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ネイティファス
淫語ボイスドラマ製作サークル ネイティファスのブログです。

逆寝取られ姦 ~恥辱のデート~

逆寝取られSSです。
気が入ったので長くなりました。
掘り下げて結構欝と喪失感が増した感じです。

ラストらへん妙になったんで分岐があります。

音声作品でも今回やらなかった
彼女を拘束、目の前で寝取り攻撃。
左右からのディスり地獄なんて考えています。
他、ミカちゃんモモちゃんの個人プレイも。

逆寝取られはM男視点の場合は
特殊なハーレムものなのかなぁとも思います。
特にモモちゃんみたいなラブラブしてくるのだと。








「アキトさん待ちました?」
「いや、僕も今来たとこ」
 そんな何気ない挨拶交わして、僕たちはふっと視線を合わせた。
 まずどこから話たらいいのだろう。つまりは僕に初めての彼女ができて、今日この日に念願の初デートとなったわけである。
 場所は遊園地。僕はこんな人が多くて騒がしい場所は嫌いなんだけど、彼女がそう言ったので僕は従うことにした。
 彼女の名前はサクミという。大きな花のように、おおらかな子になって欲しいという両親の願いらしい。
 サクミはナース、看護婦だ。そして僕達が運命の出会いを決めたのも、彼女が看護婦だったという事実と僕が偶然指をひねって病院に行ったこと、その二つがこう複雑怪奇に絡み合ってもたらされたからだと思う。
 僕は何でも難しく説明する癖があるがつまりは偶然だ。
 一目ぼれ。
 僕はサクミに一目見ただけで、脳天から踵まで一直線に不思議な見えない力で貫かれたのだ。青天の霹靂ともいえるこの事象は、いつも日陰者の人生を送る僕の姿からは到底予想ができない。
 なんと言ったらいいのか、僕は人間が十人いたら九人が酷いと結論づける容姿の持ち主だ。当然のように性格も引っ込み思案で常に堕落傾向で何事にも興味が薄い。考えることといえばどうやって毎日ぐーたらしてられるかである。
 ただそんな僕でも、社会の潮流にかろうじてしがみついているのである。一浪して入った三流の大学を何とか卒業して、これまたもう一生の行く末が知れるような零細企業に入社したのだ。
 いや、このご時勢に仕事があるだけましかも知れない。でも僕はここでも落ちこぼれだった。普通の仕事は他人の三倍は時間がかかるし、受け答えもいつになってもしどろもどろで一向に改善傾向がない。
 たぶん僕は、生来から脳のシワが少なくて頭が悪いんだと思う。根っからの馬鹿で容姿と思考が一致している。見た目だけでその人の八割ぐらいはわかるっていうけど、それもあながち間違ってないと思う。容姿は心に影響するし心は容姿に出る。つまり表裏一体の相互の関係で、僕という駄目人間は存在するのである。
 もちろん友達といえる友達は一人もいなかった。さらに至極当然のことだが、『彼女』なんて崇高な存在に出会えたことは一度もない。あえていうと女の子という超存在に話しかけられたことも皆無である。
 そんな僕に彼女ができたのは、本当に一度きりのかけがえのない奇跡に近いと思う。
 ある時ぽっと道を歩いていたら、何の拍子もなく転んで両手をついてしまった。運悪く、無骨な短い指は体重を支えきれずにコンクリートの地面に突き刺さってしまったのだ。
 あらぬ方向に曲がる僕の指。そして偶然駆け込んだ病院がサクミとの運命の出会いになったのである。
 痛がる僕に彼女は優しく接してくれた。ただそれだけだった。指が細長くてとても綺麗だった。
 幸い怪我の状態は軽くて、二週間ほどで病院通いは終わりになった。
 その時僕の脳裏に沸き起こったのは、このままでいいのだろうかということだ。何をするのも鈍重で極めて怠惰な僕が初めてやる気になった。
 僕は不細工すぎて、女の子と付き合うという行為から遥か遠い位置にあった。幼少の頃からの度重なる劣等感に苛まれて、臆病になりその人間の本質ともいうべき恋愛から目を背けていたのだ。
 女の子は怖い。ある意味男よりも数段怖い。
 そんな僕がサクミに告白しようと思ったのは、こう運命の女神が与えてくれた歯車がピタリと偶然に合致したに他ならない。
 告白は一瞬だった。僕が必死で考えてきた文句は一瞬で消滅した。
 ほんの一言、ただ好きとだけ言った。彼女はくすくすと笑ってくれた。それだけで僕は頭が沸騰して真っ赤になった。
 結果、なぜか告白は成功した。本当に自分でもわからないが彼女はOKしてくれた。
 そして今、僕とサクミは初めてのデートでこの遊園地に来たのである。



「そうですか。よかった」
「う、うん……」
 僕はどもりながらサクミに言う。
 初めにいうと彼女の容姿はとても残念だった。何しろ僕が告白しようと思ったぐらいである。ひいき目にみても中の下以下である。ただそんな残念な容姿が僕にはちょうどいいのだ。
 彼女の心の中は澄み切っていて綺麗だ。単なるあてずっぽうではなく本当にそう思う。ほんの少し指を包帯でぐるぐるされただけで、僕は彼女の深い優しさに触れたのだった。それはどんな美麗な外見よりもずっと素晴らしいもののはずだ。
 サクミは花柄の、ひらひらとしたワンピースを身につけていた。ファッションに疎い僕が言うのも何だかセンスが悪い。スーパーのバーゲンセールでおばちゃん達がこぞって買い求める服のような、そんなセンスの悪さだ。
 だけど僕はそんな彼女を揶揄することはない。彼女の心の清らかさは、誰よりも僕が一番知っているからだ。
「きょ、今日はいい天気だね」
「そうですね。ふふ」
 何かを話さなければと、僕は天気のことを口にした。彼女は何を話してもコロコロと笑ってくれる。それが僕には楽だった。僕が話す話題といえば極めて浅いオタク知識しかない。それも普通の女の子なら軽蔑するような内容だ。
 何気ない出来事、何でもいい。綺麗な花が咲いているとか石ころが光っていたとか。本当にどうでもいい話題を僕と彼女の間で交わすのである。ふっと沈黙が起きても特に慌てたりしない。そんな気のおけない関係に、女の子となるなんてのは初めての経験だった。
 彼女はまさしく僕にとっての女神だった。僕だけの女神。そうだ。見た目がちょっとばかし残念なのも、女神の神聖さを悪い人間から身を守るための変装に違いない。
 そしてその女神の神通力を僕だけが発見した。ゆえに女神様は僕だけのものなのだ。僕だけに心地よい安息をくれる崇高な存在である。
「アキトさん何ぼっとしてるの? さぁ遊園地だから楽しく遊びましょう?」
「あっ、ご、ごめん……」
「変なアキトさん。ふふ」
 にっこりと笑う彼女。その顔もやはり深い慈愛に満ちている。
「うーん、どこにしよっか? 僕はあまりこういうとこ来たことないから……」
「そうね、うーん」
 遊園地といえば高校の修学旅行以来である。最も僕にとっては全然楽しくなかったが。
「とっとりあえず適当に歩いてみよっか?」
「ふふ。そうですね……」
「あっ」
 僕があっと声をあげた理由は、突然サクミに手を握られたからだ。そうか、これが恋人か。
「ねっデートでしょ? アキトさん?」
「うん……」
 僕は黙ってうなづいた。顔が赤くなっているのが自分でもわかる。こんなの一生に体験できないと思ってたのに。
 遊園地の中は人が多かった。みんな家族連れやカップルや友達と来ているのであろう。皆が思い思いの人とこの場を楽しんでいた。
「ね、ねぇ」
「なぁに?」
「なんで……僕の告白OKしたの?」
「ん……」
 僕はかねてからその理由が知りたかった。どうして見ただけで駄目な男とわかる僕と、こうして手をつないでデートしているのかと。
「面白いから」
「はぁ」
 僕は気のない返事をした。面白い、とは一体。
「どこが? 僕って顔もよくないし話も全然だよ」
「うーん……いるだけで、面白い、とか? ふふっ♪」
「な、何だよそれ……」
 僕は呆れたように天を仰いだ。面白い、か。いや僕も彼女が女神であることを重々承知しているし、彼女にとっても僕の隠れたいいところを敏感に察知しているのかもしれない。よくわからないがそういうことにしておこう。
 適当に歩き回ってもらちがあかない。そろそろどこかの施設に入ろうと思った。どこがいいだろう? 僕はジェットコースターみたいな心臓がドキドキする乗り物は嫌いだ。サクミはどんなのが好きなのだろう。やっぱり女の子だから――。
「あっ、あの人」
「えっ?」
 そんな僕の思考を遮断するように、サクミがあっと声をあげた。
「怪我して泣いてるわ。膝小僧……かわいそう。放ってはおけないわ」
「あっ、ああ……」
 見ると、道のど真ん中で一人の中学生ぐらいの女の子がわんわん泣いていた。道行く人がとても邪魔そうにによけて通っている。誰も係員を呼ぶ気がないのか、そ知らぬ振りをして通りすぎている。
 近頃の日本人は――と言うが、むしろ人間全体自体が自己本位的な寡黙主義な傾向にあるのかもしれない。困っている人を助けてもお礼を言われるかもわからない。かえって手酷い損害を逆に与えてくるかもしれない。泣き喚くふりをしながらも、手ごろな組しやすいターゲットを虎視眈々と狙っているかもしれないのだ。
 そんな無益な事象に遭遇するくらいなら、いっそのこと無視してしまった方がいい。近頃の世の中というのも中々そういうものだ。自分さえよければいいということなかれ主義。もちろんそれは、ある意味数少ない生存権を勝ち抜くうえで、最も当たり前の真理ではあるはずだが。
 僕も通常ならこんな光景は黙殺しているはずだった。しかし今は彼女が隣にいる。さてどうしたものかと考えていると、サクミがすっと前に出て女の子に手を差し伸べた。
「大丈夫? ほら傷口見せて?」
 女の子の膝からは赤い血が滲んでいてとても痛々しかった。履いている靴はあまり歩行に適さないような形状で、たぶんそれで転んでしまったのだと思う。
「えーん、えーん。痛いよー痛いよー」
「もう心配しなくていいわよ。私はいつもカバンに応急処置セット持ってきてあるから」
 こういう所はさすがに看護婦らしい。サクミはセンスの悪いバックから応急箱を取り出して治療を始めた。やっぱり僕のサクミは優しい。僕がしどろもどろしている間に直ぐに実行に移す。僕は卑怯で愚かだ。こんな僕がサクミの彼女でいるなんてやはり不都合に思う。
「何か手伝うことある?」
 僕はぼっと立っているのもあれなのでそう聞いてみた。
「ううん、一人で大丈夫よ」
「そう」
 手伝うといっても僕ができることはあんまりない。ふと視線を向けて地べたの女の子に目を向ける。何と言ったらいいのやらふりふりひらひらの服装だ。花模様をあしらったフリルが至る所ふんだんにあしらわれている。僕はファッションに疎いからよく知らないが、これ系専門のお店にあるに違いない。
「う、うわーん。うう……」
 女の子がまだ泣いていた。しゃくりあげながら肩が左右に揺れている。女の子は巨乳だった。大きく開いた胸元からむっちりとした谷間が見えていた。僕は上から見下ろす感じで、自然にその谷間に視線を吸い込まれていた。彼女が治療している横で、なんて邪に気持ちなってしまったと思い、僕はぷるぷると頭をふって目をそらした。
 僕はああ早く終わらないかなと周囲を見渡した。すると――、
「ちょっと何やってんのよあんた達!」
「え」
 鬼のような顔をした女が僕をにらんでいた。顎がすっと細くて切れ長の瞳が鋭い。顔立ちも整っていてかなりの美人だ。白地のTシャツに派手なプリントがされている。下はぴったりとした黒いスカートで、正面からでもパンツが見えそうなほどの丈だった。手や首にチャラチャラとしたアクセサリが多く長いストレートの髪が印象的だ。
「モモ! いつまでピーピー泣いてんのよ? あんたが遊園地行きたいから私がわざわざ付き合ってあげてんのに。勝手に転んで怪我して何泣き叫んでるわけぇ? あーん?」
「び、びびぃぃ……。だ、だって……モモ……早く……お馬さんとか……乗りた……」
 なんという光景だろう。おそらくはこの二人は友人なのだろうが、転んで膝を擦りむいた子に対してありえない仕打ちをしていた。そっちの女はかなりの美人だが他人を思う気持ちがないんだと思う。やっぱり美人は心がすさんで汚いのだろうか。
「はいもう大丈夫ですよ。ちゃんと消毒して絆創膏はりましたからね」
「あっ、ありがとうお姉ちゃん。ん……なんだかモモ元気になったみたい♪」
 いい所で治療を終えたサクミが立ち上がった。
「はん。何勝手な真似してんのよ。こいつの怪我なんかつばつけときゃ治ったんだから。あーあ、善意の押し付けってうざいなー。ん……あんたらそろいもそろって不細工ねー。勝手にしゃしゃり出ていきがってんじゃないわよ……」
 僕はてっきり、この女が悪態をつきながらもありがとうぐらいは言うと思っていた。だが現実はさらに酷いしっぺ返しをくらった格好になった。美人不美人関係なく人としての何かが欠けているように思えた。
「あ、あの。そこの妹さんの、お怪我たいしたことないですから」
 サクミが平静な声で言った。僕は不細工と言われることぐらいなれているけど、この時ばかりは腹がたっていた。だって怪我をしていた子の世話をしてあげたのにそれを――。
「ばーか。こんなの妹じゃないわよ。ほらモモ行くよ? さっさと立つ!」
「ん、うん、ミカぁ。ご、ごめんなさいお姉さん。お膝ありがとうございます……ぺこっ。……きゃぴ♪」
 中学生ぐらいの女の子はモモと言うらしいが、こっちのミカと呼ばれた最低の女の友人らしきところをみると、たぶん年は二十歳ぐらいなのかもしれない。たどするとかなりの童顔であることは間違いない。お礼をしたと思ったら奇妙な声とポーズでおまけをされた。
「はいどういたしまして。もう転んじゃ駄目よ?」
「はい!」
 サクミが優しく言った。やっぱり僕のサクミが人間ができている。それなのにこの最低の女は――。
「ほら行くよモモ!」
「う、うん……」
 僕は今普段ではありえない心境になっていた。恩を仇で返された事実と、何より自分の彼女の善意を無碍にしたミカの行為に、おさまりつかないぐらいにはらわたが煮えくりかえっていた。
 後ろを向き立ち去ろうとするミカ。その軽薄な後ろ姿に、僕は勇気を持って声をぶつけた。
「お、おおい! まっ、待てよっ!」
「あん?」
 一秒と待たずにミカは振り向いた。その目はギラギラとした敵意に燃えていた。
「な、何か言うことがあ、あ、あるだろう。えっ、あっ、あ、ありがとうぐらい……言えよっ!」
 僕はミカの眼光に気おされてどもってしまった。サクミの前で情けないほど格好の悪い醜態だ。
「アキトさん……。私は別に……いいですから」
 サクミが心配そうな顔で僕を見た。いや、サクミがよくても僕にはよろしくなかった。ここはこの女を殴ってでもこの世の道理ってやつを……。
「はぁ~ん? なぁに僕ぅ? この私に意見する気ぃ? はぁ? 何でぇ? そっちのしょぼい彼女が勝手に馬鹿のモモを助けたんでしょう? それで何で私がありがとうなのぉ? ねぇ僕ぅ? 説明してぇ? ほら早くぅ……。んっ……くくっ。それにしてもあんたってすごい不細工ねぇ……彼女とお似合いよ……ふふ♪ ん……んん。あっ……不細工同士のカップル……。ふふっ、あはは♪ これは楽しいかもしれない……くふふ……」
「な、何笑ってるんだよっ! 早く……」
 突然馬鹿笑いを始めるミカ。大体の反射してくる文句は予想していたがかなり酷い。しかしここまできたら引き下がれない。心配そうにサクミは僕を見つめている。大丈夫、僕はもう弱虫なんかじゃない。勇気のある所を彼女にみせてやるんだ。
「どっ、どうした? 早くありがとうって――」
「ありがとう。そっちのお嬢さん。ふふっ。モモの馬鹿が迷惑かけましたぁ~」
「あれっ?」
 いきまいた僕は肩透かしをくらった。さっきまで般若のような形相のミカが、ふっとつき物が落ちたような菩薩の顔に摩り替わったのだ。だがにやにやと口の端を吊り上げるさまは、下卑た悪意に満ちていると確実に思った。
「な、何だ……。ちゃんと言えるじゃないか。それで……いいんだ」
 僕はふっと肩の荷が下りた。本当は怖かったけど勇気を出してよかった。サクミにいい所を見せられて鼻が高い。
「じゃ、行こうかサクミ」
「ええアキトさん」
 サクミの視線がなんだか熱ぼったい。今の僕は彼女の目にはどう映ったのだろうか。
「あ、待ってよ」
 立ち去ろうとする僕達を、今度はミカが呼び止めた。もう用はないはずなのに一体なんなのだろう。
「あ~ん。私ちょっと躁鬱病気味でぇ~急に変なこと言っちゃうんですぅ~。はぁ~ん♪ だからおわびと言ってはなんだけどぉ……色々一緒に見て回りません?」
 ミカが急に猫なで声を出してきた。その甘い響きの裏に危険な何かを感じる。何が躁鬱病だ。根本的にお前は性格が最悪なだけじゃないか。何を考えているが知らないがここは絶対に断らなければならない。
「ねぇいいでしょう? そっちの……サクミさん? いい名前ね? あっその服有名なブランドものでしょう? えっ違う? あ~んでもあなたに似合ってて最高よぉ? え~っとね、ここの遊園地は私何回か来てるの。だから的確に案内できるかっていうかぁ……ねっモモもこっちのお兄ちゃん達と一緒の方がいいよね?」
「んっ? う……うん!」
 一人ぽつねんとしていたモモに、ミカがとんとひじでこづいたのを僕は見た。この展開は絶対におかしい。ミカは悪魔のような女だ。こんなのが近くにいたら――。
「あ……私は別に構いませんけど」
「わ~い看護婦のお姉ちゃん大好き~♪ 一緒にお馬さんのろ~のろ~?」
 きつく断ろうと思った矢先、一寸早くサクミが返事をしていた。駄目だサクミ。こいつらは僕達のことを見下して……。さっき不細工だと結論づけたくせに、突然サクミの服を褒めそやしている。全然そんな気はないくせに。口先だけの軽い言葉でそんな世迷言を言っているのだ。
「ふふ……決定ね。いいでしょ? アキトさん? ……楽しく、一緒に遊びましょうね。ふふ♪」
「あっ、はぁ……」
 僕はその時のミカの顔に心底ぞっとした。蛇が蛙を睨むような、真っ赤な舌をぺろりと出して獲物の品定めをしているような顔だった。
「わーいわーい♪ 四人で遊園地~♪ わーいわーい♪」
 やはり子供のようにはしゃぐモモ。その横で僕は気持ちの悪い冷や汗をかいていた。身の毛もよだつようなとてつもない危機感を感じる。
 サクミとの二人きりの楽しいデートになるはずだったのに。僕の尊大な勇気が、地獄の悪魔を呼んでしまったのだろうか。いや、決してそうではないと信じたかった。まだ何も起こってはいない。今は、まだ。




「あ~その化粧水私も使ってるわー。お肌もぷるぷるで最高だわーん。それでねーうんとねー」
「ええミカさんは美人だから。うらやましいわ」
「そんなことないってー。ほら私って性格最悪だから男がみんな逃げていくの。あはは」
「あらあら。うふふ……」
 僕の数メートル後ろで、すっかりミカとサクミは意気投合していた。女の子同士ってのはよくもこう話がはずむものだと思う。だがまだ僕は気を許したわけではない。ミカがあのまま引き下がるわけがないはずだから。
 後ろに二人ということは必然的に前は二人になる。僕の横にはちょこんとしたモモがはにかみながら歩いている。
「……仲よさそうだね二人とも。きゃぴ♪」
 モモが声をかけてきた。僕はこの子と話したい気分ではないので無視した。妙なきゃぴっていう口調も僕の神経を無駄に逆なでしていた。
「ちょっと、何とか言ってよー。ミカのことは謝るからさー」
「それは……まぁ」
 いく分悲しそうなモモの顔。こんな可愛らしい女の子がしょげかえっていると、ミカへの怒りも雲散霧消してしまいそうになる。一応はあのにっくきミカの友達だが、純粋に言うとこの子は悪くないのかもしれない。
「きゃぴっ♪ じゃあ仲直りですね。それじゃ……むぎゅ~~っ♪」
「わっ」
 僕は突然モモに腕を取られていた。そして柔らかい乳房に、ふにと服の境界を通して甘い感触を伝達される。サクミは巨乳ではない。むしろ貧乳だ。しかもこんな風に腕を取ってきたこともない。僕は今童顔の可愛らしい少女に腕を胸……しかも巨乳で……。
「は、はなせよぅ」
「きゃっ」
 僕はそのまま押し切られそうになりながらも、意を決してモモを跳ね除けた。後ろにはサクミが見ているんだ。いくらなんでもこれはまずいではないか。
「えへっ♪ 大丈夫ですよアキトさん。サクミさんはミカとのお話に夢中ですから……」
「でも……」
 後ろにちらりと目をやる。確かに二人は話に夢中でこちらのことなどどうでもいいようだ。でも僕はサクミを裏切りなんてしない。サクミは僕の彼女――女神様だから。
「それっ。むにむにっ♪ きゃっぴ~ん♪」
「ふわぁ」
 決意を固めた瞬間、モモが僕の胸に飛び込んできた。首に細い腕を回されて胸に顔をうずめられる。甘いほのかな香水の匂い。女の子の匂い。童顔の美少女。しかも巨乳で……目もぱちくり動いてまるで二次元世界のロリっ娘のようだ。
「ふふ……」
「あっ、ああ……」
 僕はたじたじになってしまいモモを突き放せなかった。一体この子は僕に何をしようとしているのだろう。不細工な僕に。本気で女の子に好かれるはずもない僕に。
「あ~んモモあのお馬さんのりた~い♪ えっ? アキトお兄ちゃんが一緒に乗ってくれるの? わーいわーい♪ それじゃあ、お姫様だっこして乗せて欲しいなぁ……。ねぇいいでしょう?」
 上目遣いで懇願するように見上げられた。少女の蠱惑的な目つきに意識が飛びそうになる。僕は助けてといわんばかりにサクミの方を見た。
「何やってんのモモ? アキトさんはサクミさんの彼女なのよ? 駄目でしょそんなに抱きついちゃ」
「あっいいんですよ。あの、モモちゃんって本当に妹みたいで可愛くて……。私思わずミカさんの妹だって言っちゃって……。本当にさっきはすいませんでした」
「いやいや。あんなの全然いーのいーの。ささ、それより二人でメリーゴーランド乗ってきなよ。私はサクミさんと積もる話があるから……ねぇ?」
「あ、はい。何だかミカさんってお話上手で楽しくて……」
 ミカとサクミのやり取りを、僕はモモに抱きつかれながら聞いていた。違うサクミ。そうじゃないんだ。こいつら僕とサクミを引き離して何か悪いことを考えているんだ。
「だってよアキトお兄ちゃん♪ ほら一緒にお馬さんパッカパッカしにいこー♪ きゃぴっ♪」
「あっ、あああ……」
 なし崩し的に僕は承諾するしかなかった。モモの柔らかい胸。こんな柔らかいおっぱいは初めてだ。もし……こんな彼女がいたらと思うと……。ああ駄目だ。僕の彼女はサクミだけだから。それだけは一番念頭に置かなければならない事実だ。ミカとモモが一体何を画策しているか知らないが、僕は自分の女神様を信じるだけだ。


