャラはリーチもなく動きも遅く火力もない。
全キャラに対して8:2以上つけられる。
A国キャラはモンジローと戦う時専用の挑発モーション、勝ちポーズが存在する。
B国リスナーに強制的にモンジローで戦わせて、
挑発、エロ技、舐めプレイしまくりで鬱憤をはらしまくる。
色々妄想すると何か楽しかったりします。
僕は売国マゾになりたい
A国系高級風俗――官能M性感クラブ『アンシエン』。
その立て看板を見た刹那、僕の心は得体の知れない怪しげな衝動に塗りつぶされた。
A国人は誰でも周知の通り、世界の嫌われものである。ネットの匿名掲示板では、毎日のようにえげつない誹謗中傷が尽きることなく書き込まれている。
まぁその根本となる原因も、A国と我がB国との血塗られた――または滑稽で馬鹿げた争いの歴史を省みれば、行き過ぎたレイシスト集団の行動もある程度は理解できないこともない。
ただ、そんな至極面倒ないざこざも、僕が今から始める酔狂じみた性癖披露とは全く関係がない。政治とか興味がない。どっちが正しいとかも無関心。そもそもデマか捏造か真実かもどうでもいい。いくら長い付き合いの歴史があっても、所詮は海で隔てられた遠い遠い国のこと。
そう僕には何の関係もない。A国が何をしようが、今すぐ戦争になって僕の真上に爆弾が落ちるわけもない。いや、実際に全く関係がないわけではなく、危害を被る確率が1%か2%上がっても、やっぱり僕はのほほんとしてるだろう。
ぎりぎりまで、本当にぎりぎりまで重過ぎる腰を動かさないのが僕だけどそんなのはどうでもいい。
本当に、大事なのは――。
「いらっしゃいませ。一名様ですね♪ ではこちらへどうぞ……」
「あっ、は、はい」
僕はおずおずと、後ろ姿が狂おしいほど惹かれる抜群のプロポーションの女性――A国美女様の後を、しょぼくれたネズミのような様子で付いていった。
最も重要な要素。それは世間でもネットでも世界中のどこでもゴキブリのように嫌われている、B国人なら嫌悪感か警戒意識を少なからず要求される、A国人女が僕の理想の女神様的女性像であることだった。
しかしそれは偽りの美である。整形を繰り返し、顔面コンプレックスを取り払い、虚構に更なる虚構と醜く肥大化した自信をこねくり回して固めた不安定な建造物である。
それでも僕は、彼女らの顔も肉体も大好きだった。
湾曲的な頬、ほっそりとして繊細な顎、愛くるしい二重の瞳、ぷるぷるとして光沢のある唇、見るのもを魅了するふくよかな谷間――。
全部が全部ではない。個人によっても千差万別。どこをどういじったのかも人知れずだが――。
とどのつまり、最終的なA国美女様とは、二次元アニメのような髪型を変えればまるで区別がつかないハンコ顔になってしまうと言っても過言ではない。
ただ僕は、そんな最終的誘惑サイボーグが大好きなのだった。
なんと形容すればいいのだろうか。強いて言うならば、RPGでエンカウントする複数の美貌の女モンスターに問題なくメロメロになれる。そう説明できるかもしれない。
とにかく僕のときめきは最高潮だった。
敵対勢力の美女。きゅっと引き締まった美脚。囚われる僕。背徳的な妄想。
まるでオナニーを覚えたての少年ように、期待に胸をふくらませながら奥へと進んだ。
赤と黒を基調とした艶やかなロングドレス。腰からつま先にかけて、さっくりとスリットが入り、A国美女様の腰つきと美脚に魅了されることを否が応にも強制される。
こつこつと響くハイヒールの音色に誘われ、ミノス迷宮の牢獄に幽閉される罪人のような気持ちになりながら、僕は一つの懺悔部屋へと通された。
「ようこそ。そこにお座りなさいな。ベ、イ、タ」
「えっ? あのっ。まっ、まだ何も」
A国美女様の細い視線と、蠱惑的なやや淡い紫色なボイスが僕を射抜いた。が、どうにか取り成してそう答えた。ちなみに『ベイタ』とはB国民に対する蔑称である。もちろんその単語で、僕の下半身と脳ミソがどろりとろけたのは言うまでもない。
「言わなくてもわかるわよ。ベイタの考えることなんてさぁ。ほら、ルファ様がしつけてあげるわ。この……売国マゾのベイタちゃん♪」
「んっ。あんっ! ひっ、ああっ」
僕は身悶えた。何もかもお見通し。A国美女様は――女神ルファ様は、あさましくて汚らわしいベイタの思考など手に取るように理解していたのだ。
「よく来るのよ? あなたみたいな坊や。やせっぽちで貧相で、目が怯えてて……。顔に僕はマゾですって大きくマジックで書いてあるわ。A国人の美女様に支配されたい。誘惑されてメロメロになりたいってね……」
「そっ、そうですか……」
手に持った扇子をパタパタと扇ぎながら、にやにやと悪魔的な笑みを浮かべるルファ様。その魅惑的な仕草だけで軽くイキそうになってしまう。
