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ネイティファス
淫語ボイスドラマ製作サークル ネイティファスのブログです。

美魔女参謀エスパの姦計  後編

エスパ様できました。長くなったようなまとまったような。
遠距離エッチはマインドエッチと何か似てる。

雑魚に数で押し切られるヒーロー。
1人ずつ信頼関係を奪われる展開もいいかなぁと
思いながらとりあえずこれぐらいで。


それからマインディアの真のENDみたいなのを
書こうかなと思います。
一年もたった後でなんですが
やっと納得のいくようなオチが思いついた感じです。
(躊躇して入れなかった鬱ENDにちょこちょこ追加)

ネタバレっぽいですが今さらアプデも
あれなんでここにのせる形にしたいと思います。
では。




美魔女参謀エスパの姦計  後編


 平和な市街地に、突如として投下される危機の爪。
 暴魔爆悪大帝ゴルドリオが放つ暴魔怪人が、その禍々しい唸り声を上げて大地に地響きを轟かせた。
「ギャアアアアググググェェェェ!」
 原始以前の恐竜のような、肉厚でごつごつとした皮膚。燃え上がるような毒々しい赤色を身に纏う、四つ足でトカゲの化け物がずっしりとコンクリートの地面を踏みしめて叫んでいた。
「いくでゴル! 我が暴魔怪人サラマンドルよ! このまま街を火の海にしてやるでゴル!」
「グエエェ! グエェェ!」
 主の命に呼応したように、サラマンドルの周囲の空気がむっと焼け付くような高熱に包まれる。
 皮膚から熱気を発し、さらにざっくりと耳まで裂けた大口から風を送り、除々に周囲を火の神が住まう所へと変貌させるサラマンドル唯一の特技である。
 なお、着火するまでには30分の時間を要するが、一度燃え上がってしまえば非常に強力な技なのである。
「ヒューッ! ヒュルルルル――」
「がっはははは。何という知略にとんだ作戦の極みであろうか。さしものメディクスファイブも対応できまい! これでワシの出世も間違いないでゴルっ」
 満足気に醜い口元をほころばせて喜ぶゴルドリオ。
 悲鳴を上げながら、人間達が我先にと逃げ場を求める。
 凶悪な暴魔怪人に対しては、か弱き人間に立ち向かう術は存在しない。そう、超電脳科学技術を結集させた、メディクスファイブの活躍なくしてはこの事態収集は不可能に近い。
「ヒュゥ……ヒュルルルゥゥ――」
「いいぞサラマンドル。あのメディクスファイブも出遅れているでゴル。今日は何と運がいい日でゴルか……。はっ、いやこれが正常運転なのでゴル。今までが酷すぎて……ぶつぶつ……」
 ゴルドリオの愚痴とは裏腹に、大火災が巻き起こす災禍の狼煙は着実に進行していた。
 五分、十分、十五分――。
 息もできないほどの熱風が漂う。もはや人影一つ見あたらない熱帯地域。チリチリと埃が宙を舞い、発火温度まで後数分を残すのみの状況だ。
「ゴルッゴルゴル。ぐはは。もう少しでゴル。もう少しでワシの――」
 ゴルドリオは勝利を確信しかけた。しかしその予想はやはり覆される運命にある。
 紛うことなく正義の呼び声、颯爽と現れる五つのシルエット。メディクスファイブのリーダーレッドが先陣を切った。
「待て! ゴルドリオめ! お前達エビルネイターズの好きにはさせん!」
「なっ! お前たちはメディクスファイブ! うぬぬぬぬ――。この市街地大火災計画の邪魔はさせん! そぉれこの肉を引き裂き同時に傷をえぐる、殺戮暴魔破壊鉄球を喰らうがいいでゴル! うおおおおおお――」
 危険極まる殺戮武器を手に、暴魔爆悪大帝がメディクスファイブを殲滅せんと迫ってくる。
「よし! 俺とブラックがゴリラ野郎を食い止める。三人はあのトカゲの化け物に向かってくれ!」
「おーす」
「了解」
「わかりました」
「わかったわレッド」
 リーダーの的確な指示が仲間達に行き渡る。
 近接戦闘に長じたブラックとレッドがゴルドリオを押さえ、様々な特殊効果を有する武器を使う三人が怪人を押さえる作戦だ。
「ぐっ、ぬわ、誰がゴリラでゴルか。うっ、こら離れるでゴル!」
「いつものように大人しくしてるんだなでくの坊。それ首ががら空きだぜ!」
「ぐっ、ぐわぁぁ……」
 大柄な体格で柔道の有段者でもあるブラック。軽やかな動作で鉄球の間隙を抜けて、ゴルドリオの首筋を豪腕でしっかりとロックする。
 たまらず悶絶するゴルドリオ。そのスキだらけの腹部めがけて、電脳力を溜めた拳を一直線に突き出す。
「くらえっ! メディクスナックル――」
「ぐぅっ!」
 レッドの一撃がそびえる体躯をぐらりと揺らす。電脳力を一点に集中させた、レッドお得意の必殺技。大抵の怪人でも一撃で葬りさることができる。
 が、さすがの暴魔大帝はこの一撃を耐え切った。膝を突きそうになる手前でかろうじて踏みとどまったのだ。
「ぐぬ……まだ、まだまだでゴル!」
「ちっ、こいつ今日に限って無駄にしぶといぜ。早くおちやがれ!」
「わからせるさ。何度でもな。俺の正義の拳は猛り燃え上がっているぜ。くらえ……悪を打ち砕く電脳の超回転、メディクススクリューバーストナックルゥ――――」
「ぐ、ぐわー。後少しでゴルのに……。待て、ほんの五分でいい。いや、三分……、い、一分でもいいでゴルから……ぬ、ぬわーっ!」
 正義の鉄槌。窮地の悲鳴。もはや青息吐息のゴルドリオ。彼の運命や如何に。
 一方同じく、怪人サラマンドルにもメディクスファイブによる無慈悲な連係攻撃が開始されていた。
「まずは僕が……。メディクスシャワー……。これでここ一帯の温度を下げます。それに、あの怪人も水にはきっと弱いはず……」
 ぱっと見は根暗で貧弱なオタク風貌のブルー。だが彼ほど電脳武器を的確に使いこなすことができるものはいない。メディクスファイブの生き字引と言っていいほどの、膨大な知識量と冷静な状況判断能力に優れている。ただやはり線の細さからくる押しの弱さとフィジカルに疎いのはたまにキズである。
 メディクスシャワーという名の電脳液が辺り一面に降り注ぐ。電脳力を通じたその液体は、優れた温度下降能力を持つ。熱を普通の水よりも何倍もの効率で吸収することができ、その他にも非常に多様な用途に応用できる優れものだ。
「やったわブルー。あなたの攻撃利いてるわ。やるなら今! くらいなさい……メディクスアローフラッシュ!」
 並外れた跳躍力で、ピンクが太陽を背にふわりと鳥のように舞い上がった。
 新武器である大柄な弓を手に、無数の電脳矢をサラマンドルめがけて躊躇なく打ち下ろした。フルーレを巧みに操る技術を下地にし、まるで手足のように音速を超える光の矢をやつはぎに繰り出す。
「ギャアアググググッ!」
 サラマルドルの硬い皮膚も、この連続的な猛攻には耐えられない。くぐもったうめき声を上げながら、ひたすら耐えるのみだった。
「敵はかなり弱ってるわよ。……グリーン! 早くあなたも加勢して!」
「え? ボクがかい? いや、生憎ボクは平和主義者なんだけど……」
 と、ヒーローらしからぬ応対をしたのはグリーン。ニヒルなイケメンかつ二枚目で、いつも飄々としたナルシスト気質の好青年である。まるで映画俳優のような甘いマスクを持つが、全身緑尽くめの全身スーツの外からうかがい知れるのは、それなりの長身と足の長さだけであった。
「いいから早く!」
 苛立つピンクがグリーンの背中をこづく。
「……ようし。美麗なる麗しき桃花女史の頼みならいたしかたない。メディクス……バイオメルティングインクロージョン!」
 どっしりとしたがに股で両手を突き出す。その奇妙な構えのままグリーンの手が震える。一目誰が見ても格好悪いポーズだが、微生物を凝縮集中させ、攻撃対象の細胞という細胞を全て駆逐し殲滅せんとするグリーンの必殺技だ。
 一秒二秒と、時が止まったように静寂が訪れる。
 が、それは嵐の前の静けさ、来る惨劇前の序章だった。
「グウウアアァァグルゥルルルッ!」
 サラマンドルの皮膚がみるみる濁った緑色に――。傷口から侵入した数億超の電脳微生物が、計り知れないほどの侵食スピードで正常な細胞を破壊していく。いくら敵の怪人とはいえ、直視するにはおぞましすぎる光景だった。
 だが正義の使者、メディクスファイブは怪人に情けをかける筋合いはない。
 最後の止めを刺すため、メディクスピンクこと薄紅桃花が最大電脳力をこめた弓をぐいと引き絞った。
「電脳充電120%完了……かのイージスの盾をも打ち砕く、メディクスオーラアルテミス……アローーーッ!」
 雷鳴轟く黄金の高速矢が、サラマンドルの眉間へと深々と突き刺さる。
 手ごたえ十分。新武器の性能を、如何なく発揮したピンクの奥義が決まったのだ。
 崩れ去る深部の怪人コア。断末魔の悲鳴をあげながら、サラマンドルはカッと一筋の紅炎の火柱を放ち、霧のように跡形もなく消え去った。
 また一方、レッドとブラックに不利な戦闘を強いられているゴルドリオ。配下の怪人が討伐されたのを見て、あからさまに狼狽し始めた。
「ぬぁ。よ、よくもサラマンドルを……! かっ、かくなる上はこのワシがお前らを……んぐっ? ぐわやめろ、何をするでゴルああああ――」
「もう遊びは終わりだぜ! 俺の技をくらいな……! メディクス、イナヅマリュウセイ――ヤマアラシバスタースルー!」
 ブラックの掛け声と共に、ゴルドリオの体は彗星のごとく宙に舞い、そして天の彼方へと消えた。きりもみ回転のまま飛んでいく巨体。電脳力を加えたブラックの投げ技は、瞬間的に真空無重力を作り出すという超性能を持っている。
「ぐ、ぎ、お、覚えているでゴル――――」
 米粒ほどの遠さで、暴魔大帝の遠吠えが澄み渡る大空にこだました。
 脅威は去った。
 かくしてエビルネイターズの野望は、メディクスファイブにより今日も打ち砕かれたのだった。しかし無限の闇を生み出すエビルドラースの魔の手は決して終わったわけではない。彼らの戦いはまだまだこれからなのだ。
「ふぅ、みんなよくやってくれた。怪我はないか?」
 勝利に一息つく。レッドがリーダーらしく仲間を気にかける。
「私達は大丈夫よレッド」
 ピンクが即答する。
「そうか。それにしても――最近のエビルネイターズの活動は頻度を増していると思わないか? 奴らはこの星を本気で亡き者にしようとしている……。今日だって後少し遅ければ……もし五人そろってなければ……」
「レッド。あなた悩みすぎよ。私達の電脳技術は日々進歩しているわ。それに――」
「それに……何だ?」
 一瞬眼光鋭く、ピンクを精悍な青年が見やる。
「へーイ桃花女史? ユータのことを言っているのですか? いえ、彼はいくら何でもまだ子供ですよ。二、三回うまくいったからといって……。現に、今回の市街地作戦は知りえなかったわけでしょう? うむ、平和主義の観点から言っても、確率的に子供におんぶだっこはまずいですよ桃花女史」
「そうだな、グリーンの言うとおりだ。俺たちがまず切磋琢磨して……」
 グリーンの発言にレッドが追随する。
「そうだぜ。なぁに見てろ。俺の力は百人力! 大山をも投げ飛ばすブラック様だぜ……ぐわっははは……」
 ブラックも大げさな笑い声を上げて同意した。
「で、でもユータ君の力は……私達の科学では説明できない能力だわ。これからも暖かく見守っていきましょうよ」
「ん……」
 男達の口がへの字に曲がる。しばしの沈黙。
 とその時、今まで黙っていたブルーが静かに口を開いた。
「僕は桃花さんに賛成です。状況は刻々と――やはり彼らの戦力は未知数です。何重にも対策を立てておく必要があります」
「ありがとうブルー……青柳君」
「いっ、いえ……」
 さっと顔をあからめるブルーこと青柳良介。普段は根暗にも思えるが、時に冷静な一言が頼もしい。
「おっと青柳氏! ボクはこれから桃花女史とデートなんだからさ。変な気は起こさないでくれたまえ!」
「いやっ、僕は別に……」
「デートなんてしないわよ。馬鹿。冗談はほどほどにね、緑山君」
「えっ、そんな。ボクは君のために頑張ったというのに……」
「おい! お前たち仕事はまだ終わってないぞ! 桃花は先に本部に戻って報告をまとめてくれ。後の四人は現場の補修作業だからな」
 リーダーからの一喝が走る。整った顔を歪めて口を尖らし、グリーンこと緑山圭吾が軽く悪態をついた。
「くっ。何てことだ。ボクの計画が台なしだ。おお桃花姫どうか待っていておくれ。ささ、仕事仕事……」
「危険温度領域、完全消滅確認……。メディクスボンドによる組織修正開始します」
「全く、派手にぶち壊してくれたもんだぜ。そーらよっと」
 黙々と各自作業に集中するヒーロー達。その横顔はやはり正義そのものだった。
 しかし数億光年とも知らぬエビルスからの脅威は、まだ始まったばかりなのである。一面黒塗りの腐海から、ひたひたと蠢く漆黒の足音は一歩づつ近づいていた。