 メリーゴーランドは空いていたのかすぐ乗れた。どうでもいいことだが僕はこの乗り物に乗ったことがない。まず男一人で乗ろうという気にはならない施設だ。お姫様だっこは危険なので却下された。至極当然の結果だ。
「うっわ~い♪ お馬さんお馬さん~♪ 楽しい~♪」
「はは……」
 僕の一つ前方の馬に、モモは可愛らしいお尻をちょんと乗せて座っていた。本当にこの子はとても子供っぽく見える。無邪気な仕草も容姿も実年齢よりもはるかに幼げだ。最初に遭遇した時も、ちょっと膝を擦っただけで大泣きしていたし。二十歳前後だったとしたらまともに生きていけるか心配だ。まぁ僕自身も、そうやって他人を批判するほど分別のある大人じゃないけれども。
「あ~んお馬さん♪ すごいすごいすごぉ~い♪」
 何が楽しいのか、モモは相変わらずおおはしゃぎをしていた。上下に揺り動く電動の木馬。そこにまたがっていると当然見るのは正面だけしかない。
 モモの柔らかそうな少女の腰つきがなんとも色っぽい。フリフリの服がひらひらと上下の振動に合わせてはためいている。モモの生足、白い膝の裏、つんと突き出たお尻。
「あ~んそんなに動いちゃ駄目お馬さぁ~ん♪」
「うっ……」
 僕はなぜかモモがわざとそうした、いやらしい性行為を暗示させるような声を発していると思ってしまった。それに加えて、股を馬に擦り付けるようにしてカクカクと艶かしく動かしている。
 やたらめったらに動くから、スカートの裾がさらにめくれて白いパンティがチラチラと僕の視界に入ってくる。何という目の毒だろうこれは。サクミはミカと一緒でここにはいない。でも僕達が馬に乗っている姿は見物しているのだろう。僕がロリっぽい少女に欲情しているなんて知れたら最悪だ。ここは見て見ぬふりをして……。
「あはぁ~ん♪ 楽しいぃ~ん♪」
「うう……」
 モモはとても興奮しているようだ。上下に動く腰の動きが、木馬のそれと重なりなおいっそう魅惑的な上昇下降運動を織り成す。ああ……そんなに腰を動かされた僕は……。
「はぁ……はぁ……」
 いつしか僕は、少し体を前のめりにしてペニスが馬の背中に当たるように調整していた。そういう状態にしてから、モモの誘うような淫靡な腰つきを見つめてあらぬ妄想にふけってしまった。ああ入っている。モモの中に。あんな可愛らしい女の子の中に入れて、めちゃくちゃに腰を動かされて。
「あ~んお兄ちゃんも楽しんでる? ねぇ?」
「はぁっ!」
 不意にモモが後ろを向いた。僕は即座に腰を浮かせて木馬の上で飛びのいた。気づかれなかっただろうか。いやたぶん大丈夫だろう。僕は怖がりだからこんな前傾姿勢でも問題はない。だがモモのお尻を凝視をして、あらぬ妄想を抱いていたのは事実だった。
「あっれぇ~お兄ちゃんたらそんなに驚いてどうしたの? あっもしかして。モモのお尻とか……」
「やっ、やめ、何を……」
 何を思ったかモモはスカートをふわり捲り上げて、僕の方にお尻と太ももがよく見えるような状態にしてきた。角度的には僕にだけ一番パンチラが見えやすい。この子は一体何を考えて――。
「くすっ、くすくす♪ お兄ちゃんの……スケベ♪ きゃぴっ♪」
 そう言うとモモはスカートの端をつまんでいた指をさっと離した。今まで見えていた白い肌が即座に隠れる。
「い、いきなり何をしているんだ君は……」
「あ~ん君なんて言っちゃ駄目。モモ、とか。モモちゃんて呼んでぇ~」
「何でそんな親しげに……」
「きゃぴ♪ いいから今度から私はモモちゃんね♪」
 勝手にモモはそう結論を下した。
 その後木馬は回るだけ回ってむなしく停止した。僕は当然のごとく楽しくなかった。誰が見ているかわからない公衆の面前で辱めを受けたのだった。いくら僕が不細工でもサクミの前でそんな醜態はさらせない。
 それにしてもこの子はなんでこんなことをするのだろう。僕なんか誘惑しても一銭の特にもならないだろうに。ああもしかして僕をひきつけている間にサクミを……。そうかそういうことだったのか。あの悪鬼じみたミカとサクミを一緒にしたのが間違いだった。早く、早くサクミの元へ戻らなければ。
「お疲れさま~」
「お疲れ様でしたアキトさん」
 そう意気込んでいた僕を、肩透かしのように笑顔の二人が出迎えた。すまし顔のミカ。その裏の顔は全くといっていいほどうかがい知れない。どうやら僕のサクミは無事のようだ。それでも今後は予断を許さないような状況が続くだろう。
 奴らの作戦はこうだ。僕を色仕掛けかなんかでサクミと引き離そうと……。全くなんてやつらだ。だが僕は生まれてこの方女性というものに愛されたことがない。だから僕に近づいてくる女は、心に一物をもった悪意のある欲望の権化である。僕を簡単にたぶらかせると思ったら大間違いだ。
「楽しかったねアキトお兄ちゃん♪」
「あ、ああ」
 僕はそっけなく返事をした。お前らなんかに興味はないと態度で如実に示した。
「きゃぴっ♪ あのね、モモぉ~アキトお兄ちゃんとこんなに仲良くなったのぉ~♪ ぎゅー♪」
「うわぁっ!」
 モモがまた突然腕にしがみついてきた。あふれんばかりの巨乳。甘い感触がぷるんと香る芳香と共に腕に広がっていく。モモ。いやらしいお尻とおっぱい。小悪魔的なロリっ娘。
 僕はこんな二次元的な美少女に誘惑されたいと妄想したことがある。僕はこんな顔だが大体ドエムだ。さっき色仕掛けなんか通用しないと意思を固めたものの、本当はこんな間近で女の子と接近するのは初めてだった。
 サクミの僕達を見つめる瞳。あらあらといった表情だ。違う、そうじゃないんだサクミ。僕は危機的状況にあるんだ。だからどうか助けてくれ。そうじゃないと君も……。
「ほらほらー。ま~たあんたったらー。離れなさいよモモ。アキトお兄ちゃんには超お似合いのサクミさんって彼女がいるんだからさ」
「あ……でも本当に私は別に」
 その時ミカがそっとモモに目配せしたのに僕は気づいた。了解してかモモがぱっと僕から体を離す。
「はぁ~いごめんなさいお兄ちゃん♪ でも一緒に遊んでね~♪ サクミお姉ちゃんが彼女ならぁ、モモは妹って扱いでぇ……」
 くねくねと腰をくねらせるモモ。口を大きく開けて指をあ~んと咥えたそうな表情だ。モモはかなり小さいから、自然に上から見下ろす格好になってしまう。無防備な胸の谷間。ふわふわとしておっぱいの全体像が見渡せそうなほど大きく隙間が開いている。
 モモの媚びた態度に僕は段々懐柔されかけていた。あの腰の動き……。僕が馬で……背中に乗られて……ロリ女王様の言いなりになって……手で足で……口で……。
「ほら馬鹿なこと言ってないで。さっさと次行きましょ。つ、ぎ」
 僕の卑猥な妄想を打ち砕いたのは、他ならぬ敵であるはずのミカだった。はっとして頭をぶんと振り思考を正常に戻す。
「そうですね。私も何か体験してみたいですし」
「オッケー。それじゃ行きましょ。今度は四人で楽しめるやつにしましょうね」
「うっわ~い♪ みんなで遊園地楽しいなったらんらん♪」
「は……はぁ」
 皆がはしゃいでいる中、僕は一人ため息をついていた。鬼が出るか蛇が出るか。もしモモが鬼ならミカはその邪悪な牙を密かに潜めているのだろう。




 僕達は遊園地内を無駄に練り歩いていた。四人で、と言ったものの中々ちょうどいい乗り物が見つからない。モモがジェットコースターに乗りたい、と言ったけど僕はそっち系は絶対に駄目なので徹底的に拒否した。それじゃコーヒーカップのぐるぐるなら、という提案はミカが私すぐ酔うからなんて言ってうやむやになった。
「中々決まらないわねー。ただ歩くばっかで遊園地なんてつまんないわねー」
 ミカがあくびをして文句を言った。確か自分が案内するなんて率先して言っていた記憶がある。どうせこの女のことだから口から吐くこと全て嘘偽りなのだろう。
「あ~んもうモモ足ぱんぱん。早く何かで遊ぼうよぉ~」
「そうは言ってもねぇ……。あ、あれなんかいいんじゃない? ほら、誰も客いなさそうだし」
 細い指が示したその先、黒っぽい古ぼけた建物というか小屋がぽつんと鎮座していた。明らかに年代ものの施設だ。他の最新の技術を駆使したようなはれやかな遊具とは絶対的に違う。こう時代の流れに追いつけなくなって、おいて行かれたもの寂しさがその黒い施設からは感じられた。
「あそこはいらない? ねぇサクミさん?」
「あ、いいですよ。でも何なんですか?」
「ふふふ……それは入ってのお楽しみ♪」
 にやにやと不気味な笑みを浮かべるミカ。何はともあれ僕に課せられた使命はサクミを守ることだ。
 黒い建物は何のことはない、ただのホラーハウスだった。お化け屋敷。二昔前はやったホラーブームの名残で存在しているのだろうか。取り壊すこともできずにわずかな客を呼び込む程度なのだろう。
「さっ入るわよ~♪」
「や~んモモお化けこっわ~い♪」
「私は怖いのは苦手なんですけど……。でもアキトさんと一緒なら」
「僕も怖いのはちょっと……」
 黄色い声と不安げな声が入り混じる。ホラーハウスと聞いて僕は安心した。ミカが選んだから何か回避不能の罠があると思っていた。これならサクミの手をしっかり握り締めていれば大丈夫だ。
「それレッツゴー♪」
「いけいけー♪」
 二人は僕達を無視して先に奥へ消えて行った。そのあっけない進行を見て僕はふと疑問を思った。彼女らは僕達二人のデートを邪魔するために近づいたという邪推だ。さっきのモモの破廉恥な行為を見ればその疑いは大きい。だがミカが直接何かをしたわけではない。サクミと楽しくお喋りをして語り合って……。
 何だか緩急の激しい性格みたいだし。初対面のアレがあまりにも強烈だったせいで、僕は色眼鏡でミカを見ていたのかもしれない。モモも本気で無邪気で……すぐ人に抱きついてしまう癖があって……。
 僕の頭は酷く混乱してしまっていた。倒錯の思索。僕は頭が悪いから、悩み始めるとどうしようもない思考の袋小路にすぐ陥ってしまう。
「んっ? どうしたのアキトさん? ほら行きましょ? 私お化け屋敷なんて初めてだから……」
「う、うん……僕も……わっ」
 手の平に広がる柔らかい感触。何と彼女の方から僕の手を握りしめてきたのだ。
「これなら大丈夫です。うふふ」
「うん……」
 僕はドキドキしていた。やっぱり彼女は最高に僕の女神だ。僕達は寄り添うようにしてホラーハウスの中へと入った。
 館内は尋常でなく暗かった。それでいて、チカチカと目に悪い照明が場所によってはまぶしすぎるからたまらない。館は一応は迷路のような構造になっていた。不気味というよりシュールな笑いを誘いそうなドラキュラやミイラ男の人形が、どこかしこに配置されている。加えて不気味というより不愉快きわまりない叫び声や笑い声のオンパレードである。
 足場も悪くてすぐにずっこけそうになって危ない。お化け屋敷、実に酷い。誰でも一度ここに入ったら、二度と入ることはないと簡単に予想できる。
「キャー! アキトさん……ひっ、ひいぃぃ……!」
「あれ? 君こんなの怖いの?」
「だ、だ、だって……ひぃいいっ!」
 僕は全然怖くなかったけど、サクミは根っからの怖がりなのか大げさな悲鳴をあげていた。怖がりの彼女。うん、こんなのもいいかもしれない。そこを僕が優しく抱きしめてよしよしとなぐさめてやったりなんかして。僕は彼女のそんな一面が見れて満足でもあった。もっとサクミのことを知りたいと思う。
「ああアキトさん駄目。私……怖くて変になりそう」
「だ、大丈夫僕が守ってあげるから」
 なんて歯の浮くような台詞。でも今だけはいいんだ。この漆黒の暗闇の中では僕達は理想的なカップルのはずなんだから。
「手……離さないでね」
「うん……うん」
 僕が頼られている。そのことに深い喜びを感じてしまう。どんな苦しい障害も二人なら乗り越えられるような気がした。やっぱりサクミは僕の女神なんだと思う。この荒廃しきった世界で僕のことを理解してくれるたった一人の――。
「あれ? アキトさんどこ?」
 そう思った瞬間、僕は背中を捕まれて暗闇の奥へと引きずりこまれてしまった。ああ駄目だ。彼女は怖がりで臆病なんだ。僕がそばにいなくちゃ寂しくて死んじゃうんだ。
「だっ、誰だ?」
 僕は気持ちが大きくなっていたので、大声をあげて背中に呼びかけた。
「はーい私よ私」
「私もいるよー♪」
 応答したのはミカとモモの二人だった。
「何をするんだ。せっかくいい雰囲気だったのに……」
「ふふん。ここ全然怖くないでしょ? だから私がお化けの役をやってあげるわよ」
「モモもお化けするするー♪」
「馬鹿なこと言わないでくれ。早くサクミを……うわっ」
 駆け出そうとした途端、僕は首ねっこを捕まれてそのままミカに後ろから抱きかかえられた。細腕なのにかなり力が強い。筋肉質の鍛えた男のような頑強な拘束に身動きできない。
「んっ、くっ! は、はなせよう!」
「だからお化けだって言ったでしょ? ほーら。妖怪ドエスお姉さんがお相手してあげるわよーん♪ しょぼいカップルから彼氏の方を寝取っちゃうわるーい妖怪なのー。あっは~ん♪」
「じゃあモモはおっぱいお化けするー♪ おっぱいの谷間ねぇ……こうやってぇ……見せ付けてぇ……うずくまってぇ……きゃぴ♪」
 後方のミカ、前方のモモに僕はサンドイッチにされた。首筋に濡れた吐息がかかり、股間には柔らかい乳房が押し付けられている。たまらず僕のペニスは固く勃起してしまった。こんな暗闇の中で二人に刺激されたら我慢しろって方が無理だ。
「あ、ああ……やめないか」
 それでも僕はがんと意識を正して抵抗した。サクミが、僕の大事なサクミが今一人でいるのだ。
「あれ? アキトさんどこー? 私……暗くて……」
 遠くの方でサクミの声が聞こえた。僕はものすごい力でミカに引きずられていた。どんどんサクミとの距離が遠くなる。駄目だ、このままじゃ。サクミは僕の。
「はぁん……ちゅっ♪ ほら耳も舐めちゃうわよ? ドエス妖怪は耳も大好きなのよ?」
「私はズボンのここぉ……ふふっ♪ むにむに♪」
「あっ、ああ」
 背筋がぴんと反り返る。ミカの口内にくちゅっと取り込まれる僕の耳。ぴちゃぴちゃという舌使いが直接僕の聴覚を犯している。
「やっ、やめて。何で……こんなこと」
 僕は涙ながらにそう聞いた。
「ふふん。言ったでしょう? 私他のカップルから男を寝取るのが好きなの……。だからあんたがターゲットなのよ。わかった?」
「なっなんだとう? そんなことをしたらサクミが……」
「あのね……寝取るのって最高なのよ? 私の前で男が自分の彼女のことをすっかり忘れてね……私の魅力にメロメロぉ……♪ しかもその間抜けの彼女の泣き叫ぶ顔と言ったらもう……♪ あは♪ 私にかかれば大体の男は言いなりになるの。君みたいな耐性のないドエムの坊やなんか直ぐにイチコロよぉ……」
「なっ……。かっ彼女にだけは手を出すな。僕は、僕はどうなってもいいから……」
 いきなり寝取りと言われても面食らうしかない。つまりミカは僕とサクミを引き離そうとしているんだ。しかも極めて悪意に満ちた方法で。ああ……でも僕はこんな状況でもすごく興奮していた。だって性格は最悪でも、整った顔の女と可愛らしい童顔の少女が僕を篭絡しようとしている。普通じゃ味わえない背徳的な誘惑に僕の心は色めきだってしまう。
 いや、それこそこいつらの思うツボだ。二人は僕が堕ちるのをにやにや笑いながら待っているんだ。駄目だこのままじゃ。サクミ、サクミの姿を思いだすんだ。あの女神のご尊顔を……。ああちょっと残念で特徴がなくて……それよりこっちのぞっとするような色気のある女と……ああ駄目だ駄目だ負けちゃ駄目なんだ。
「くっ、ううっ!」
 僕は心の中で自分と戦っていた。必死に歯を食いしばって二人の甘い誘惑から逃げようとしていた。
「あは♪ 何かあんた達むかついちゃったからぁ、ちょっとおさまりがつかないのぉ。あんたをぼこるのは簡単だけどぉ……それじゃあっちのお嬢ちゃんは傷つかないでしょう? なんかあんたっていっつも殴られてそうだしぃ。彼女はナースなんだから、大丈夫? アキトさん? なんて言われて看護ごっこしてさらに仲良くなったら最低じゃん。……だから、ねぇ?」
「ああ……よく……わからない。とにかくサクミにだけは……」
「サクミさんが傷つくかどうかはあんたしだいだよ……ふふっ♪ それモモ! もっといじめちゃえ♪」
「はぁ~いミカ♪ ほらアキトお兄ちゃん……モモのおっきぃおっぱいで精子どぴゅ~~ってしていいんだよ? ズボンはいたままぁ、サクミさんって彼女がいるのにぃ……。暗いお化け屋敷の中でロリロリのモモに欲情してレイプしちゃってねぇ……ほらぁん♪」
「なっ……レイプなん……て」
 僕の股間を圧迫する柔肉の押し付けが強くなる。このままここでモモのおっぱいをわしづかみにして射精したいという気持ちが強まる。でも……でもサクミが……ああ。
「ほら……出しちゃいなよ。ふふ……サクミさんは鈍感だからぁ、お化けにオチンチンこすられてお漏らししたとか言えばぁ、案外信じるかもしれないよ? あはは、さすがにそれはないかなぁ?」
「出してぇ……いいんだよぉ……モモのおっぱいで射精……。ロリっ娘の爆乳でぇ……むにむにどぴゅ~って……ほらきゃぴきゃぴきゃぴ~んっ♪」
「あっ、あああ! そんなに動かしたらぁ!」
 いっそう激しく僕の股間でおっぱいを揺らすモモ。両手で擦り合わせるようにして僕自身をズボンの上からぎゅうと押しつぶす。もう我慢できない――という段階まで僕のペニスは膨張していた。ごめんサクミ出る――と、思ったその時救世主は現れた。
「ア、アキトさんどこにいたんですか? 私迷ってどこに行ったらいいやら……」
「あ、サクミさんごめんなさい。三人で今探しに行こうかと思ってたとこなの」
「そうそう! モモも一人だと怖くて泣いちゃうよ~」
 サクミが見えた瞬間、二人は僕からさっと飛びのいた。ここはかなり暗いし気づかれることもなかっただろう。僕は寸止めされた結果になり心臓がバクバクだった。後数秒彼女が来るのが遅かったらと思うとぞっとする。
「そうでしたか。私一人で迷ってごめんなさい……」
「いいのよサクミさん」
「そうそう。全然問題ないよ!」
 笑顔で対応する二人。さっきまで僕を辱めていたくせに何て言い草だ。
 ホラーハウスの出口はすぐそこだった。正面に外界への扉となる明るい光が見える。
「ミ、ミカぁ? いいの?」
「いーのいーの。あそこは暗すぎるし……。ふふ♪ チャンスはまだあるわ」
 前を行く二人のつぶやく声が聞こえる。もう頭に来た。何を考えているか知らないがこんな茶番はもう終わりにしようと思った。ここを出たらガツンと言ってやろう。




 ホラーハウスから外に出る。日の光が目に刺さってとてもまぶしい。この光がやっと陰鬱した異次元世界から外界に脱出したと実感させる。そうだ。僕はサクミと一緒にこのミカ達の呪縛から逃れるんだ。それを今僕が言い放ってやればいい。
「さーって次は……」
「待てよ。もうたくさんだ」
 何か先を次ごうとしたミカの言葉を遮った。
「あらなぁにアキトさん。怖い顔してぇ~ん♪ うふ~ん♪ そんなにさげずまれたら私ぃ……」
 ミカが妖しく腰をくねらせている。ミニスカートからすらっと伸びる美脚の艶かしさに決断が鈍りそうになった。駄目だ。こいつは人を惑わす悪魔なんだから。絶対にそれに負けちゃいけないんだ。
「サクミよく聞いてくれ」
「は、はい……アキトさん」
 サクミが不安げな顔をしている。いつもとは違う僕の神妙な雰囲気に驚いているのだろう。でも僕はやる時はやる男なんだ。ここでびしっと言ってやれば、もっとサクミは僕を好きになると思う。
「こいつらは僕達の仲を引き裂こうしているんだ……。なぜだか僕達の善意を踏みにじって曲解して……。だからこいつらと一緒にいちゃいけない。さっさと二人きりのデートに戻ろうサクミ」
 僕はそう言った。それでサクミが同意してくれると思っていた。
「えっ……」
 だがしかし現実は違った。サクミが信じられないという顔をして僕を見た。その目は無機質なガラス玉のようだった。
「えっ、あっ……ああっ! あのねサクミさん。違うのよ。アキトさんちょっとお化け屋敷で錯乱して変なこと言っちゃったのよ。幻覚……幻視に幻聴ってやつ? ねっアキトさん戻ってきて? ほらもうここは日の光が当たる場所よ? ほらこっちの世界に戻ってきてアキトさぁ~ん♪」
「モモも手伝う~♪ アキトお兄ちゃん幽霊なんかに負けちゃだめ~♪」
「こっこら何を……」
 ミカとモモが僕に絡みついてきた。すべすべの手で腹や股間を恥ずかしげもなくさすってくる。
「あっ……。そうだったんですか。そうですよね……。アキトさんがいきなりミカさん達に酷いこと……言うはずありませんからね」
 なぜか納得するサクミ。
「ちっ、違う。僕を信じてくれサクミ。僕はおかしくなんかなっていない。こいつらは本当に僕達の絆を破壊しようとしているんだ。しょ、証拠だってある。こいつらはさっき……」
 とその先を言おうして、僕はぐっと言葉に詰まった。ミカとモモの甘い誘惑。それを僕はサクミとのデート中に受けて鼻の下を伸ばしていた。ここでそれを言うのはどうだろうか。いや、ここは正直に言った方がいいのかもしれない。僕はそんな色仕掛けなんかに負けない、がんとした態度をずっと取っていたと。そうだそう正直に言えばいい。
「証拠? 言って……いいのアキトさん」
 ミカが僕だけに聞こえるように耳元に囁いてくる。甘酸っぱい吐息が耳の穴に入り込み意識が落ちかける。
「うっ、うううっ」
「私達と暗闇で抱き合ってアンアンしてたこと……彼女に言っていいの?」
「モモもぉ……お馬さん乗ってる時後ろからじ~って粘りつくような視線送られたよぉ……」
「そっ、それは君達が誘惑して……」
「あら人のせいにするの? サクミさんって……そんな男は嫌いだと思うわよ?」
「でっ、でも……」
「別に……私達は言ってもいいけど……。アキトさんにおっぱいもまれてオマンコ触られてレイプされそうになってぇ……あはん♪」
「モモのおっぱいむぎゅってわしづかみにして無理やりオチンチン押し付けて射精ぎりぎりまでいってぇ……きゃぴ♪」
「ちっ違う! そんなこと絶対にしていないっ!」
 左右から僕を惑わす言葉の海が押し寄せる。駄目だこれじゃ。ミカ達が僕達の仲を裂こうとしているのは確かなのにその証拠がない。僕が誘惑されてたなんてことを言っても、うまくミカ達に言いくるめられてサクミに間違って伝わってしまう。
 一体どうしたらいいのだろう。なんて情けないんだ僕は。こんな最悪の女に口で言いようにされて……。
「あ~んサクミさ~ん♪ ごめんなさ~い♪ やっぱり私謝ります……。さっきのお化け屋敷の中でぇ……。私……アキトさんにぃ……」
「ああ駄目……。僕が悪かった。勘違い。全くの全然勘違いしてたから……何も悪くない何も起こっていないああああ」
 僕はとても混乱してあらぬことを喋った。サクミに僕の情事が漏れるのは絶対に避けなければならない。これがミカの罠だとわかっていてもどうしようもない。
「あっ……そうなんですかアキトさん。よかった。あっ私も介抱しますよ」
 サクミが手を伸ばす。それを遮るミカ。
「あらもう元気になったみたいよ? ねぇ?」
「アキトお兄ちゃん大復活~♪」
「はぁ……はぁ……」
 やっと悪魔達から解放される。僕は息も絶え絶えだった。
「アキトさん……本当に大丈夫ですか? なんだかさっきから変ですよ?」
「ううん、大丈夫大丈夫……」
 僕は空元気を出してそう言った。本当は全然大丈夫ではない。ミカ達の腐りきった思惑は着実に進行している。僕は涙目でサクミの方を見た。ごめんサクミ。僕はもう駄目かもしれない。君だけでも助かって欲しい……。でもこいつらの狙いはサクミを悲しませることで……。ああ僕はもう深い絶望の淵に立っているんだ。どうしようどうしようどうしよう……。