それにしても意外だった。僕みたいな売国奴に洗脳されながら、気持ちよくなってしまう変態中の変態がいるとは。
「テレビによく出てる政治家のおじ様も、あの番組プロデューサーさんも、あのコメンテーターも、歌手も俳優さんも……うふふふっ♪ あらっ、これはあんまり言っちゃ駄目なのよね……ふふっ♪ 今のは聞かなかったことにしてね、可愛いベイタの坊や♪」
「ひっ、あっ、いいいえ」
僕は床にひざまづきながらそう言った。
ハニートラップ。色仕掛けで対象を籠絡すること。もしかしてこの風俗店もそれを生業としているのだろうか。だとすれば話が早いのも納得がいく。
「まずは……そうね。よく見なさいベイタ。これは――何だと思う?」
「あっ、それは……」
ルファ様が一枚の布切れをひらひらと僕の前にかざした。夢にまで見た理想のシチュエーションに、頭を朦朧とさせながらもそれが何であるか視認した。
「僕の国の……国旗です」
消え入りそうな声で言った。何かをされたわけでもないのに震えていた。快感とも恐怖ともいえない奇妙な感情で、胸がいっぱいになり破裂しそうだった。
「そうね。大正解。それで――これからこれをどうすると思う?」
「んっ、ああっ」
燃えるほど赤いルージュの唇を、ぺろりと舐め上げながらルファ様が言う。
僕は口ごもった。さっきベイタと言われた時から、頭が呆けて何も考えられないのだ。
「……どうして無視するの? ベイタのくせにっ! A国人様である私に、無礼を働いていいと思ってるのぉ? ねぇベイタちゃぁ~~んっ♪」
「あああぁっ! ひぃぃぃ……」
乳首をぎりりとつねられた。ねじ切られるかと思うほど痛い。
「ほらベイタ。簡単なことよ。この国旗――」
それはしゅるりとルファ様の手元から地に落ちた。きゅっと引き締まったくるぶしからハイヒールへ。ルファ様の足元へとするりとすべりこんだ。
「見てベイタ……。ほらほら」
「あっ、あああっ」
瞬間、B国の国旗は無残にも踏み潰されていた。ぐりぐりと、A国美女様のハイヒールの崇高な踵で、汚い床に接吻しながらぼろ雑巾にされていた。
「ねぇベイタ? あなたの国が踏まれているわよ?」
「あひっ、ああっ」
「B国はあなた自身でしょう? 怒りとかわいてこないの?」
「いっ、いやぁぁぁ……」
「何も抵抗しないってことは――マゾよ。それも超ド変態の、ば、い、こ、く、マ、ゾ♪ くすっ♪」
「んぎっ。あああ――」
頭がどうにかなりそうだった。芳しいA国美女様の高貴な芳香と、とろけるような甘い色香に迷いながら、僕が属する団体の象徴を足蹴にされたのだから。
ぐにぐにと背中にも柔らかな双丘が押し付けられている。と同時に乳首もえぐられ、耳たぶも唾液がのった舌先でくちゅりとしゃぶられた。
「ほらぁ~ん♪ どうかしらベイタくぅ~ん♪ いつもあなた達が崇拝している、A国美女様のヒールで押しつぶされる感覚はぁ~ん♪」
「あっ、ああ~ん。それっ、ぼ、僕ぅ……」
先ほどより1オクターブ上の、更に甘ったるい媚と嘲笑を交えた声色が僕の聴覚を満たした。
ルファ様が踏んでいる。それはただの布切れだ。たまたまシンボルが描かれた単なる布切れだ。
でもそれなのに僕の股間と心は――。
「ねぇこれ感じるんでしょ? 私に屈服したベイタはね、これしてあげるとね、泣いて喜んじゃうのよぉ♪ ほぉら、ほら! 汚らわしいベイタの国旗! よくも私の前に見せてくれたものね……それそれっ♪」
「んっ、んっ、ひぃぃぃ……」
僕は涙を流しながらうめき、そして狂気のごとく倒錯した。もうヒールでぐちゃぐちゃにされた国旗を見つめながら、有り得ないほど隆起する自らの股間の疼きに身もだえした。
「あらベイタ。やらしいのねぇ……。こんなことされて……ここ、固ぁくしてるなんて」
「うっ……」
ハート型の誘惑光線が何本も突き刺さる。ルファ様に見つかった。いや見つけて欲しかった。
「いい子いい子。さすが私のベイタね。ほら、ご褒美にもっといけない世界に連れてってあげるぅ……♪ チュッ♪」
「んっむぐぅ……」
甘い唇の密着。頬に瞼におでこに。舌も吸われてしまう。僕が僕でなくなっていく。世界がA国美女様に奪われる。そして僕もそれを望んでいる。堕落してしまう。完全なる売国マゾになりながら狂ってしまう。
「んっ……ルファ様ぁ……♪ もっとキスぅ……♪」
「うふふっ♪ まだ堕ちるのは早いわよぉ……。ほら目を見開きなさい……ぐ~りぐりぐりぐり……」
「あっあっ、それぇ……」
「ぐりぐりぐりっ♪ ほらこれぇ……あなた自身よぉ。ボロボロにされてるのはぁ、醜くて嫌われもののベイタよぉ……。だからこうやっていじめられるのよぉ……」
「あっ、あふぅ……ああん……」
僕が、踏まれている。あれは僕だ。一枚の布切れが。きっと僕だ。僕はここにいるけれど、醜くてみんなから嫌われて、A国美女様のヒールで脳ミソ貫通するほどねじこまれたいのは紛れもない僕だった。