 ユータの困惑は思いのほか強大だった。
 ヒーロー達が必死で怪人と戦闘をしている間、一人ルームこもり自分の中の悪魔と悪戦苦闘していた。
「あ~今日も疲れちゃったなぁ~」
「ていうか新デザインの戦闘服さぁ……ちょっとやばくない?」
「だよねぇ~。通気性とか動きやすさとか言ってもさー、これはないよねー」
「えっ、私は結構好きよこれ」
「あんたは露出狂だからねー」
「何よそれー。まるで私変態みたいじゃない……」
 セイブ地点は再び女戦闘員の着替えに取り囲まれていた。しかも戦闘コスチュームが、昨日よりも大幅に露出度アップしているというおまけつきだった。
「うっ……。何でこの人達……こんな恥ずかしい格好で。おっぱいも飛び出しそうだし……お尻も……あぁ……」
 ユータは一日かけて意志を固めたはずだった。今度はお姉さんなんかに惑わされない。絶対にお仕事を頑張るんだ。
 しかしその構想は、新型ビキニスタイルコスチュームの前に早くも崩れ去りそうであった。
「くっ……。いや、セイブを早くはずすんだ。この人達はきっと下っ端だから何も知らないはず……。だから早く……」
 必死で女体の誘惑を振り払い、セイブ地点解除作業を始めるユータ。
 焦り、後悔、罪悪感と虚脱感。
 ユータの精神作業は遅々として進まない。それもそのはずで、美魔女参謀エスパにより固くロックされたセイブは、現在のユータの力ではずせるものではなかった。
 いらだちと焦燥と、股間の勃起が最高点に達する。性欲真っ盛りの少年の前に、むちむちの引き締まった女の乳房や尻や太ももが提供されているのだから当然だ。
 生着替えを安全な場所で覗き見できるという魅惑のハーレム状態。甘い吐息が、擦れあう衣擦れの音が、誘うように揺れて少年の心を甘く翻弄するおっぱいや尻肉が、その全てがユータめがけて襲いかかっているのだ。
「ああっ、もう僕手順忘れちゃう……。全然進まない……ああんっ」
 いつしかユータの両手は股間に置かれていた。涙目になりながら既に爆発しそうな自分自身を握り締めた。
「こっ、これじゃ今日もお姉さん達に……ああ――」
 胸と尻の圧迫。淫らなレズ行為。そして大乱交――。脳裏に刻まれた卑猥すぎる光景が、まざまざとフラッシュバックする。
 遠視能力に特化したユータにとっては、その映像も鮮明すぎて余計に心を乱していた。
「ねぇねぇー。私ちょっと思ったんだけどさー」
「何々?」
「せっかくこんなにエロエロな戦闘服なんだからさー。ほら、誘惑とかぁ……しちゃってもいいんじゃない?」
「えー何言ってんのー?」
「あーそれ結構いいかもー」
「道歩いてるお兄さんとかに、あーんちょっとお話があるんですけどぉ……って」
「一緒に活動しませんか? って言っちゃう?」
「それいいねー。前かがみでおっぱい揺さぶったら、きっと一般人なんて言いなりだよねー」
「あっ私は年下の学生とか好みー♪ お姉さん達が世の中のことたくさん教えてあ、げ、る♪ とか言って誘惑しちゃう♪」
「私はぁ私はぁ……生意気に腕組んでるカップルのぉ……彼氏の方を狙っちゃう♪ わけもわからずおびえてる彼女の前でぇ、バックからハメハメしてもらうぅ♪ オマンコぐちょぐちょだからぁ、彼氏さんメロメロで我を忘れて私の体をむさぼってきてぇ……♪ はぁん♪」
 勃起しながらも、女戦闘員達の会話に耳を傾ける。どうやら一般人にも手をかけようとしていること。それもユータが思いもよらぬ卑猥な方法で。
「んっ、あっ、くそ……。そんなことはさせないぞ……。でも、あんなやらしい服装でなんて……」
 ユータの興奮がさらに高まる。が、むちむちの女肉映像に埋もれながらも、敵の作戦を聞き漏らさないようにと奮戦していた。
「あはっ♪ ていうかさー。メディクスブルーぐらいならさー、私達でいけるんじゃない?」
「えーでもあいつ変な武器使うじゃん?」
「そうだよー。おっかないわよ」
「だいじょぶだいじょぶ。ブルーってチビだしきっと根暗よ。重度のオタクで、部屋には美少女フィギュアとか飾ってるに決まってるわ」
「それもそうかもー。あっ実は童貞かもねー。無駄に頭いいからぁ……女の子には奥手でぇ……」
「今度、このエロコスチュームでみんなで迫ってみよーよ。腰ふりふりしながらねぇブルーさぁ~~ん♪ って」
「あっそれいい♪ スーツの上からベロチューしてあげたいなー♪」
「私は後ろからおっぱい押し付けよーっと♪」
「私は顔面騎乗してぇ……」
「んー私は私はぁ……」
「ふわぁぁ……あああぁ……」
 もはや話を聞くどころではなかった、完全なる上の空で、自慢の胸やお尻や太ももを強調するポーズに目を奪われていた。
 極少面積のビキニパンツのアップ。顔面騎乗すると言った戦闘員の豊満なヒップが眼前に迫る。
 パンツにおさまり切らない、肉感的なぷりんとした尻肉がなおいっそういやらしさを際立たせる。
「はぁ~ん♪ こうやって鼻先をここにねぇ……」
「ああっ……出ちゃう……。僕……ごめんなさ……」
 ユータは擦り切れるほど股間をしごいた。顔面騎乗されているのを自らに重ね合わせ、太ももと股の間での甘美な圧迫行為で射精しようと――。
「は~いエスミでぇ~す♪ 遅れちゃったぁ~ん♪」
 七色のソプラノボイスかツルの一声か。美魔女参謀扮する戦闘員エスミが、ユータの注意をそらし結果的に射精を中断させた。
「ちょっとー遅いわよエスミぃ。何やってんのよー」
「うふっ♪ ごめんなさい。んーしょっ、んーしょっと……」
(こっ、この人エスミって言うんだ。すっごい美人でスタイルもいい……。でも、何か他の戦闘員とは違うような……)
 ユータは直感的なサイキック目線ではそう感じ取った。しかしエスパによる張り巡らされた厳重な保護バリアーは、決してまだ未熟すぎる少年には本質を悟らせないものだった。
「エスミ! 柔軟体操は着替えてからにしなさいよ!」
「そうよーそうよー」
「きゃぅん♪ ごめんなさい♪ でもエスミこれが日課なのぉ♪ んっんっんっー」
 仲間の呼びかけも無視し、エスミはうっとり見惚れるような美脚を180度に開脚し、こぼれ落ちそうな胸元を揺らしながら前屈を開始した。
「そぉーれっ♪ おいっちにーさんしー♪ にーにーさんし……」
(あっ……よりによって……僕の目の前……お、おっぱい……)
 美乳谷間の大アップ。見ただけで男を射精に導く卑猥なアングル。
 ユータのセイブを完全に把握しているエスパにとっては、少年の心を甘く惑わし未知の快楽で包み込むであろう、絶好のポジションを確保するのはいとも容易いことであった。
 しかもエスパの洗練研磨されたサイキックパワーにより、ユータの未熟な荒々しい映像よりもはるかに優れたハイビジョンでその蠱惑的な肉体を楽しませることができるのだ。
(えっ? 何これ? 僕ってこんな鮮明に……いや。どうして、ああ……わからない。けどおっぱいが……ああ……)
 混乱するユータ。しかし格上の能力者のテリトリーにはまった少年は、危険な底なし沼にあえぎもがきながらも引きずられるしか道はなかった。
(うふふっ♪ ようやく会えたわね。ほらいいでしょユータ君? こんなピントではっきりなのは初めてでしょ? 最高のアングルで楽しませてあげる♪ エスミのぴちぷちぷるんぷるんの美肌をぺろぺろ味わってね♪ おっぱいお尻オマンコ太ももふくらはぎ……それから毛穴の一つ一つまでぇ……愛おしく感じさせて虜にしてあ、げ、る♪)
「んっ……♪ まずは胸をつけなきゃ……」
 エスミがぐっと前のめりに前傾する。しなやかな体つきで、柔軟性に富んだ肢体はするりと抵抗なく重心移動する。
 艶かしく汗ばんだ肌。はぁはぁと小刻みに漏れる吐息。丸みのある肩からずれるビキニブラ。
 ユータ少年の目を焦がし脳を弄ぶエロ映像が、実体を伴わんばかりの擬似3Dの超迫力映像で映し出されていた。
「あぁっ、エロすぎるよエスミお姉さん……。この部屋の中で、誰よりもエロい……はぁはぁ……」
(うふん♪ 一番エロいのは当然よ♪ 美魔女参謀エスパ様の魅力に心ゆくまで酔わせてあげる♪ ほら……一回射精なさいユータくぅん♪)
 心の中で、そっとユータに囁くと、エスミは前傾姿勢をさらに深めた。
 ぐにゃりと床につぶれるおっぱい。ビキニの肩もずれ落ちている。乳首はぎりぎりで見えない。谷間が一様でなく妖しく形を変え蠢く。首筋から垂れる汗の滴が、するりと色っぽく谷間にすべりこむ。
 まるで食虫花のように、甘い蜜で獲物を誘っているかのような淫蕩な動きだった。 
(んっんっ♪ ほらどう? もっとエッチな声出した方がいいの? ほらほら……)
(はぁはぁエスミさぁん……♪ おっぱいがえっちぃよぉ……。おっぱいってこんなに滑らかなんだぁ……)
 エスミの一挙一動に、阿呆の表情で見蕩れるユータ。雑なコマ送りよりも、数段上のリアルな秒間フレームで再現されたおっぱいを前に、目的も使命も何もかも忘れて自慰行為に耽るしかなかった。
(うふっ♪ そろそろいいかしら? 可愛いイキ顔見せてねユータ君……♪)
「んっ……エスミ体が固くなっちゃったかなぁ? それっ、勢いつけて……んんっ」
 反動をつけたばかりに、ぷるるんと黄色い音が鳴りそうなほど弾む柔らかなふくらみ。同時にビキニは完全に両肩からずり落ちる。床にこすれるむちむちのおっぱいが、前後にエロティックに悩ましげに運動する。
 ビキニはもはや本来の役目を保っておらず、かろうじて床と乳房の間に止まっているだけだった。少年の欲望はその一点に集中した。
 綺麗な桜色の乳首がチラチラ覗く。ビキニはよじれねじられ、乳房にからみながらもしだいに本体から遠くに離れていった。
 はちきれんばかりの双乳が露になる。乳首も床にこすれて固くしこり、ぷっくりといやらしく膨れ上がっている。
 突然世界が反転する。迫るおっぱいの感覚。今までには感じたことのない超感覚。気のせいではなかった。しだいにその全容が明らかになる。
 突如むにっと股間に重みと暖かみを感じる。目の前のおっぱいとシンクロするように、むにむにとユータの股間を擦りあげてくる。
「あ……おっぱい……こんな……。んっ♪ すごいっ♪ オチンチンにまとわりついてくるみたい……んんんっ♪ 出るっ……でっでっ……」
 エスパの能力は深くユータに浸透していた。数十キロ離れようとも、擬似的な触感を相互の間で伝達できるのだ。
 お互いにサイキック同士であり、二人の相性も良好、なおかつ強力な能力を有するエスパの主導により、この擬似的パイズリ空間は構成されたのである。 
(ああっ♪ 何これぇ……♪)
(あーら初めてでこんなに通じ合うなんて……。才能があるのねぇ……んふっ♪ ますます可愛がってあげたくなっちゃう……)
 にやりと笑うエスミ。口の端をぺろりと舐め、長い舌を乳房に届くほど伸ばす。
(擬似パイズリに擬似フェラよ♪ 一番エロいのでイカせてあげるわ♪)
(ふわ、ふわぁぁぁ……)
 断続する谷間の誘惑に、唾液滴るエロ舌での愛撫も加わった。ざらりとしたリアルな舌の感触、生暖かい唾液のぬくもり、はぁとかすかにかかる吐息もほぼ現実のように再現された。
「あああんっ♪ 何これぇ……。おっぱいと舌がぁ……オチンチンに直接ぅ……あ、ありえないよこんなの……あああっ♪ 出るぅ……♪」
(出していいのよユータ君。先っぽ……ここにいっぱいリアルな舌先の感触抽入してあげる♪ んっんっ♪ ほらイッてぇ……♪)
「あんっ♪ エスミお姉さん出るっ♪ 先っぽいいっ♪ 舌が入ってくるぅ――」
「んっ……れろぉ……んっんっ……んん……♪」
「あっあっ……あああ――」
 リアルに勝るとも劣らぬ官能刺激の大海原。ユータは一人ルームでどくどくと射精をしてしまった。
「あ……はぁ……はぁ……はぁ……ぁ……」