「ねぇサクミさん? アキトさんがちょっとお疲れのようだから……。そこのお店で休まない?」
 ミカが指差したのは、屋外ある喫茶店のような店だった。白くて丸いテーブルが五つほど置いてある。
「あーモモも喉渇いたー。やすもーやすもー♪」
「そうですね。そうしましょう」
 皆の意見が一つになる。僕はそれになし崩しに従うしかない。
「ふぅ」
 僕は一つ気の抜けたため息をついた。
 テーブルの正面にはにっくきミカが頬杖をついている。右隣にはサクミ、左にはモモがにこにことして座っていた。
「オレンジジュースお願いしまーす♪」
 やけに嬉しそうなミカが店員に頼む。冷たくて甘いもの。疲れたときには甘いものが一番。栄養をとったら何かいい知恵が思い浮かぶかもしれない。どうにかしてミカ達から逃げる手段を……。
「でねー。あのお店のねぇ……あれがおいしいの。ねぇサクミさんも一緒に行かない? でねぇ……」
「ええ……ええ……」
 ミカはまたサクミと話こんでいた。ああ僕のサクミと悪魔が話していると思うと吐き気がする。どうしようどうしよう。
「ジュースお持ちしましたー」
 しばらくして、お盆にジュースを乗せた店員がやってきた。黄色い声でそつなくテーブルに冷たそうなジュースを置く。
「あらありがとう。さっ冷たいジュースでも飲んでしゃっきりしましょ♪」
「う……」
 僕は気分が悪かったが、ストローに口をつけちゅうとオレンジ色の液体をすする。美味しいのか美味しくないのかわからない。味覚も麻痺するほど僕の心は追い詰められていた。
「ちゅ……ずるるるる。あ、何このジュース。私これ嫌いだわ。悪いけどサクミさんこれ飲んでぇ?」
「え……いいんですか?」
「うん。私はいいからいいから」
「はぁ……それじゃあ」
 そんな勝手な押し付け断ればいいのにと僕は思った。ミカはやっぱりミカだ。無理にジュースを飲まされる、サクミの気持ちのことなんかてんでわかっちゃいない。
「それでねぇ……あそこの店長が未練がましくてねぇ……」
 ミカの無駄話は終わることを知らなかった。僕は蚊帳の外に置かれた気になり、ぽつねんとしてジュースをすすった。
「ねーっ。サクミさんもそう思うでしょ? 男って卑怯よねぇ……ああ……私って悲劇の女ぁ……」
「あぐっ!」
 ミカがああと目を手で覆った時、僕は股間の辺りにずしりとした衝撃を受けた。一体、これは――。
「アキトさん?」
「どうしたの? 突然変な大声あげて……ふふ♪」
 にんまりと笑うミカ。そうかこの感触は。あろうことかミカは足の裏で僕の股間を弄んでいるのだ。このテーブルの大きさならミカの足を伸ばせば僕まで届く。でもこのテーブルは下がすかすか空いている。通行人がいたら丸見えなのに……それなのに。
「あん、ふっ、ふぅぅ……」
「ア、アキトさん本当に大丈夫ですか?」
 ミカの足がぐりぐりとニ、三度強く押し付けられる。つま先をぐっと折り先にひっかけるようにしてなぶってくる。僕はたまらず悶絶した。声を出さずにはいられない痛みがペニスに走る。
「ふふ……。思い出し恐怖よ。さっきの。あのボロいお化け屋敷にクレームつけにいったらどう?」
「お兄ちゃん……本当に苦しそう。モモにもぉ……何かして欲しいことがあったら言ってね? きゃぴ?」
「あ、あああ……」
 左のモモが突然声をかけてくる。こいつもミカの行為をわかってて……。駄目で二人がかりでされたら公衆の面前でさらし者になってしまう。
 すっと僕の太ももを指で撫でる感触。それは段々僕の股間まで伸びてきて――。ああやめろやめろやめてくれ。
「……アキトさん。本当に……なんか変よ? 無理はしない方がいいわよ。私は看護婦だからそういうのよくわかってるから。本当に我慢は駄目。無理しないでアキトさん……」
 サクミが心配そうな顔で見つめてくる。だが彼女が僕の絶望的な窮地を知る由もないだろう。ミカの足責めはしだいに狡猾さを増していき、僕のペニスをとんとんとリミズカルに焦らしながらさすってくる。むっとするような足裏を、ぐっとペニス全体に押し付けて持ち上げる。そのまま足の角度を鋭敏に変化させながら、僕の隅々まで甘い快感を練りこんでくるのだ。
 おまけにモモが、つっと寄り添ってきて僕の太ももやお腹に淫らな魔手を伸ばし始めている。椅子を寄せて、僕におっぱいの谷間が見えやすい位置にわざと座る。くりっとした上目遣いで、僕に無邪気に笑いかけるその仕草の何と可愛らしいこと。揺れる谷間、ピンクのブラが見え隠れして僕の目を悩ます。へその辺りを指でえぐられて背中にもその手は回っている。
「あっ、ふぅ……」
 こんな仕打ちにいつまでも耐えられるはずもない。どうしてサクミは気づかないのか。いや気づいてもらっては困るのだが。
 ミカは僕をイカせないよう適当に力を加減して足で責めている。こんな生殺し状態がずっと続いたら僕はおかしく――。そうかこれがミカ達の狙いで……ああ。射精、したい。でもできない。ミカに屈服なんて絶対に駄目だ。ねっとりした足の裏、美脚の調伏。汗ばむ谷間の誘惑。そして少女の蠱惑的な笑顔。
「ア……アキトさん? ねっ病院行きましょ病院。ねっ……」
「本当に……どうしたのかしらアキトさん? 心配だわぁ……」
 僕を足で責めているくせに、したり顔でミカが言う。
「お兄ちゃん……病院? 病気? きゃぴ?」
 モモも心配そうに上目遣いで見上げてくる。そのあどけない表情が男をさらに欲情させることを知らないのだろうか。いや、完全に知っててこの子は僕を誘惑している。わざとらしく両手で胸を寄せるそぶりをして――ぐにゃりと形を変える乳房の形状が、妖しげな隙間をつくり盛り上がった双乳の頂点には綺麗な桃色の乳首がつんと自己主張している。
「は、はぁ……僕は大丈夫だから……心配しないで。少し休んで……いれば……よくなるから」
 やっとの思いでそう言った。実際は我慢の限界だった。何もできないか弱い僕。こうやってじっと耐えるしかない。行き着く先はどこだろう? サクミの前で無様に射精? それだけは――。
「……ですってよサクミさん? あ……それにしてもサクミさんもさっきからそわそわ……。あ~お手洗いね。私の分までジュース飲んじゃったから……ふふ」
「えっ、ああそんな。このジュース美味しくてつい……」
「行ってきていいわよ。アキトさんの世話は私達がするから。ね? モモ?」
「ん? うん!」
「あ、ありがとうございます。それじゃ失礼して……。すぐに戻ってきますね」
「あ……あ……待ってサク……」
 僕のか細い声は声にならずむなしく虚空に消えた。
 サクミはトイレに行っている。とするとこの状況はどうなのだろう。
「さ……やっと邪魔者は消えたわね」
 冷たい声を出してミカが僕の隣の椅子に座った。そこはさっきまでサクミが座っていた場所だった。彼女の場所を、この女が。
「ああ……何を……」
「ふふっ♪」
「あはっ♪」
 その魅惑的な肢体をひしっと密着させてくる二人の女。ミカの身体はスレンダーだがちゃんと出ることは出ている。肉体の内奥から躍動する筋肉の鼓動がどくどくと伝わってくる。それはややもをすれば一方的で暴力的なのに、女の子の柔らかい肉がふわりと周りにデコレーションされていて、等しく調和の取れた優しい心地よさをもたらしてくる。ああ……大嫌いな女……ミカ。なのにこんなに甘い匂いがして柔らかい。指もすべすべで髪もサラサラで……。
「ねぇアキトさぁん……。彼女の前でお漏らししなくてよかったわね……。さぁイカせてあげるわ。ずっと……我慢してたんでしょ?」
「んっくっ! 駄目だっ。彼女が……サクミが」
 ミカが僕のペニスをズボンの上から指で押す。ぐっとのけぞる僕。加えてモモも反対側から攻撃を開始する。
「サクミさんなんか……もうどうでもいいでしょ? ねっ? きゃぴっ♪」
「ああ……」
 モモの指がねっとりと絡まる。どうでもいいでしょ、と言われ僕の頭に妙な膜がうっすらとかかる。
「イッちゃいなさいよほら……。優しく……してあげるからチュッ♪」
「ねぇ……私もチュウ♪ おっぱいもむぎゅっ♪」
「ふ、ふわぁああ……」
 甘い魅了のキス。さする手の絶え間ない官能の疼き。僕は頭が蕩けそうになっていた。でも、でも――。
「ああ……ああ! 駄目……駄目なんだっ! 僕は……僕は……」
 頭をぶんぶんとして僕は邪悪な誘惑を振り払った。落ち着け。ここは外で公衆の面前で。サクミは後少しでここに帰ってくる。ここで射精したら犯罪者扱いでサクミとのデートもおしまいで……。
「く、くぅぅ。やめろ。ここは人が見てるじゃないか……やめろ……今すぐ」
「ん? 誰も私達のこと気にしてなんかいないわよ。みんな自分のことだけで手一杯。私達のこともぉ……男一人に女二人がいちゃいちゃしてるようにしか見えないよぉ……。だからイキなさい……ほらここで……。誰かに見咎められても私が取り繕ってあげるわぁ……ほらぁ……イキなさい……イク……イク……ふふ♪」
「イッてぇ……モモもお手伝いするぅ……。オチンチン……ズボンのここ……もう濡れ濡れぇ……。チャックじーってあけてぇ……つばつけた指でくちゅくちゅってぇ……」
「んぐ、あふん、ああ……」
 ミカとモモの淫らな行為が加速度的に熾烈さを増していく。ああ……出してしまう。射精、僕はもう、だ――。
「ああっ。遅くなりました。アキトさん大丈夫ですか?」
「サ、サクミ……」
 終わりかけていた僕を救ったのはサクミだった。いつでも彼女は女神。困った時には僕を。彼女の幸薄そうだが優しげな顔。僕は大好きだ。どんどん勇気が湧いてくる。さぁ今こそ悪を討つんだ。
「うわああっ!」
「きゃっ!」
「あーん!」
 僕はたまっていた力を使ってどんと二人を払いのけた。
「アキトさん? あれ? 元気……なんですか?」
 そう僕は元気だ。だから今僕達にまとわりついてくる悪鬼を粛清しなくちゃあならないんだ。
「サ、サクミ! 僕は本当のことを言う。だっだからこれから何を僕が口走っても僕のことを信じていてくれ!」
「え? は、はぁ……」
 怪訝そうな表情をする彼女。僕がいきなり真面目な顔で大声をあげたから無理もない。でも僕は今女神の力を使ってフルパワーなんだ。
「最初から……結論からいうと……。僕はミカとモモの二人に……その……エッチなことをされていたんだ。彼女達が裏で何を考えているかはわからない。でも目的ははっきりしている。僕とサクミの仲をねたんで引き離そうとしていたんだ。それは甘美な悪魔の誘惑だった。僕は不細工だから……女の子からもてたこと全然ないから……。でもこれだけは正真正銘の事実なんだ。僕は彼女らの悪辣な誘惑に一度も屈しなかった。そりゃ何度も心を絆されそうになったけど僕は鋼鉄の意志でそれに耐えて……」
 と僕はここまで一息に言い切った。どもりぐせのある僕がなんて勇猛な弁舌をしているのだろう。これもサクミのおかげだと思う。愛するサクミが僕に愛という力を送って言わせたのだと思う。
「え? ミカさん達が……そんな……」
 サクミが青ざめた顔でミカを見た。もうこれで終わりだ。お前らの計画は全部おじゃんになった。ざまぁみろと言いたい。
「いたた……。ああん♪ ばれちゃったらしょうがないですね。確かに、私達はアキトさんに誘惑をしかけました、はい」
「そうなのサクミお姉ちゃん。ごめんね、ぺこっ」
「はぁ……」
 急に二人の態度が違っていた。しおらしそうに、急に被害者のようになって。何でだろう? 僕が悪者のように。でも僕は悪事を暴いたヒーローのはずだから肯定されるのが世の道理だ。
「さっ……さっさと僕達の前から消えろよっ!」
 僕はそういい切った。絶大なる背中からの後押しが僕を支えていた。
「あ……いえ。ふふ……お客様ったらもう♪ そんなストーリーだったんですね……私よく聞かされてませんでしたから……ふふ♪ ねっモモ? お客様に最後のご奉仕を……」
「了解ミカ~♪ きゃぴ♪」
「なっ何を言っているんだお客様って……」
 本当にわけがわからない。もしかして僕がはじきとばしたせいで二人の頭がおかしくなったんだろうか?
「あ……つまりですねぇ。こうやって私達が、わざわざサクミさんという素敵な彼女がいるアキトさんを誘惑したのも……。あの、その……なんと言ったらいいものやら。寝取られ……逆寝取られなんです。アキトさん……それで感じちゃう体質なんです。だからこの場を私達がしつらえてあげたわけです。お金を払って私達に誘惑させるようにしむけたわけです」
「そう……なんです実は……きゃぴ♪」
「は……逆……寝取られですか? す、すいません私詳しくなくって……つまり……」
 何だか妙なことになっている。まずいまずい。最後の抵抗に一体どんなどんでん返しを求めているんだ。悪はもう正義の手で滅びたばずなのに。
「サクミ。聞く必要なんかない。早くどこかへ二人で行こう」
 その僕の呼びかけをミカが首を振って遮る。
「ああ……いえいえ。アキトさんこんなことも言ってますが全部プレイです。仮想、虚構です。彼女のこと思っていればいるほど、なくした時の背徳感と絶望は大きいってアレです。アキトさんって変態なんです。すっごい人には言えない倒錯した性癖の持ち主なんです。不細工の癖に」
「えっ……あ、はぁ」
 サクミは段々ミカの言葉に聞き入っている。どうして話を聞いているんだ。そんな嘘だらけの口八丁なんかに惑わされないで欲しい。しかもさりげに僕のことを不細工って言ったじゃないか。
「ねぇ……変だと思いませんでしたか? アキトさんの方から……告白したんですよね? あんな男から……いえ。真面目で純朴で朴訥したアキトさんから……。なんかこう……不可解なもの……違和感」
 そこでミカはサクミの方に向き直った。
「サクミさん? アキトさんから告白された時……変に思いませんでしたか? どうして私なんだろうとか?」
「え、ああ……それは……思いました。アキトさんならもっといい人と一緒になれると……。なのに私なんかに……」
「やっぱり。……これがアキトさんの手なんですよ。そうやって……ふふ♪ 自分の逆寝取られのえじきになってくれるな~んにも知らない女性を狙ってたってわけです。じっと……笑顔で……いい人演じて。悪魔なんです、アキトさんは。ふふふ……善人ぶって……」
 いつの間にかこの場はミカが支配している。まるで悪魔じみたサバトに没頭する信仰集団の首領のようだった。低く陰鬱に、どんよりとその一言一言が脳内に染み渡っていく。僕達はその教祖に二人で支配されようとしていた。でも何がしかの抵抗はしてみたかった。それが僕に残された唯一の望みだから。
「あの……私……色んなことが……一度に……頭がぐちゃぐちゃで」
 そこでミカはチッと舌打ちをした。
「わかりませんか? ああ二人そろって馬鹿ね。大馬鹿ね。つまり……こういうこと♪」
「こういうこと~♪」
「うわぁっ!」
 僕は二人にむぎゅうと抱きしめられた。鼻腔と脳内をくぐる甘い倒錯の香り。サクミが目の前にいる。小さい目がさらに小さくなり目が点のようになっている。
「あはっ♪ なんだかごちゃごちゃ面倒くさいわね~。つまりあんたの彼氏は私達のものってことよ。ひっひえへへへっ♪ ほら見なさいよう。あんたの彼氏私の前で鼻の下伸ばしてオチンチン腫らしてギンギンじゃない。こんな彼氏……よく告白OKしたもんね~あははっはは~♪」
「そうだよぉ~ん♪ アキトお兄ちゃん最初からずっとモモの足とかおっぱいとか視姦しまくってたの……。お兄ちゃん逆寝取られ好きの上ロリコンだから、モモみたいな子に目がないんです……。その上ドエムで……。でも自分の欲望のためなら、彼女犠牲にするのわけない最低の変態ドエムなんですぅ~きゃぴっ♪」
「あっ……ああ……違う……違う」
 その時のサクミの顔を僕は一生忘れないだろう。著しい虚脱と心の剥奪を伴う心神喪失の筋肉弛緩。ぽっかりとだらしなく開いた口と、光を失った目からは、僕への多大なる絶望と蔑視の念が放射されていた。
「ア、アキトさん……私……あなたのこと…………」
 せつない声で言うサクミ。
 違う違う。違うんだ。僕の言うことを聞いてくれサクミ。ああでも声が出ない。左右から圧迫されて甘い匂いで頭が混乱してああああ。
「あっは~ぁん♪ 最高のフィナーレですねぇお客様? お気に召しましたかぁ? まだですかぁ? この甘美な絶望感最高ですよねぇ? もー苦労して汗水たらして作った彼女がぁ……一瞬で無にかえるんですよぉ……はぁん♪」
「むにゅ~むぎゅむぎゅ♪ あんサクミお姉ちゃんかわいそう~♪ でもお兄ちゃんこれが好きなんだからね~♪ 何の罪もない女の子泣かせて気持ちよくなっちゃうんだもんね~。ほらぁ……もっとモモのおっぱい見てぇ? 昔の彼女の前でおっぱいガン見ぃ……♪ もっとエッチな誘惑してあげるぅ……ほらほらほらぁ~ん♪」
「んっ、むっ……くっ……ふぁ」
 僕は魅惑の谷間で溺れていた。もう何もかもどうでもよくなりそう。でも、でも――。
「…………」
 サクミはもう何も言わなかった。ただ虚脱して冷め切った目で僕を呆然と見つめていた。
「はぁん♪ お客様♪ イキますか? イッちゃいますか? あん♪ あはん♪」
「ここでイっていいよ~♪ 誘惑寝取り攻撃でラブラブザーメンどっぴゅ~んって出しちゃえ♪」
 ああ……違う。まだ、僕は、ここで……。悪魔だ……こいつら。サクミが……サクミが……。うわぁああ――。
「あ、あっちいけよぉ! くっ、くるなぁ! そばに……よるなぁ!」
「きゃっ!」
「うわぁん」
 僕は激昂して言った。僕ががんじがらめにしている拘束はすっと緩んだ。そして霧が晴れるように心が澄み渡っていく。そうかこれなら。
 顔を上げてみる。その視界に入る僕の女神。だが眉をひそめて苦虫を噛み潰したような表情だ。
「あ、ああ……。アキトさん……私……半信半疑で……。でも今のではっきりしました。……さようなら」
「えっ、ちょ、ちょっと」
 振り返って走るサクミ。その拒絶に満ちた背中がどんどん遠ざかっていく。
「違う……君に言ったんじゃない! 待って……待ってサクミ……」
 追いかけようとしたが、ながらく疲労していた僕の足は膝から崩れた。僕のサクミ。遠く儚く永遠に――。
「あ……」
「あは♪ サクミさんもちょっと勘違い♪ でも……結果は万々歳かしら?」
「ああ……行っちゃった♪ ねぇミカ? 今日はお客さんじゃないよね?」
「うん違うわよ。偶然だったけど……最高だったわね……あはははは♪」
 僕の背後で悪魔達が笑っている。僕の女神を汚した……。許さない許さない。
「うっうわぁああ!」
 堪忍袋の尾が切れていた。人生の中でここまで胸糞悪い瞬間は初めてだろう。ここで殴らなきゃ男じゃない。女でも容赦しない。顔の形が変わるほどぼこぼこに、二度と日の目に見られない顔にして――。
「おっと」
「いてっ」
 いきり立って殴りかかったものの、ミカはさっと体を翻して避けた。勢いが空回りして地面に醜く転がる僕。
「そんな腰の抜けたパンチで私殴れると思ってんのぉ? ねぇ~ん♪ 逆寝取られマゾのアキトちゃぁ~ん♪」
「うぁ! いた、いたいい!」
 転がっている僕の手をミカの足が蹂躙する。ミシミシと骨がきしみ手がどうにかなってしまいそうだ。
「ミカはめちゃくちゃ強いからアキトお兄ちゃんじゃ絶対無理だよ♪ 男の人三、四人ぐらいなら簡単にのしちゃうからね~きゃぴ♪」
「ふふん。そういうこと♪ ん……ちょっと騒ぎになってるわねー。さぁー退散退散♪ はいはーい何にも起きてませんよー喧嘩じゃないですよ~うふふ~ん♪」
 やっと手から重圧が解放される。直後に首ねっこを捕まれて無理矢理に引き上げられた。
「はん! 情けないわね。不細工の上こんな弱いんじゃ。さぁそれじゃ行くわよ……マゾのアキトちゃん♪」
「う……うう。僕はサクミを追いかけるんだ……だから……」
 その言葉を言った僕を、ミカの張り裂けそうな平手打ちが無残に襲った。痛い、痛い痛い。心も痛いが体も痛い。
「まーだ未練たらしく言ってるのあんたは。あんたのサクミちゃんはもー幻滅しちゃって二度と会いたくありませんよーだって。きゃーっはっははは♪」
「そんな……そんな。サクミは……うう」
 涙が鼻水がぼたぼたと落ちた。今の僕の顔は不細工を二乗にかけたくらい醜いのだろう。
「アキトお兄ちゃん……ミカには逆らわない方がいいよ? ミカって何するかわからないから……ゴリラみたいなもんかな? きゃぴ♪」
「何言ってるのモモ。さーさっさと戦利品美味しくいただきますかぁ♪ レッツゴー♪」
「ゴーゴー♪」
 二人のテンションは最高潮だった。僕はぴしぴしと頬を叩かれてこづかれながらミカに従った。何か逆らったらそれこそ首の骨でも折られる予感がした。