「ここがいいんでしょう? ベイタちゃん。おしおきの時間よぉ……♪ 今までの罪をちゃんと清算しなきゃね……♪ ほらぁ……これがあなた。ベイタはいつもぼろぼろぉ……。汚い身なりでドブネズミみたいな悪臭まきちらして世界中に迷惑かけているのよぉ……」
「あっはぁい。これ僕ぅ……♪ 汚いのが僕ぅ……♪ 甘んじておしおき受けるのぉ……」
筋肉と神経と思考回路がめちゃくちゃになる。布切れベイタが僕であり、A国美女様の下僕となるのも僕だった。
「踏んで踏んで……ほぉ~らほら」
「あっ、ああっ」
「ちょっと足を持ち上げて、上から体重かけてつよぉ~~くっ♪」
「あっあっ! ああああ――」
「痛い? ねぇ痛い? 私達がこれまで受けた痛みはこんなものじゃないのよ? ほらほらほらぁ!」
「あんっ! 痛い痛いっ! いっいっいい――」
幻痛だろうか? 僕は弓なりにのけぞった。今にも引きちぎられそうな布片に、異様なほどのめりこみ感情移入していた。
「ほぉら壊れてぇ……? ベイタだからいいでしょう?」
「ううっ。ぐぐぐっ……」
「何も言わないのならいいのねぇ? ほらここの裂け目から引きちぎってあげるぅ……」
「いーっ。やめ、だめ、あっ、いっ、あっあっあっあっ――」
「もう遅いわよ。ほーら頭から真っ二つよぉ……」
「あひっぃぃいいっ――!」
ビリッ、ビリビリビリビリッ。
脳天から落雷を受けたような轟音が響いた。器用に両脚のヒールを使い、僕自身を引き裂いた情景で、射精とも似つかぬ快感に包まれながら暗転した。
僕は、僕は壊れてしまったのだった。
「お客様? お客様ぁ? もう全然起きないわぁ。ちょっとやりすぎたのかしらぁ……」
広がる視界。ここはどこだろう? 記憶が定まらない。確か僕は、繁華街の狭い路地裏で、ふらふらと立て看板に誘い込まれて……。
「あ、起きましたね。よかったです♪ もう心配したんですよぉ……」
にっこりと笑う聖母のような笑み――同時に邂逅するぷっつりと裁断された赤と黒の記憶。
「あっ、ひぃっ。許してっ! 何でもっ、何でもしますからっ! 謝罪でも賠償でも、僕っ!」
「あらあら。本当に壊れてしまったんですか? ほらしゃんとしてくださいなっ」
「うっ、ぷっ、あっ」
ぺちぺちとニ、三度頬を叩かれた。精神が戻る。うん、僕は壊れていない。ここは風俗店。A国美女様と変態売国マゾプレイしてみたくて、今さっき実際体験し堪能し終わったところだったのだ。
それにしても、今まで味わったことの最高の体験だった。心をぐちゃぐちゃにえぐられ、生命機能に危い影がさすほどの、極めて倒錯的で悪魔的な快楽地獄である。
あらゆる手段を使って、精神をゆさぶり破壊される。僕は被破壊フェチなのかもしれない。クラッシュなんていう一般人にはなじみのない性癖も存在するし。
「えーしめて三万円になりまーす♪」
「あっはい」
プレイ中とは真逆の、仮面でもはずしたかのように愛想のいいルファ様が応対した。
途中で気絶してしかも射精したかも曖昧だったが、いつも憧れていたA国美女様の手ほどきを受けられたとあっては、三万円払っても安すぎるくらいである。
むしろもっと――。
そう僕は貢いでしまいたい。A国美女様にルファ様に。全財産。B国民であることを馬鹿にされ侮辱され汚物のように扱われて――。
洗脳もされたいボロボロにされたい売国マゾに目覚めたいルファ様達のために掲示板にあることないこと書き込みたい……。
「また、来てくださいね。今度はもっと素敵なお遊びしましょうね……」
「ふぁ、はぁい……」
僕の心を見透かしたような、ルファ様の女神的スマイルがねっとりと体内にからんでいく。
もう僕は悟ってしまったのだ。この風俗店から逃げられないと。
A国美女様のために全てを捧げると確信してしまった。
後日――。
当然のごとく、僕はルファ様と時を共にしていた。
「ほらベイタ。この地図を見て?」
「は、はい……」
床には世界地図が広げられていた。マジックで目立つように、ぐるりと一つの島に丸がつけられている。
「ベイタは知ってる? この島の名前?」
「ははいルファ様。これは――U島です」
もちろん知っている。島国のB国とA国を隔てるM海に、ぽつんと存在する別段特徴のない島である。
しかし、何もないと言ってもこの島こそが火種の元なのである。
お互いに延々と譲ることのない領有権の主張。やれどっちが先だとか違うとかやいのやいので、周囲から見れば滑稽ないたちごっこの化かし合いだろう。
政治に疎い僕なんかは、あんな小さい島ぐらいあげてやってもそれほど困らないだろう――とか思っちゃうのはあさはかで情弱で愛国心の欠片もないのだろうか。
「うふふ。そうよねU島よね……。ねぇ、この島……A国とB国、どっちが所有した方がいいと思う?」