 ずっしりと背筋に極度の疲労が走る。サーチのために最大限に精神力を使い、限界まで磨耗させたほどの疲れだった。
(うふふ♪ ユータ君のエネルギーも勝手に使わせてもらったわ。お互いに気持ちよくなるんだから、ギブアンドテイクはちゃんとしなきゃね……と、さすがに今ので気づいたかしらぁ? んーあの顔だとまだかしらぁ? いいわ……今度はお尻で弄んであげる♪ どんどんお馬鹿になるのよユータ君♪)
 おぼつかない頭を無理矢理回転させる。有り得ない。今のリアルな感触。自分の能力ではまだ到達できていない。なぜ? なぜだろう? もしかして……エスミさん、いやでも……いや……。
「ふぅ。前屈は終わりっと。次は横に……」
 何事もなかったように、くるりと反転するエスミ。今度はこちら側にお尻を向けてポーズを取る。
 右手を伸ばし左足のつま先を、左手を伸ばし右足のつま先を。リズムよく交互に繰り返している。単純な体操ながら、背後からの眺めは刺激が強すぎた。筋肉と脂肪がほどよく絶妙のバランスで同居する尻肉。それがぷるぷるたぷんと小気味よく震えて少年の目を釘付けにする。
 ビキニパンツの食い込みにも吸引されてしまう。股間付近の肉の盛り上がり、具がはみ出るかはみ出ないかの絶妙なライン取り。
 ユータは夢遊病者のように魅入られた。見れば見るほどむちむちのお尻が拡大してくる。目が離せない。離そうとすればするほど、自己の意志力をはるかに上回る力で押し戻されてしまうのだ。
「あぅ……お尻ぃ……えへ……あはぁ……」
(ふふふ♪ 完全に腑抜けね。これじゃお姉さんの正体までなんてたどりつけない。いいわ。徹底的に惑わせてあげる。はまればはまるほど病みつきの麻薬に匹敵する快感でね……)
 エスミの腰がゆっくりと持ち上がった。股間の食い込み部分がより仔細に見えるアングルに固定される。
「んっ♪ 何かこのパンツ……しっくりこないわぁ……。位置が悪いのかしら? ここかしら? それともこう?」
「あっ……あっ……」
 指でパンツのずれを直そうとするエスミ。だがその動作は少年の心を否が応にも虜にした。
 最初から修正する気持ちなんてない。むしろもっと卑猥に際立たせようとする魂胆だ。
 つややかな指先でパンツを引っ張る。当然できあがる領域に少年のカメラを固定する。甘い蜜が滴る花びらとつぼみ。その光景は数秒で遮断されてしまう。そんな寸止めを幾度も繰り返す。焦らして焦らして焦らし倒す――。
 そうすると少年の心は、淫らで邪悪な欲でぱんぱんに膨れ上がる。まだ見ぬ禁忌の花園への好奇心を、耐え難い誘惑により肥大させて燃え上がらせる。狂おしいほどに切ないほどに。美魔女エスパによるとろけるような蜜罠は、ユータの心を完全に掌握し捕食しようとしていた。
「あ~んここも違うなぁ……うふふ♪」
「あっ……女の人のアソコ……もっと見たい……。でも……うっ」
「んっ♪ ここがちょうどいいかしら? これならもっと頑張れそう……」
「あっ、あああ……それじゃ……ああ――」
 隠すべき場所を隠していない。左の尻丘に布をひっかけるようにして、とろりと愛液が香るぱっくりとした秘裂が日の目に晒されていた。
「んっ♪ あんっ♪ いいわぁ♪ 蒸れて仕方がなかったのよこれ。あんもっとぉ……♪」
「あわっ、あわわわ……」
 エスミの卑猥な女性器が目前に迫る。映像だけでなく艶っぽい声まで直接耳元に感じてしまう。
(ほら……。入れさせてあげる♪ オチンチンの擬似挿入……童貞も喪失よ♪)
 そそり立つ欲望のシンボルに、男を惑わす魔性の果実がぐいぐいと接近する。
 瞬間、ずしりと仮想現実の重力がユータを直撃する。ぬるぬると糸を引き淫らに濡れそぼった天国への入り口。中途半端な本物よりも、さらに数段上位のオマンコがユータの股間を甘くとらえようとしていた。
「あっ、ぐっ……入るぅ……さっきより……。んっ……狭……でも、ずぷってめりこんじゃうよぉ……」
「いいのよ♪ お姉さんが優しく飲み込んであげるから……。ほら力を抜きなさい……」
「あああんっ♪ お姉さぁん……♪ いいいっ……」
 声に誘導される。直接話しかけられたことなどお構いなしだ。ただ快楽のみを追求し、性の奴隷になるべく歩みを進める。
「んっ……♪」
「ああっ、僕のオチンチン……食べられて……ああああ――」
 びちびちくちゅぐちゅう……と生々しい音がねとりと響く。愛液の坩堝と化した粘膜の桃源郷で、若い少年のペニスを甘くからめ取りながら奥へさらに奥へと誘っていく。
「あんっ♪ 入るぅ……。僕何にもしてないのに……」
「腰を振ると快感が倍増するわよ? ほらほら……下から突き上げてぇ……」
「わ、わかりましたぁ……」
 脳が痺れるような甘美な命令が下される。ぎこちない腰つきで、西洋画のような白い美尻を眺めながら一心不乱に突き上げる。
「あん♪ 最高♪ すごぉい♪ あんっ♪」
「ぼ、僕もですお姉さん……。つ、つながってるよぉ……」
「出して坊や……お姉さんの中に出していいから……。さっきみたいに特別濃いザーメンを中出しして……?」
「おおお姉さぁん……。いいんですかぁ? ぼ、僕……あっ、あっ……」
「何も考えずに出して……んっんっ♪ ほらほら……ほらぁ~♪」
 今までとは一味違う腰の動きがユータを襲う。上下だけでなく、ひねりを加えた悩ましい腰つき。ペニスが千切れるかと思うほどの、粘膜の胎動に翻弄されのたうち回る。
 この世のものとは思えないほどの極上の快楽。少年の初体験にしては、あまりにも魅惑的すぎる童貞喪失の儀式が開会される。根元から竿からカリ首まで隙間なく埋め尽くし、ねっちりと幾重にも甘いヒダヒダで快楽を送り込む。
 実際に、エスパによる擬似セックスはリアルよりも快楽の度合いが上だった。現実の肉体同士を重ね合わせるよりも、想像力で限界を超えたレベルまで到達できる可能性がある。
 愛液の粘度や量、匂い立つフェロモンの有効度、物理的な締め付けとその頻度。互いの想像力がうまく合致すれば、もう普通のセックスなどは問題にならないほどの快感を得ることができるのだ。
 だがそれをコントロールすることは思いのほか難しい。一度その快楽を味わってしまったら、麻薬のようにそれを欲して廃人へと真っ逆さまに落ちても文句は言えないのだ。 
「ああんっ♪ 出るっ♪ 出る出る出るぅ――」
 蜜壷の虜になった少年が屈服のおたけびをあげる。
 でんと尻肉が視界を埋めて結合部分を注視させる。
「出しなさい♪ 出して楽になるのよ……ねっ――ユータ君♪」
「えっ? あっ……ぼ、僕の名前……どうして……ああんんっ♪」
 疑問、愉悦、混乱、倒錯。
 様々な感情入り乱れ、ユータはエスミの膣内めがけて擬似射精した。びくんびくんと脈動するペニス。それを優しく甘くとろけるような愛撫でさらなる精液をすすり上げようとしてくる。
「くっ……僕の名前を知っているってことは……て、敵? うっ、うわぁっ!」
 ユータは快楽に飲まれそうになりながらも、かろうじて腰を引いて難を逃れた。自分の名前を知っている。どうしてかはわからないが、とにかく罠にはめられていることは理解できていた。
「んっ? あらぁ? どうしたのユータ君? 今まで通りお姉さんとオマンコしましょうよぉ……♪ ほらほらほらっ♪」 
 秘肉をぐいぐいと広げて見せ付けてくるエスパ。どろりと混じり合った愛の液体が滴り落ちた。
 しかし一度警戒を強めたユータの防衛本能が、それ以上の魅了を押し止めた。
「やめろっ! 僕はもう惑わされたりなんかしない……。お前達の目的はなんだ? は、はぁはぁ……」
 息を荒げさせながら言った。エスパは意に介さず、甘い笑みを湛えながら口を開いた。
「んもう。嫌われちゃったかしら? さっきまでいい感じだったのに……。あのシンクロ率、やっぱりユータ君と私の相性はいいわぁ……。ねっ、ユータ君が望むのなら……もう一度遠距離セックスしてあげてもいいのよ? うふっ♪」
「ぼ、僕の質問にこたえろっ! 何が目的か……」
「あら怖い。んーとね。私の名前は美魔女参謀エスパよ。今はエスミちゃんだけど。んー私は坊やを救いに来たのよぉ……♪ だって何かかわいそうだから……ふふ……」
 眉をはの字にひそませる。澄んだ瞳に吸い込まれそうになる。
「救いに来たとか……わけがわからないよ……。僕は……」
「うふっ♪ わからなくてもいいわよ。その内ね。と――その前に」
 エスパの視線の先、これまでの二人の痴態を見ていた女戦闘員達が、すっかり発情しきった表情でよろめいていた。
「エスパ様ぁ……もう我慢できません」
「エスミちゃんとユータ君があんなことやこんなこと……私も混ざりたくて……」
「あ~んエスパ様ぁ……♪ アソコがもうぐちゅぐちゅの洪水ですぅ~♪」
 もじもじと太ももを擦り合わせるもの。女同士で唇を奪い合うもの。胸をもみしだき欲情するもの。
 水晶装置によりまざまざと描写された映像に、彼女達の性的興奮は最高潮に達していた。
「はぁ……見てご覧なさいユータ君。あなたのせいで、エッチなお姉さん達みんな発情しちゃったって。ねぇどうする? ん?」
「え……ということは、昨日の僕が何してたかも……ひっ、あわ、あわわわあわ……」
 狼狽し顔が真っ赤になるユータ。全部見られていた――。こちらが潜んでいるつもりが、逆に罠を仕掛けられて観察されていたのだ。
「んふふっ♪ ぜぇ~んぶ見てたわよ♪ これ録画機能もあるのよ? 便利でしょ? ……裸のお姉さんにハーレムされてぇ……あ~んお姉さん出る出る出るぅ~って変態声あげたのも、エッチなアングルでお尻とおっぱい凝視して射精しまくったのも……一から十まで全部ね……」
「あっ……うぁ……あ……」
 ユータの驚愕は計り知れなかった。自分の未熟さを呪い消えてしまいたかった。セイブ解除にあれほどまでに苦労する時点で、同能力を持つ敵の存在に少なからず気づくべきだったのだ。
「うふふ……♪ そんな悲しい顔しないで? ほら、お姉さん達がなぐさめてあげるから……。ふふっ♪ ちょっとエネルギー使っちゃうけど……擬似エッチを複数人で楽しみましょう。えーっと……マユミちゃんルミカちゃんエリちゃんカスミちゃんヒビキちゃん! 大奮発の7Pプレイよぉ♪」
「えーマユミ感激ですぅ♪」
「ありがとうございますエスパ様!」
「あ~んユータ君をこのお口でレイプできるなんて……」
「私はおっぱいでと……」
「覚悟してね~ふふっ♪」
 選ばれた戦闘員が、口々に歓喜しながらはしゃぐ。おっぱいをぼよんと弾ませながら、手を叩き笑いながらいちゃいちゃもしている。
「あ、あの……」
 ユータがぽつねんとして言う。
「あのねユータ君。私ぐらいになると他の人もシンクロさせることができるのよ? この子達は能力を持たないけど――私が力を与えれば、一時的にあなたと擬似エッチもできるのよ。つまりね……」
「ねぇここ触ってユータ君♪」
「お姉さんのお口を犯してもいいのよ……?」
「オチンチンしこしこしてあげるぅ……♪」
「うわっ、うわぁぁ……こないでぇ……」
 戦闘員達が淫らな光を帯びた目つきでにじり寄って来る。ユータは必死で逃げようとした。が、エスパの能力により固くロックされたユータの心と体は、見えない鎖で足首から膝まで雁字搦めにされていた。 
「逃げることなんてできないのよ。さ、輪姦してあげなさい。着替えを覗く変態な坊やにみんなでおしおきしましょ♪」
「はいエスパ様ー」
「突撃ぃ~♪」
「あっ、ひぃぃぃぃぃぃ……」
 もみくちゃにされるユータ。女の肉という肉部分がこれでもかと覆いかぶさってくる。乳房を吸わされて腕を取られ足で責められ乳首をいじくり回されて――。
 悲痛な声を上げながら、ユータの意識遠く彼方の擬似空間に溶け込んでいった。