 散々引きずれらて、到着した先はラブホテルだった。ただの休憩がてらにこんな場所に来る理由はないはずだ。だとすると男と女の性行為をするわけだが、僕がここに存在するわけを考えるのに苦しむ。
 ミカの復讐は終わったはずだろう。サクミと僕は策略にはまりまんまと仲違いしまった。一体これ以上どんな辱めがあるのだろうか。
「んっはぁ~ん♪ ようやくついたわね。さぁフィナーレよ。逆寝取られマゾの最高のお楽しみタ~イム♪」
「も、もう僕は……」
「アキトちゃんに発言権はないのよーん♪ ねぇモモ? 私何か脳汁ドクドクだから先やっちゃっていい? ま、いやって言っても一人でするけど」
 ミカの顔は赤く上気していた。それが何とも言えない艶かしい美女の色香を醸し出す。スレンダーで引き締まったミカの肉体。その肉体が僕の鼻先数センチにある。
「うんいいよー♪ 私待ってるー♪」
「OK。じゃー私が先に……ふふっ♪」
 そう言うと、ミカは僕の髪をざっとつかんでベッドに引きずり倒した。
「脱ぎなさい」
「だっ、誰が……」
 僕は生意気にもまだ抵抗する気があった。最後の勇気を振り絞ってキッとミカの目を睨み返す。
「脱げよ。またぶたれたいの?」
「ひっ……脱ぎま……す」
 その怨嗟のこもった声にびくりとした。僕を連れ回している最中、ミカは何度も何度も僕の頬を叩いた。その痛みが軽く手を振られただけでフラッシュバックしてしまう。
「は~い♪ アキトちゃん脱ぎ脱ぎしまちょーね♪ 彼女の前で逆に寝取られて悪いお姉さんの言いなりでちゅよ~♪ うぷぷぷ……♪」
「あっ……はぁ……」
 馬鹿にしたような赤ちゃん言葉にぞくりとする。僕はもう駄目だった。やっぱり僕は根っからのマゾだったんだ。酷いことをされた女に、最悪の性格のミカにサクミとの仲を破綻させられて変な気持ちになってしまった。
 容赦ない暴力もあったが、僕の根源的な性癖が見えない所で後押ししていた。毒のこもった言葉、嗜虐的な見下す視線。それを操るのが毒婦のような美貌の悪女。
 僕はそんな悪意に満ちた行為の誘惑に、どうしようもないくらい興奮してしまう体質なのだ。その事実を今まさにここで思い知らされていた。
 ためらわず逆らわずに服を脱ぐ。僕はもはや戦争に負けた捕虜だった。抵抗する理由もほとんど剥奪されていた。
「ふふ……。ぼーっとしちゃって。何考えているの? 彼女のこと……? それとも……」
「うう……」
 ベッドの上で僕はじっと固まっていた。ミカの細長い手がするすると動き、僕の目の前でその艶やかな肌を露出させていく。
 ミカの下着は予想通り淫乱だった。黒いブラと下着に淫靡あしらわれた、レースの編みこみが白い肌と対比して際立つ。すらっとした美脚に張り詰めた微細な筋肉繊維がうっとりと艶かしく僕の目を潤す。
「どうアキトちゃん? お姉さん美人でおまけにスタイル抜群なのよ? モデルだってやったことあるんだから……」
「あっ、はぁ……はぁ……」
 と言って、ミカは僕の目の前で白く引き締まった尻を妖しく揺らした。それを見るとギンと股間のふくらみが硬直を増す。ミカは美人だ。唇が薄くて軽薄そうだけど目鼻立ちもよくてぞっとするような色気がある。目を細めて流し目なんかしたりするけどマゾの僕にとってはご褒美だ。あなたは私が操っているのよと言わんばかりの態度にも背筋がぞくぞくとしてしまう。
 こんな妖艶な女ならば僕がサクミを捨ててしまうのも当然――。
 僕はいつしか自分の卑小さを肯定してしまっていた。本当はサクミとずっと一緒にいたかった。でもミカ達の誘惑が強烈で僕は抗えなかった。僕は弱くておまけに勇気がなかった。だからサクミをあんな目にあわせて悲しませてしまった。悪いのは僕。悪いのは全部僕のはず。それなのに――。
「はぁ~い♪ いいのよアキトちゃん♪ お姉さんのむっちりしたおみ足にしゃぶりついてもぉ……。今日は酷いこと言ったりどつき回したりしてごめんね? ほらぁ……」
 ミカの美脚が高く持ち上がる。むっと立ち込める淫靡な芳香と、肉づきのいい脚が占める絶景の美観。僕はその展望にいてもたってもいられず、ばっとなりふり構わず飛びついた。
「んっ、はぁ、んぁ……あん」
「あらあら……可愛いわね。そんな必死でむしゃぶりついてぇ……。やっぱり私のこと好きだったのね……」
「んっ、ちゅ、ん……」
 つるりとした脚に何度もキスを繰り返した。吸い付けば吸い付くほど、しっとりとしてもちもちとした感触がぷるんと返ってくる。ミカ様ミカ様。好き……好き……。
「ねぇ……お返事は? 私のこと……好き?」
「ああっ、はっはい! 好きですぅ~。ミカ様のこと大好きですぅ~」
 僕は自然にそう言葉が口をついで出た。サクミのことを一生愛すると誓ったはずなのに。その決意も遥か遠い過去のことに思えてしまう。
「はいいいご返事ね……。でもアキトちゃん? アキトちゃんには立派な彼女がいたんじゃなかったの? 気立てがよくて……優しい看護婦さんの……サクミさん♪ ふふ♪」
「あっ、ああっ」
 忘れようとしていたことを思い出させられてしまう。確かに僕には彼女がいた。でも、でも……。
「ねぇいたでしょう? お顔は……ちょっと残念だったけどね」
「は、はいいましたぁ! サクミは僕の彼女でしたぁ!」
 大声を出す僕。ふいにサクミの顔が脳内に張り付く。今となっては残念を通り越して嫌悪の情さえある。だって今僕の前には美人のお姉さんがいるから。サクミよりも数段可愛くていやらしくてドエスでむっちりしたエッチな身体のお姉さんがいるから……。
「はぁん……♪ それで……どうしてその子……捨てちゃったの? ん? アキトちゃん不細工だから中々彼女できないでしょ?」
「はっ、はぁぁ……。そんなこと言わないでミカ様ぁ……」
「言いなさい……」
「ううっ!」
 ミカの足裏が僕の股間に降りてくる。土踏まずがじっとりと湿っていてその何とも言えない感触が心地よい。ぐっと体重をかけるわけでもなく、あくまで優しく僕のペニスを妖しげな笑みを浮かべながら転がしている。
「あ……はい! ミカ様がいっぱいエッチな誘惑してくるから……。だから僕サクミのこと嫌いになってしまいました。ミカ様……ミカ様が……」
「私のせい? そうじゃないでしょ? 本当はアキトちゃんのせいでしょ? 自分の……意地汚い逆寝取られ性癖のために……そうなんでしょ?」
「ああっ! はいそうです! 僕逆寝取られ大好きです……だから……」
 僕は頭がおかしくなっていた。どくどくと心臓の鼓動が激しくなり、ありえないほどの脳内麻薬の分泌に制御系が激しく混乱する。
「お似合いだと思ったんだけどなー。サクミさんとアキトちゃん♪ うんお似合い♪ ちょっと残念なとこも似通っててずっと仲良くできそうだったなぁ……」
 ふっと遠い目をするミカ。そのせつない表情に急に後悔が募り涙腺から涙が溢れ出す。
「う……うわ、う……ぐす。サクミ……サクミ……」
 後悔してもしきれるものではなかった。僕にとっては最初で最後の彼女だったはずだから。それを、それを。この女が……性格最悪の悪魔のような女が。
「はぁ~ん♪ その顔最高。ねぇ本当にどうして捨てたのぉ? ねぇ~ん♪ ほらアキトちゃぁ~ん♪ 君って私のこと嫌いだったんじゃないの? あんなに敵意に満ちた目でにらみつけてさぁ……。何か日陰っぽい君って私みたいな女絶対嫌いでしょう? 何かチャラチャラしててすぐ股開いてエッチしてそう~。不潔~とか思ってたんでしょう? ねぇ?」
「…………」
 僕はもう何も言えなかった。悲しいようなくやしいような気持ちいいような、不思議な倒錯した感情に包まれていた。
「アキトちゃん私のこと大嫌いでしょう? しかもサクミさんとの仲破綻させようとしてたんだよ? でも……それなのに♪」
 その瞬間のミカの顔は、著しく歪んだ狂気に満ちていた。口の端をぐいを耳が裂けるほど吊り上げて、目はにんまりとして淫らな感情に染まっていた。
「うっ、うっ、うう……」
 僕は涙を流しながらすすりあげていた。それしかすることがなかった。
「それなのに……私に負けちゃったんだよね。エッチなお姉さんの魅力にメロメロになってたんだよね。ちょっと勇気出して抵抗したり殴りかかってみたりもしたけど――」
「あっ、あああ……」
 重くずしりと心にのしかかるようにミカはつぶやいてくる。僕の心を切り刻むような悪魔の声は、キリキリと壊れやすいハートを陰惨に責め苛む。
「最初から彼女なんてどうでもよかったんだよね。本気じゃなかった。本当は不細工の彼女なんて嫌だったんでしょ? 無理しなくてもいいのよ? みんな顔がいい方が好きだから……。自分が不細工だからって卑屈になることないのよ……ほら」
 ミカの声色が段々と優しくなる。その甘い音色にふっと引き込まれてしまいそうな危険な陶酔を感じる。駄目だ、この先に行ったら。こいつは悪魔だ。そんなこと最初から知ってて……。
「うっ……ああ」
 僕は嗚咽をもらした。ミカの足裏が僕自身を押しつぶそうとしてきたからだ。先ほどよりもじっと圧力を増し、じんわりとするような痺れと疼きをペニスから脳内へと伝えてくる。先走り汁はすでにだらだらと洪水のように流れて、僕は上と下の口から盛大に涙を流していた。
「ふふ……♪ ほら正直になってアキトちゃん……。本音を言って? 本当はアキトちゃん……面食いなんでしょ? 美人が好き。いっつもパソコンのきゃぴきゃぴした女の子やむちむちのお色気お姉さんでオチンチンしこしこしてるんでしょ?」
「んっ、はぁ……」
 質問しながらペニスをぐりぐりとこねくり回してくる。たまらず悶絶する僕。そうだ、と言ってしまえば終わりになる。でもそれを言ったら大事な何か消えてしまうそうな恐怖にとらわれてしまう。
「ねっ、お姉さんの脚が好き。お尻が好き。おっぱいが好き。唇が好き。目が好き。サラサラの髪が好き。お尻の穴も好き。全部好き。好き、好き。好き……好き……好き……」
「あ……」
 ミカのトーンが下がってゆっくりとして抑揚がなくなる。何か洗脳するように頭に直接語りかけてくる。好き……好きなんだろうか僕は? 二次元ではもちろん……でも現実では……サクミを……僕は誰にも相手にされないから……。
「好きなんでしょう? お姉さんが……。誰だってエッチで美人のお姉さんが好きなのよ。本能的に……。だからアキトちゃんも普通なのよ。真人間、正直者よ……」
「は……はい……はぁ……」
 正論なのだろうか。僕の頭の中はミカで埋め尽くされていく。かすかに残っていたサクミの残滓も綺麗さっぱり掃除されていく。ムチムチのボディコン姿の娼婦達が、何人も淫らで大きいお尻を振りながら僕を誘惑していた。その中で一際目立つ脚の長いスレンダー美女。それが他ならぬミカだった。僕はそのぎゅっとひきしまった尻の割れ目に頬ずりをした。そして何度も口付けを交わした。それが至極当たり前の行為だった。
 その時僕を見つめる視線があった。寂しそうにこの世の憂いを全て背負ったように腰が曲がっていた。その見覚えのある残念そうな顔。サクミだった。サクミは襤褸を身にまとっていて乞食だった。物欲しそうな目で僕に濁った目を向けてくる。僕はそんな彼女に見向きもしなかった。吸い付くような肌の魅惑的な美女と一緒にいる方がよかったから――。
「ああ……」
「わかる? アキトちゃん? さぁ素直になって……。誰が好きなの? ねぇ教えて? 誰が好き……?」
 ふっと急に現実に引き戻された。僕にその答えを促している。その名前は黒い女神の名だ。僕を誘惑して堕落させようとする邪教の神官だ。――でも。でも僕はそれに負けたいんだ。僕は弱虫で一人で何もできないから……誰かにすがって……ああ。
「誰? 言いなさい?」
 僕のペニスがぎゅいと踏み潰される。その刺激が最後の引き金だった。
「ミ……ミカ様ですぅ! 僕が好きなのはミカ様ですぅ! ミカ様ミカ様ミカ様ミカ様……」
 堰を切ったように言霊があふれ出した。ミカ様。僕が崇拝する女神の名。淫靡な肉体を武器に男を食い物に邪教の女神だ。
「ミカ様ぁ♪ ミカ……様。ミカ……」
「あ~らばっちりキマっちゃったぁ♪ こんなに入っちゃう子も珍しいわ~ん♪」
 僕は狂ったように声を上げ続けた。ミカ様と死ぬまで声を張り上げる人形になってしまった。
「ね~ミカぁ? そんなにしたら私の楽しみなくなっちゃうよ~ぶーぶー」
 遠くからモモらしき声が聞こえる。でも僕の耳と目は、ミカが一番最高に色っぽくでエロエロで美人に感じるようにすっかり調律されていた。
「んーなくなっても仕方ないわね。それじゃ……最後の仕上げといきますか♪」
 絶えることなく涙を流しながら歓喜のおたけびをあげる。周りの空間が歪み視覚も聴覚も極めて曖昧な状態になる。ひっきりなしの脳内麻薬の分泌が、否応なしに僕の精神全体を弄んでいた。それを与えてくれたのがミカ様だと思うと尊い。僕を操ってくれるミカ様の御言葉が……。
「あー気持ちよくなりすぎてるところ悪いんだけど……。ほら……ここに入れたくない? ミカ様の……オマンコ♪」
「はいぃ♪ 入れたいですぅ♪ ミカ様のオマンコにぃ……」
 僕の目の前には、ピンク色の秘裂がぱっくりと広がっていた。ヌラヌラとした粘膜の胎動が視覚と嗅覚を通して僕を惑わしてくる。つうっと一筋の透明な糸が垂れてミカの脚へと伝わっていく。僕はそれに吸い付くようにしてぴちゃぴちゃと卑猥な音を立ててしゃぶった。
「ふふ~♪ 何してるのぉ? 何を入れるのかわかってるのぉ? オチンチンよぉ? アキトちゃんのオチンチンを……オマンコにぃ……」
「んっはぁ~い♪ オチンチンミカ様のオマンコに入れるぅ♪ 僕ぅ……ああ……恥ずかしい」
「何で恥ずかしいのぉ? あっもしかしてアキトちゃん童貞なのぉ? じゃあお姉さんで童貞喪失しよっか?」
「童貞……童貞ですぅ♪ 僕童貞なのぉ……」
 僕はとても恥ずかしいことを口にしている気がする。痛いほどそそり立った僕のペニスに甘い肉壷が迫ってくる。
「ほ~らここで坊やのオチンチンくちゅくちゅしてあげるわよ? 気持ちよくて直ぐどぴゅ~ってしちゃうからね♪」
「は……はぁん♪ はい……ミカ様の中にぃ……」
 待ちきれなくてぐっと腰を突き上げた。ちょうど濡れそぼった秘裂に、ペニスはぬるりと吸い込まれた。
「あ、あ、ああ……。すごい気持ちい……。これが女の人の……ああ!」
「あ~ん入ったわよ~ん♪ そうこれが女の人のオマンコよぉ~ん♪ とっても気持ちいいのぉ。ほら~しかも美人でエロエロのお姉さんだから快感も最高よぉ……」
「ふわ、はぁ……はぁ……出るぅ……」
 膣がペニス全体にねっとりとまとわりついてくる。オナニーなんかとは比べ物にならないくらいの甘美な締め付けが僕を襲う。ふんだんに湧いてくる甘い潤滑液が膣の中に満ちじゅっぽりとペニスと奥までくわえ込んでいる。
「あ……! 根元……しまるぅ!」
「お姉さん鍛えてあるから圧力すごいわよぉ……ほらイキなさい!」
「はっ、はい……い……でるぅ♪」
 限界まで千切れそうなほどペニスが締め付けられる。せりあがって来るどろどろのザーメン。ああ、出る、お姉さんの、中で。痛いぐらいに収縮する膣の入り口、その締め付けがふっと一気に緩んだ。その瞬間に、根元でせき止められていたザーメンが一度に大量の産声をあげた。
「あん! イク、イクぅ~♪」
「ふふっ……」
「あふぅ……ん♪。あっ……あっあっ……あっ……」
 僕は射精した。でも出した瞬間、ペニスは膣から無情にも切り離されていた。快感の行き所がなくのた打ち回る僕のペニス。たまらずミカの白いお腹に服従の子種を塗りつけようとする。
「あっ……ミカ様」
「馬鹿! 何私の中に出そうとしてるのよ? あんたのしょぼい精子をミカ様の中に出そうなんて考えてんじゃないわよ! あはははっ!」
「ぶぁ、痛い、ミカ……ぶっ!」
 容赦のない平手打ちが頬を何度も往復した。張り裂けるような痛みが広がる。でも痛いはずなのにどうしてかそれを求めてしまう。ミカにぶたれ続けて僕の思考回路はおかしくなっていった。何度叩かれてもふらふらとミカの元へ赤子のように寄りそおうとする。
「ミカ……様ぁ……」
「あは♪ こいつ最高♪ 完全に私の虜じゃん。ほーらそんなにぶたれるのが好きならな~んどでもぶってあげるわ~ん♪ あ~っははははは~ん♪」
「ああっ、ああ……。もっと……もっとぉ……」
 目から火花が散り脳が揺れる。ミカの女とは思えないほどの豪腕が僕の体を横なぎにする。幾度も蹂躙を受けベッドにぐったりと横になる。それでも僕は倒錯しミカへの心酔をやめなかった。極めて危険な到達してはいけない魅了に、僕の心は完全に征服されてしまっていた。まだ手を伸ばす。僕の女神の姿が見えている限り。
「はぁん♪ 踏んじゃうよアキトちゃん♪」
「ぐっ」
 鳩尾の辺りに体重をかけてぐりぐりと踏まれる。当然のように痛い。でもこれぐらいの痛みならミカの前ではたいしたことのない試練に思えてくる。
「あはん♪ あんたって本当に馬鹿ねぇ~♪ 彼女奪った女に最悪の童貞喪失されてぼこぼこにされてさぁ……。ほぉ~ら。アキトちゃんどうなんでちゅかぁ~? くやしくないんでちゅかぁ? いくら不細工でもプライドとかないんでちゅかぁ~? ほらほらほら~♪」
「うっ、うっ……うああ……」
 痛みがしだいに強くなる。僕は射精した反動で現実感が強くなるのを感じた。そうだった。僕はサクミをこの女に……。けれどめちゃくちゃに魅了されて……。もしミカが望めば今も全てを捨て去って奴隷になりたいとさえ思ってしまう。
「くやしくないんでちゅか~? アキトちゃんは真性のクズ人間でちゅね♪ クズ! クズ! この逆寝取られマゾ男!」
「あぐ、あぐっ……」
 お腹をどんどんと足で踏みつけてくる。手加減なんてない一分の情けもない攻撃だった。胃液が逆流し口から泡を吹く。涙と鼻水と涎で顔全体がめちゃくちゃなのがわかる。悪魔のような顔で僕を痛めつけるミカに恐怖の情が強くなる。恐い恐い。しかし奇妙なことにもっとミカのドス黒い悪意を見たいとさえ思ってしまう。僕は黒の女神に脳細胞をほとんど侵略されてしまったのかもしれない。
「ミカーっ! もうやめなよぉ。やりすぎやりすぎ。それ以上はもうアレだって」
 黄色い声が僕の鼓膜に直射した。突如巻き起こる現実感の到来。誰だろうと思ったらモモだ。彼女も実はここにいたのだ。ミカの辱めに夢中ですっかり忘れていた。
「何よモモ……。これからいい所だってのに。ふん、まぁいっか。ただてここまでサービスしてあげたんだしぃ……ふふ♪」
 ミカはサービスと言った。僕にはもちろんなんのことだかわからない。ただ今は体中と心がチクチクと痛んでたまらなかった。
「あーんもうお兄ちゃんボロボロ~。モモの出番なかったじゃん。せっかくミカの虐待に心がひもじくなったお兄ちゃんをなぐさめプレイしようと思ってたのに~」
 僕はもう立ち上がる気力もなかった。今日は最高の日になるはずだったのにどうしてこんな――。
「まぁまた仕事であるわよ。……ねぇアキトちゃん? 続きをして欲しかったらぁ……ここにいらっしゃい。表向きはただのメイド喫茶でも裏ではすごいのよ♪ でもあんたは頑張って本物の彼女作らないと相手にしてやらないからね。不細工の、あんたが必死で作った彼女を……。あは、あはは、あははははっ♪ さぁ帰ろ帰ろ♪」
「むー。仕事とこれとは何か違う感じ。あれ? ミカって何気に宣伝上手? ふぅ……何だか疲れたぁ。あ……アキトお兄ちゃん今日は私本当にドキドキしちゃったからー。モモのおっぱいに溺れるお兄ちゃんも見たかったなぁ……ふふ♪」
「モモ行くよー」
「ふぁーい。あ、ここのお金は私が払っておくからー。なんかミカちゃんがぼっこにしたせいで罪悪感マックスなのぉ。じゃあねお兄ちゃん♪ ばいばぁ~い♪」
 二人はそれだけ言うと僕を置いて立ち去った。
 僕の心に去来する、絶望の孤独感の重量がみっしりと背中にのしかかる。あれほどミカに入れ込んだ感情ももはや消えていた。やはり僕は真に孤独だったと理解する。
「痛てて……」
 鈍痛が走る体をなんとか持ち上げる。僕は寂しかった。だからこそサクミという女神に会えたことを本当に感謝した。
 くだらない人生の内で一瞬でも輝いたことを嬉しく思う。僕は今は不幸でも幸福なのかもしれない。
「これは……?」
 ミカが置いていったのは一枚の紙片だった。最近駅前にできたメイド喫茶のチラシだ。何でこんなものを。どこまで僕を馬鹿にしているのだろう。ぐしゃっと力ない手で紙を握りつぶす。
「ああ……」
 僕は生ぬるいため息をついた。サクミとはもう会えない。今から誤解を解いて謝ることもできる。でも僕は蹂躙されて穢れてしまった。酷いのは見た目だけではく心も汚れてしまったのだ。もう二度とこんな出会いはないだろう。
「サクミ……サクミ……うう」
 僕はむなしくむせびないた。サクミの薄い後ろ姿を思い出してまた泣いた。




 おまけ 最終章モモちゃんver

「はぁ~い♪ アキトお兄ちゃんお疲れ~♪ さぁモモがぁ……キリキリせつない傷つきハートを癒してあげるからね~きゅぴ♪」
 僕が連れ込まれたのはラブホテルだった。一体ここで何を――。何か文句を言おうとするまもなく、僕はモモのふわりとマシュマロのようなおっぱいに包まれた。
「ふ、ふわ……」
「あはぁ~ん♪ モモのおっぱいで顔真っ赤~♪ ねぇミカ? 私が先でいいよね? ね?」
「……ちぇ。まぁいいわよ。さっさと終わらせてね」
「うん。ねっとりじっくり速攻でアキトお兄ちゃんをラブラブプレイしちゃうよ~♪」
 モモはそう言うと、僕をベッドにとんと押し倒した。そして目の前で、彼女の服が一枚一枚はらりと脱がされていく。徐々に露になる美少女の素肌。相変わらず幼い顔に似合わない巨乳がアンバランスでドキドキしてしまう。しかも性格が積極的で、所構わずエッチな誘惑をして淫乱に迫ってくる。
 こんな子が彼女だったら――。
 僕はロリというものは、二次元世界だけのものと思っていたけどこの子は違う。子猫のように甘えて尻尾を振りながら媚びる様子が堂に入っているのだ。ぷるぷると常に揺れ動く魔惑の巨乳。狭い肩幅もその圧倒的量感を際立たせている。
「ほらぁ……見てぇ?」
「うぅ……」
 モモは僕に見せ付けるようにおっぱいを両手で寄せてきた。ピンクのブラとパンティが柔らかい肉に食い込んでいやらしすぎる。深い谷間がさらに深くなり、その淡く汗ばんだ肉のクレバスに自然と視線が吸い込まれてしまう。
 これではいけないと目をそらしても、モモはそこでも用意周到だった。つんと尖った桜色の唇が僕を誘い、ウルウルと涙で濡れた大きめの瞳が甘い桃源郷へと引き戻して決して逃がさないのだ。
「ここを……谷間ぁ♪ サクミさんがいた時はぁ……チラ見ばっかだけどぉ……今はじっくり見てもいいんだよぉ……」
「は、はぁ……」
 緩みきった顔で僕はモモのおっぱいを見つめた。両手でこねくり回される度に、その男を誘うなような丸い果実は淫靡さを増していく。ぎゅっと押しつぶされてみちっと肉が合わさったかと思うと、今度はふんわりと軟体動物のように広がりフェロモン漂う魅惑の谷間を艶やかに演出する。
「ほらぁ……。ねぇこのおっぱいずっと触りたかったんでしょ? サクミさんがいたから遠慮してたけどぉ……。ふふ♪ ほら触ってぇ……アキトお兄ちゃん♪ モモがぁ……アキトお兄ちゃんの心も体も寝取ってあげる♪ おっぱいでむにゅってしてオチンチンすりすりして完全に私のものにしてあ・げ・る♪ きゃぴ♪」
「あっ、ああ……あああ……」
 僕はもう辛抱たまらなかった。妖しく変化するおっぱいの誘惑に脳が支配されて取り込まれた。
「んっ、きゃぁん♪」
 わざとらしく嬌声をあげるモモ。僕がおっぱいをわしづかみにすると、予想していたように僕の手を取りおっぱいの感触を手の指五本全てに堪能させた。僕の指がぐっと柔肉の奥まで食い込む。指に吸い付く双乳の甘い感触が絶え間なく押し寄せてくる。ああ……柔らかい。女の子のおっぱいってこんなに柔らかいんだ……。
「あはっ♪ これが女の子のおっぱい……しかも巨乳。サクミさんの小さな胸じゃこんなことはできないんだよ?」
「うう……サクミは」
 言われてサクミの顔が頭に思い浮かぶ。彼女の貧相な体じゃ絶対にこんなことはできない。巨乳だけじゃない。ぷにぷにとしてぴったり吸い付いてくる赤子のような肌。二次元美少女のような小さい顎と大きい目。そして僕の心を惑わしてやまない小悪魔的な媚態。全てがサクミよりも勝っていた。
 僕はもうサクミには会えない。ごめんサクミと心の中で土下座した。
「ふふっ♪ ほらほら~もっといいことしてあげる♪ サクミお姉ちゃんとの思い出なんて全部私が忘れさせてあげる♪」
「んっ、はん、ああ!」
 股間の方へとモモが顔をうずめた。ぴたっと僕のペニスにおっぱいの甘い感触。
「ほらパイズリだよ? ロリっ娘のパイズリ……♪ オチンチン根元からぎゅ~ってしてとっても気持ちいいんだよ? お兄ちゃんはこれ初めてだろうからすぐいっちゃうよぉ? ほらぁ……むに……むに……むにむにむに……きゃぴ♪」
「はぁ……はぁ。モモ……ちゃん。もっと……ああ……腰……いい」
 ペニス全体が柔肉ですりすりされると自然と腰が動いてしまう。これが……パイズリ。女の子のおっぱいの中。柔らかくて暖かくて天国のようだ。
「はぁ……ん♪ お兄ちゃんももっと腰動かしてぇ……。モモ感じちゃう。モモのおっぱいレイプしてぇ……。モモ実はドエムなのぉ……。お兄ちゃんみたいなカッコいい人におっぱいもみくちゃにされて辱められたいのぉ……。ほらほらほらぁ……」
「ああっ、やめ……」
 ドエムと言いながら積極的に責めているのはモモだった。すりあげるおっぱいの速度は早くなり、小さい口からどろりと滴る唾液のぬめりも加わってしまう。
「んっ、ちゅ、むにっ♪ ほら♪ おっぱいマンコとお口マンコ……。同時にレイプしていいんだよ? 好きなだけモモのおっぱい蹂躙してぇ……。モモこういうのが好きなのぉ……ほらぁ……んっちゅっちゅ~ん♪」
「あひ、ああ……あうん!」
 胸と口の攻撃にたまらず悶絶する。こんなの耐えられるはずもない。していることは責めだが、言葉が受けのその倒錯的な状況に僕の脳内は蕩かされてしまった。
「ああ……出すよモモちゃん。モモちゃんのおっぱい犯しちゃうよお兄ちゃん……。悪い子だ……ああ。」
「あ……うんそれいい! 理性なくしてモモを犯すお兄ちゃん大好きぃ……♪ ほらもっと奥ぅ……♪」
 僕はモモに誘導されるようにして、おっぱいを握り締めて責めの言葉を交えた。何だろうこの感じ。支配されているのは僕なのに犯しているのは僕だ。これも一種の逆レイプなのだろうか。
「んっちゅっ♪ ちゅ……んっ……ん……」
 おっぱいを通りこえてペニスは口内へと侵入していた。すぼまる頬と粘膜がぴったりと張り付き、ペニス全体を蕩けるような快感で包み込んでくる。モモの舌技は何とも言いようのないくらいすごかった。おっぱいで魅了されたかと思うと、口の中でももっと奥へ差し込んで支配されたいと思ってしまう。
「んん……。ちゅぶちゅぶぷ……ちゅぷぷ……ちゅぷぷっ♪」
 ペニスをすする卑猥な音が部屋中に電波する。僕はもう限界だった。美少女との倒錯的な性の語らいにペニスが爆発しそうになっていた。
「で……出るぅ♪ モモちゃん出るよぉ……」
「ん? うん……だひてぇお兄ちゃん……。最後はおっぱもむにむにお口もれろれろちゅっちゅのちゅ~~~んっ♪」
「あああっ! そんなにされたらぁ……」
「んぶっ、んぶ~~~~!」
 僕はモモのおっぱいを千切れるくらいつかみ腰を突いた。唇にカリがこすれてぎゅっと引き絞られてそれが射精のスイッチとなる。
 卑猥な汁で顔を歪める少女。その痴態に僕の興奮は最高潮に達する。精巣から精子が一気に駆け上り、無垢な少女の口内めがけて欲望のザーメンを撒き散らす。ああ……いい。少女の口を……巨乳少女の口を今僕が犯している。レイプしてと言われて本当はいけないのに理性がなくなって興奮してしまう。誘惑しているのは彼女で抗えずに腰を動かして……ああ。
「あっ……ああ……あっ……」
「んっ……ん……んん……ごくんっ♪ ふふ……出しちゃったねお兄ちゃん♪ あ~んれろぉん♪ おっぱいとお口に白いのべったり~♪」
 射精の余韻と反動でがっくり膝をつく僕。ふと見ると、モモがにんまりといやらしい笑みを浮かべていた。さっきまでの受身なしどけない表情は影も形もなかった。口から鎖骨を抜けて、胸に至るまでべっとりと僕の精液がまぶされている。モモは満足そうに目を細めながら、白い欲望を舌で舐め取り指に絡めたりして弄んだ。
「あっ……ああ……君は」
「くすっ♪ 私の誘惑エッチはよかったぁ? 草食系な受身マゾお兄ちゃんってこんなので感じちゃうんでしょ? モモにぃ……レイプしてぇ……いいよって誘惑されてぇ……おっぱいとお口にオチンチン差し込んでぇ……♪ 違う? あ……その顔だとドツボだったんじゃない? ふふ……いいよお兄ちゃん♪ もっと心の中まで操ってモモを何度もレイプさせてあげる♪ きゃぴきゃぴ♪」
 きゃっきゃっと飛び跳ねながら、小悪魔の少女は無邪気に笑っていた。僕は頭がぼーっとして虚脱した状態だった。魂も吸われそうなほどの吸引で本当に身も心も虜になったみたいだ。
「まだ……終わりじゃないよお兄ちゃん♪」
「えっ」
 抜け殻の僕の横でモモはそう囁いた。
「ほらお馬さん。お兄ちゃんはお馬さん……」
「馬……?」
「ふふ……♪」
 何か了解を得ない僕に、モモは背中を向けて上からお腹に座った。少女の細い背中。その下にはぷりっとした可愛らしいお尻が見えている。濡れたパンティが食い込みねじれてお尻の穴の方まで容易く確認できる。
「あはっ♪ お兄ちゃん……このポーズ好き? ねぇ……バックでスマタピストンしてあげる♪ オマンコとお尻にスリスリしてどっぴゅんしちゃうの♪」
「そっ、そんな……。もう出ない」
 それは本心だった。さっきの射精で根こそぎ搾り取られて――。
「嘘。ほらっ♪」
「ふわっ」
 モモが後ろに体重をかけて腰をずらした。少女の柔らかいお尻の肉が僕のペニスに優しく覆いかぶさる。お尻……少女のお尻。童顔のロリっ娘の……。
「ふふ♪ ほら立ってきた」
 数秒しないうちに、ペニスは硬度を増して天井を向いた。どうしてだろう。さっきイッたばかりのはずなのに。
「うふふふ……。お兄ちゃんは満足してないの。だってこのお馬さんポーズでイカされてないから……。ほら……ほらほらっ!」
「あっ、あっ」
 そう言うとモモは僕の上で飛び跳ねるように腰を上下させた。その振動に合わせてペニスがぎゅっとつぶれてまた解放されて。ぴたりと動きが止まったかと思うと、腰をぐりぐりと艶かしく動かして濡れそぼった性器とお尻の谷間で翻弄してくる。
「ほらぁ……これいいでしょ? 馬……馬だよ? 思い出して……ほら。あのお馬さん」
「あ……」
 上に乗られながら僕はモモとの邂逅を思い出していた。泣き喚くモモ。白い谷間がむちむちで膝小僧もおいしそうだった。ぎゅっと腕を取られてメリーゴーランドに乗って。ああ……あの時の……。
「ふふっ♪ 思い出してくれた? きゃぴ♪」
「ああ……お馬さん……だね」
「そうお馬さん……ふふ♪」
 そう言うと、モモはむっちりとしたお尻をぐっと僕に向けた突き出した。まるであの時と同じような腰つきだった。
「それお馬さんパッカパカ~♪」 
「あっ、ああ……」
 僕の上でぴょんぴょんと飛び跳ねるモモ。僕は彼女の下で馬になった。どしんと僕のお腹にプレスがかかるたびに、柔らかすぎる尻肉にペニスがずぶりと埋没する。
「ああ……そんなにされたら……」
「そんなにされたら――出ちゃう? 私のお尻で……お馬さんにされて……」
 モモが後ろを振り返ってにやりと笑った。少女のそれではない、黒い悪魔の羽と尻尾を持つ……サキュバスだ。僕はその小悪魔サキュバスに誘惑されていて……。だとしたら僕がかなわないのも当然なことだ。
「ねぇお兄ちゃん? お兄ちゃんは私の後ろに座った時から終わってたんだよ? 私の腰の動きぃ……カクカクってエッチする時みたいに振られて……パンチラぁ……むっちりお尻も見せ付けてぇ……♪ 誰だってすぐ虜になるのぉ……。一番最初にお兄ちゃんを寝取ったのは私♪ ミカじゃないよ? ……きゃぴ♪」
「はぁ……はぁ……」
 既にモモはずっしりと腰を下ろしていた。食い込んだパンティが絡むお尻の割れ目には、ぴったりと僕のペニスがおさまっている。体重をかけられて腰は動かせずに、ペニスだけがびくんびくんとモモの甘い声に呼応するようにして脈動する。
「ほら~お馬さん~。お兄ちゃんはお馬さん~♪ 私の大切なお馬さん……」
 諭すように何度も語りかけてくる。僕は何もかも捨て去って彼女の馬になってしまった。軽くお尻を揺らしながら僕自身を弄ばれて限界が近づいていた。
「は……はい。僕は馬です……。モモ様の馬です。好きなだけ乗り回してください……」
「あはっ♪ アキトお兄ちゃんをお馬に調教完了~♪ そぉ~れ走れ走れ~♪」
「モモ様……モモ様」
 自分からモモ様と言ってしまった僕。心全体がモモに支配されて彼女のことしか考えられなくなる。僕は魔法にかかってしまったんだ……。小悪魔な少女の手練手管――しなやかな見えない手綱で知らない間に舵を取られていた。
「お兄ちゃんほら~。ここにオチンチンいれてぇ? ほらここぉ……♪」
「うん……」
 モモはすっかりTバックに近くなったパンティに僕のペニスを誘い込んだ。ねっとりと愛液で濡れた薄布が食い込む淫猥なお尻。その尻肉と布との甘美な領域に、僕のペニスはずっぷりと収納される。
「ここに入るとぉ……もう逃げられないんだよ? それぇ……♪」
「ああっ!」
 嗜虐的な笑みを浮かべてモモがパンティをずりあげる。尻肉と布との間でペニスはぐちゅぐちゅとこすれあい、例えようのない快楽に包まれる。当然逃げることなんてできない。絡まった布がロックの役割となり、常に尻肉との密着を強制されている事態に否が応にも興奮させられてしまう。
 そのまま腰を上下をさせて僕の反応を楽しむ。僕はされるがままに翻弄された。彼女のいやらしい腰の動きは止まるところを知らなかった。そして――。
「で、出るよぉ……。そんなに……ああ。パンティが根元の方にぎゅってして、でもカリとかお尻のお肉に……。モモちゃんいやらしすぎるよぉ……」
「ふふ……出していいよ。モモちゃんのお尻コキでどっぴゅんね♪ ほぉ~らお馬さんモモのものになぁ~れ」
「ふあぁ……」
 僕は両手を伸ばしてモモの細い腰をつかんだ。本能に従うままに腰を上に突き上げる。
「ああん♪ お尻にこすれるぅ♪ それいいっ♪」
「ああ……出る出る出るぅ! モモ様のお尻に射精しますぅ!」
 溜りに溜まった官能の渦が一度に解放される。ぷるぷると震えるお尻の肉が射精をさらに促す。僕はモモのお尻の穴付近にどっぷりと精液を吐き出した。
「ああ……お尻の穴に……。んっ、アナルに入れてお兄ちゃん……イッたばかりだけど」
「えっ……ええ? あっ!」
 快感の余韻も数秒、ペニスの先がアナルの肉を押し広げている。上に乗ったモモがみちみちとゆっくり僕を飲み込もうとしていた。出したばかりの精液が潤滑液となり、するりと先っぽが滑り込んでいく。そうすると後はあっと言う間だった。僕のペニスまでずっぷりとモモのアナルに格納されてしまう。可愛らしい少女との排泄機関での結合。そんな倒錯した状況に、僕は脳が溶けそうなほどの背徳感と快感に身を打ちひしがれてしまう。
 射精の直後でもペニスは硬度を保っていた。きつい直腸にぬちゃぬちゃとくわえ込まれて血液が集まらずにはいられなかった。
「あん♪ お尻の穴ぁ♪ アナル最高♪」  
「あっ、ああっ。モモ様……暖かい……」
「もっと突いて……突いてお兄ちゃん♪ 三回目、ここに出したら一生お兄ちゃんはモモのお馬さんだよ? ほら~もっと走れ走れ~」
「は、はいモモ様ぁ……」
 僕は体全体にびぃんと電気が走る心地がした。幸せ、こんな陶酔感、ずっと浸っていたい。モモ様の馬になって一生腰を振っていたい。
「あ~ん最高~♪ モモのお尻でお兄ちゃんを完全寝取り調教完了~♪ あ~んあは~ん♪ はいどーはいどーパッカパカパ~ン♪」
「はぁ……はああ! 出るぅ! モモ様ぁ♪ 僕はモモ様の一生性奴隷ですぅ……」
「はぁ~ん♪ 出して出してぇ♪ あんオチンチンふくれて爆発するぅ……あ~んああ~ん♪」
「あっ、ああすっごい締まるぅ……ああっ!」
 僕は叫び声をあげながら一心不乱に腰を突いた。もう世界がどうなってもいいくらい幸せだった。
「あ、あれ? モモ? 私の分は? ああ……もう。つまんない。私帰るー」
 世界のどこかで誰かの声が聞こえる。でもそんなことはどうでもいい。僕はモモの馬になり忠誠の証に白い精液を注ぎ込んだ。それでも腰の動きは止まらなかった。モモは僕を咥えたままなおも腰を振り続けている。圧倒的な脳内麻薬の享受。僕の脳は臨界点をとうに越えて意識が闇に溶け落ちた。鼓膜を揺らすのははしゃぐ少女の淫らな嬌声だけだった。