「えっ、あっ、それは……」
糸のような妖しい目つきで見つめられる。心の天秤が左右にふらふらと揺れる。
僕には正直わからなかった。どっちでもいい。どっちでも――。そんな無責任な答えはルファ様は不服だろうか? でもベイタである僕にはきっと決定権がない。だからルファ様が決めて欲しい。A国美女様であるルファの言うことなら、きっといつでも正しいはずだから――。
「ベイタ。よく考えて。この島はとてつもなく価値がある代物よ。ここをどちらの領土とするかで、海域勢力が一変しちゃうのよ?」
「あああ……。そ、そうですね……」
「正直に自分の考えをお話しなさい……」
「ははははいぃぃ……」
豪奢な椅子に座った、赤黒ロングドレスから覗く、むしゃぶりつきたいほど肉感的で悩ましい美脚がふわりと優雅な動作で組み替えられた。
チラリと見え隠れした紫のパンティー。赤いハイヒールの足裏。こんな刺激的な光景をさらされて、冷静な思考ができるはずもなかった。
「あぅぅ……、あわわわ……」
僕は当然のごとく口ごもった。そこにルファ様が助け舟を出した。
「ふふっ。ベイタはこう思ってるはずよ。U島はB国の領土。お前らA国はさっさとあきらめろー! なんてね」
「ええっ、そんなの思って……」
「正直にって言ったでしょう? あなたはB国人でしょう? 自国の利益なら追求しなきゃ駄目でしょう?」
「あ、ふぁ……」
「言いなさい。U島はB国の領土ですって……。いけすかないA国なんかにわたさないって……」
「そ、そんなのぉ……」
「言いなさい。このベイタ!」
「はっ、はいいいっ!」
教師が生徒を叱るような、強い語調で命令された。何か誘導されている気がしたが、ここはルファ様に従っている方が賢明だろう。
「あ、あの。U島はB国の領土……です」
「どうして?」
いきなりの質問。と、頭の片隅にあった浅瀬の知識を披露する。
「せ、1900年頃に、B国が領土と決めたから……それで」
「え? そうなの?」
「そ、そうです……」
「私はぁ……A国の方が先だと思ったんだけどぉ……。記憶違いかしらぁ……」
「あっ、あああっ……」
ヒールを脱いだ、A国美女様のつま先が僕の股間を優しく撫ぜた。
気持ちよすぎる。ぴたっと吸い付くように、ルファ様の体温感じられて愛おしい。
「ねぇん……欲しいなぁ……U島」
「あっ、あんっ。ああぁ……」
女の子のような声を出す僕。足でいじられただけで、頭が真っ白になり何も考えられない。ルファ様の美脚で屈服してしまう。ルファ様の言うことは全て正しい。ルファ様、ルファ様……。
「本当に欲しいなぁ……U島。ねぇん……ベイタの一存で決められないかしらぁ……。U島はA国領土でいいですって……ねぇねぇねぇねぇ♪」
「あひっ! あふぅん♪ あああっ♪」
ぐりぐりと足裏が乱暴に押し込まれる。A国美女様の麗しい体重かけた魅了攻撃に、為すすべなく白い売国ザーメンをまき散らす限界まで高められる。
「何イキそうになってるの? 駄目よまだ……。ちゃんと、お話合いが終わってから……ふふっ♪」
「んっ、ふぁぁぁ……」
遠くへ離れる美貌のつま先。まるで阿呆の表情で、おあずけされた格好の無様なベイタは僕だった。
「ねっ。欲しいの。U島。何度も言ってるけどぉ……お願い♪」
「あっ、うううっ」
今度は趣向を変えたのか、ルファ様が四つんばいでにじり寄ってきた。じっと注視するのもはばかられるような美顔が、今僕の鼻の先に迫っている。
ああそんな魅力的な瞳で見つめられたら僕は……。命さえも捧げてしまう。A国美女様に人生を狂わされて一生終えたい。つまらないB国で野垂れ死にするのなら、何もかも搾取されてぼろ雑巾という名の絨毯で踏まれ続けたい。
「でっ、でも。僕にそんな決定権は……」
おぼつかない頭で絞り出すように言った。当たり前だが、僕に政治的権力はない。本当にあるはずもない。
「ううん。あなたが決めてぇ……。私の愛するベイタ。自信を持って。ほらぁ……」
「あっあふぅ……」
「U島を私達にくれたら、A国美女様の太ももマンコ、使わせてあげてもいいわよ……♪」
「えっ……」
耳元に悪魔の囁きが吹き込まれる。太ももマンコ。何て扇情的な響きだろう。そんないやらしい言葉が、ルファ様の口から発せられたこと自体に激しく興奮してしまう。充血。狂おしい勃起。たちまち限界が近づいている。
ドロドロぐちゅぐちゅのソースになった感情液が、行き場を失い今にもあっぷあっぷと出口を求めている。
U島とオマンコ。僕にとってはたいしたことのない孤島と、愛して崇拝してやまない美脚太ももマンコ。
「どうするぅ?」
「あっ……」
まさに精を搾り取る淫魔の表情だった。それも人間の心を巧みに誘導して、読心術に近い思考操作を行うサイコパス的なサキュバスのそれだった。