「んっ、あぁ……もう出ないよぉ……」
「あ~んまだ出るでしょう?」
「そうよぉ……。まだ私のオマンコ味わってないでしょう? ほらほらぁ……」
「ああっ! 本当にもう……だめ……あああっ」
 数十分か数時間か。エスパによるシンクロ空間の中で、終わらない遠距離擬似エッチは濃密に続けられていた。
 パイズリ、フェラ、手コキ足コキ、オマンコ等による搾精行為は、性欲旺盛の少年にとっても苦痛にすり替わっていた。
 しかも精神力をふんだんに使う遠距離での行為を強制され、ユータの身も心もボロボロに朽ち果てようとしていた。
「んんっ。だめぇ……僕おかしくなっちゃぅ……。オマンコ……おっぱい……溶けるぅ……全部ぅ……えへえへ、あはは……あはっ、あはぁはぁ……」
「いいよー♪ おかしくなっちゃえばぁ?」
「んっじゅぷっ♪ んっ……♪」 
「ほらほらー。またオマンコ地獄だよー? 嬉しいでしょー?」
 戦闘員の性欲は無尽蔵に近い。ガリガリと削られていく精神力と肉体。少年の命の灯火が、ふっと消滅するのも時間の問題だった。
「あはっ♪ もういいわよ。その辺にしておきなさいあなた達……」
「は、はいエスパ様」
 傍観気味に輪姦逆レイプを眺めていたエスパ、その重々しい腰をやっと立ち上げた。
「うふふ♪ やっとわかったかしら? 大人を怒らせると怖いのよ? 小学生がおいそれと首を突っ込んじゃ駄目なの? わかる?」
「うふぁ、ひぁ……、へぇ……」
「あら、やりすぎちゃったのかしら? んもう……少し入れてあげないと……ちゅっ♪」
「んっ……ちゅ……ぁ……」
「んむむ……♪」
「んぷっ……あぁ……甘いよう……」
 ユータの白く青ざめた顔に赤みがさす。エスパの濃厚なキスによりエネルギーを注入される。舌をからめ目を見つめながらむさぼりあう。
「お姉さんのキスはいいでしょう? これを飲んで元気になるのよ……」
「ふぁ、はぁい……♪」
 ボロボロにされたはずなのに、媚薬成分を含んだ唾液と融合したキス責めは、壊れかけた少年の未熟な心を魅了するには十分だった。
 目の光を失い、とろんとした目つきで母親の乳房にすがるように甘いキスを繰り返した。
「あふ、はぁ……。エスパ様……ぁ」
「うふふ……いい子ね」
 そう口走ってしまう。敵とはわかっていながら、頭の奥がじいんと痺れて気持ちよくなってしまうのだ。
 首の裏にそっと手が伸びる。ひっしりと抱きとめられむちむちの谷間に甘く抱擁される。聖母のように慈愛のある笑みでよしよしと頭を撫ぜられる。
「うっ、ああぁ……気持ちいいよぉ……」
「うふふ♪ お姉さんのおっぱいは安らぐでしょう?」
「は、はぃぃ……」
 ユータは完全に虜になった。お釈迦様の手の平の上で道化にされるような、極めて絶大なる能力差に我を失い屈服する道を選んだ。
 エスパはまるで自分の子供のようにユータをあやした。たっぷりと胸に甘えさせ、谷間の匂いを吸わせて心酔させる。
 深く、また深くなっていく甘美なる陶酔。
 頭ではいけないと思っても、全ての状況がエスパに従うことに是を唱える。
 甘えたい。エスパ様。なんでもわかってくれる。自分を導いてくれる。おまけにとってもエロくて非の打ち所がない。
 霧が立ち込める湖に、ぷかぷかと白い花びらの上で眠るような優しい心地。エスパ様の魅了空間。抜け出せない。どこまでも落ちていく。精神がしじまの迷宮に吸い込まれていく。静謐な神殿の女神像の足先に、何度もキスをし忠誠を誓う。
「んっ……ぁ……ぁ……」
「うふふ……♪」
 ユータは生まれたままのまっさらの状態になった。右も左も善悪の区別もつかない、洗脳をねじ込むには極めて良好な状態を用意されてしまった。
「ねぇ……ユータ君? 聞いていい? ユータ君はぁ……どうしてメディクスファイブの味方なんかしてるの?」
「え……」
 様々な思いが胸中にめぐる。しかしその内情を打ち明けるのはためらわれた。
「どうしたの? お姉さんは嫌い? 信用できない……?」
 じいっと熱い瞳で見つめられる。毛づくろいするように髪をいじられる。しなやかな肢体をひしと押し付けられる。
 感極まったように、心の小箱が静かに開きはじめる。
「あっ、あの……。僕……ものごころついた時から……変な能力を持ってて……」
 ユータは心に溜まったもの吐き出した。一度喋り初めたのなら、決して止まることはない。傾けたお盆から水色の液体がぽたぽたと垂れて、真っ白な淡い谷底へと吸い込まれていく。
「最初はみんな面白がってたけど……みんなその内気味悪がって……それで……」
「そうなの……つらかったね。よしよし……」
「ああお姉さん……優しい……」
「うふふ……」
 芳醇な甘い匂いがユータを包み込む。心の隙に入り込み、トラウマをこじ開けて言いように操り自らの忠実な僕に仕立て上げる。美魔女参謀エスパにとっては慣れきった手順だった。
「そして……次はどうしたの?」
 首を傾けて優しく尋ねられる。脳が完全に麻痺したようになる。この口も誰か他人のもののように遠く儚く混濁して思える。
「あ……それで、メディクスファイブから僕の能力が役に立つって……僕嬉しくて……」
「ふぅん……」
 数秒沈黙する。今まで笑顔を絶やさなかったエスパが、ふと悲しげに顔を伏せ、長い長いため息を物憂げについた。
「どうしたんですか? エスパ様……」
「ん……。ユータ君。あなたは彼らに利用されているのよ……。はぁ……こんな年端もいかない子を……」
「えっ、え……」
 利用――と言われてユータの心は揺らぐ。この部屋も自分専用に作ってくれた。それなのに利用なんてことがあるだろうか?
正義のために、エビルネイターズという悪に立ち向かうため、自分は頑張って――。
「ユータ君。電脳力は間違った科学の力よ。どうあがいてもそれは覆せないわ。あなたの生まれ持った才能――サイキックとしての能力とは正反対、完全に相反するものだわ」
「え……でも」
 ユータは思いだす。初めて敵の作戦を盗聴した時、みんな喜んでくれた。それでもっと頑張ろうって思えた。正反対と言われても、にわかには信じがたい。
「彼らは悪よ。悪の科学。正義という看板を掲げてはいるけど、自分達の力を誇示したいだけの傲慢な人種だわ。うん……ユータ君が関わっちゃいけないの……こんな優しくて繊細な子はね……」
「あっ……うう……」
 おっぱいにふわりと抱きしめられた。脳が喜んでいる。エスパ様。自分と同じサイキック。信じたい、信じてしまいたい。でもどこか心の隅に引っかかる。あれは、そう桃花さん――。
「でっでも桃花さんは……僕のことをちゃんと期待して……一緒に喜んでくれて……」
「……それが奴らの狙いよユータ君。女の子を使えば年下のボーヤなんて簡単に動かせると思ってるの。 ねぇ……そうでしょ? ほら……思いだしなさい……」
「あっ……ぅ……」
 そういえば、桃花以外の四人はどこか不満気な顔だった。顔では作り笑いをしていても、心の内では自分を冷めた目で見ていたかもしれない。いや、科学では解明できない能力、だとするとやっぱり――。
「わかったユータ君? あそこはあなたの居場所じゃないわ。ユータ君を理解できるのは私だけ……エスパ様だけよ? ほらもうわかっているのでしょう? 来なさい……私の胸の中に……」
「あっ……」
 手を広げて誘う女神の像。何も考えず飛び込んでしまいたい。きっと夢のような世界が待っている。それは確実に約束されている。けれど――。
「も、桃花さんだけは……やっぱり僕のことを……」
「……」
 一瞬般若のような顔になった。と思ったのは間違いだったかもしれない。エスパは顎に手を当て、ひらめいたという風に目を見開いた。
「ふふっ。ユータ君……それならこれを見ても信じられるかなぁ?」
「え……?」
 指差した先には、映像を映す水晶装置があった。指をパチンと鳴らすと、よく見覚えのある五人の姿ぼうっと浮かび上がった。
(ちょっと反則だけど……。この際仕方ないわね……)
「ユータ君……これを見て? これがあいつらの本性よ……」
「えっ……あ……」
 五人とは当然メディクスファイブ。ぼそぼそと聞こえるつぶやき声が、しだいに大きくボリュームを増していく。