  1. 2011/12/29(木) 22:27:24|
  2. SS
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ヴァルダーラ三姉妹の魔乳支配

定期おっぱいが書きたい病。
なのでSSです。
おっぱい挟みで色仕掛け。

音声作品はそのうち『ゆかおなっ! 可愛い彼女は床オナフェチ』がでます。
床オナ手伝いの音声となってます。

テーマはおっぱいからおっぱいへの移動。
おっぱい→またおっぱい→また……
とエンドレスおっぱいされてどんどん狭くなっていくというのを本当は書きたかった。

三姉妹の魔乳トライアングルという技を考えていた。
なぜかサイズが違ったのでこれは後の作品に使おうと思った。

もっとSSの方も充実させていきたい。
よさげなアイディアが色々浮かんだんでご期待。




ヴァルダーラ三姉妹の魔乳支配



 俺は体の自由を入念に奪われていた。
 しかも全裸に剥かれて酷い状況でぴくりとも動けない。
 まず初めに俺のことを説明するが、俺はアンゴルモア国のれっきとした精鋭軍の隊長である。
 順調に俺達の軍は攻め上がり、敵国カンナバル軍の中枢へと侵入したはずだった。
 相手側の兵力はもうほとんど残っていない。そしてたどり着いた神殿の地。
 案の定、そこに存在するのはおびえて何もできない女の神官どもばかりだった。
 俺はこう言った。
 素直に抵抗せず投降すれば無慈悲なことはしないと。
 いくら戦争であっても正規軍としての体裁は保ちたかった。
 そう俺は隊長として何もかもうまくいってるはずだった……。
 あの憎たらしい巨乳、いや爆乳の三姉妹達の手向かいさえなければ。


「おにーちゃん待ったぁ?」
 しばらくして現れたのは、ころころとして可愛らしい少女だった。しかし爆乳である。
 神官の薄い白装束を身にまとい、これみよがしに肉体の充実をみせつけてくる。細い顎に一際大きい目の威圧。まだ未成熟の幼い顔立ちに、何とも不釣合いなほどの二つの果実が俺の前で揺れていた。
 華奢な肩、細い腕、白い胸元、淫らにはみ出る乳肉。男を欲情させる方法を熟知した肉の誘惑が、どこかしこから放出されている。
「ちょっとー何か言ってよ? あ、私の名前はね、ヴァルダーラ三姉妹の栄誉ある三女のミーナって言うの。えーっと一つ上のお姉ちゃんはニーナ。もう一つ上はネーナって言うんだよ? もう少しで来るからね……えへへ♪」
 聞いてもいないのにこの爆乳の少女はぺらぺらと快活そうに喋った。
 恥ずかしいことだが、俺達の軍を跳ね返したのはこの少女達だった。泣き喚く神官達を捕縛しようとしたところ、どこからともなくこのミーナが飛んできて兵士に抱きついた。
 俺は初め何をしているのかと不思議に思ったが、今思い返してみるとあれはとても悪魔的な行為であったと言えよう。
 ミーナはただ抱きついているだけではなかった。その豊満な乳房を兵士の顔に押し当てながら甘い誘いの言葉を囁いていたのだ。寝返り裏切りの背信行為をその甘ったるい声で耳に吹き込む。
 そうするとどうだろう。あれほど厳しい訓練を受けたはずの兵士達がころっと寝返ってしまったのだ。ミーナが介入してからは俺達の軍は総崩れだった。何しろ兵士達がへらへらと狂気じみた笑いを浮かべながら同士討ちを始めるからたまらない。
 たった数秒、ミーナの抱擁を受けただけでそうなってしまう。正気に戻そうとしても、やたらめったらに武器を振り回しているのでこれも按配がよくない。
 何よりミーナの素早さが想定外の動きだった。大きな胸を振り回しながら、ゴムマリのように飛び跳ねて兵士達の顔面へ突進していくさまはまさに圧巻である。
 おびえていたはずの神官達も、猫をかぶっていたのか次々と本性を現して妖しげな術を使い始めた。俺達の敵は俺達自身。それに加えて魔性の女達。俺達が勝てる道理はどこにもなかった。
 本当にありえないことだが現実に起こってしまったもはしかたない。
 俺達の軍勢は、わずか少数の神官と爆乳の少女に軽くひねられてしまったのである。
「もーだんまりしてー。あーそっかー。こんな小さい女の子にーむきむきのお兄ちゃん達がやられちゃったからーそりゃーくやしいよねーうふふ♪ ねぇどうだったぁ? 私におっぱいでむにゅーってされただけで裏切っちゃういけない兵士さん達見て? でもねー簡単なんだよー。こうやっておっぱいでお顔はさんでねー、ほらーお兄ちゃんの敵はあいつらだよ? 私以外はみんな敵だよって囁いてあげるとねー、かーんたんにみんなお馬鹿さんになっちゃうからーうふふのふーん♪」
 俺はミーナと目をあわさないようにしてそらした。無防備に揺れる乳房の振動も至極目障りだった。
「あれ……お兄ちゃんたら無口。ああ……お兄ちゃんは私におっぱいされなかったからすねてるんだぁ……。ねぇそうなんでしょ? でも大丈夫だよー。今からお姉さま達とぉ、いっぱいいいことするんだからね……」
 ミーナが目を細めて妖しく笑った。無邪気な少女のそれではなく、獲物をいたぶるような肉食獣のぎらついた視線だった。
「あらミーナぁ? お疲れ様。まだ食べてない?」
「ミーナちゃんおつですぅ。うふふふ♪」
 後ろから二人の女――明らかに異様な雰囲気を身にたたえている。ミーナと同じ白い服だが異常なのはその胸の大きさだ。いわゆる世間でいう爆乳を超えて超乳である。これほどの乳房の大きい人間がいるのだろうか。明らかに歩行が困難そうで、事実二人はだるそうにして腰をかがめて常に前かがみでいるではないか。
 栄養の大部分を乳房に吸い取られたかのような、巨大な肉の果実が俺の視界を覆う。こいつらはおっぱいだ。おっぱいの女だ。心からそう思った。
「あーネーナお姉ちゃんとニーナお姉ちゃん。遅いよーもー。私一人で相手にして大変だったんだからねー」
「えーニーナちゃんはすぐ行こうと思ったんですぅ。でも鏡が見つからなくて髪のセットが決まらなかったのー。だから行けなかったんですぅ」
 ですぅと妙な語尾をつけているが、どうやらこいつが次女のニーナらしい。あまりにも美しい地面まで届くほどの黒髪が印象的だ。だがやはりそれよりも圧倒的な超乳が全てを覆す。じっとしていればかなりの美人で清楚な雰囲気でもあるが、実際は勝気でちゃらけた性格のようだ。
「お疲れ様ミーナ……。ふふ、ああこんな時にミーナがいてくれて助かったわぁ……。私達じゃ何もできずにきっと串刺しだったはず……ふふ♪」
 最後に口を開いたのは一番妖艶な色気を醸し出す熟女だった。目元には濃艶な紫のアイシャドーと、ぷっくりとした唇にはねっとりと赤い口紅がまぶしてある。清純そうなニーナとは対照的に、きわめて濃厚なえもいわれぬフェロモンで男を虜にする術を熟知していると思われた。
 重過ぎて量感のある乳房。それが数歩先の目の前でゆさりと揺れた。俺はごくりとつばを飲んだ。爆乳超乳の美貌の三姉妹達。その中でもネーナは俺の好みにとても合致していた。妖しくて影のある心の内側を見せないような、そんな悩ましげに人を誘い込むような雰囲気に俺は意識が朦朧としそうになってしまった。
「もーお姉ちゃんは太りすぎてるから駄目なのー。私みたいにもっとシャープにならなきゃなのー」
 ミーナがぴょんと飛び上がりながら言った。
「ふふ……その内ミーナもお姉さん達みたいにおっぱい大きくなるわよ? これはヴァルダーラの女達に伝わる血の理なの……だから……」
「えーそんなのやーやー。デブいのいやー」
「うるさいわねミーナは。それに私は太ってないわよ。デブいのはネーナ姉さんだけですぅ。私はぴちぴちのスリム超純潔ボディだからぁ。うっぷぷぷ♪」
「あらニーナぁ。あなたの方がおっぱい大きいんじゃなくって? ここのこの辺とか余分なお肉がつきすぎよぉ?」
「え、えーそんなこと絶対ないですぅ。私は美乳のお手ごろバストなんですぅ!」
「あーニーナお姉ちゃんの方がおでぶー♪ いいこと聞いたーあははー♪」
「こ、こらミーナぁ!」
 俺の存在をそっちのけで、三姉妹の間で喧嘩が始まった。体をくねらせながら言い合いをするので、ただでさえ細かく揺り動いている乳房がいっそう大きく振動する。それはまるで俺を誘っているかのように思えて、俺の視線はその魅惑的な乳房に釘付けになっていた。
「んもー! ニーナお姉ちゃんの馬鹿ー! 死ねー!」
「何よこの子は……むきー! おっぱい小さいくせして生意気ですぅ! んぎぎー!」
「もうあなた達見苦しいわよぉ……。ほら……今はこの隊長のお兄さんを……ふふ♪ ほら、待ちくたびれているわよ……あんなによだれたらして私達に見とれて……」
 突然矛先が俺に向かった。そうだった。俺は今やとらわれの捕虜である。どんな拷問尋問をされても仕方のない状況だ。乳房に見とれて呆けている場合ではなかった。
 俺は覚悟を決めなければならない。敗残軍の将として責任はとるつもりだ。
 どうする? このままこいつらの手に堕ちるならいっそのこと舌でも噛み切って――。
「何を考えているの隊長さん? ふふ……♪」
「あっ、はぁ……」
 俺の考えていることを見透かしたように、ネーナがするりと近づいてきた。匂い立つ魅惑の芳香が沸き立つずっしりとした乳房。その魔惑の果実が今俺の鼻先数センチまで接近していた。むっとするような甘い匂いに意識が飛びそうになってしまう。
「あ、ああ……はぁ……」
「隊長さん……。あのね、私達……今から隊長さんに酷いことするわけじゃないのよ……。この戦争を終わらせるために……少し協力してもらうだけだから……ふふ♪ んっ、はぁん♪」
 ネーナの細い指が白い布をすっとずらす。重くて巨大な乳房をほとんど包みきれずに柔らかい肉がはみ出し放題だった。俺の目の前でたぷんと揺れる。一体この中には何が詰まっているのだろうか。普通に考えれば脂肪だろうが、今の俺には甘いミルクが乳房いっぱいに詰まっていると錯覚してしまった。ずっと見つめていたい。吸い付きたい。母性に心を絆されそうになる妄想が次から次へと襲ってくる。このままでは蕩けそう――。いやしかし。
「くっ……。お前らに協力などはしない。色仕掛けで篭絡などはされはしないんだ。殺すなら早く殺せ!」
「あら……」
 ネーナが意外とばかりにはっとした表情を見せた。
 俺は隊長として最後の抵抗をしてみせたかった。だが心はほとんど陥落しかけていた。抗うそぶりを見せながらもどこかで期待していた。俺はやはり弱い人間だった。
「色仕掛けなんかに? ……本当かしら? ねぇ……こんなのはどう?」
 そう言うと細い指が乳房の中心部へと向かった。次の瞬間、淡いピンク色の乳首が俺の目を焦がした。
「くっ……」
 ぷっくりと盛り上がる柔らかそうな丘。俺はその隆起にたまらなく欲情していた。熟女の割には綺麗な桃色の魅力的で広がりのある乳輪が、何とも艶かしくて男の心をじわりとくすぐる母性本能に訴えかけてくる。
 その乳首がネーナのつややかな指ではじかれながら固くしこっていく。その様子に俺はじっと魅入られてしまった。あん……とか細い声をあげる様子も、鼻にそっと降りかかる甘い吐息の波動も俺の心を否が応にも乱していた。
「ほら……私の乳首……こんなに固く……」
 俺が呆けた様子で魅了されかけたのを見て、ネーナはにやりと笑ったようだった。眼前の男が自分の手の内に堕ちたという安心感だろうか。その顔には、ただならない深い慈愛にとんだ喜悦と妖しい欲望に染まっていた。
「あらネーナ姉さぁ~ん。一人じめなんて駄目ですぅ。ニーナも混ぜてくださいですぅ」
「そうだよ~。私もお兄ちゃんとちゅぱちゅぷしたいの~」
 後ろから蚊帳の外に置かれていた二人が不満そうな声をあげた。
「ん……そうね。じゃ、あれやりましょうか……あ、れ♪」
「うわーい。賛成賛成~♪ あれって久しぶりだな~。楽しみ楽しみ♪」
「あっグッドアイデアですぅ。このお兄さんきっと私の虜になりますぅ♪」
 三人が意気投合したのか楽しく笑っていた。俺はふっと生じた一時に、ぐっと唇をかんで意思を固めた。
 大丈夫だ。こいつらの武器は色仕掛けだけだ。どんなに弄ばれようとも、自分の中に信じる心持っていれば絶対に負けないと。
「くっ……三人がかりでも俺は……」
「うふふ……」
「ふっふ~♪」
 そんな俺の言葉を無視したようなそぶりで三人は周りを取り囲んだ。
 正面には相変わらず長女のネーナ。背後の左手の方には次女のニーナ。そして右手側には三女のネーナが座っている。
「はぁ……はぁ……」
 何もされていないのに、俺は息が荒くなってしまっていた。何しろ男のリビドーを抜群に刺激する淫猥すぎる肉の塊に、三方向から囲まれているのだから。
 ネーナは悠然として、優しく慈愛に満ちた笑みを浮かべている。あまりにも魅惑的な前かがみだった。あふれんばかりの超乳が、下の地面まで届いて先がつぶれていた。
 ――もっと前かがみになって欲しい。
 俺はそんな妄想に溺れそうになる誘惑に必死で耐えた。ぐにゃりと形を変える乳房の流体力学的な形相の変質と胎動と、その内側から煮えたぎるような性の躍動感に俺は期待を隠せなかった。
「またネーナ姉さんばっか見てるですぅ……。ほら私も相手するですぅ♪」
「あっ、うっ」
 俺は急な背後からの声にぐっと背を反り返らせた。同じく超乳のネーナが、背中にその豊穣の乳をむにぃと押し付けてくる。背中全体、いや首の後ろから臀部まで俺の体全体を包みこんでしまいそうなほどの大きさだった。
「どうですかぁ? 私のおっぱいはいいですかぁ?」
「うう……」
 ニーナは二つの乳房を器用にこねくり回して俺の肌に吸いつけてくる。柔らかくて、すべすべしてて、何だかしっとりと濡れて甘ったるい匂いもして――。
「私もいるんだからねー。忘れないでよー。ほらぁーおっぱい♪」
 右側から一番若い声が聞こえてくる。この超乳の姉妹に比べたら普通に思えるが、世間一般から見ればすこぶる爆乳のミーナがわき腹に乳房を押し付けてきた。
「触って、お兄ちゃん♪」
「あ、うん……」
 俺は思わずうなずいてしまう。手をとられて弾力のおっぱいに誘われてその感触を無理やりに味合わされた。むちむちとして柔らかいのに芯の部分はしっかりと筋肉のあるおっぱいだ。ぴちぴちとした若さはじける健康的な色気が俺の視覚と触覚を楽しませる。ネーナとニーナのこってりとした味わいよりも、また一味違ったしどけない少女のふわりと優しい安心感がある。
「ほら両手でもいいよぉ……♪」
 俺の両手をとって双丘に誘うミーナ。おっぱい、二つのおっぱい。童顔で引き込まれそうになる澄んだ瞳の爆乳の少女を、俺は今弄んでいる。目を細めて、口角を吊り上げて、そんな見下した目を見つめられたら俺は――。
「ふふ♪ 隊長さんったら……全員相手にしなきゃ駄目ですよ……意識を分散して……ほら」
 ネーナの前かがみ。淫靡な肉の蠢き。一瞬そっちに気をとられる。  
「こっちですぅ♪ こっちもおっぱいですぅ♪」
 背後のニーナが後ろから覆いかぶさってくる。両腕を俺の腹部に回してぴたりと張り付いてくる。
「そして……ミーナはここだよ~♪ むにむにむにゅ~♪」
「あ、ああ、ああああ……」
 俺はおっぱいの大海原に飲み込まれていた。ゆさゆさと揺れるおっぱいが、俺の周りで淫靡なダンスを踊っている。
「隊長さん……ふふ♪」
「お兄さん……もうこんなに♪」
 ニーナの手が俺の股間をぎゅっとつかんでいた。このおっぱいの桃源郷にはどんな男でも耐えられるはずがない。
「あんっ……あ……はぁ……」
 たまらず女のような声を出してしまった。ただ体を寄せられているだけなのに、おっぱいの悪魔的な魔力により俺の脳は甘美な陶酔感に浸っていた。
「いいの? お兄ちゃん? おっぱいが?」
「うふふ……♪」
 三人は俺をねっとりと犯していた。前後左右から囁くように声をかけてくる。決して性器をごしごしとしごくような真似はぜずに、本当に体を撫ぜるようにその豊満な肉体を押し付けてくるだけだった。
「あ~ん隊長さぁ~ん♪ ネーナのおっぱいどうですかぁ?」
「私のおっぱいはどうですぅ……?」
「お兄ちゃん……好き♪ ちゅっ♪」
「このふか~い谷間でお顔はさまれたいですかぁ?」
「ほらむにむにですぅ……♪」
 周囲を厚い肉の牢獄に囲まれていた。それは逃げ出そうなんて気持ちが微塵も起きないほどの、絶望的な柔肉の檻だった。 
「むっ、あぁ……」
 俺は顔も脚も腕も胴体も全てにおっぱいを押し付けられた。肉のとろんとした香るような甘い芳香が、鼻腔からすーっと浸透しめくるめく官能の極地へと俺を誘う。
「どう? これがヴァルダーラ三姉妹の……おっぱいよ♪」
「おっぱいですぅ……お兄さんはおっぱいに負けるんですぅ……♪」
「おっぱいおっぱい♪ お兄ちゃんのお顔にむに~っ♪ 私は小さいけどピンポイントでおっぱいできるからかゆい所にも手が届くよ~ほら~♪」
「うっ……あっ……くっ……いいぃ……」
 悶えながら何とか息を吸おうと顔を出す。直後に弾力のあるおっぱいに包まれる。ミーナのはじける爆乳がみっちりと俺の顔を隙間なく埋め尽くした。
「あは♪ ほら私のおっぱいがぴったり♪ お兄ちゃん♪ このまま……窒息しちゃう? うふ♪」
「む……んん……ん~~~っ!」
「あら駄目よミーナ。まだ隊長さんには利用価値があるからぁ……はぁん♪ さぁ坊や今度はこのネーナのおっぱいにいらっしゃい……♪」
 窒息寸前の俺を救ったのはネーナだった。ひょいと体を軽々しく持ち上げられて、双乳の谷間に深く取り込まれる。
 今までとは違う、例えようのない一体感を感じる。超乳の谷間。妖艶な熟女の、毒婦のような危険な色香。むっちりとして汗ばんだ谷間。
「あ、ああああ……」
 俺はうめいた。背中までぐるりとおっぱいに回りこまれて、倒錯した快感に打ちのめされていた。
「どう? 私のおっぱいならこんなに深く包んであげられるのよ……。ほら、もっとこっちにいらしゃい……」
「ふぁ」
 素っ頓狂な声を出す俺。ネーナの腹部にペニスがぬるりとめりこんで気持ちいい。おっぱいの甘ったるいミルクのような匂い……。ああ……出してしまう。この淫らな妖女の魔惑の谷間で……。
「ふふ……はいパース♪」
「おっと姉さんナイスですぅ♪」
「ああっ」
 射精する寸前に俺はぽいっと投げ出されていた。しかし移動した先はまたおっぱいだった。ニーナの若々しいぴちぴちとした超乳の中。ネーナの痺れるような熟れた魅惑とはまた一味違うが、健康的で艶かしい色香が淡いやすらぎをもたらしていく。
 天女のような優しい抱擁だった。清楚でどこか懐かしいのに浸りきってはいけない危険なためらいがある。
「次は私ですぅ♪ ニーナお姉さんのおっぱいも負けず劣らずおっきくていいですよぉ♪」
「あっ……はぁ……」
「ほらほらどうですかぁ~。これがいいんですかぁ? 両手でおさまりきらないおっぱいをぐにゅってつかんでもいいんですよぉ?」
「はん……あん……」
 俺はその言葉に誘われるようにして、ニーナのおっぱいを持ち上げた。ずっしりと重量のあるそれは簡単には持ち上がらない。一体どれだけの甘美な幸せのジュースがこの中には詰まっているのだろう。自分自身もその組成液の一部になりたいとさえ思ってしまう。
「……おっぱいも……飲む?」
「ああ……はい……」
 うなずかない理由はなかった。俺は既に尖ったピンク色の乳首めがけて、赤子のように口先を伸ばした。
「あぅん……ふぅん……おっぱいおいひ……」
「あら可愛いですぅ~♪ 私の赤ちゃんにしたいですぅ~♪」
 段々と陶酔が深まるのが自分でもわかる。この超乳の女に全てを捧げたいという思いが強まる。
 もっとおっぱいで弄ばれて……ああ……ママと言ってしまいたい。そうしたらもっと……おっぱい飲んで……ああ……。
「あんニーナお姉ちゃん。早く早く~次私~♪」
「もーミーナったら……。まぁいいわ。はいパース♪」
 再び無造作に投げ出される。次に俺の宿主になったのは、お手ごろのやっと手におさまる大きさのおっぱいの持ち主だった。何度も言っているが姉の二人が常軌を逸したサイズなので、このミーナも十分な巨乳の持ち主だ。
「はーいお兄ちゃん♪ 私のおっぱいが一番張りがあって気持ちがいいよ~♪ お姉ちゃん達なんてただの脂肪の塊だから~」
「うむっ……」
 そんなことはと思ったが、ミーナのおっぱいは自分でいうだけあって根本的に何かが違った。ほのかな分泌物で常に肌が濡れていて、顔をそっと寄せれば肌がぴたっと吸い付くのである。それは生臭いようないやらしい気持ち悪さではなく、晴れ晴れとして澄み切ったような鮮烈な心地よさだった。
 ひとたび取り込まれてしまえば、何度でもキスをして顔を埋めたくなってしまう。何度も何度もおっぱいの抱擁を受けたい。爆乳の可愛らしい少女の淫らな嬌声を浴びながら背徳的な洗脳を受けたい。どこまでもどこまでも堕ちてしまいたい。
 俺はすっかりこの少女が自分の軍を壊滅させたことを忘れていた。いや、心に残っていたとしてももうどうでもよかった。ひたすらミーナの作り出すおっぱいの理想郷に、ぷかぷかと漂っていたかった。
「にぎってぇ……おっぱい♪」
「うん……」
 両手を取られて乳房にむにゅっと五本の指が食い込む。内部には繊細な筋肉の躍動を感じる。もめばもむほど甘い感触を指に送り込んでくる。もっともみたい。ミーナのおっぱい。おっぱい、おっぱい、おっぱい……可愛い過ぎる爆乳少女のおっぱい……。
「あんいいよぉ……♪ もっとしてぇ……ちぎれちゃうぐらいにおっぱいにぎってぇん……♪」
「あっ……ああっ!」
 媚びて甘える声に押さえきれない衝動が巻き起こる。大好きなミーナ。押し倒して小さな体をめちゃくにしてしまいたい――。
「はい、パース♪ 駄目だよお兄ちゃん♪」
「えっ、ええっ」
 俺は理性が切れる寸前に放り投げられた。再び肉の狭間に据え置かれてしまう。
「あら何してるの坊や? 私の妹に手を出していいと思ってるの? ……もう悪い子♪ むにゅ~♪」
「ああ……」
 背後からネーナに抱きつかれた。視界が全ておっぱいにうずまる。ミーナの妄想を簡単に打ち砕く妖美で熟れたおっぱいの魅了。
「ママって言いなさい……坊や……」
「え……ええ」
「言いなさい……ママのおっぱい大好きって……」
「は、はい……言います……」
 背後から囁くようにつぶやかれる。ぐにゃりと背中で妖しく形を変えるおっぱいの面積が、俺の脳を既に支配していた。
 駄目だ。言ったら。もう戻れない。でも、戻る? どこに? 俺は……。一体どこに?
 それよりも……おっぱい。おっぱい……おっぱい……。ママに……。
 優しくしてくれるママ。すっぽり包み込んでくれるママ。超乳の……スケベなおっぱいのママ。
 ママ、ママ……。好き……ママにもっと溺れたい……ずっと、このまま。
 俺は自分自身に陥落した。そしてうっとりした顔で自然に口を開く。
「……マ」
「ん? 何? 聞こえないよ?」
「……ママぁ」
「ふふ♪ もっと大きな声で言いなさい♪」
「ママ……ママ、ママ♪ ママぁ♪」
 俺は完全に堕ちた。魔性の妖女達の、淫靡な密戯に翻弄されて心を絡め取られた。
「あ~らいい子ね……♪ もっと頑張ってくれると思ったけど……まぁいいわ。ほらあっちのママ達にも挨拶しなさい」
「あ……はぁい……♪」
 今度はそっと体を優しく押さえられる。目の前には、後ろのママと同じぐらいの大きさのおっぱいを持つママが待っていた。
「は~いボクちゃ~ん♪ ニーナママでちゅよぉ~♪ こっちのママもおっぱいママでちゅよぉ~♪」
「ママぁ……はぁい……いきますぅ……」
 四つんばいでママの下へと這う。直後に抱え込まれておっぱいのプールへと飛び込む。口元へと乳房が優しく押し付けられる。くちゅっとかみ締めると、白いミルクが放射状に飛び散り俺の頬を濡らしていく。
「あら坊やはおりこんちゃんでちゅね~♪ ちゃんとママのミルク出るとこわかってるのぉ? ほらお口をおーきく開けていっぱい飲みなさぁい……♪」
「はぁい♪ んーうま、ん……」
 口を開けると、甘いミルクの香りが口いっぱいに広がった。舌が痺れ喉が痺れ胃も痺れる。そして吸収されたミルクは俺の脳細胞まで侵しつくして白い妄想に溶け込んでいくかのようだ。
「ねーねー。ミーナもママしたい~ん♪ え~っと私は……妹属性のロリママね♪ はぁ~んお兄ちゃん~ミーナと一緒にママフェチプレイしよ~ほら~」
「はぁぁ……」
 背後から抱きついてくるミーナ。そして俺の臀部の方へ顔をうずめてくる。これは……まさか……ああ。
「ふふ……ぺろぺろぺろりんっ♪ お兄ちゃんのアナルぺろぺろするね……ママがぁ♪ 可愛い爆乳のママがお掃除してあげるね……んちゅ♪」
「そ、そんな……」
 腰が抜けそうになり前に倒れこむ。前方にはニーナママの超乳。おっぱいとミルクの甘美な渦の中だ。
「うふふ……それじゃ私も加わりますね……さぁ……」
「あら姉さん……んもう……」
 その落ち着いた声はネーナだった。後ろからミーナごと押し込むようにしておっぱいではさんでくる。
「あん、お姉ちゃんそれじゃ狭いよぉ~む~」
 俺は超乳にサンドイッチの状態で完全に押しつぶされた。しかも股間にはミーナがうずくまってぺろぺろと舌を這わせてくる。
 耐えられない。俺はただ悶絶するしかなかった。
「ほらぁ~ママよぉ~。ネーナママのおっぱいどぉ?」
「ニーナママのぉ……エッチなおっぱいのむんでちゅよぉ? そうするともっと大きくなりまちゅからねぇ?」
「はっ、はい……むむっ」
「駄目ぇ。ネーナママのも飲みなさぁい……。こっちのが栄養あるからねぇ……」
「んっ……んっ……お兄ちゃん……お兄ちゃん……。私も忘れないでねぇ……」
「あ、はぁあああ……あああっ」
 全てがおっぱいになりそうだった。腰ががくがくと震える。そして――。
「ああっ、で、出るぅ……! ママ……ボク出ちゃううっ!」
「いいのよ出しなさぁい♪ ほらほらぁ♪」
「いっぱい出すんでちゅよぉ……ママのおっぱいにぃ……」
「んっんっんっ♪ 出してぇ……ミーナのお口に……」
 ミーナの頬がぎゅっと激しく収縮してペニスを吸い込んだ。おっぱいの間はみっちりとして隙間がない。窒息しそうなほどの強烈な圧迫感で俺は射精した。
「んっんん~~♪ ふぁ、お兄ちゃんのオチンチンビクビク~ん♪ んっ……んっんっ……」
「ああ出しちゃったの坊やぁ? エッチなママ達のおっぱいに囲まれてぇ……」
 喉を鳴らしながらイキ状態のペニスを飲み込まれる。と同時におっぱいの締め付けが更に強くなった。
「まだ終わらないのよぉ……」
「そうですぅ♪ もっとおっぱいで感じてしまうんですぅ……」
「そっそんなっ!」
 射精の余韻を楽しむ暇もなく、今度は腰の辺りまでおっぱいが降りてくる。ミーナはまだペニスを離そうとしない。たぷたぷと揺れる四つの肉塊に視界を完全に覆われて、、どうしようもないぐらいの悦楽の境地まで引きずられてしまった。
「むに……むにむに……」
「むにむに……ですぅ♪」
「う……」
 さっきイったばかりなのにまだ固かった。いや未だなお俺のペニスは、飽くなき快楽を享受しようと天へと貫かんと思うとほどそそり立っていた。
「ほらおっぱいおっぱい♪」
「おっぱいですぅ♪ まだおっぱいに溺れるんですぅ♪」
「ああっ! そんなにおっぱいって言わないでぇ……。ボクおかしくぅ……」
「いいのよ~もっとおかしくなりなさぁ~い♪」
「そうですぅ♪ おかしくなった先に幸せが待っているんですぅ♪」
「あ……ん、んもう……ミーナもいるからね、忘れないでね。ほら私もパイズリでむにむに~♪」
「ああん♪ ママ達最高……。もう……もう……」
 体を挟まれ股間を挟まれ俺は再び絶頂しようとする。とめどない脳内麻薬の快楽ビッグウェーブが、俺の神経回路を猛烈に弄ぶ。
「あふん、あふ♪ あは、はぁはぁ……♪ も、ま、また、あひっ、あへ、おっぱい、で、いく、おっぱい、おっぱいおっぱい♪ イク、イッちゃう♪ ボクイッちゃ――」
「ああん♪」
 三人が同時に甘い声をあげた。俺はおっぱいの中で盛大に射精してしまった。それでもまだ後から後から尋常でない快感の波が押し寄せてくる。
「また……出しちゃったねボク♪ じゃ次はおっぱいから出るミルク漬けでぴゅっぴゅしようか……?」
「そうよ。ママ達のあま~~い母乳で本当に溶けちゃえばいいんだわ」
「ふふっ♪ ミーナも母乳出るからね~。オチンチンの先っぽからも吸収してね~♪ そ~れっ♪」
「あふぅ!」
 もう何がなんだからわからない。体全体に塗り込まれる白い悪魔の媚薬。
 例え口から入れなくても、皮膚からたやすく俺の内側へと侵入してくるようだ。
 駄目だ、思考が溶ける。どんどん溶ける。おっぱい……ママのもの……。おっぱいが大きいママ達の……。
「ふふ……♪ もうイキっぱなしねボク♪ さぁみんな? そろそろとどめを刺してあげましょうか?」
「はい姉さん♪」
「りょぉ~かいっ♪」
 俺はビクンと体をそらして身構えた。一体何が起こるのだろう。期待と不安とが交じり合った倒錯した面持ちでその時を待つ。
「おっぱい……甘いミルク……いっぱいぴゅっぴゅっ……♪」
「ん……たっぷり……飲むのよ……ふふ♪」
「いっぱいぎゅ~~って絞ってあげるね♪」
「あ……うん」
 今までよりもいっそう膨大な母乳が俺を濡らす。巨大なおっぱいの中にはこれが詰まっていたんだと思う。その中身に翻弄されて……そして今……。
「ああ……ママ……ママ幸せ」
 俺は歓喜の嗚咽を漏らした。目も耳も口も母乳にふさがれて、自分が何を言ってるかさえも怪しい。
「あぷ、あぷあぷ。あ……」
 本当に溺れてしまいそう。おっぱいの中で、窒息、でも。
「あは♪ できあがっちゃったかしら?」
「私達にかなう奴なんていないんですぅ♪」
「お兄ちゃんもっとれろれろぬちゅぬちゅ~ん♪」
 最後までおっぱいは俺を離そうとしなかった。歓喜うずまく肉の狭間で、俺の意識は無常に途切れた。