僕の答えも既に決まっていた。あのむちむちの太ももとちっぽけな島じゃてんで釣り合わない。
ただ僕が気持ちよければいい。自分さえいい気分ならいい。たぶんそれはいつでも正しいのだ。A国美女様の命令なら2000%以上確実で絶対的なのは間違いない。
「んっ♪ ここに腰を突き入れなさい。入れた瞬間、U島はA国のものになるのよ? さぁいらっしゃい……」
「う……」
長い裾をまくり上げ、むっちりとした膝小僧を閉じる。なんて魅惑的過ぎる景色だろう。あの隙間に僕自身を入れてしまったら――艶かしい太ももの狭間でくちゅくちゅと擦り上げられてしまったのなら――。
想像しただけで我慢汁がつうと漏れ出してしまう。全身でルファ様を欲している。本能に従うべき。全細胞全てがそう言っていた。
でも心のどこかでは迷っていた。本当はA国なんて大嫌いで。世界中から嫌われているのは事実で……。
「迷わないで……ベ、イ、タ♪ あなたの一番欲しいものが、今手に入るのよ……」
「あああ――。はい、はぁい……♪ ルファ様ぁ……今行きますぅ……」
かすかな良心と愛国心は、女神様の神託で雲散霧消してしまった。もうルファ様の美脚しか見えない。A国美女様の太ももマンコにベイタの粗末なアレを挟んでもらう堕ちた売国マゾ奴隷しかここには存在しない。
僕は売国マゾ。売国マゾのベイタ。世界で一番いやらしく汚れて知能最低で見た目も短足で頭でっかちでのっぺり顔でそれでいて嫉妬深くいつも勘違いしてわめきちらして周りに迷惑ばかりかけているベイタのマゾ男なのだ。
これが本当の自分。きっとそうなんだ。今やっと解放できて理解したんだ。
「あんっ♪ ああ~ん♪」
「ひゃっ、あったかいよぉルファ様ぁ……」
「や~んベイタのくせにアソコはちょっと大きいのねぇ……。平均より上の子はちょっと好きよぉ……あ~んあん♪」
「えっ、あの。ルファ様だから、A国美女様の太ももだからぁ……」
僕は最上級の性的籠絡機関にみっちりと包まれた。痛いほどペニスが歓喜し涙を流している。
「ほらほらぁ♪ もっと上まで突き上げなさい……。太ももとお尻の間でぇ……最高に気持ちいい空間で売国ザーメン吐き出しなさい……」
「あんっ。売国ザーメンなんて言葉言われたら、僕、僕ぅ……」
太ももに挟みこまれたまま、ルファ様が腰の位置を下へとずらす。甘く濡れそぼった秘部と尻肉のむちっとした感触が、太ももの包容力と渾然一体となり更なる桃源郷へと僕を誘っていく。
「あっ、ふぅん……♪ 僕っ……僕ぅ……」
「あ~んベイタくぅん♪ もっとお姉さんに体を押し付けていいのよぉ……。そうするとぉ……」
「んっ♪ ふぁ、ああっ、ルファお姉様ぁ……」
声に体を支配される。赤子のように背中に手を回し、ふくよかな乳房に甘えながら顔をすりすりとうずめていく。
「太もも……オマンコ……お尻♪ 全部味わってぇ……。おっぱいも……チュッ♪ 唇もぉ……。A国美女様の全てを堪能できるのよぉ……。んっああんっ……んっ……好きぃ……ベイタのこと……本当に好きぃ……」
「ふぁ、ありがとうございまぁす……。僕も光栄ですぅ……。何もかもルファ様に捧げますぅ……。あん気持ちいいっ♪ 溶ける溶けるのぉ……お尻で太ももでオマンコで……あああ――」
「いいのよ溶けて溶けてっ! 一緒にイキましょベイタ……」
ぱぁんと何かがはじけた。壊れて壊れてまた塗りつぶされた。
記憶がなくなり自律意思を持たない人形なる。
深すぎる底なし沼へと堕ちていく。
その沼の主は――もちろん女神ルファ様である。
「あっ、あへっ、あはぁ、あっあっ。いいのっ……すごくぅ……♪ あうぅああいいひえぇぇ――」
「あんっ♪ ベイタのくせにぃ……。でもいいわぁ……。ベイタ、ベイタ、私の可愛いベイタ……」
僕はほとんど奇声に近い嬌声をあげながら、女神様の肉体をむさぼった。
堕ちゆく中で、女神様から与えられた『ベイタ』の三文字だけはしっかりと脳内に刻み込んだ。
また数日がたった。
僕はあれからアンシエンに通い詰めていた。寝食を忘れるほど――現実の仕事も趣味も友人も家族も何かも捨て去るほど――。
生活全てがA国美女様を中心に回るようになった。片時もA国美女様の声や匂いや体温やおみ足や美脚や乳房や美顔やシルエットを忘れたことはない。
A国美女様が好き。完全に洗脳されてしまった。でも僕は、生まれてから一番幸せだった。永遠に僕を包んでくれる、A国美女様という大きな母体に属しているのだから。
「ほらベイタのお兄ちゃん。今日も歴史のお勉強だよ? えーと、この18××年に起きた、Y海沖漁船衝突事件はどっちが悪いのぉ?」
「あっはい。悪いのはB国でございます。僕の先祖が、ベイタだから気の迷いでこんなことをしてしまって……。本当にすいませんすいませんすいません……」