「ちっ、使えないわねーあの子。ていうか昨日部屋で何してたのかしら? 二、三回成功したぐらいでいい気になって……」
「ガキなんかにたよってらんねーよ。俺たちは俺たちの力だけで……へへへ」
「正義って楽しいです。正義があれば何をしてもいいんですから」
「奴らを倒せば俺たちの評価はうなぎ上りだ。電脳の力で世界を征服するんだ。俺たちにはそれが許される……」
「恒久の平和に犠牲はつきものなんですよ……。もちろんボク達の肥やしになってくれるのは、愚鈍な一般市民ですけどね。あははは」

 呆然と立ちつくすユータ。あんなに柔和できりりとした桃花の顔も、今では口元は釣りあがり目は爬虫類のようで酷くゆがんでいる。
「あっ……あぁ……おっ……ぅ……」
 ユータは吐き気を必死でこらえた。大人達が話すどす黒い悪意に心が破壊されそうだった。
「んっ、ごめんねユータ君。本当はこんなの見せたくなかったの。誰でも人の裏側を覗くのは怖いわ。でもそれに目を背けちゃいけないの。だから……ね、ユータ君……」
「あぅ……暖かぁい……」
 むっちりと谷間の奥に閉じ込められる。一生の中で最上の至福に近い幸福感がユータを満たす。
「そう暖かいのよ。私達サイキックは暖かいの……」
「うん、お姉さん。やっとわかった、僕もう迷わない。僕、僕ぅ……」
「泣かなくていいのよユータ君……。さ、涙を拭いてこれからのことを考えましょう」
「はい……」
 目を擦り涙をぬぐう。エスパがついと立ち上がり、ユータの耳元でひっそりと囁く。
「ユータ君……。あのね……3日後……湾岸第一倉庫でね……武器や薬の密輸があるの……」
「は、はぁ……」
「それをあなたは伝えるだけでいいの。ふふっ♪ スパイよユータ君。あなたはエビルネイターズの一人として活動を行うの。メディクスファイブを一箇所に集めて……ふふふ。異次元より暗黒パワーを凝縮させたエビルス砲……それで一網打尽よ」
「え……でも」
「あんっ……んちゅ……。あなたの心を弄んだお返しをしてやるのよ? ね……ちゅ」
「ふぁ……はい……はぁい……♪」
 細い舌が耳の中へと滑る。ユータの瞳は少年のそれではなかった。洗脳を施されて、どんよりと目の光を失った傀儡そのものだった。
「ねっユータ君。それじゃお願いね。うん、大丈夫よ私がついてるわ……。ユータ君は自然にしてればいいの……」
「はっ、はい……。僕なんだか自信がついてきた……」
 実際ユータの心は落ち着いていた。洗脳されることにより、ぐらついていた意志が一本芯が通り固く固定された。それが誰彼の益となるか負債となるかとは関係なく。
「私達もユータのこと応援してるよー」
「そうそうー。エスパ様を通して、一瞬でも通じ合った仲だものー」
「メディクスファイブを倒したら、また一緒にいちゃいちゃしよーね♪」
 戦闘員達もユータを鼓舞した。
 時として性的快感よりも勝る、永続的な脳内麻薬分泌をもたらす強固な洗脳が、ユータの発展途上の脳に刻み込まれた。
 メディクスファイブ崩壊の日は、刻一刻と迫っていた。




 薄紅桃花は本部に帰還すると、まず真っ先にユータのもとへ向かった。
 昨日の様子は明らかにおかしかった。悩み多き思春期の少年である。やはり自分がしっかりと聞いてやらなければと思った。
「ユータ君……大丈夫かしら?」
 そう言いながらスタスタと歩く。
 と、ちょうどその時、当の本人ユータはてくてくとこちらに向かってきた。
 昨日までとはうって変わった様子、歩幅の広い心地よいステップで気分のよさを感じさせる。
「あっ! 桃花お姉さん! 聞いて、聞いてくださいよ!」
「どっ、どうしたのユータ君? 急に大声出して?」
 昨日とのギャップに桃花は面くらった。この変わりよう。しかしこれぐらいの男の子なら切り替えも早いのだと思った。
「僕、重大な作戦を聞いてしまったんです。三日後、湾岸第一倉庫で……」
「ま、まぁユータ君。ありがとう、君がいてくれて本当によかったわ」
「うん! 僕もメディクスファイブの役に立てて嬉しいです。それじゃあさようなら!」
「ええ。またねユータ君」
 手を振る少年の姿。純真でほがらかで、この世の憂いを知らない元気いっぱいの青少年。
「……何があったか知らないけど。元気になってよかったわ。ようし……私も気合を入れて……ファイトオー!」
 桃花は気合を入れた。
 どこか空回った歯車が、鈍いきしみをあげて回り始める。
 その微細な齟齬に、誰一人気づくものはいなかった。




 陰鬱な曇り空の日だった。
 ユータは本部へ向かう途中に、ワゴンから伸びる戦闘員の手により連れ去られた。いや、拉致されたというよりユータ自身もそれを望んでいた。
 数10キロはゆうに走ったであろうか。人知れぬ山道をくぐり抜けたその先に、白いドームのような建物がぬうと姿を現した。
「ようこそユータ君。エビルネイターズ山岳基地へ。快く歓迎するわよ」
「はい……」
 エスパが満面の笑みでユータを迎え入れる。
 今日の衣装は女神風で、うっとりするような美乳と美脚が少年の心をとらえて離さない。神託という名の洗脳を、恩寵という名の淫らな疼きを、どこまでも深い胸の中で虜になるまで授けられてしまう。
 淡く悩ましげな双眸が、愛玩動物と化した無垢な少年の瞳をとろりと甘くくるむ。
「おいで……」
「はぁい……♪」
 ユータの心は完全に固定されていたし、エスパもそのことを熟知していた。サーチ能力を極めればほぼ読心術に近い域まで到達できる。強力なマインドコントロールにより誘導された少年の心を読むなど、エスパにとっては容易いことだった。
 が、エスパは少し楽しもうと思い質問してみた。
「ユータ君? 今日はその……悪い人達が……やられちゃう日だけど……いいの? ユータ君は少しの間だけでも……その人達と仲間だったんじゃない? ねっ? 悲しいとか……後悔するとかないの?」
 母親のような甘い眼差しで問いかける。心が少しも揺らがないのがわかる。
 ユータは限りなく深い心酔状態にある。いいように操り教育するには極めて理想の精神状態だ。
「いいんです……。あの人達は僕とは違うから……。本当の僕をわかってくれるのはエスパ様だけです……」
 その言葉が聞きたいと思った。言わせてあげたかった。
「そう言ってくれて嬉しいわ。さ……いらっしゃい。色んなことを教えてあげる。でも……まずはお姉さんのこと。これ……とっても大事なことよ」
「大事なこと……」
「ユータ君がこれから能力を飛躍的に伸ばす方法ね。才能はあるわ。それは私が保証する。ただ間違ったやり方ではいけない。……あのメディクスファイブのようにね……」
「ふぁ……」
 思考がとろとろに蕩けていく。二人きりの世界に入っていく。
 エスパはゆっくりとした動作で胸元を広げた。乳首はぎりぎりで見せず、乳肉の盛り上がりを強調させて少年の反応を楽しんだ。
「あぅ……お姉さん。お、おっぱい……」
「そうおっぱいよ。これから正しい方法を教えてあげる。何事も基本からよ……んっ♪」
 そう言って、エスパは重そうなおっぱいを両腕で脇の下から抱え込んだ。
 少年を惑わす白い谷間がいっそう強調される。ふらふらと誘蛾灯に誘われる虫のように、おっぱいへとおぼつかない足取りで歩み寄る。
「駄目。そこで止まって」
「え……でも」
 女神様の制止。混乱するが従うしかない。
「これはテストよユータ君。私のおっぱいが……どれくらい柔らかいか答えてごらん。ん……それだけじゃなく、弾力とか……味とか匂いとか……暖かみ……ママみたいとか……他にどんなことでもいいわ。詳しく詳しく……それが仔細であるほどいい。ねぇユータ君……これはサイキックとしての君の能力を試しているの。ほら、想像してみなさい。お姉さんのおっぱいを……」
「あぁ……」
 ユータは大きく嘆息した。初めて出会うエスパ様。おっぱいの柔らかさなどしるはずもない。けれど、その方法は確かに理にかなっていると思った。今までの行き当たりばったりの、自己流ではなし得ない領域なのだ。
 ただ遠くが見えるということだけにとらわれて――その本質、物質の内奥まで深く突っ込んで理解する。それがサイキックとして一番必要な能力ではないかと――。
「ふふ♪ 難しいことは考えなくていいわ。今はおっぱいを感じなさい。思ったままでいいわ……さぁもっとよく見て?」
「あ……ん」
 谷間が鼻先に近いアップになる。数日前の映像よりも、ぐっとリアルで艶やかで色っぽい。何より内側からドクドクと血液の流れる胎動を感じる。
 ユータは目をつぶって想像した。このおっぱいを理解しようと思った。エスパ様に気に入られるために。おっぱいをよりおっぱいらしく思い浮かべようと。
 能力を最大限に集中させておっぱい全体を感じ取る。形状色弾力温度その他、ありとあらゆるすみずみまで神経を行き渡らせて一つのおっぱい像を脳内に構築する。
 今までのどんなサーチより安らいでいた。余計な邪念がなく不愉快な焦燥感もなかった。大好きなおっぱいのためなら、どんなことでもできると思った。
 そしてユータは到達した。練磨に練磨を重ねた究極のおっぱいを。そしてそれを神様への崇高な献上物としてかしこまって捧げた。
「ふふっ。お疲れ様。それでいいのかしら……? 別にやり直してもいいのよ?」
「いえ、これでいいです……。これが僕の……」
「そうなの。じゃ、答え合わせしなきゃね……んっ」
 そう言うと、エスパは胸をさらけ出し、少年の顔にむにむにと擦り付けてきた。
「あんっ♪ んむぅ……」
「どう……?」
「ん……あ……いや。全然……僕の思ってたよりも……ああっ」
 それは至高の柔らかさ。言葉にはできないほどの、本当に儚い口の中でさっと消えるチョコレートのような優雅さだった。
 無論柔らかさだけではなく、押し返す心地よくはずむほのかな筋肉も、ふわりとその周りを包む脂肪のデコレーションも、まばゆいばかりの皮膚の白さも、かすかに湿り肌を彩る甘ずっぱい脂も、妖しく尖りつんと自己主張する薄ピンク色の乳首も、何もかも全てが想像をはるかに超越していたのだ。
「きっ、気もちいい……。おっぱい……こんなに吸いついてくるんだ。これが……」
「うふふ♪ これじゃ70点ぐらいねー。でもまぁ初めてにしてはよかったわよ。さ……もっとおっぱいを感じて。今度からはもっと細かい部分まで再現できるようにね……」
 エスパは少年の手をつかみ触らせた。美しい顔を上気させ甘いあえぎを整った口から漏らす。
「はぁん……♪ 手でも触ってぇ……あん……いい……」
「はぁはぁ……柔らかい……指が奥までめりこむぅ……」
「ユータ君ここぉ……おっぱい優しくもむと感じるのぉ……乳首もぴんって指ではじいて欲しいわぁ……。そういうこともちゃんと覚えるのよぉ……」
「はい……はぃぃ……。ああ僕幸せ……」
 圧倒的魅力の乳房に我を忘れるユータ。どこを触っても新鮮かつ甘美な反応が返ってくる。
「ほらぁ……味も見てぇ……おっぱいの味ぃ……。んんっ♪」
「はぁいお姉さん……ちゅぱ……ちゅぷちゅぷ……」
 口元にそっと乳首が差し込まれる。それを唇ちゅうと挟みしゃぶりあげる。
 ユータは完全に赤子になった。言われたことは何でも吸収する生まれたままの精神に。
「はぅぅん……ママぁ……♪ おいしいよぉ……」
「あらママだなんて可愛い……♪ ちゃんと愛されたことがないのね……かわいそう。でもこれからは私が愛してあげるからねー。ちゃんと言うこと聞くのよ……」
「はい……んっ……んちゅ……」
「ああなんて愛おしい子。もっと好きなだけ吸いなさぁい……♪」
 睦まじい本当の親子のような愛のテリトリー。誰も立ち入ることのできない、甘い近親相姦の愛情行為。
 ピンク色の種が脳内にぱらぱらとまかれていく。それを排除する機能もどこかへと消えてしまった。不必要な脳細胞は快楽に蕩かされ、新たに植え付けられたシナプスがどこまでも広く膨大に根を張っていく。
 サイキックとしての自分。エスパ様に忠誠を誓う本当の自分に目覚める。能力を引き出してくる唯一の理解者に深くおじぎをする。
「ふぁ、ママぁ……ママママぁ……」
「うふっ♪ うふふふ……♪」
 ショートケーキのような甘ったるい空間は数十分数時間にも思えた。濃密な桃色の霧が場を満たし、この世の時を刻む巨大な時計の針を錆び付かせた。
 無限にも思える空間。終わりのない終わり。しかし少年はまどろみからいつか覚醒する――。
 永遠の途切れか幻の終着か、ふっと突然口元の乳房がそっと離れた。 
「あっ、あぁ……どうして……?」
「ふふ……そろそろ時間よ……」
「え……? 時間って……」
「大きな力が……天上より降り注ぐ……。ユータ君の出発点でもあるけどね……」
「はぁ……」
 ユータはぽかんとした表情で見上げた。合点はしていなかったが、素晴らしいことだと思った。
「またテストよユータ君。ふふ……次はおっぱいよりも難しいわよ。ちゃんと想像できるかなぁ?」
「あっ……ああああっ」
 腰布を剥ぎ取り白い尻を露にする。少年に背を向け四つんばいになり、女神のしっとりと濡れた秘部を恥ずかしげもなくむき出しにした。
「んっ……ごくっ」
「ここ……想像できる? まるで未知の部分でしょう? ……オマンコ♪ ほら……早く想像してみなさい。ねっ……」
「ああぁ……」
 喉をならし軽くうろたえながらイメージを浮かばせる。締め付け、暖かさ……考えがまとまらない。おっぱいとは違い見えない部分が多すぎる。
「うふっ♪ 苦戦しているようねユータ君。あっそういえば……この前擬似的に挿入もしたわねぇ……。でもあれはぁ……ちょっと色々脚色しすぎてるっていうかね……。ふふっ♪ 現実はまた違うわよ……ほら、ユータ君。あなたの思うがままいいわ……素直に……ありのままを……ほら」
「あっ、ああ……」
 エスパが媚肉を指で広げて見せる。どろりとした愛液がつまった未開の洞穴が、ぬらぬらと蠢動しながら哀れな獲物の侵入を待ち構えている。
「ああんっ……。そんなにぐちゅぐちゅなんだぁ……それならこれぐらい……かな?」
 ユータの想像する女性器。しかしそれはエスパの用意した答えとは、途方もなくかけ離れていた。
「あれぇ? ユータ君の力はそんなものなの? ふふっ♪ それじゃ30点ぐらいねぇ……。お姉さんがっかりしちゃうかもぉ……」
「あっ、ああっ。もう一回やり直します……。今度こそ……もっとよく見て……色もつやも粘度も圧迫感も……ああっ、ああああ――」
「うふっ♪ うふふふ……♪」
 教師に駄目だしをされて、慌てて再始動する。壊して直しまた切ってははり、自分の理想に近づくように念じて奮闘する。
「こっ、これなら……」
「ん? 何か勘違いしているんじゃない? ねぇ……」
「あわっ、あわわわ……」
 ユータは一生懸命であったが、やはり女性器への完全な理解は乏しかった。精神力を無駄に消費しながら幾度も失敗作を創り上げた。
「はぁはぁ……はぁはぁ……こっ、これは……」
「んー全然駄目ね♪ ふふっ♪」
「あっ、あひぃぁぁ……」
 悲観し狼狽しがっくりと膝をついた。もう限界だった。
「ふふ……そんなに難しく考えなくていいのに……。んっまぁこうやって悩んでいる姿も可愛いわぁ……。あっ……そろそろ時間ね……ふふ……」
「えっ、時間って?」
 きょとんとするユータ。
 その時は目前に迫っていた。
「答え合わせよ。ほら……オチンチン入れなさい。ここでしっかり復習するのよ……」
「んっ♪ ああっ♪ 吸い込まれる……あああんっ……やば……うぁ――」
 後ろ向きに尻を突き出し体重をかける。みちみちっと肉を押し広げながら、青臭い少年の若茎をたっぷりの愛液でくるみながらじゅぷじゅぷと飲み込んでいく。
「んっ♪ すごい吸引力……こんなにわかるわけないよぉ……オチンチンがぁ……お肉もまとわりついてきてぐちょぐちょでぇ……ああ出るぅ♪」
「出しなさい♪ 私の可愛いユータくぅん♪ あ~んほら今この時がエビルネイターズの幕開けよぉん♪ しっかりしつけてあげるからぁ……頑張って超すごいサイキックになってねぇ……あ~んあんあんっ♪」
「は、はいわかりましたエスパ様ぁ♪ 僕頑張ります……あ……、あ、ああ♪ オチンチン溶けるぅ……あああんっ♪」
「んっ♪ あんこの快感最高♪ あっ、来る……同時に……三箇所で……私もユータ君もぉ……ああっ生まれるぅ――」
 二人はみっしりと抱き合い快楽をむさぼり絶頂に達した。
 愉悦と快感の渦の中、どこかで絶望の断末魔がむなしくかき消えた。  