「あ……はい。アンゴルモア軍の侵入経路は……バーストラの関門に勢力を一極集中……そして別働隊は……」
 俺はネーナの胸に優しく抱かれていた。赤子のように頭を撫でられながら、次々とよく意味のわからない質問をたずねられる。
 それはただ記憶の断片として残っていたかすかな残り香で、今の俺には別段何の意味もなさないように思えた。いや実際はそうではなかったのだが、度重なるネーナ達の責め苦に心の深奥まで完全に虜にされていた。
 俺は自分の属していた国を確実に裏切ったのだ。でも……もうどうでもいい。このおっぱいに顔をうずめていれさえすれば。
「ふふ……いい子ね。でもそれ本当?」
「ほ、本当だよう。ボク嘘つかない」
「わかってるわよ……。じゃ次の質問ね。ほら……もっとおっぱいの谷間の奥にいらっしゃい……。ここでもっと優しく問い詰めてあげる……」
「はぁい……」
 ネーナのむっちりとしたおっぱいに自分から顔を埋めていく。全然底が見えない無限空間にも思えるおっぱい。この肉の檻の中では決して嘘なんてつきようもないのだ。全て洗いざらい吐くしか選ぶ道はない。
「何だかあなたの国と同盟を結んでいる国があるみたいなんだけど……どこかしら? ねぇ……」
「あふ……」
 優しく優しく揺り籠のように扱われた。ふわりと頬に張り付くおっぱいが心地よい。何も考えられなくなる。同盟? いや、うん? どうして?
「言いなさい……」
 俺が黙っているとネーナのおっぱいが妖しく形状を変える。そっと両手で押すだけで、俺の頭はするするとその淫らな乳房の奥へと更に誘い込まれていく。甘い香り、柔らかい感触、口でちゅっと吸い付けば蕩けるようなミルクの味が舌を痺れさせる。
「あ……たぶん。パライズル共和国と……ああ……裏の……補給経路はアラムナ山脈の隠し通路を使って……合言葉は……そして……」
「ふふ……そう……他には? もっと心の膿を吐き出してすっきりするのよ? ママがぜ~んぶ聞いてあげる♪」
「は、はいぃ♪ 全部、ぜ~んぶ言いますママぁ♪」
 口からは滝が流れ落ちるように言葉の洪水があふれる。
 直後に、俺は射精しながら何もかもを垂れ流していた。もうどうでもいい。ママだけが自分の全てだから。
「ふふ……ふふふ……うふふふふ♪」
 おっぱいが笑っていた。俺は漆黒の暗闇の中で二、三度ぶるっと身悶えた。



  1. 2011/12/02(金) 22:01:54|
  2. SS
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逆寝取られ専門メイド喫茶一号店

逆寝取られと罵倒洗脳調教の一風変わったSS。

逆寝取られもかなり好きなシチュです。

こう第三者がいるというのが実によい。
好きな人はどうぞ。
続きはあるかもです。






「ケンゴぉ。何でこんな店入るのよ。今日は映画見ようって言ってたじゃん」
 僕の彼女――アツコが口を尖らせながら言った。
「こ、ここのコーヒーが美味しいんだよ。映画の前に君にぜひと思ってさ……」
「ふーん。ならいいけど」
 アツコはしぶしぶながらも承諾したようだった。
 彼女は僕にはもったいなさすぎるぐらいの女性だった。目鼻立ちも整っていてプロポーションも優れている。細身の身体ながらちゃんと出るとこは出ているが、ある種の女の下品さを感じさせない、僕好みの最低限の節度を保っているごく自然的な容姿だった。
 ナチュラルで、古日本風の美人を思いおこさせるような清楚な顔。性格は多少きつめだが、僕はそんな彼女のことも好きだった。こうぐいぐい自分を引っ張ってくれるような強気な態度が僕には都合がいい。
 こんな理想的な美人が、どうして冴えない僕と付き合っているか、その理由は一旦は割愛する。それは運命的な出会いではなく、ある一つの恣意的な意思によって導かれたもの。いずれおいおいと明るみになるだろう。
 とにかく僕は今日この日、彼女のアツコと連れ立ってこの店の扉を叩いたわけである。
「いらっしゃいませー」
 黄色い声が響いた。
 ここは今流行りのメイド喫茶である。本来ならば彼女と来るべき場所では決してなかった。しかし僕にはある魂胆があった。
「えっ。何ここ?」
 アツコが驚くのも無理はなかった。店内には、わざらしく猫耳をつけて、ミニスカメイド服を装着した女の子達でひしめいていたからだ。
 メイド喫茶。いわばオタクのための喫茶店である。可愛らしくコスプレした女の子達が、むっちりとした太ももをちらつかせたり、柔らかそうな胸の谷間を見せびらかしながら、愛想よく接客してくれるのだ。日頃から、満たされない欲望を抱えている男子諸君にとっては聖地に違いない。
「あ……。じゃ、奥の席で。北側ね」
 僕は待ってましたという風に言った。
「はい! それではこちらへどうぞ!」
 小柄なメイド服の子が元気よく応対した。
「ちょっとぉ。一体どういうつもりなのよ? こんなチャラチャラした服着た子の店なんて。私嫌よ」
 アツコがあからさまに不満を口にした。顔をしかめてそっぽを向いている。
「いや。本当にコーヒーが美味しいんだよここ。そりゃ女の君にはこんな場所不愉快だろうけど……」
 僕は慌ててしどろもどろに説明した。
「ふぅん。まぁいいわ。さっさと飲んで映画いきましょうね」
「うん……」
 適当に返事をする。
 残念だけどアツコの映画に行くという未来はないであろう。これから始まるのは、アツコにとって非常に嫌悪に満ちた体験になるであろうから。僕の卑小な利己心に満ちた、屈辱的な行為の犠牲になるはずだから。
「それではここの個室で……ごゆっくり♪」
 小柄なメイドが満面の笑みを浮かべて言った。
「ありがとう」
「あーありがと」
 おじぎをして立ち去る店員の後ろ姿を見送る。
 僕たちは、もう後戻りできない監獄へと踊りこんだ。僕は知っているが彼女は知らないのだ。そして捕まるのは僕だけだ。
 はやる気持ちをおさえながら、僕はその運命の扉を開いた。