「ふふっ♪ よく謝罪できました。でも、誠意って大事だよね? わかる? せーいせーい♪ 賠償金、ちゃんと払ってぇ……まだ私達ぃ、その傷がいえてないのぉ……」
ロリ顔のA国美女様に問いかけられる。
僕は貢ぎマゾにも調教されていた。今日は二百万も現金を持参してしまった。十万や二十万では足らないのだ。A国美女様がこれまでに受けた侮辱は、未来永劫消えることのないぐらい膨大なのだ。
だから僕が少しでも誠意を示さなくてはならない。少しでもA国美女様の怒りを沈めなくてはならない。
貯金はとうになくなっても、まだまだ全然足りなかった。もっと貢ぎたい貢がなければならない。僕の一生をかけて謝罪と賠償を徹底しなければならない。例えどんな手段を使ってでも――。
「お兄ちゃん聞いてる? この事件――いくら賠償金払ってくれるのぉ?」
「さ、三十万でどうでしょうか……」
「え? それだけぇ? うーんベイタの誠意って、それだけなんだぁ……何かがっかりぃ……ん……チラッ♪」
「うっ……」
両手でスカートの端をつままれる。たくし上げのパンチラで誘惑された。可愛らしいピンクのパンティに目が奪われる。甘酸っぱいロリロリA国美女様の媚態も、心にズキリと深く突き刺さるものがある。
「あっ、あ……」
「ねっ。それだけ? んっ……♪ 見てぇ……おパンツちょっと細くしてぇ……んんっ♪」
「ああ――」
淫らにくい込む下着。露になるあどけない性器の輪郭。甘い嬌声の誘惑。
「んっ♪ お兄ちゃんっ♪ 私ね、ここいじいじするのくせになってね……」
薄い布地の裏で、小さな指がくちゅくちゅと妖しく蠢いている。僕を音とイメージの刺激で貪欲に誘惑している。
あの中は一体どうなっているんだろう――。そう思うだけで頭が真っ白になる。思考不能の状態で。もう操り人形だった。
「よ、いや五十万払います。どうかこれでご勘弁を……」
「え、五十万? うーんどうしようかなぁ。ま、本当はもっと欲しいけど……古い事件だからおまけしておくね。はーいお札束いただきまーす♪ ありがとうベイタのお兄ちゃん♪ チュッ♪」
「はっ、はいぃ。ありがたき幸せに存知まするぅぅう」
トランス状態。多方向から圧倒的な多幸感。A国美女様からでしか味わえない麻薬的なパラダイスゾーン。
「いちまーい、にーまい、さんまーい。ふふっ♪ 私ってお金大好きぃ……。お金くれる人も大好きだけどねぇ……」
「あぁ……よかった……。僕のお金が……A国美女様に、はは……ははは……」
お金を嬉しそうに数えるその姿を愛おしく感じてしまう。踏まれたい馬になってお尻をぺんぺんと叩かれたい。戦場に行けと命令されてむなしく命も散らしたい。
「ねっえ~ん♪ そこのベイタ! 私もこの事件、ちょっと納得いってないんだけどぉ……。ほらこれ、絶対にB国に非があると思わな~い? ねぇねぇねぇ~ん♪」
「あっああ……」
今度はギャル風の――と言っても白ギャルのA国美女様にからまれた。露出度が抜群に高くて、チャラチャラとしたアクセサリーも非常に多い。そのどんどん距離を詰めてくる強引さと、コケティッシュで健康的な色香にメロメロ寸前だ。
「そ、その事件なら三十万で……」
「えー何? それはないんじゃなぁい? さっきあの子に五十万払ったの知ってるのよ? ほらぁ……六十万払ってぇ……私達が受けた胸の痛みはこんなもんじゃないのよ? ほらおっぱい触っていいからぁ……こんなに苦しいのぉ……払ってぇ……ベイタぁ……ほら払えよぉ……払っちゃおうよぉ……。んっんっ……んんんっ♪」
「ああっ。何て柔らかい……。う、うん。苦しみはちゃんと伝わってくるぅ……。こんなむちむちのおっぱいが手にまとわりついてきて……ああっすごい……」
手を乱暴に引かれ乳房に溺れさせられる。両手に収まらないほどの美乳かつ超巨乳だ。特殊な薬でも飲んでいるかのように肌が白くてまぶしい。ずっと触っていたい。魅了されたい虜にされたい。
「そ、それじゃ六十万で……」
「あ~ん苦しいよぉ……それじゃ足りないっ。ちゃんと胸の鼓動を聞いてぇ……」
ぐにっと乳房に跡がつきそうなほど取り込まれる。心地よい一体感。美白の女神様が足りないと言っている。それに報いなきゃ……僕は、僕は……。
「あっ、んっ。はぁはぁはぁ。じゃ、じゃあ七十万で……」
「もっともっとぉ……む~~ぎゅっ♪ きつく絞ってぇ……♪」
「あふぅん♪ じゃじゃあはちじゅ……」
「駄目ぇ~苦しい~~~~ん♪ どうにかなっちゃいそ~~~う♪ もっともっとぉ~~♪」
白ギャル女神様の蠱惑的すぎる媚態が僕を襲う。メロンかと思うほどの爆乳に、完全なる洗脳支配を施されてしまう。
「はぁはぁはぁ……。くっ、ここは奮発して……きゅじゅ、いや百万、百万払うよぉ……払っちゃうよぉ……あはあは……」