 
  1. 2013/09/18(水) 22:38:07|
  2. SS
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SS 美魔女参謀エスパの姦計

以前考えた誘惑テレパシ~からのつながりで
お互いにサイキックで少年が格上のお姉さんに
罠にはめられて弄ばれたらの妄想でSSできました。

悪の女幹部っぽい戦隊もので
唯一超能力を使える少年が遠隔誘惑されます。

雑魚の女戦闘員に囲まれるのも大好きだったりします。
とりあえず半分ほどで続きは気が向いたら。




美魔女参謀エスパの姦計


 この日、暴魔爆悪大帝ゴルドリオのイライラは頂点に達していた。
 異次元世界エビルスを根城とする、破滅大極魔神エビルドラースの地球侵略組織エビルネイターズ。
 その侵略特攻先鋒隊長として、非常に意気込んで地球制圧に向かったはずだった。
 ゆうに二メートルと超す巨躯の肉体と、ありとあらゆる殺人武器をまるで手足のように使う技術があれば、こんな辺境の星のなどものの一瞬で征服できるという自負があった。
 だがしかしその目論見はあさはかだったと知ることになる。
 電脳地球防衛組織メディクスファイブがゴルドリオの前に悠然と立ちはだかったのだ。
 町で破壊活動をしようとしても、たちどころに現れて妨害されてしまう。どんなに計画を練っても、まるでこちらの心が読めるかのような速度で迅速に対処されてしまうのだ。
 もちろん彼らの頭脳技術を結集した武器も、猪突猛進であり力馬鹿のゴルドリオにとってはひたすらに手を焼かざるを得ないものだった。
「ゴルゴルゴルー! ああ何たる不覚。こんな星一つ征服できないようでは……。このままではエビルドーラス様に見限られてしまうでゴル! せっかく名を上げるチャンスであるのにゴル……。無性に頭にくるでゴル! あのにっくきメディクスファイブの奴らさえいなければ……ゴルゴルゴル……」
 怒りのやり場のないゴルドリオ。
 と、その時背後に一つ人影が舞い降りた。
「おっほほほほ。苦戦しているようねゴルドリオ。これじゃ暴魔大帝の名が泣くわね」
「ゴルっ? お、お前は――」
 緩い笑みを口元にたたえる美貌の女――美魔女参謀エスパが優艶な面持ちでしとやかに佇んでいた。
 超能力に長け、特に透視や催眠に卓越した年齢不詳の魔女である。
 亜麻色のロングヘアーに抜群のプローポーション。異性の心を惑わすスケスケ紫の薄布一枚を身にまとい、持ち前の美巨乳や美尻ラインをより官能的に艶かしく際立たせている。切れ長の瞳も妖艶で、すっと鼻筋も通り鼻梁も気高い。やや厚ぼったい唇からしゅっと鋭角的にまとまった顎先まで精巧な美しさが行き届いていた。
 その蠱惑的な美貌から繰り出される人心掌握術もお手の物である。本性である美魔女スタイルのみならず、セールスレディやナース、時には女学生や花屋のお姉さん等、ありとあらゆる状況に応じて臨機応変に姿を変えることができる。
 もし彼女の潤みきった瞳で見つめられながら局部を官能愛撫されて、耳元で誘惑の言霊を幾重にも吹き込まれたのなら、決して抗える男はいないであろうと思われる。
「むっ、むむむ……。誰もお前など呼んでおらん! ワシだけの力であのメディクスファイブなど十分でゴル!」
「うふふ……♪」
 剣幕も意に介さず、ゆっくりと歩み寄るエスパ。ゴルドリオの脇へとひっそりと滑り込む。並んで寄り添う姿はまさに美女と野獣だった。
「ねぇゴルドリオ……」
「なっ何でゴル……」
 端正に整った指先が、つんと荒々しいゴルドリオの頬をくすぐる。
「ここは協力しましょ♪ 力を貸してあげるわゴルドリオ……」
「ぬっ……ぐぅ。そ、そう言って手柄を一人占めする気でゴルな? どうもお前は信用できないでゴル……」
「そんなこと言わないでゴルドリオ……」
「む、むわっ! 何をするでゴルか……」
 エスパの細長い指が、尺取虫のようにゴルドリオの腿をトントンと小気味よく散歩する。
 自然と前かがみになり、二回りもあろうかというゴルドリオの頭もエスパに並んでしまった。
「……あなたの力が必要なのよ。ねぇゴルドリオ……ちゅっ♪」
「は、は、はぅ!」
 甘い吐息と耳元への接吻による波状攻撃。
 ゴルドリオは体を気味悪くくねらせて悶えた。
「ね……お願い♪ 私もあなたを必要としてるし……。あなたも私を必要としているわ。二人で……打倒メディクスファイブよ……。このままではエビルドーラス様に見せる顔がないのでしょう? ほら……大丈夫よ安心して……私がついてるわゴルドリオ……」
「んぁ……ぐ……ぁ……ぅ……ゴル……ぁ……」
 もはや彼は傀儡だった。ゴルドリオほどの巨漢であっても、美魔女エスパによる官能誘惑は効果覿面だった。
「早く……ほら……いらっしゃい……可愛い子。任務が終わったら、た~~っぷりあなたと楽しいことしたいわ……うふふふふ♪」
「く……うぐ……」
 必死で歯を食いしばるが、精神的主導権はエスパの手中にあった。教師と生徒の関係ような、絶対的格差をこの一連の誘惑行為で植えつけられてしまったのだ。
「あ……わかったでゴル。共に戦うでゴル……」
 その言葉を聞くと、エスパは突然無邪気な少女のような声になり、
「ああ~ん♪ ゴルドリオ最高♪ やっぱり頼りがいがあるわぁ~♪」
 とはしゃぎながら乳房をむにむにと腕に押し付けた。
 愚鈍なでくの坊がだらしなく顔をほころばせる。エスパほどの美女にくっつかれて嫌悪する男はいない。
「そっ、そうでゴル。ワシはすごく頼れる男でゴル! 見よ! このどんな大岩をも打ち砕く鋼鉄のような豪腕……ふんっ!」
「きゃ~すごいすごいすごぉ~い♪」
「はぁはぁ……ふぅふぅ……」
 エスパの手管にずっぷりとはまり込むゴルドリオ。これぐらいの支配なら彼女にとっては朝飯前だ。
「うふっ♪ それじゃゴルドリオ。早速行動を開始しましょう。善は急げよ。さぁあなた達入ってらっしゃい♪」
「は~いエスパ様~♪」
 手で合図をすると、エビルネイターズの女戦闘員が数十人部屋に入って来た。
 ピンクのぴちぴちレオタードが、むっちり鍛え上げられた太ももを包む。股はTバックに深く切れ込む見るからに扇情的なスタイルだった。顔は仮面舞踏会で使うような妖しげなマスクで隠されている。押さえきれないエロスが満載、それがエビルネイターズの女戦闘員なのである。
「こ、こら! ワシの神聖なる作戦室に入って何をする気でゴル! あ、変なものを置くな! やっやめるでゴル! どうにかしろエスパ!」
 しおしおと巨大な体を小さくするゴルドリオ。それでも女戦闘員達はきゃぴきゃぴと決められた仕事を忠実にこなしている。
 無駄にでかい椅子や机は片付けられ、その代わりに衣服用ロッカーがいくつもいくつも部屋中に敷き詰められていくのだった。
「一体何をしているでゴルか? これでは何もできないでゴルよ……」
「気にすることはないわ。これが作戦よゴルドリオ。メディクスファイブを罠にはめるのよ……」
 エスパが腕を組み、勝ち誇ったような顔で言った。
「そ、そうでゴルか! 安心したでゴル! さすがエスパでゴルル!」
「ありがとうゴルドリオ。それであなたは別に動いて欲しいのだけれど……」
「合点でゴル! あれ? しかしワシはどこで作戦を立てればいいでゴルか……?」
「離れの倉庫でも使えば? あなたにはお似合いよ? うふふふ……」
「ひっ、惨めでゴル……。うぬ、これも打倒メディクスファイブのためと思えば……ゴルルルルル……」
「そうよ。勝った暁には二人で乾杯しましょうね……ちゅっ♪」
「はぅぅうう! このゴルドリオ粉骨砕身エネルギー全開で頑張るゴル! ゴルゴルゴル!」
「……筋肉馬鹿って簡単ね」
「ん? 何か言ったでゴルか?」
「いえ何も」
 こうして、美魔女参謀エスパによる計略は着々と進行していた。
 一方メディクスファイブ陣営は、迫り来る危機を未だ露知らずにいたのだった。