 個室は広々としていて気分がよかった。
 彼女とテーブルに二人で向かいあう。やはり彼女は美人だった。いつでもどこでも美人というのは見栄えがいい。
「ふあぁ……」
 アツコが眠そうにあくびをした。気だるそうな表情もさまになっている。
「お待たせしました! アイスコーヒー二つお持ちいたしました」
「お持ちいたしました!」
 ほどなくして、メイド服の店員が盆にコーヒーを乗せながらやってきた。
「私ミカっていいます。よろしくお願いしまーす♪」
「私は……モモって言います。ちょっと甘えん坊さんで……新人だけど頑張ります。今日はよろしくお願いしますっ♪」
 二人はそう言って深くおじぎをした。
 キャピキャピとはじけるような若々しさ。至極健康的なお色気が、どこかしこ身体全体から発せられている。
 少し背の高いミカと名乗った方はスレンダーのお姉さんと言った風情だ。たぶんアツコよりは年下だろう。すらっとした白い腕が艶かしくて、ふりふりのミニスカートから覗く絶対領域に男心をくすぐられる。長いさらさらの黒髪が肩までかかっていて、シャンプーのいい匂いがこっちまで漂ってきそうだ。
 対比してモモは小柄で身長は150センチぐらいしかない。顔の造形も丸っこくて愛らしくかなりの童顔である。しかしその童顔に反発するような大きな胸が、ぷるんとしてサイズの合ってないメイド服の中で自己主張していた。深い谷間、前かがみ、上目遣い。そんな卑猥な妄想を頭に巡らすには、かなり容易い危険な容姿であるのは間違いなかった。ロリ巨乳という形容はこの子に一番にふさわしいと思われた。
「じゃ……失礼しますね」
「失礼……しますっ♪ きゃ、きゃぴっ♪」
 コーヒーをテーブルに置いた二人。当然のように立ち去ると思ったが、そこからの現実はまるで違った。
「え、え? ちょっと。何してんのあんた達?」
 アツコが目を白黒させていた。それもそのはず、ミカとモモは僕の隣にぎゅっと寄り添うようにして座ったからだ。腕を取られて、両側からぎゅうぎゅうと身体をおしつけられる。女の子のいい匂いがぽわんと鼻腔を通り抜けた。
「あ、ああ。こ、困るよ君たち」
「うふふ。お客様のお名前はなんていうんですか?」
「お客様~すりすり♪」
 正面のアツコは呆然としていた。まぁ当たり前だろう。彼氏とメイド喫茶にきて、なぜかこうして可愛い二人の店員に両手に花の状態で捕らわれているのだから。
「ケ、ケンゴぉ! 何デレデレしてんの? ここ喫茶店でしょ? 私を馬鹿にしてんの? もうコーヒーはいいから出るわよこんなとこ……。ほら! 立ってよ早く!」
 アツコのどなり声。でも僕は動かない。
 なぜ? 
 そう僕は知っているから。ここはそういうお店なのだ。
 逆寝取られ専門のお店。初めに入った時の、奥で北側と言ったのは合言葉だ。
 ここまでの経過の説明は少々長くなる。
 この世には様々な性癖が存在する。それはもう一般人から見たら本気で引くようなものまである。
 そしてその中でも『寝取られ』というのは、忌避されながらもまぁジャンルの一つして確立されたものであると思う。自分の彼女が他の男に寝取られているのを見て興奮する。わからない人にとってはとてもとても理解しがたい性癖のようである。
 どこに自分を感情移入するか、それとも対岸の火事で傍観的な思考を楽しむのか。それは人それぞれ違うと思うしそれに文句つける理由もない。
 しかし更に稀有な性癖が『逆寝取られ』である。今度は自分に彼女がいて、第三者の女の子に色仕掛けなりなんなりで誘惑されて篭絡されてしまうのを楽しむのである。これはある意味ハーレム的なものと似通っているのかもしれないが、実際に傷つく自分の彼女という存在が非常に大きい。
 悲しむ彼女。でも自分は他の女の子に誘惑されている。彼女の前で、醜態を。でも感じてしまう。泣き叫ぶ彼女。その横で僕は背徳的な快楽をむさぼる。そんな鬱屈した性癖がおそらく『逆寝取られ』の本分であると言えよう。
 僕はそんな偏った嗜好の創作物をいつも探していた。それは僕の欲望を一時は満たしていた。が、しだいに非現実では満足できなくなっていた。現実の彼女の前で、自分が堕ちる瞬間を見て欲しくなったのだ。
 苦労してできた彼女。必死で虚構の背伸びした自分を取り繕って出来た彼女。
 その彼女の顔が、ぐにゃりと歪む瞬間を僕は見たかったのだ。
 我ながらにこの倒錯した性癖には苦笑せざるを得ない。二次元の世界に引きこもっていればいいのに、お金まで払ってわざわざ――。
「うふーんお客様ぁ♪ お、な、ま、え……教えてくださいなぁ……♪」
「モモも知りたいな♪ きゃぴぴっ♪ モモ……おっぱい大きいんだよ? 触ってみる?」
 このミカとモモは僕側の事情を知っている。この店は逆寝取られという珍しいシチュをかなえてくれる素晴らしい店だ。アツコが何を言おうと、こうして僕をおとそうと誘惑してくることになっている。
 何も知らないのはアツコだけだった。僕の彼女。初めて出来た……理想の……。それを今僕は……ああ。
「あ、ああ……。僕……ケンゴって言います。だ、だから……」
「あっケンゴさんって言うんですか? ふふ……いいお名前♪」
「ケンゴお兄ちゃんしゅきしゅき♪ ん~ちゅっ♪ きゃぴきゃぴっ♪」
 とろけた振りをして名前を言ってみた。ミカとモモが急に勢いを増して擦り寄ってくる。
 恐る恐る正面を見てみる。
 アツコの反応。
 鬼のような形相。だがそれも一瞬でかき消えた。
「は……。何これ? つまんない。私帰る」
 呆れたようにため息をついていた。こんな馬鹿な情けない男なんかに……といったところだろうか。
 アツコはすっと立ち上がろうとした。
「あ……。違うんだこれは。この子達が勝手に……」
「もういいわよ。あーあ……最低の気分」
「ま、待って! 本当に違うんだ。こら! 離れろ!」
 僕は気を取り戻した振りを見せる。が、これも演技だ。本当は誘惑されて堕ちたいのだ。はっと正気を取り戻す瞬間、その瞬間に強烈に誘惑されて、更なる深みにはまる展開が僕は好きだった。
「はぁん♪ ちゅ♪ 好きぃ♪ ちゅっ♪」
「お兄ちゃぁん……しゅき♪ いかないでぇ……。むちゅっ♪」
「あ……あ……あっ」
 思いもむなしく、僕は二人の接吻攻撃にさらされてしまった。頬に粘りついてくる柔らかい唇。すべすべの細腕が顔と体を撫で回してくる。甘い吐息、押し付けられる巨乳の重み。
 僕は一瞬で視界が濃いピンク色に染まった。陶酔しきった甘美な空間である。誰かに自我を操れた時に起きるとても官能的で安らかなイメージカラーだ。
「……最低」
 くるりと後ろ向いたアツコの背中が見えた。
 ああ僕の彼女が僕のせいで離れようとしている。僕の自分勝手な欲望のために。
 事実僕のペニスはがちがちになっていた。仮想の世界で妄想していたよりもずっと硬度が増していた。彼女のあんなに眉間にしわを寄せてうんざりした顔は初めて見る。汚物でも眺めるかのような見下した視線がたまらなかった。
「はぁ……はぁ……ん……」
「あは♪ 可愛いですね……」
「お兄ちゃん変な声だしてぇ~♪ やっだぁ~♪」
 僕は思わず女の子のような声を出していた。何もできない自分。弱い自分。その絶望感に打ちひしがれながらも快感を感じてしまういけない自分。
 彼女はまだ部屋から出ていない。まだ終わっていない。まだ、まだなんだ。
「まま待って! アツコ!」
 最後の力を振り絞って僕は大声を出した。
 ぴくっとアツコの肩が止まる。
「ああ、あの……。違うんだったら。僕……本当にコーヒー飲むために……ここ……」
 せつなそうな声で言う。もちろん本気で止めようという気持ちはない。
「あれ? 何しようとしているのですかお客様? ね? こんな風に……されたかったんですよね?」
「きゃぴっ♪ ほらモモのおっぱい触ってお兄ちゃん……♪」
「あっ、ああ……」
 ミカの手が僕の股間をぎっと握り締めていた。パンツのみならず、ズボンにも我慢汁がたっぷり染みている。
 モモは僕の手をとると、自分の胸の谷間へと誘い入れていた。暖かい柔肉の感触に一気に何も考えられなくなりそうだ。
「彼女……アツコさんって言うんですね。かわいそう……こんな情けない彼氏で」
「そうそう……かわいそう……ふふっ♪」
 突然二人の様子が変わっていた。僕は何もできずにとろけている。一体二人は何をしようとしているのだろう。
「あの、これ言ってもいい……ですかね? いえ、言っちゃいましょうかどうせだから……」
「いいんじゃない? 別に?」
「あ、ああ……」
 アツコはずっと無言だった。肩が細かく震えているのがわかった。
「あのですね。ケンゴさんはぁ、この店でですね、逆寝取られ経験がしたいから……そのためにアツコさんを利用したんです。ひどいですよね。ふふっ」
「ね。男って最低ですよね。高いお金まで払ってわざわざこんなこと……」
 何を言っているのだろう。いくらなんでもここまで言わなくてもいいではないか。僕はそこまで望んで――いや。
「変態。変態です」
「変態変態。最低の性癖ですね。きゃぴっ♪」
 耳下で囁かれながら、ペニスをズボンの上からさすられると直ぐにイキそうになってしまう。
 僕はやばいくらいに感じていた。わざわざ彼女の前でネタばらしを……。全ての信頼を打ちくだかれた僕。根本的に二度と修復不可能な鉄槌を下されたのだった。
「逆寝取られで感じるなんて最低です。彼女の気持ちなんて考えたことないでしょ? あはは♪」
「さいて~い♪ お兄ちゃ~ん♪ モモも幻滅しちゃう~♪ ゴミ、クズ、きゃははは♪」
「あっ、ああ……あああ……」
 立ち止まっている彼女。やがて扉がゆっくりと開いた。音もなくすべり消えていく。そのせつない後ろ姿を僕は見つめている。
「あっ、ああ。ほらお客様♪ 彼女が行ってしまいますよ? でも追いかけないんですよね? 変態だから! 真性のゴミクズの最低男だから! お金まで払って逆寝取られプレイなんて実行しちゃうんですからね♪ んっ、ほらイッていいですよ私の指で? ほら、ズボンはいたままで無様に出してくださいな。ほらほらほら!」
「あ~んアツコお姉ちゃんが怒っていっちゃう♪ でも……お兄ちゃんはモモ達の方が好きだから、このままエッチなことしちゃうんだよね? うふふっ♪ ほら……おっぱいむにむに、むにむにむに……♪ モモのロリ爆乳でもっとラブラブしよぉ~? ねぇねぇねぇ~ん♪」
「う、うぁあ。ア、アツコごめ、ごめん! んんんっ!」
 二人の責めが最高潮に達していた。くりくりとすりあげる指の速度、むにっと顔に押し付けられる胸の甘美な圧迫。
 遠ざかるアツコの後ろ姿。
 もう手に入らない彼女。
 最初で最後の彼女。
 僕には高嶺の花で美人で理想の……。
 それがこんな場所で……。
「ほらイッて? イクイク♪ 彼女に捨てられてイッちゃう♪」
「イッてぇ~ん♪ モモの小さなお手手も追加しちゃうよ? きゃぴっ♪」
 消え行く彼女。
 僕は涙を流していた。
 同時によくわからないドロドロの感情が、悲しみと同時に腹の底からわきあがってきた。
「あっ、あんっ。僕、イッちゃう。アツコ、ごめん。で、でるぅ……ごめん、ごめんごめん!」
 僕はアツコの名を無意識に呼んでいた。そして償いきれるはずもないのにごめんと連呼する。
 なんて偽善的な。やはり僕は最低の人間だ。
「あははっ♪ もう遅いんですよ? 彼女はもう地の果てまで逃げて行きましたからねー。ふふふ♪ それもケンゴさんのせいですけどねー。ほらほらほら! しこしこぴゅーでいっぱい気持ちよくなりましょうね♪ 最低のマゾ人間にはこれがお似合いですよぉ~♪」
「お兄ちゃん……出して? ぴゅぴゅぴゅって♪ アツコお姉ちゃん裏切ったぁ、背徳感? っていうのぉ? いけないことして感じるんでしょ? ほらモモの手でぴゅぴゅするんでしょ? しこしこしこ……。あ、あ、あ。出るの? ん? きゃぴぴぴっ♪ ほらぁ~出しちゃえマゾ豚のお兄ちゃん~♪ あははは~♪」
「うっ、うわ。い、いいいいっ。いくいく! あ――――」
 二人の指が僕の分身を火が出るほどすりあげた。
 僕は爆ぜていた。
 その瞬間、アツコの姿は僕の視界にはいなかった。
 一片も彼女は存在していなかった。
「あっ、ああ……ああああ……うっ」
 僕は涙を流しながら射精していた。思っていたよりも最高に心地よかった。何か大事なものと引き換えに得られる充実した快感。それが心から最高に感じられた。
「ふふふ……♪ お客様、お疲れ様でした」
「お疲れ様お兄ちゃん。モモも何だか興奮しちゃった。きゃぴ♪」
 心臓の鼓動がどくどくと激しく脈打っていた。今まで味わったことのない、爆発的な快感が僕の中で産声をあげていた。
「はぁ……はぁ……」
 当たり前だがアツコはもういない。ぽっかりと開いた扉がただむなしかった。


「え……あ。それじゃ僕はこの辺で。とってもよかったよ君達」
 短い愉悦の時は終わった。僕は適当に身支度を整えてここを立ち去ろうとした。代金は前もって振り込んであるから心配はいらない。
「ご利用ありがとうございました。あ、お待ちくださいお客様。もしよろしければ……無料サービスなどありますがどうでしょうか?」
「どうでしょうか?」
 ミカとモモが目をばっちと開いて覗き込んでくる。一仕事を終えた彼女達。しかしまだその奥の瞳の妖しい輝きは消えていない。
「あ、うん。その……」
 僕は口ごもってしまった。無料サービスと言われるとなぜか身構えてしまう。
「サービス……です。きっとお客様は大好きだと思いますよ?」
「ね? サービスサービス♪」
 前かがみになって胸を見せ付けてくる二人。汗ばんで淫らに濡れた谷間がぎらついている。そこから香るむわっとした豊潤な匂いに僕はくらりとした。さっき一回出したはずなのに、また直ぐに股間の隆起を感じてしまう。
「サ、サービスって……何かな?」
 いけない、聞いてはいけない。そう思いつつも言葉が口を滑っていた。
「今度は洗脳プレイです。うふっ♪ きっとお気にめしますよ?」
 ミカがくすくすと笑いながら言った。
「洗脳……だよ? モモのおっぱいも使っちゃうかも? きゃぴっ♪」
 普通ならば、かなり痛々しいキャラのモモが胸を揺らして頬を染めていた。
 艶かしい腰つき、甘い香り、僕を見つめてくる天使か悪魔の瞳。
 僕はこの魅了光線に耐え切れるはずもなかった。洗脳プレイという本能的な欲望を煽る言葉に、僕の心は否応なしにときめいていた。
「じゃ……たのもうかな」
 目がうつろになって口が半開きになっているのが自分でもわかる。既に半ば、洗脳されかけていた。
「了解いたしました。それでは……。あ、お客様。携帯電話はお持ちでしょうか? 怒った彼女に電話をしようとするところからなんてどうでしょうか?」
 なるほど。さっきの続きからというのも自然な流れかなと思った。彼女はもういないがその余韻を楽しむというのもオツである。
「それで頼むよ」
 僕は普通に言った。
「はいそれでは」
「お兄ちゃん♪ またいっぱい責めちゃうからね♪」
 にんまりと笑う二人。僕はポケットから携帯を取り出して電話するそぶりを見せた。
「あらいけませんお客様。そんなことをされても……」
「駄目お兄ちゃん♪」
 二人が僕の腕に手をからめてきた。そして潤んだ瞳でじっと見つめてくる。またむらむらとした淫靡な空間に世界が変わる。
 彼女は行ってしまった。でもまだ修正できる。電話をかけて謝るんだ。あれは店側の何か勘違いで、たちの悪い偶然の出来事が重なってしまったんだと。
「や、やめろ。彼女に、アツコに謝らなきゃ……」
 僕の恥ずかしい演技。白々しいが興奮してしまう。彼女への未練を今から淫乱な女の子に断ち切られてしまうのだから。
「もう遅いですよ。だってあんな恥ずかしい声ばっか出していましたもの……」
「そうそう。お兄ちゃんったら、アツコお姉ちゃんそっちのけでオチンチンすりすりされて喜んでたでしょ?」
「くっ、あ。ち、違う……。とにかくに僕は電話を……」
 それでも必死で手を払いのけて電話をかけようとする。
 白い手が、邪魔する。頬に甘い口付けを塗布される。耳に生暖かい魅惑の吐息が吹き込まれる。
「ん、ちゅっ♪ はぁん♪ うじうじしてる男は嫌われますよ? 切るときはばっさりとが一番です。あんまりたらたらしてるとストーカーみたいですよ? うふふ♪」
「んちゅ~~♪ ほらお兄ちゃん力ぬいてぇ? ミカのおっぱいで腕をはさんじゃう♪ おっぱいにふにゅってされたら、お兄ちゃんの腕はモモのものだよ? ほらぁ~♪」
 モモのマシュマロのような巨乳に腕を取り込まれた。あまりの優しい感触に力が入らなくなる。
「あっ、ああ……やめ……」
 ポロリ。
 僕は携帯を取り落とした。彼女との意識をつなぐ手段が完全に淘汰されてしまったのだ。どうして力が入らなかったのだろう。アツコのことを本当に僕は大事にしていたはずなのに。それなのに僕は簡単に取り逃がしてしまった。
 決して軽い気持ちじゃなかったはずだった。アツコは僕の――。
「あ~あ……落としちゃいましたね……」
「きゃぴっ♪ モモのおっぱいで腕……だら~んってなっちゃったね? そんなにおっぱいよかったの?」
「ち、違う違う。はなせ……僕はもう帰るんだ。ど、どけったら!」
 僕はいらだった振りをする。もちろん帰る気なんかない。どんな甘い誘惑で僕を包んでくれるか反応を見たかった。
「やっぱり彼女のことなんてどうでもよかったんですね」
「そうだよね……うふっ♪」
「もう連絡しても遅すぎますよ。終了。ゲームセットです。あはは♪」
「終わりだよお兄ちゃん♪ だから……ふふ♪」
「私達に全部任せてくださいね。彼女よりもずっといい思い出作ってあげますから……」
「ねーっ♪ むにむにむにゅっ♪」
 二人の責める声が僕の脳を揺らした。柔らかい胸を押し付けながら左右の耳を支配してくる。
 思い出、思い出。
 アツコとの思い出は何があったのだろう。全然思い出せない。
 甘い匂いに包まれて全てがどうでもよくなる。いけないこのままじゃ。アツコを思い出すんだ……。でも思い出せない。ふりふりとしたメイド服の心地よい肌触り。妖精のように可愛らしい二人の愛撫。記憶も何かも全て、この悦楽の谷間の中で吸い取られていくような気がした。
「何も考えなくていいですよ……」
「むにむに♪ そうだよお兄ちゃん……なぁ~んにもね……」
「心安らかに……」
「ゆっくり……落ち着いて……」
「あ……」
 二人が優しく囁いてくる。その言葉に背筋をぞくぞくさせながら聞き入ってしまう。
「くす♪ リラックスしてくださいね……。これからじわじわ洗脳してあげますから……」
「洗脳……洗脳……。とっても素敵な洗脳♪」
 僕は無言になって胸の中にうずまっていた。モモの爆乳とミカの美乳に心を奪われながら陶酔していた。
「お兄さんは……変態……ふふっ♪ 変態……変態さんです」
「変態……変態……変態さん♪」
「マゾ……変態。マゾ豚……豚……豚……」
「子豚ちゃん……♪ ぶーぶーって言うのよ?」
「豚……豚。豚、豚、豚」
「豚ちゃん♪ 子豚ちゃん♪ ほらぶーぶーぶーって言ってみなよ♪ きゃはは♪」
「うぅ……」
 僕は頭がぼーっとしていた。だがそれでも意識内の絶対的な臨界点。そこは超えないように保っていた。あくまでも――これは洗脳プレイだ。そこを履き違えてはいけない。
 豚、豚、豚。
 豚と言われ続けると本当に豚のようになった気分だ。
 床に手をつく。豚は畜生だから当然四つんばいだ。
 ぶーぶー。ぶーぶー。
 心に思い浮かべる豚のイメージへと自分を昇華させていく。
「いい豚だね……。それじゃこれから私が言うことを、よく心の中に刻み込んでね……」
「よーく聞いてね」
 ぶーと言ってうなずく。僕は豚だから人間様には絶対に従うべきなのだ。
「ねぇ最低の豚さぁん。豚さんはお金払ってこんな逆寝取られシチュなんかで興奮してぶーって射精しちゃうんだよね?」
「ぶ、ぶー」
 僕は豚語で答える。
「いけない豚さん……♪ しかも大切な彼女だったのに。でも……性癖だからしかたないよね。豚、豚ちゃん。情けない子豚ちゃん……きゃはは♪」
 人間様の言葉で僕は興奮する。そうその通りだ。僕は彼女を生贄に捧げるとっても最低な豚小僧なのだ。それでとっても興奮してしまって、地獄に落とされても当たり前の罪人に違いない。
「このクズ! ゴミ! 吐き気がするんだよ……このっ!」
「さいてー。生きている価値あるの? 汚物。見てらんない……。いっぺん死んでみたら?」
「ぶ……」
 罵倒の言葉が僕の心に突き刺さる。でも僕はこの時本当に自分の滑稽なほどの狂った性癖を感じていた。仰向けになって天上をあおぐ僕。その股間のペニスががちがちになっていきり立っていた。
 四本のにょっきりとしたおみ足。食い込むパンツが不可抗力で見えてしまう。小柄なわりにむっちりとして肉づきのいいモモの太もも。ミカのスレンダーなカモシカのような健康的な太もも。どちらも僕の心を狂おしいほどに幻惑して脳乱させた。
「何のぞいてんだよ豚のくせに!」
「豚ちゃんのくせにやっらし~♪ きゃはは♪」
「す、すみませ……ぶぶっ」
 そう言った瞬間、僕の腹に靴のかかとがめり込んでいた。ミカの片足の重量がきわどく僕のお腹をいじめていた。
「豚語以外は喋んないでね。耳障りだから」
「子豚ちゃんかわいそっ♪ ミカはちょっと怒りっぽくてサディストだからね♪ 素直になってた方がいいよ」
 僕は心底びびってしまった。ぶーと言う気力もない。涙ながらに服従の意を訴えようとする。
「こら豚。何で踏まれてここ固くしてんだよ。あ? 舐めてんのお前?」
「あ……ほんとだ。えっ? やだ……むくむくって……ふふ♪」
 確かに僕は勃起していた。ミカの汚い言葉づかいと踏みつけに頭がおかしくなりそうだった。
 そのままミカははいていた靴をポーンと投げ出した。
 足の裏。白いソックスの裏側。
 そこがペニスにびたっと張り付き刺激を送る。容赦のない圧迫だった。
「ぶ、ぶぶぅうう!」
 僕はペニスを痛いほど押しつぶされて大声をあげた。止まらない執拗な責め。侮蔑に満ちた視線が上から突き刺さる。
「あはは♪ 豚が鳴いてるよ。足の裏で粗末なチンチン踏み潰されてさぁ……」
「うふふ……」
 サラサラと生地の感触がペニスに直接伝わってくる。女の子の足裏で。蒸れた汗が染込む魅惑の足裏で。今僕は豚になりながら快感を享受しているのだ。
「ぶっ、ぶぅ……んぁああ……」
 ミカの足責めは強烈だった。今は両足ではさむ様にしながらぐっとペニスの脇を掌握している。痛いことは痛いのだが、ガチガチになったペニスが更なる痛みという快楽を欲していた。
「やだこいつやば過ぎ♪ 足で骨抜きになって気持ち悪い♪ ぶひぶひ言いながら私のソックス汚してさぁ……」
「んぶ、んぶうぁ、んぶぅ~」
 足の親指と人差し指の股の部分が、ペニスの亀頭にみっちりと絡んでいた。僕はただ畜生の鳴き声をあげるしかなかった。
「きゃはは♪ もうミカちゃんったら♪ 駄目だよそんなに乱暴に豚ちゃんを扱ったら……。ねぇ豚ちゃんも、もっと優しい方がいいよねぇ……? うふっ♪」
 モモの優しい声が聞こえる。そして僕の頭がふわりと持ち上がる。これは――。
「んぷ……」
 僕の頭はモモの柔らかい太ももの上で膝枕されていた。ぷにぷにとした腿肉の感触が後頭部に伝わる。上を見あげれば、ばんと張り詰めた巨乳の展望のなんと素晴らしいこと。
「洗脳プレイって言いましたよね。私が優しくお兄ちゃんを導いてあげますね♪ きゃぴ♪」
「うぁ……」
 ミカの足コキ。モモの膝枕。
 夢のようなハーレムの世界だ。
「ふん。まだイクなよ豚。勝手にイッたらぶち殺すからな」
「うふふ♪ 優しく……してあげますね♪」
 二人の声が同時にかかる。腫れあがったペニスは当に限界だ。
 モモの声。優しすぎる。これからアメとムチで手なづけられると思うと……あああ。
「お兄ちゃん♪ これからは私の声をよーく聞いてくださいね? ほら、上から……」
「ふわ」
 ぐっと身を乗り出すモモ。どんと重みのある巨乳が僕の顔を押しつぶす。いい匂い。甘い香水の匂いに僕は桃源郷へと誘われた。
 ミカは相変わらず何かを言いながら僕を罵倒している。ペニスにももう正気を保っていられないほどの刺激が加わっていた。
 その責め苦を帳消しにするかようなおっぱい。
 蕩けそうな声。
 どんどんモモに引き込まれてしまう。
「お兄ちゃんってば今日は最低なことをしたんですよね? まだ忘れちゃ駄目ですよ? 彼女を犠牲にしてどぴゅどぴゅしたんですよね……ふふっ♪」
「ぶ、ぶぅ……」
「とってもよかったでしょう? 普通のオナニーじゃ得られない快感ですよね? だからお兄ちゃんはもう満足できないんです。生半可なことじゃ。だから……またここに来る。そうでしょお兄ちゃん? 彼女を連れて……ふふ♪ 何回でも苦労して彼女を作って私達に寝取られにくるんです。それが豚になったお兄ちゃんの役目です。そうですよね? ね? ね?」
「む……」
 僕は思考を誘導されるような物言いに興奮してしまった。誰かに思考を操られてしまうのが僕の一番のツボだ。これが洗脳プレイか。でも僕は最終ラインにはちゃんと線引きしている。あくまでもやはりこれは仮想の世界なのだ。それを熟知した上で僕はこの状況を楽しんでいる……はず。
「ほら。豚ちゃん。誓ってくださいね。彼女を連れてここに来るって……」
「おら、答えろよ豚。この豚!」
「大きな声で誓ってください……。そうすればまたこうしていいことしてあげますからね……」
「うっ、う、ふぁあ」
 背中がびくんと反り返った。可愛い女の子が僕に誓えと言ってくる。これからの人生を。全部捧げろと思考誘導してくる――。
「大きな声で言ってください。僕は逆寝取られ大好きの変態ですって。ほら。ほら……。何度でも私達がねっとりと誘惑して寝取ってあげますよ……うふふ♪」
「言えよ豚。足でイキたいんだろ? 汚い精液で私のソックスどろどろにしたいんだろ? あ?」
「う、うわああっ! んぐっ!」
 ペニスの圧迫が強まる。巨乳が僕の顔をむちっと押しつぶす。
「い、言うからっ! 言いますっ。僕言いますぅ~!」
「ちゃんと豚語で言えよ。ほらほらほら!」
「あは♪ ついに出来あがっちゃいましたね♪ それじゃ私達に永遠の忠誠を誓ってくださいね……」
「ぶっ、ぶぶっ。ぶぶぶぶぶ、ぶぅううう――」
 僕は混乱した頭で忠誠を誓った。その途端に甘い巨乳に鼻と口を塞がれてしまう。そして加わるペニスへの甘美な足の愉悦。
「あ~んいっちゃういっちゃう♪ 洗脳されていっちゃう~ん♪」
「ほら私のおっぱいの匂いた~っぷり吸い込んでくださいね♪」
「んっ、んん……んんっ!」
 僕は今日二度目の射精を盛大にぶちまけた。洗脳服従隷従下僕。女の子二人に無様に篭絡された自分のことを思いながら絶頂した。
「あ……はぁ……はぁ……」
「うふふ♪」
「きゃぴっ♪ 一丁あがりです♪」
 ほっと一息つく。すっと霧が晴れるように架空の垂れ幕が持ち上がる。しだいに僕は現実感を取り戻した。
「お客様。これでサービス終了にございます。帰りはこちらでございます」
「お疲れ様でした~」
 ミカの顔がニコニコとしたスマイルに戻っていた。嗜虐に満ちたあの態度は影も形も見当たらない。
「あ、ありがとう」
 僕はズボンを持ち上げながら立ち上がった。
 そうか、この店はそういう店なのだ。洗脳プレイなどと称してこうしてお金を搾り取ろうとする。破滅願望のあるマゾにはうってつけの洗脳調教だ。だが僕の心は遠い別のところにしまってある。とはいえ長時間監禁されて、書面にでも契約されたのなら耐え切る自信がない。と、思ったがそこまでいったらただの犯罪である。だからこうしてプレイなどと言葉を濁して表向きでは体裁を保っているのだ。
 僕はきっちりと分別のある人間だからいいが、意思の弱い男などは簡単に骨抜きにされてお金も命さえも捧げてしまうのだろう。
 だが僕はリアルの破滅は決して望んでいないのだ。あるのは擬似的な破滅の体験だ。それならば何度でもシチュを変えて楽しめるからである。そのためなら一万や二万のお金は決しておしくないのだ。
「また来てくださいねー」
 そんな思いをめぐらしていると、さっきまで僕をやたらめったに責めていたミカとモモが、ペコリとおじぎをしていた。
 わざとらしく、ぷるんと濡れた谷間がいやらしく蠢いてた。それが僕を誘っているように思えて心がずきずきと疼いた。