「あ~んありがとうベイタ♪ む~ぎゅっ♪ むぎゅむぎゅっ♪ じゃ……これも~らいっ♪」
ひょいっと取り上げられる百万円。まるでお金にしか興味のない態度だが、今の僕には最高に感じるお金の奪われ方だ。
「はひっ……。百万円とられちゃった……あはあはは……」
喪失感、恐怖、絶望。そんな感情は薄くなっていった。それよりA国美女様の血となり肉となることの方が大事だった。貢いでもまた貢ぎたくなる。ギャンブルやソーシャルゲームの射幸心を、何倍にも煮詰めたような特上で危険な麻薬的行為に相違なかった、
「あらっ?」
よく聞き覚えのある声。
それは僕を初めて売国マゾにしつけてくれた――。
「うふん♪ 待ってたわよベイタ。この前の続き……しましょ♪ GP洋世界大戦の賠償責任……。ベイタが全部請け負ってくれるってぇ……言ったわよね? ふふっ♪」
「あっはぁいルファ様ぁ……♪ ああでも僕賠償しすぎて残り五十万しかないのぉ……」
そう言うと、ルファ様はにっこりと満面の笑みで返してくれた。
「うふふふっ♪ 別に足りなくもいいのよぉ。ちゃんと返す意思さえあればね。はい、この書類にサインして……」
「え、あはい」
借用書。ルファ様が渡してくれた。いくらだろう。なんだかゼロがいっぱいある。あの大戦争の賠償だから、きっととてつもない額なのだろう。今日僕が持ってきた二百万でも、きっと足りないはず。
うんでも、ルファ様は返す意思さえあればいいと言ってくれた。僕は誠意を持ってそれに応えようと思う。あ、ここに利息とかについても書いてあるぞ。何々……。
「あなたはそこにサインするだけでいいのよ。ベイタ。早くなさい。今日もルファ様と遊びましょ? ねぇどこがいい? まだおっぱいは使ってないわよね? 後……んっ♪ このお口も♪ それともまた美脚で搾られるのがいいかしらぁ……はぁん♪」
「はぁいルファ様ぁ。僕サインすぐするするするぅ。……これでよしっと」
ちゃんと読もうとしたら、ルファ様の声でさらさらと流れるよにサインしてしまった。僕は何も考えなくていい。ルファ様、ルファ様の命令が一番大事。
「あ~んルファ様ぁ……♪ 足好きぃ……♪」
「あらあら。やっぱりベイタは足が好きなのね。いいわ。ルファ様の美脚でどこまでも堕ちるといいわ……。徹底的に洗脳してしつけて、A国美女様の素晴らしさと歴史をた~~~っぷり刻み込んであげるわね……うふふふふっ♪」
「んん~♪ してしてぇ洗脳してぇ♪ あ~んルファ様の足裏美味しい~♪」
「ふふっ♪ ベイタは本当にそこが好きねぇ……。飽きるまで味わいなさい……ほらほらぁ……♪」
「んっ、んん――。僕幸せえへえへぇ……」
神聖なつま先が口元にねじこまれる。それだけで僕は絶頂しかけた。
口内をえぐられて脳をくちゃにかき回される。僕はもう足奴隷だった。A国美女様の美脚の虜になった哀れな売国マゾ奴隷――。
「あんっ♪ 射精するぅ♪」
「いいのよ出しなさい。このマゾ豚ベイタちゃん♪」
「あ――」
少しも手を触れずに射精した。自分で勝手に心酔し倒錯し、ベイタという単語を聞くだけで無様に精液を垂れ流す変態マゾに堕ちたのだった。
「ふふっ♪ ほらまだ出るぅ♪ 今度は両脚よぉ……視界ぜぇんぶ塞いであ、げ、る♪」
「んぶっ。ん――」
息もつく間もない射精。二回目でも濃い精液がどくどくと漏れる。
完全にA国美女様の意のままだった。そしてそんな惨めな自分の姿を嬉しく光栄に思ってしまう。
僕は、僕は――本当に導かれて幸せになった。
「あ~んあ~んルファ様ルファ様ぁ……」
「うふふっ♪ うふふふふ……」
足裏でぴったりと眼球を覆うように視界を塞がれる。もうルファ様しか見えない。A国超美女様のルファ様のことが。これかれもずっとルファ様の洗脳支配化におかれることを望みながら、僕の意識は甘美な足裏へとすぅと吸い込まれていった。
※終わらない妙な方向へ向かったおまけ
「うふふふっ♪ 別に足りなくてもいいのよぉ。ちゃんと返す意思さえあればね……。ね、みんな?」
「あっ、あうぅぅ……」
ルファ様の目配せで、店内のA国美女様達が集まってきたようだ。
「はーい何ですかぁ?」
「あ、ベイタだ! 汚いB国の豚だ! きゃははは!」
「ふぅん。生きのよさそうな子ねぇ……」
周囲をぐるりと囲まれる。どこを見ても、美顔、美肌、美乳、美脚、美尻。そして神から授けられた黄金比のプロポーション。そばにいるだけでおかしくなってしまう。
「さぁみんな。ベイタにこの世の真実を教えてあげて」
「はーいわかりました」
A国美女様達が距離を詰めてくる。するりと一瞬で耳元へ。これから何が始まるのかと、未知の期待に脳内風船をふっくりと膨らませていた。
「ベイタ。気持ち悪い」
「ベイタ。私達の奴隷」
「ベイタ。この世で最も嫌われている人種」
「ベイタ。どれだけ罪を重ねれば気が済むの?」