 見慣れない電脳機器が所狭しと鎮座する。
 ここはメディクスファイブ本部の一室。ユータこと篠山悠太専用に設計された部屋である。
 電脳地球防衛組織メディクスファイブにおいて、表立って行動するのは電脳強化スーツを着用し、エビルネイターズの怪人達と戦う戦闘能力を持った五人である。
 レッド、ブラック、ブルー、グリーン、ピンク。それぞれが独自の個性を持ち、強力な電脳武器を用いて日夜厳しい戦いを繰り広げている。
 だがメディクスファイブは五人だけで戦っているわけではない。開発や情報収集もろもろに、国家のみならず世界の期待を背負って多数の分野でのトップクラスが集結しているのだった。
 ユータも小学生の身でありながら、メディクスファイブを支える内の一人である。
 彼には人並み外れた能力がある。それは何か?
 努力では決して手に入らない、生まれながらに備わった性質――超能力である。
 ユータは物心ついた時から、自分の能力を実感していた。主に千里眼と呼ばれる遠隔透視能力である。
 限界はあるが、かなりの距離まで遠くの風景を認識でき、人の話し声や音まで感知することができるのだ。
 しかしその秀でた能力が、他の同世代の友人達とも心の壁を作ることにもなった。
 自分が当たり前のように感じることを、誰もわかってはくれないし信じてはくれない。
 決して埋まらない心の溝。ユータはいつしか能力ひけらかすことをやめた。その方が楽に生きていけるし苦労しなくていい。
 ただし心の本当の内側では寂しかった。親も回りの人間も、気遣ってくれているように見えても、根本的な意味では理解してくれていないのだ。
 どこか透明なビーカー容器が、がらんどうとしていて何も満たされる気配が微塵もない。そんな不確かでうつろな日々を小学生ながらに送っていた。
 そんな時、どこからか噂を聞きつけたのか一通の手紙がユータのもとに届いた。
 メディクスファイブ――。
 この世界を支配しようとする悪の組織と戦う団体。君の力が必要だ。ぜひ力を貸してくれないか?
 というような内容だった。
 当初ユータはこの奇天烈な内容に戸惑ったものの、結局は二つ返事で承諾することになった。
 自分の力が必要なこと、自分の力を発揮できる場所が存在することが理由だった。
 ユータは拍手喝采でメディクスファイブ本部に迎え入れられた。
 主要任務は、どこかに存在するエビルネイターズの基地を発見すること。そして敵の作戦を盗聴し諜報活動することだった。
 初めの任務は大して苦労はしなかった。現在のユータは著しい身体成長に呼応するように、超能力も飛躍的に伸びる急激な成長過程にあった。
 加えてメディクスファイブにより設計された、超能力を最大限に発揮できる専用のルームが一役買っている。
 ユータの脳を徹底的に研究し、最良の状態で能力を使用できるように調整された、まさに世界で一つだけのユータ専用ルームだった。
 事実この部屋でサーチ(俯瞰探索)するようになってからは、距離も精度も今までとは比べ物にならないくらい上昇した。
 能力者視点で言うと、実際に目の前にあるものを『つかむ』という感覚に近い。遠くのものをまるで指先数センチのごとく扱えるのである。
 ユータはこの成長に歓喜した。自分の人生の中での唯一の手ごたえだった。
 巻き起こるやる気。打倒エビルネイターズ。ユータは今日もルームにこもり切る。


 ルームに入って一番初めにすることはロード(呼び出し)だ。これはセイブ(記録)と対になる遠隔透視能力者必須の事項だ。
 セイブはその名の通り、遠くの風景を位置情報として脳の中に記録できる能力である。
 こうしておけば、昨日サーチした場所でも即座に呼び出せる。いちいち毎回サーチしなくてもいい。つまり効率がいいことになる。
 上級者になれば各地にいくつも位置情報を記録できるようにもなる。超広範囲のサーチ能力、いつでも的確に情報を入手するためのセイブ能力。遠隔透視能力者の最終的な到達地点がそこにある。
 無論、ユータの能力は成長したといってもまだ未熟だった。サーチ範囲も数十キロ以内で、距離が離れるにつれて精度が磨耗してしまう。セイブ可能箇所も一地点で記録に非常な精神力を要するのだ。
「よし。今日も頑張るぞ。僕のやる気が世界を救うんだから……」
 ユータはそう言っていつもの椅子に座った。
 目をつぶり、昨日記録しておいたデータをゲームの続きをするかのごとくロードする。
 色、音、匂い、温度、その他。ジグソーパズルよう散りばめられたピースが、ユータの精神力により限りなく現実に近い仮想現実として構築される。
 初めはかなり苦労したロードも今ではお手の物だった。
間違いのないように一つずつ押し進める。ユータの気力は充実していた。が、ユータはある違和感に気づいた。
 いつもと同じ部屋であるはずなのに、置物の配置が変わっている。まるで別の存在に置き換わっていた。
「机も椅子も……全然ない。代わりにロッカー。これは……。ちぇっ、もう気づかれたか。いつもはゴリラっぽいおっさんが馬鹿みたいに大声出していたから楽だったんだけど……」
 連日のエビルネイターズ制圧成功は、ほとんどユータの手柄によるものだった。敵の作戦内容を前もって知っていれば、これほど楽な対処法はない。怪人が悪さをする前に、連係の取れたメディクスファイブの精鋭達がその目をつむんでしまうからだ。
 しかしユータの精神侵入を知ってか知らずか、作戦会議室を移されては今までの方法は通じなくなる。
「でも……。ここからが僕の役目だ。もう一回上空からサーチで当たりをつけて……、とその前に一旦セイブを切ってから……」
 ここで作戦を話す可能性がないのであれば、もうこの地点のセイブは必要ない。
 そう思い、ユータはセイブを解除しようとした……が、その時――。
「あー今日も疲れたねー」
「そうよねー。戦闘員もやんなっちゃうわぁ……」
 黄色い声が聴覚として組成された。ピンクのレオタードに身を包み戦闘をこなす、美しくも恐ろしい女戦闘員が多数入って来たのだ。
「汗で蒸れちゃって気持ち悪いわぁ……。んもぉシャワーとかないのかしらぁ?」
「ねーねー。今からオフはどうするぅ?」
「やっぱカラオケでしょ!」
「そんなのつまんないわよ……。私がこの前見つけたお店がね……」
「あ~らあなたいい体してるわねぇ……」
「きゃっきゃっ……うふふ♪」 
 小鳥達のような女戦闘員達の語らいが始まる。
 ユータは完全にセイブ解除のタイミング逸してしまっていた。
 普段は見ることのない女性の着替えシーン。それも敵戦闘員の下着姿を覗き見することに、言いようのない背徳感と不思議な感情が沸き起こっていた。
 女戦闘員達はマスクを取れば皆それなりの美人で、むちむちとした太ももが艶かしくておっぱいも存分に張りがあった。
 まだ小学生で性的刺激に疎いユータ少年にとっては、この状況は魅惑のハーレムに近い至極悩ましげな光景だった。
「あっ、ああ……。戦闘員でも……普通の人間みたいで……お姉さんで……。おっぱいとかお尻も……ああ……」
 思わずサーチの目で、まじまじと女戦闘員の肉体を見つめるユータ。充血する股間。まだ精通をも知らぬ少年の、押さえ切れない情動が今にも爆発しそうだった。
「あんなに食いこんで……。おっぱいの谷間……はぁはぁ……すべすべの肌……はぁはぁ……はぁはぁはぁ……」
 ユータは淫らな妄想にぬるりと取り込まれた。遠隔透視といってもほぼ盗聴盗撮と同義の行為になる。
 そのアブノーマルな状況に、まだ年端もいかない少年は背徳の堕落快楽に飲み込まれそうになっていた。
「うっ……くっ。いや……僕は何をしているんだ。僕は女の人の裸を見にここにいるんじゃない……。話を聞かなきゃ……何か大事な情報を漏らすかもしれないし……」
 そうは口では言ったものの、ユータの脳内は女性への肉体妄想で占められていた。覗き見をしている罪悪感を、卑小な正義の盾を免罪符として乱暴に取り繕ったのだ。
「はぁはぁ……はぁはぁ……」
 ユータのペニスは盛大に隆起していた。右を見ても左を向いても魅力的なお尻とおっぱいばかり。折り重なる誘惑イメージに、真面目な少年能力者は甘すぎる肉体罠に今すぐにでも堕ちようとしていた。
「んっんっ♪ んっ……ああん……はぁん♪」
「ちょっとー。あんたこんなところで何してんのよー」
「そうよやめなよぉ……オナニーなんて。後で怒られるわよぉ」
「だってこの戦闘服で我慢しろって方が問題よぉ。みんなだってしたいんでしょ? 私って敏感だからさぁ……んっんっ」
 一人の女戦闘員が股間を指でいじりながら接近してきた。いや正確には、ユータがセイブした地点の真ん前に仁王立ちしたのだ。
「えっ? あっ、ああん……。お姉さん近いよう……。アソコが……濡れてて……。うっ、あああ……」
「あああんっ♪ 食いこみオナニー最高よぉ……♪ ほらみんな見てぇ……♪ 変態オナニー……♪ Tバックの淫乱スケベオナニーでぇ……♪ あああんっ♪ 指止まんない……ああん……イクイク♪ 私すぐイッちゃうかもぉ……♪」
 女戦闘員の卑猥な股間のドアップ。指を激しく出し入れしながらの自慰行為。女性器のヒダヒダから奥のぎゅうと引きしまった肉厚の媚肉壷まで確認できてしまった。
 少年はこのあまりにも扇情的な誘惑挑発行為に、小ぶりで皮かむりのペニスを痛いほど腫れあがらせていた。
「ああ……ん♪ 僕のオチンチン……何か変……。最近よくこんな気分に……ああっ……ああああっ♪」
 甘く少女のような声を出して悶えるユータ。なぜかセイブ地点のピンポイント手前で、このような行為をされているという疑問は浮かばなかった。未知の世界へ誘われる快感に、心のバリアをすっかり解放しきっていた。
「あ~んきってぇ~ん♪ 早くオチンチンここに欲しい……♪ あんあんあん♪ オマンコ擦れるぅ♪ レオタードがすごくいいのぉ……♪ あぁ~んあんあんあん……♪」
「お姉さんお姉さぁん……♪ 僕もそこに行きたい……。ああもどかしいよう……。はぁはぁ……はぁはぁはぁはぁ――」
 いつしか自然に少年はペニスをしごいていた。メディクス本部内であることも忘れて、白ブリーフからちょこんと顔を出す亀頭に一心不乱に考えうる限りの刺激を与えていた。
 迫り来る女性器の卑猥イメージが最高潮に達する。ぬちょぬちょという淫音が脳内を満たし、甘い嬌声がさらに欲情を歓喜し遠く離れた少年をピンク色の蜜罠地獄へと引きずりこんだ。
「イッくぅ~♪ 私イっちゃう~ん♪ 食いこみレオタードオナニー最高……♪ あんイクイクイク……イク――」
「あん僕もお姉さんと一緒に……ああ出る! オチンチンから何か出ちゃうよぉ……ああああんっ♪」
 股間にからむ紐に近いレオタード、その卑猥な動きにシンクロするように裏筋を指の腹で撫でさする。
 せき止められない白の欲望が、ドロドロの感情とごっちゃになり今どぴゅどぴゅと産声をあげた。
「あっ……ふぅん♪ なぁにこれぇ……♪ 白いの……いっぱぁい……♪ ああ……止まらない……♪」
 慌てて手で液体を受け止めるが、大量に粘っこく飛び散ったそれは勢い止まることなく、ペニスと根元からさらにさらにと排出を促していた。
「あ~あ何汚してんのよ? あんた馬鹿じゃないの?」
「はぁ……でも最高だったわぁ……♪ あんた達だって実はしたいんでしょ? ん? ほらほら……」
「ん……そう言われてみれば。ねぇユミカぁ……ちょっと……ねっ?」
「何よマユミったらぁ……はぁ……しょうがないわねぇ……」
 二人の戦闘員がいきなり絡み合う。呆けた目つきで、何をするのかと待ち構えるユータ。
「んっ♪ ちゅっ♪ ああんっ♪ んっちゅっ♪」
「んっんっ♪ んっ……ぷはぁ……。いきなり発情するなんていけない子ねぇ……んんっ♪」
「んもう……何よそんな光景見せ付けられたら……私もしたくなっちゃうじゃない……んっ♪」
「あ……じゃあ私もついでに……」
「私も便乗してぇ……」
「私も私も……」
 ユータの想像を遥かに超える、淫らな情景が網膜神経を直射した。
 濃厚なベロキスをしながらのレズプレイ。スケスケ黒レースブラからおしげもなく美巨乳を取り出し乳首オナニーをする女性。桃のようなお尻をぐいと持ち上げ、こちらを誘惑するようにアナルと女性器を交互に愛撫し絶頂へと上りつめる官能の女神。
 いたるところで酒池肉林のレズ乱交自慰行為が展開されていた。
「あぁ……また出ちゃうよぉ……」
「ああんっ♪ 最高っ……♪ もっともっとぉ……♪」
 ユータは本能に逆らえずに再び射精した。エッチなお姉さん達のリアルなエロ痴態の坩堝。まるで自分のその輪の中心にいるように錯覚してしまった。
「ああん……お姉さぁん……♪」
 本当はそうではないはずなのに、周りのお姉さんが自分のために脱衣し誘惑してくれている。女性器を恥ずかしげもなくかき回し、レズ行為や自慰行為を繰り返している。
 ユータを取り囲む女肉の外壁は未だ崩れる気配はない。何度も射精して精巣が空になりかけようとも、少年の心甘くくるみ欲情勃起させる卑猥なエロイメージを断続的に送りづづけて、魅惑の強制射精連射地獄の扉をぱっくり開かせていた。
「ああっ……♪ 出るぅ……まだ……オチンチンおかしく……ふぁぁ……♪」
「んっ♪ ああんっ♪ やぁんもっと……んっ♪ あん……欲しいわぁすごく……♪」
 汗ばんでテラテラと妖しく光る巨乳の谷間への射精。健康的な桃尻ヒップの迫力ドアップでの搾精。じゅるじゅると唾液をすすり上げる淫猥な唇でのバキュームザーメン行為……。
 ありとあらゆるスケベなイメージで少年は青臭い精を放ち続けた。
 自分課せられた仕事をほっぽり出して、女性の肉体を足の先から頭のてっぺんまで舐めまわすように鑑賞し、自分自身をなぐさめる極めて非日常で背徳的な行為に没頭してしまったのだ。
「もっ、もう出な……ああっ。やめて……やめてよう……」
 泣きながら懇願しても、女戦闘員の宴ももはやたけなわだった。
 くんずほぐれつの大乱交に発展した恥辱のロッカールーム。肉という肉がぴちぴちとはじけながら擦れあう。
 ユータもその渦中の一員だった。おっぱいに囲まれる美巨乳に包囲される。赤ちゃんのように乳房を吸わされ抱きしめられる。
 むちむちのお尻で潰される。Tバックからはみ出る媚肉に欲情させられアナル舐めを強制される。お尻でも囲まれて檻の中に閉じ込められる。でんと横に広い肉厚のヒップに誘惑される。真っ白い丘の流線的で芸術的なふくらみに頬ずりしたくなる。じっとみんなに見つめられる。オナニーするのを視姦されている。少年が粘っこい白濁を吐き出すのを今か今かと期待されている……。
「はぁ……ひぃぃ……」
 ユータはか細い声を上げながら射精し続けた。
 そしてどれぐらい時間が過ぎたのかわからないが、ユータはやっと解放された。
 おそらく気絶してしまったのだろう。覚醒した時には飛び散った精液だけが、その現場の苛烈さをむなしく物語っていた。 
 さっきまで戦闘員で満杯だったロッカー室も閑散としていた。
「ぼ、僕はなんてことを……」
 ユータはいたたまれなくなり、椅子から飛びのきルームを後にした。