 僕はぶらりと店の外に出た。予定外の汗をかいて体も心もおぼつかない心地がする。
 でもまだやることはあった。そう彼女だ。
「あ、待った? ごめん。ちょっと妙な無料サービスに絡まれて……」
 ベンチに座って、携帯に目を落としている彼女に声をかけた。
 名前はアツコである。そう、アツコ。
 僕の彼女の振りをしていた。アツコ。
 実はと言ったら大げさだろうが、アツコは『レンタル彼女』で雇ったただの他人である。近頃はそんなサービスまで存在しているとは、全く便利な世の中になったものである。
 彼女達は男性からお金をもらい、一定時間彼女としての役割を果たす。
 そしてさっき、僕の理想の逆寝取られシチュを果敢にも遂行したのがアツコである。
 もちろんアツコとは仮の名前だ。おまけに僕もケンゴなんて名前じゃない。
 どこまでも架空のキャラ作りで、非現実的な三次元空間を楽しんでいるのだ。
 普通に考えてみれば、目の前で彼氏が他の女にあれこれされて黙っているはずがない。喚く引っかく蹴る殴るの修羅場になってもしょうがない状況だ。
 ただ僕はそんな混沌は望んでいない。必ずどこかにセーフティゾーンを確保してその場を眺めたいのだ。そのためには現実の彼女なんか不要である。この屈折した一つの価値観を作り出すためのレンタル彼女で十分なのだ。
 僕は極めて卑怯な性格である。それも逃げ腰の、敗残兵のような愚かしさではなく、一歩進んだ遥か高みからこの地上を見下ろす、傲慢な神視点の卑怯さだ。僕は神様という存在が好きだ。絶対的な行使権を持つ神様の存在が。だから僕はいつでも神の立場にいたい。少しでもそこに近づきたかった。
「いえ全然。私の演技よかったですか?」
「ああとっても。それじゃお礼の方だけど……」
 僕は一万円札を取り出して彼女に手渡した。
「まぁこんなに。いいんですか?」
「うん。最高だったから」
「ありがとうございます。では失礼して……」
 穏やかな物腰で彼女はそそくさと立ち去った。仮想でも、一時は僕の彼女であったことなど、綺麗さっぱり忘れてしまうと思うとなぜか物寂しい。
「ふぅ」
 と、僕は大きくため息をついた。お金はかかるが普通では味わえない体験だった。これなら月一回で通うのもいいかもしれない。決してメイド店員の洗脳にかかったわけではないが、もっとこのシチュエーションに深くつっこんでみたかったのだ。
「次の彼女は……と。眼鏡っ娘のおとなしめの……黒髪ショートなんてどうかな?」
 そう独り言をつぶやく。
 ふつふつと燃え滾る欲望の炎。ひゅうと生暖かい風が吹いて、その揺らめきをゆさぶった。



  1. 2011/10/17(月) 22:29:11|
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青娥娘々SS

東方新作キャラから青娥娘々の過去話です。
おねショタで明後日展開の微グロです。

僕は曲がったことが大嫌いなんです

↑お好きな方はからどうぞ。

ここまで黒さを強調されるキャラってのは中々いないので
初見の時はちょっと頭がじんわりしてしまったものです。
美人で色白で仙女で清楚で腹黒ってぞくぞくしてしまいますね。
できればこの娘も音声作品で出したいなーと考えています。


それから古明地さとりのドキドキ射精管理が近日中
発売になると思うのでご期待ください。
それでは。
  1. 2011/10/06(木) 17:42:45|
  2. SS
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女神SS

FF6から三闘神の一人の女神のお話です。
複数誘惑で同士討ちの微グロです。
設定とか忘れすぎて適当なんであしからず。

私を守りなさいとか死ぬまで~っていう台詞があるのがエロい。
小説も少しづつ書いていきたいと思います。




 この荒廃し滅び行く大地に悠然と立ちすさむ、その名も瓦礫の塔。帝国を裏切りガストラ皇帝を謀殺した、にっくきケフカが作り上げた悪趣味過ぎてへどが出るほどの醜悪な建造物だ。
 俺達はかつて揺ぎない盛栄を築いた帝国の精鋭部隊だった。地が裂け雷鳴が轟き幾重にも津波が押し寄せる。崩壊後の世界はまるで酷い有様だった。緑は枯れ生き物は生命力を失い次々と死に絶えていく。
 この世界で信じられるものは何もなかった。あるのはこの絶望に乗じて人をだまそうとする輩ばかりである。略奪強盗強姦、何でもありで世紀末では信じられるのは自分の力だけで全てだった。

 ――ケフカ討つべし。

 散り散りなった俺達をまとめる一つの真理はこれだけだ。
 あるものは家族を失い住む場所も財産も何もかも失っていた。かくいう俺も、将来に結婚を誓いあった女と離れ離れになっていた。どこかであいつはきっと生きている――。そう思わなければやりきれなかった。
「ヒューイ。行こうぜ」
 物思いに沈んでいると、仲間も一人が俺の名を呼んだ。どうやらこの塔に侵入する経路が確保されたらしい。
「OKギル。ああ、今行く」
 塔の内部はケフカの配下の魔物達でごったがえしている。ケフカか討つためにはどうしても避けては通れない。
 俺達は全部で二十人の大所帯だ。かつての帝国のメンバーだけでなく、何かを失った者達も数人混ざっていた。
 やり場のない怒り。それをぶつける場所はこの瓦礫だらけの塔しかなかった。




 塔の中は屈強な魔物達でひしめきあっていた。俺は得意の両手ナイフで無感情に肉を切り裂いていた。何も手心を加える必要はない。求めるのはケフカの首一つだけだったから。帝国の中では大して地位のない魔導師であったケフカが、どうしてこの世界の神になり得ることがあろうか。勘違いも甚だしいことこの上ない。
 俺は仲間達と共に、道なき道をまっすぐに突き進んだ。敵の苛烈さしだいに勢力を増していった。研ぎすまれされた牙が爪が、脆弱な人間の身を無残に切り裂いていく。仲間の屍が一人また一人と増えていく。自分の命を守るので手一杯だった。一瞬でも気を抜けば、邪悪な魔の凶器に身を八つ裂きにされてしまうに違いなかった。
 手痛い犠牲を伴いながらも、俺達は塔の中枢へと接近していた。
 もう少し。
 はやる気持ちを抑えながらも、俺は生臭い地面を蹴り上げた。仲間の数は既に十人をきっていた。名誉の戦死、俺達は最後の一人になってもそれに報いなければならなかった。
「おっ。ここは……」
 魔獣達の咆哮が一時止む。少し余裕のある広がった空間だった。まるで何か博物館や美術館で、一番価値のある物を鎮座させているような落ち着いた静寂感さえ感じる。
「ようこそいらっしゃいました。私は三闘神が一人――女神でございます」
 広間に女の声が響きわたる。声のした方、中央に視線を送る。そこには一人の女が、しおらしげにして優艶な笑みをたたえながらただずんていた。まるでビーナスのような優雅な体つきで、どう考えてもこの場には不釣合いであった。
 ほとんど裸で露出度は限りなく高い。水色の透けた布地が、申し訳程度に乳房や腎部の大事な部分を隠している。いや隠すというよりそれは強調だった。むっちりとした肉の重みと艶かしさを、無理やり際立たせるかのようにぐるりと布地が絡み付いている。それは乳房と尻肉に淫らに食い込み、雄の本能を煽るための淫靡な装飾でしかなかった。顔つきも柔和で美しかった。慈愛の深い包容力のある口元が常に笑っている。眼差しは吸い込まれそうなほど優しくて、それでいて妙に蠱惑を感じるほど艶やかで――。
「うっ……」
 俺は突然のこの女の登場に息をのんだ。どうやら周りの仲間も同様らしい。ほぼ半裸の女がこんな場所にこうして存在しているのはおかしすぎる。
「ふふ。聞こえませんでしたか? 偉大なるケフカ様のために祈りましょう? あなた達もそれが目的なのでしょう?」
 その声で俺ははっと我にかえった。そうだった。俺達はケフカを倒すためにこの塔にやってきたんだ。危うく女体の魅惑に目的を忘れそうになっていた。
 危なかった。何が女神か。いくら女であっても、結局は悪しきケフカに魂を売った魔の眷属に違いないのだ。
「みんなっ。さっさとやっちまおうぜ! 俺達の目的はケフカの首ただ一つ! こんな女にかまってられないんだ!」
「お、おう……」
 どこか不安げな様子の仲間の声が聞こえた。
「そうだぜヒューイ。俺達は……こんなところで。何もかも奪われたんだ。女でも容赦なんかしない。みんな、行くぞ!」
 ギルが皆を鼓舞するように言う。
 そう、俺達はこんな女なんかに惑わされたりはしない。皆がそれぞれずっしりと背中に重い悲しみを背負っている。ケフカを倒すまでそれから開放される術はない。
「悪く思うな」
 ぐるりと回りを取り囲む。これで終わりのはずだった。帝国の精鋭達が裸の女を一人を包囲している。当たり前のように一瞬で終わるはずだった。
「あら……。祈るためではないのでしたか? ふふ、愚かな。いいでしょう。この女神の力をあなた方に見せてあげましょう……」
「ほざくな!」
 女の細腕がゆらりと動く。その手前で俺は即座にナイフで切りかかっていた。
 しかし、落雷。どんという轟音が地面に刺さる。
「くっ」
 危なかった。俺はすんでのところで身を翻して、女の魔法攻撃を回避していた。
「せっかちですね。もっと楽しみましょう……ね? ほぅら……」
 再び女の手が踊るように揺らめく。直後に室内ではありえない現象、大粒の雨がしとしとと降ってきた。しかもこれは肌が焼け付くように溶けている。つまりは酸性だ。
「くそっ。舐めやがって……」
 どうやら一筋縄ではいかないらしい。いや、俺は負けない。この世界に平和を取り戻すために、絶対に勝たなければならない。そして必ずあいつに会うんだ。
 俺は悪い視界の中、地を蹴り女へと突進していた。


 数分たったが、状況は芳しくなかった。常に肉体を削る酸性の雨と突然落ちてくる稲光のせいで、女に接近するのは容易いことではなかった。しかしそれでもおかしすぎた。こっちは十人もいるのだから、一人ぐらい女へダメージを与えてもいいはずなのに、今まで一度もそんなことは許されなかった。
「くっ、くそっ。何でこんな女一人なんかに……」
 横でギルがうめいていた。どうやらギルも同じような感情を抱いているらしい。
 何かがおかしかった。相手は女。だが手加減などするつもりはなかった。こんな恐ろしい魔法を使うのは、ただの魔物であるに違いなかったから。
「うう……」
 黙っていればこの酸性の雨でじわじわ体力を削られていく。このままじっとしていれば死が待っているだけである。
 俺は意を決して刃を女に向けようとした。が、その時――。

 ……さい。
 ……りなさい。
 ……を守りなさい。
  
 何だ? 耳に不思議な声がどこからか届いてくる。あの女の声だ。優しくて、どこか妖しくてねっとりと耳に粘りついてくる。しかもそれはしだいに脳内を反響するかのように大きさを増していく。女のとても柔らかそうな唇を思いだしていた。耳にちゅるりと吸い付かれて赤い舌でねぶられる妄想に包まれる。

 ――守りなさい。
 ――私を守りなさい。
 ――私を守りなさい私を守りなさい私を守りなさい……。

「くっ」
 俺は反射的に耳をふさいでいた。が、それは意味がなかった。鼓膜ではなくどうやら頭の中に直接囁きかけられているようだ。唇をぎりっと噛み太ももをどんと叩いた。そうするとあの女の奇妙な囁きは遠のいた。
「何だったんだ今のは。みんな大丈夫か?」
 周囲に声をかける。だが返事をする者はいなかった。誰しもが皆、口を半開きにして目をうつろにしながら呆然と立ち尽くしていた。あの女の誘う声に酔わされてしまったのだろうか。
 ギルも口をぱくぱくさせながら陶酔しているようだった。俺はつかつかと歩み寄り、ギルの鳩尾めがけて一発拳を繰り出した。
「うぐおぇっ……」
 腹を抱えて倒れこむギル。
「お、おいヒューイ……」
「あの女は俺がやる」
「ああすまんな……」
 俺はナイフをぐっと握りしめる。いつの間にか雨は止んでいた。余裕なのだろうか。こんな俺達なら軽くいなせてしまうと。その考えを根底から踏みにじってやりたかった。
「ふふ……。私の愛……お気に召しませんでしたか?」
「何を言っている。死ね!」
 跳躍して飛び上がる。狙いは女の頚動脈だけ。一瞬で間を詰めそして一閃――。
 がちゃりと金属音。刃がこすれる音。
「な……」
 俺は自分の目が信じられなかった。刃は女に全く届いていなかった。そしてなぜか自分の攻撃を防いだのが、他ならぬ今まで目的を共にしていた仲間だった。
「何をしているお前!」
「う……あ……」
 大柄の男だった。女の前でその身を盾にするようにして剣を構えていた。
「守らなきゃ俺……女神様を……だから……」
 ぶつぶつと口ごもっていた。その後ろで女がゆっくりと近づく。男のいかつい顎に指を這わせてそっと囁く。
「ありがとうお兄さん……ちゅ♪」
「あっ、ああ……」
 女は次の瞬間、男の頬に接吻をしていた。そして背中にぐにゃりと自慢の乳房を押し付ける。薄い布がずれて媚肉が妖しく淫らに揺れ蠢く。
「くそっ」
 俺は一旦退いた。一体何がどうなっているのか。
「うふふ。このお兄さんの心はもういただいたわ。私の『愛の宣告』に聞き惚れてしまいましたもの……。さっ……そちらのみなさんも、もっと私の声を聞けば気持ちよくなれますよ……。ん~~っちゅっ♪」
 女が他の仲間に投げキッスを飛ばす。男達はその色香にも翻弄されて動揺していた。どこかしこから女神様女神様という声が漏れる。
「一体俺の仲間に何をした? 早くみんなを元に……」
「何も力で押すばかりが戦ではありませんよ……」
 そう言って女は腰をくねらせて妖艶に笑った。白くて零れ落ちそうな胸元がぎゅっとはじける。女性特数の湾曲的なラインが、視神経を魅了して脳髄を煩悩に染めようとしてくる。
「ほら……見なさい」
 女が口をぽっかりと半開きにしていた。れろれろと舌がいやらしく蠢く。つややかな白い歯がのぞく。赤い粘膜の美しさに魅入られて見つめてしまう。かろうじて目をそらしても、汗で濡れた魅惑の谷間で視界を陵辱しようとしてくる。
「くっ、くる……な」
 俺は間一髪のところでこの魅了を耐えた。股間に熱い血液が走りどくどくと心臓の鼓動が早くなる。
「あら……おしい。ふふっ」
「はぁ……はぁ……」
 後ろに下がって体勢を立て直す。崩壊後にまともに女を抱いたことはなかった。それゆえに、この肉の誘惑はあまりにも強烈だった。
「ギ、ギル。お前は大丈夫か?」
 後ずさりし、ギルに声をかける。さっき殴っただけあって正気らしい。
「あ、ああなんとか」
 やる気なく消沈したギルの声。
「ふふ。あなた方二人を残して……みなさん私の僕になってしまいましたね……」
 女の周りに、かつて仲間だった男達が寄り集まっていた。熱に浮かされたように魔性の女を取り囲んでいる。
「さぁあなた達。もっといいことしてあげますね……ふふ♪」
「はい……女神様……」
「女神様女神様……」
「女神様すばらしい……」


 

 呆けた声で男達が女を崇拝している。女はそれを聞いて嬉しそうに胸と尻を揺らした。男はそれに反応して欲情のおたけびをあげる。崇拝してさらに欲情してまた崇拝した。連鎖的に危険な倒錯に導かれて支配が強まっていく。
 妖しく踊る女の細長い指が、つんと男達の怒張しきった股間を押した。流し目を送りながらくりくりと力を加えて、先端に官能の疼きを注入する。男達は同時に言霊を耳にふっと吹き込まれた。一人一人耳を甘い舌で犯されながらねっとりと愛撫を受けた。

 ――死ぬまで味方を殴りなさい。
 ――ふふ。味方ってのは裏切り者のあいつらよ。
 ――ほら。わかるでしょう?
 ――行きなさい。ご褒美は永遠の快楽よ……。

「あああ……」
 男達は歓喜の涙を流した。しかし誰も達するものはいなかった。女神の誘惑は強力に男達の心を束縛していた。狂おしいほどの強烈な魅了に心を溶かされていた。

 ――これが『ゆうわく』よ。
 ――『愛の宣告』とあわせたら効果は二倍以上。
 ――死ぬまでこの操りの糸は消えないのよ。
 ――嬉しいでしょう? ねぇ? 女神様に操られて。
 ――ふふ。愚かに醜く罵り争いあうがいいわ。私にたてついた……罰♪
 ――ほら行きなさい。ほら! ほら! 早く!




「めっ、女神様ぁ。今すぐこいつらをめったうちに……」
「女神様のため……女神様のため……」
「うふふ……」
 女の忠実な僕となった男達が、色を失って襲い掛かってきた。しかし彼らは仲間のはずだった人間である。あの耳にぺたりとはりつく甘い声に、弄ばれて狂わされて正気を失ってしまったのだ。
「くそっ!」
 俺はなんとか距離をとろうとして後ろへと飛んだ。すっかりあてがはずれてしまった。かつて帝国の精鋭だったものが、女の魔性に軽々しく心を奪われていた。このままでは血肉を削りあう無意味な同士討ちが展開されるだけである。何としてもそれだけは防がなければならない。
 女ははるか後方にいて、余裕の表情で笑っているだけだった。そのお高くまとった面をぐちゃぐちゃにしてやりたかった。
「ひっ、ひええ! 何でこいつら急に……。ひっ!」
 ギルが一人逃げ遅れていた。もはや暴徒と化した集団が、無防備なギルめがけて凶刃を振り下ろそうとしていた。
「女神様にたてつく奴は死ね!」
「そうだ……そうだ……」
「やっ、やめろぉ! 俺達は仲間だったじゃないか。それなのに……」
 陰惨な刃物がギルの体に集中砲火する。ぎりぎりのところで身をかわすが致命傷を受けるのも時間の問題だった。ギルの嘆きの叫びは虚空に消えた。助けようにもどうにもならなかった。仲間だった奴らを傷つけることなんてできない。諸悪の根源はあの女だったが、直接攻撃する手段がなければどうしようもない。女の忠実なナイトとなった男達が喜んでその身を盾にするだろう。
「ギル! 避けろ!」
「うわぁ!」
 遅かった。回避しそこなって、足がもつれてべたりと地面に倒れこむ。脛の辺りをざっくりと切り裂かれていた。どくどくと赤い血の色がズボンに滲む。
「う、うう……。痛てぇ、いてぇよぉ……。なんでこんな……」
 泣き喚くギル。しかしそこにも容赦ない制裁が加えられようとしていた。
「裏切り者は……抹殺」
「あ、はぁ……。やりました女神様」
「ひっ、ひぃ、ひぃいぃ」
 そんな騒然とした状況に、女はしずしずとした態度でギルに歩み寄った。
「ふふ……。もういいでしょう。この坊やはまだ……更正の余地がありますからね」
「あっ、ああ……」
 女のしなやかな手が、ギルの顔に優しく降りかかろうとしていた。それをぼうっとした顔で見つめるギル。
「だまされるなギル! そいつは女の皮をかぶった化け物だ! 逃げろ!」
 俺は力の限りの声で喉を振り絞った。
「裏切り者の言うことは聞く必要はありません。さ……私の手にキスをしなさい。そして女神様と言うのです。それで坊やは救われますよ? さぁ……」
「あ、はい……はぁ……」
 ギルに俺の声は届かなかった。そして女の白い手に何度もキスをまぶしていく。
「女神様女神様女神様……」
 うっとりとした表情でギルは忠誠を誓っていた。
「うふふ……」
 下僕を増やした女は妖艶に笑っている。指を舐めさせながら、毛づくろいするようにして頭を優しく撫でる。
 深まる倒錯の狂気。周りの男達も女にひれ伏しあがめ、足元にうずくまりながら涙さえ流すものもいた。
「女神様……素晴らしい……」
「女神様もっと……」
「ああ……あああ……」
 俺は一人だけ蚊帳の外だった。ぽつねんとしてこの滑稽な痴戯を呆然と眺めることしかできなかった。
「ちょっと疲れちゃった……。椅子が欲しいな……私」
「わ、私が椅子に」
「いや俺だ」
「俺が」
「ふふっ。喧嘩は駄目よ」
 やがて、一人の男が女の肉感的な股に顔をうずめていた。むちっという音が聞こえそうなほど、肉づきのいい太腿を締め上げている。
「む……むむ」
「つぶれちゃ駄目よ。椅子なんだから」
 くぐもる声。必死で椅子になろうとして態勢を保とうとするが、男は耐え切れずに腰を折って崩れ落ちた。
「あら使えない椅子ね。次は誰かしら?」
 女がまた男達に問いかけをした。目が糸のように細くなり口角が上がる。官能の流し目の直射を受けた男の中には、射精まで到達してしまった者もいた。
 肢体のいやらしさを強調するように指が這い回る。膝の上からつーっと滑らかな肌をすべり、むっちりと大きめの腰を抜けくびれをカーブし、どんと重く垂れ下がる淫らな果実でその終点を迎えた。
「はぁ……ぁん♪ 椅子ぅ……次はだぁれ?」
「はい……私が椅子に……」
「私が私が……」
 もはや一人だけではなかった。男達がこぞって先を競いあい、魔性の女の椅子に自ら堕ちたがっていた。その中には足を切られて地べたを這っているギルの姿もあった。すっかり女に心酔し、顔の筋肉全てを弛緩させて一心不乱に女の尻の下になろうとしていた。
「みんな正気にもどれっ! くそっ! 何だってそんな女の……」
 俺は声を張り上げた。この屈折した事態に頭が追いついていかない。本当は恐ろしかった。女の手練手管か悪魔的な魔術の力か。どちらにしろ、いとも簡単に屈強な男達が一人の女の虜と成り果てていたのだから。
「あらまだいたのね。あんな小物はさっさと殺してやりましょう……ねぇみんな?」
 女が目配せすると、殺意の集中が俺に一斉に襲い掛かった。どこにも逃げ場はなかった。俺は、どこにも――。
 目を血走らせて暗黒の狂気に染まった男達。その面差しにはかつての意思の欠片は見当たらない。愛欲にその身を支配された、魔獣達の舌なめずりが聞こえてくるばかりだった。
「うわあああっ!」
 俺は突発的にナイフを投げた。それは女の美しく精巧な顔面へと向かっていた。
「はぁ……はぁ……」
 次の瞬間、眼前に起こった現実を理解できなかった。なぜなら俺が投げたナイフは、ギルの喉元へとずっくと刺さっていたからだ。しかしギルの表情はなぜか感極まって幸せそうだった。そのまま女に抱えられてぐっと頭を垂れる。
「まぁ……私のために身を犠牲にして……」
「はい……俺は女神様の役にたてて幸せ……で……す」
 そのままギルはこと切れたように目をつぶった。
 女がにこやかな笑顔で、悄然としている俺の方を向く。
「うふふ。まぁなんていやらしい。仲間をナイフで殺めてしまうなんて……。ああ恐ろしい」
「ちっ、違う。俺はただ……」
 俺は酷く混乱していた。ギルを殺してしまったことによる罪悪感。いやそれより今喉に突きつけられた凶器に恐れおののいていた。確実に来るであろう死という絶望の運命。目的を果たさずに死んでいくだけのむなしい結末。
「言いわけはあとで聞きますね……。さぁみなさんやっておしまいなさい。おほほほほ……」
 女が高笑いが俺の最後の記憶だった。理不尽な刃物が全身を痛みで塗りつぶしていく。俺の意識はそこでぷっつりと途切れてしまった。




「ん……」
 俺はむくりと起き上がった。生きている――。いや、俺は確か妙な女の手にかかって死んだはずだった。だとしたらここは一体どこなのだろう。
「お目覚めですか?」
 優しい音色が頭上から落ちる。女が、いや女神が俺に優しく微笑みかけながら見下ろしていた。
「俺は……一体?」
「ふふ。もうわかっているのでしょう? あなたがいて、そして私がいる。永遠の生命……。それが真実です」
「ああ……」
 女神の声を聞くと安らぐ。周囲には仲間達も女神の機嫌をとりながらはべっていた。哀れな人間の椅子に腰をかけて、足を組み替えながらその美しすぎる太腿を見せびらかしている。
「『クラウディヘブン』。死んでも私の愛は消えませんわ。おほほ。これからも私に絶大なる忠誠と愛情を注いでくれますね? 例え、その身が朽ち果てようとも――何度でも何度でも……」
 全ての意味を理解することはできなかった。ただ体が自分のものではなく、どこかうわついていてふらふらと風船のように漂っていても、甘美なる幸せの揺り籠の中にいつも安らかに座っている。そんな理想じみた甘い享楽と愉悦に染まりきった境地に堕ちていた。
「女神様女神様……」
「女神様……」
 人間達が何人も女神のおみ足にすがりついていた。自分もそこに混ざろうと思った。母親の乳房にすがろうとする赤ん坊のように、それはごく当然のこととして行動した。
「女神……様……」
 俺はつるりとした指先にキスを繰り返した。もうこの世のことなどはどうでもいい。この美神の前にひざまづき、魅惑の糸でがんじがらめにされて永遠の時を受け入れることこそが幸せだと悟ったから。
「もっとお舐め。可愛い坊や」
 女神の親指が口にねじ込まれる。俺はその白い指を愛おしくくわえ込んだ。
「はぁ、はむ……んむ……」
「うふふ……♪」
 艶然として緩い視線を送ってくる。頭の中が女神でいっぱいになった。賛美歌ともいえる福音の鐘がらんらんと鳴っていた。
「あ、あ、ああ……」
 俺は指を口に含んでいるだけで射精していた。それはおさまることなく快感が延々と続いていく。  
 
 ――女神様のため……女神様のため。
 ――うふふ、気持ちいいでしょう?
 ――これが天上の極楽ですよ。
 ――そして永久に私の眷属となり仕えるのです……。

 またあの声が聞こえていた。どこか懐かしくて、憧憬を感じさせる優しい声だった。
「め……がみ……さま」
 俺は再び射精していた。脳内を白く染め上げる快楽の坩堝の渦。終わることのない悦楽の鼓動。
 肉体も精神も魂も捧げる幸せ。

 ――もっと私の名を呼びなさい。

「はい……」
 主の命に喜んで従う。俺は脳さえも蕩けそうになった。
 女神様女神様女神様女神様女神様女神様…………。
 ああ本当に幸せだ。からだもなんだか、女神さま、とろけて、ぐぶ、あ


  1. 2011/09/25(日) 17:52:45|
  2. SS
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