「ベイタ。汚物。ゴミ」
「ベイタ。誰もお前なんか信用しない」
「あっ……」
前も後ろ右も左も固められている。ベイタ、ベイタと蔑称を交えて言葉を吐き捨てされる。容赦のない侮蔑と嘲りの言葉が、散弾銃のように照射される。
それは何十分も続けられたと思う。終わりにない罵倒につぐ罵倒。A国人の闇をこれでもかと押し付けられる。
「ベイタ。どうして逃げるの?」
「ベイタ。真実から目を背けては駄目」
「ベイタ。もっと心を開きなさい」
「ベイタ。私達はあなたの敵ではありません」
「ベイタ。あなたはいつ謝ってくれるのですか?」
「ベイタ。私達の声が聞こえますか?」
「うっ……」
時間の概念が狂う。気づけば、声のトーンは少し優しくなっていた。何か諭すような、正しい方向に導いてくれるような、ほのかにぬくもりあって――。
「ベイタ。もう楽になっていいのよ……」
「ベイタ。私達はもうそんなに怒っていないわ……」
「ベイタ。過去を清算して共に歩みましょう」
「ベイタ。いらっしゃい。もう誰も馬鹿にしないわ」
「あっ、ああ――」
寒くはないのに体が震える。歯の根がカチカチとかみ合わない。逃げなくてはならないのに、言葉に化粧された甘ったるい外装に目隠しされて真実が見えない。
「ベイタ。こっちを見て……」
「ベイタ。本当は仲良くしたいの……」
「ベイタ。もうけじめをつけましょ……」
「ベイタ。ごめんさい、しようね」
「ベイタ。子供でもできることよ」
「ベイタ。ごめんなさい……ごめんさい……」
「ごめんなさい。悪いことした時はごめんなさい……」
「私達も謝るから……ごめんなさいごめんなさい……」
「ふ、ふぁ……」
ごめんなさい。しなけらばならないと思う。
僕はこの人達に悪いことをした。だから謝らなければならない。
どっちがどれだけ悪いかなんて関係ない。
ただぺこりと頭下げるだけでいい――。
「ごめんなさいごめんなさいごめんさい僕が悪かったですごめんなさい……」
初めて――かもしれない。
僕は心の底から謝った。パンパンに膨れ上がった心の黒い袋を、針で突き刺して解放した。
「いい子ね。よくやったわ」
「よしよし……なでなでなで」
「あっ、いい……」
「素直な子は好きよ……チュ♪」
「お姉さんの胸にいらっしゃい……」
「ほぁ、ほぁぁ……」
ピンクの風船がぽわんと膨らんでいく。黒の風船はどこかに消えてしまった。
僕はもう許された――のかもしれない。
心が楽になる。やっと本当の自分になれた。
そんな気がする。
「好き……好きぃ……」
「愛してるわベイタ」
「これから素敵な世界を創りあげましょうね……」
「はい。はぁい……女神様達と一緒にぃ……えへへ……」
幸せ。幸せがいっぱい。
白くてみんなよく似た顔の女神様がいっぱいで本当に幸せ。
「んっ。好きぃ……女神様ぁ……んーおっぱい……」
「ふふっ♪ 甘えん坊さんねぇ……」
「待ってベイタ。あなたはまだすることがあるはずよ?」
「え? なぁに?」
「ふふふ……」
女神様がにこにこ笑っている。
でも何をすべきかはわからない。
「ゼロにしましょ……。まっさらに戻すの」
「そう。一度リセットするの。それでお互いに救われるわ」
「ね。あなたの持ってる――汚いお金」
「それ……欲望の火種よ。処分しなくちゃ……」
「あ……うん」
お金。お金は悪いもの。
確かにそうだと思う。これがあるからみんな苦労して犯罪が起きて戦争が起きて……。
こんなものなくなってしまえばいいと思う。
どうして神様は必要ないものを創造してしまったんだろう?
もしかして頭がちょっと足りない神様なのかな?
でも、今はそんなこと考えてる場合じゃない。
優しい女神様達に、お金を渡さなくちゃ。
「これぇ……。僕いりません。もらってぇ……」
「ありがとうベイタ。よくできたわね。これは責任もって処分するから安心してね」
「ベイタ。本当にありがとう」
「ベイタ。素敵」
「ベイタお兄ちゃん大好き~♪」
「ベイタって、世界を平和にした勇者の名前じゃない」
「ベイタ万歳……A国も、B国もばんざーい♪ ばんざーい♪」
「わぁよかったぁ。僕いいことしたぁ……あはぁ……」
お金を渡すと、心の荷がすっと下りたような気がした。
やはりお金は諸悪の根源に違いない。うん、そうに違いない。
「ね、ベイタ。お金って本当に汚いわね」
「う、うん……」
「お金……全部なくなってしまえばいいのに」
「お金、やだなぁ~」
「お金大嫌い……うんざり」
「はぁ……お金お金お金」
「あ、あわわ……」
女神様達が困っている。僕がなんとかしなければと思う。
- 2015/06/28(日) 21:25:08|
- SS
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