 
 メディクスピンクこと薄紅桃花はいつものパトロールから本部へと舞い戻った。
 彼女はメディクスファイブの中でも紅一点の女性である。容姿端麗なお嬢様風の日本美人で、自分の中に一本すっと筋の通った凛とした女性である。
 細かい短剣術を得意とし、メディクスフルーレフラッシュによる超電脳音速刺突は、数々の怪人を闇に葬り去ってきた。
 五人の中で誰が欠けても成立はしない、絶妙のバランスでメディクスファイブは成り立っている。だがしかし最近のエビルネイターズの侵攻は着実にその頻度を増していた。
 そこで多大なる成果を発揮するのが、近頃メディクス本部に配属された篠山悠太の存在である。学校から帰った後のほんの数時間であるから配属というのは言いすぎだが、類稀なる能力を持つユータの諜報活動は実に莫大なる戦果をあげていた。
「ユータ君は今日も頑張っているかしら……?」
 桃花は長い廊下を歩きながらそうつぶやいた。
 超能力を有するといっても、ユータはまだ精神的未熟な小学生である。それなら自分がサポートし精神的支柱にならなければ――と思うのは自然の流れだった。
「私も忙しいけれど、少しでもユータ君のために何かできれば……」
 そう思案しながらひた歩く――とその時とうの本人のユータに期せずして遭遇したのだった。
「きゃっ!」
「うわぁっ」
 どんと正面衝突。二人は互いのエネルギーを半分づつ吸収して尻餅をついた。
「あいたたた……。ごめんなさいねユータ君。桃花お姉さん、ちょっと考えごとをしていたものだから……」
「いっ、いえ。ぼ、ぼぼ僕の方こそごめんなさい……。本当にごめんなさい……。じゃ……僕今日は帰りますから……さようなら……」
「あっ、ユータ君ちょっとちょっと…………あ、行っちゃった……んもう」
 廊下の水平線かなた、蜃気楼のごとく溶け込むユータの後ろ姿。
 やれやれとスカートのほこりを払い、桃花は立ち上がった。
「ユータ君……何かおかしかったわよね……。泣いてた?」
 桃花は先ほどの少年の違和感を思い出す。
 いつもならば、嬉々としてサーチの成果を話してくれるはずなのに。どこか影があるけれども、無邪気な少年特有の瞳で真っ直ぐこちら見据えて笑いかけてくるのだ。
 さっきの少年はまるで別物であった。だがその心の内実を知る術は、今の桃花にはまるでなかった。
「ん、まぁ最近張り切りすぎてたし……。ちょっとうまくいかなったから……それで……うーん」
 桃花の思考は軽く空回りする。が、彼女の性質は元来楽観的である。何事にも前向きでポジティブに行動し周囲の士気を高める。
「ま、思春期だものね……。色々あるわ。ふわぁ……と私は新武器の練習をしなくちゃ……」
 大きく背伸びをする桃花。
 しかしこの小さな歪が、メディクスファイブ崩壊の序曲になるとは、天然楽観娘の桃花には非常に想像しにくいことであった。



 ――ユータがサーチした元作戦室、現ロッカールーム部屋。
 エビルネイターズが誇る叡智と頭脳と美貌の結晶、美魔女参謀エスパがもくもくとした煙と共にその姿を現した。
「ほっほほほ♪ お前達よくやってくれたわ。あの少年――ユータはもう私のかけた罠に肩までつかっているわ……うふふ」
 そう言ってくるりとターンをし、小悪魔コケティッシュなくいっとお尻突き出しポーズを決めるエスパ。
 今日の衣装は、ふりふりピンクの花びらをイメージしたキューティードレスである。至る所に可愛げにあしらわれたレース、限界ぎりぎりまで持ち上げられたミニミニスカート、胸元ぱっくりデザインのぷるるん美巨乳谷間が渾然一体となり男の視覚に犯し誘惑魅了する官能オーラをこれでもかと放ってくる。
「エスパ様ーご機嫌麗しゅうございますー」
「エスパ様ー。作戦完璧に成功いたしましたー」
「あの少年は私達の性的行為に夢中に浸りきっていましたー」
 どこからともなく現れた女戦闘員。口々に報告を開始する。
「ふふ♪ ご苦労さんあなた達」
 エスパは余裕のある甘い微笑みで対応する。
 そのまま優雅にドレスのフリルをひらひらさせながら、部屋の隅へかろやかな足取りで向かった。
「いけないわね坊や。こんな簡単なセイブ地点なんか作っちゃって……。セキュリティ(防衛)もカーモフ(迷彩)も少しも施さないなんてね……。これじゃトラップ(罠)のかけほうだいだわ」
 とサイキック専門用語を言いながら、エスパは壁にしつけられた水晶玉を模したような機器を手に取った。
「これは馬鹿丸出しでサーチしてる悪い子ちゃんの情報を、リアルタイムに録画し描写する装置よ。能力のないあなた達にも変態坊やのオナニーが見られたでしょう?」
「はいエスパ様! 私がお尻を近づけると、お猿さんのようにしごいて果ててしまいました!」
「私がおっぱいを揉みしだいても同様に射精しました!」
「私達のレズ行為でも……」
「私のオナニーでも……」
「最終的には皆で水晶を取り囲んで、何度も枯れるまで射精させましたわ!」
 戦闘員達は数刻前の痴態を思い出し、にやにやとしながら思い出を反芻した。
「ほほほ……。能力のない一般兵に誘惑されちゃうなんて、サイキックの風下にもおけない坊やだわぁん♪ んっでもぉ……♪」
 と、妖艶なる美魔女はエロティックな腰をわざとらしく艶然とくねらせて口を開いた。
「はぁ~ん♪ これからは色々と教えてあげたいわぁん♪ 同じサイキックの年下少年とか感じちゃううぅ♪ あ~ん可愛い♪ ふんふん……名前はユータ君って言うのねぇ……。はぁんやぁん♪ 心にもちょっと陰りがあるしぃ……とっても美味しそう……んっちゅぽん♪」
 じゅっぽりと人差し指を第二間接まで咥えるエスパ。唇を妖しく開閉させながら、唾液の乗った指をぺろぺろと下品に味わいながらストロークを繰り返す。整った口元から漏れる、んっんっ……という甘いボイスもますますエスパの魅力に彩りを添える。
「あぁエスパ様ぁ……。そんな上品で素敵でエロエロな御姿を見せられたら……」
「あんっ♪ エスパ様……私さっきもイったのにまた濡れて……」
 上司の扇情的な誘惑行為に、何人かの戦闘員が魅了という名の恋の罠に落ちた。
 美魔女エスパの魅了能力は男性を瞬く間に虜にするだけでなく、同性さえも容易く本質的な魅力で篭絡することができる。
 誰しもが憧れるような小顔でプローポーション抜群の肢体。聞く者をうっとりさせるような巧みな話術により、敵を一切作らせずにいついかなる時でも羨望の的となり女王様として君臨している。
「うふん♪ 駄目よあなた達……。レズレズな行為はお仕事が終わってから。……っと、それじゃ明日は私も加わっちゃおうかなぁ……。エスパ様が直々に行動するなんて、本当に坊やは幸せものね……そぉ~れ変身っ♪」
 くるりとドレスを翻してターン。
 確認不能の数刹那、美魔女エスパはものの見事に変身せしめた。
「まっ、エスパ様。そのお姿は……」
「ふふっ♪ どうかしらこれ? 似合っているでしょう? 一回私もこれ着けてみたかったのよ」
 言ってエスパは腰に手を当ててポーズを取る。変身したのは意外や意外、エビルネイターズの下っ端一般兵である戦闘員の姿であった。
 ただ何点が相違があるとするならば、エスパ本人の美貌を差し引いてもセクシーすぎるということだった。
 レオタードではなくビキニスタイルの戦闘服で、ほぼTバックというよりも紐パンに近い危さで、女性の大事な部分をほんの一欠片の布でかろうじてごまかしているに過ぎない。
 普通に歩くだけでもぷるんと尻肉が左右上下に揺れ、間近から見上げれば卑猥な肉の花びらが今にもはみ出さんばかりの勢いで視覚に訴えかけてくる。
 胸元を隠すはずのブラも非常に際どい三角ビキニで、おさまり切らない魅惑の果実が常に蠢き形を変え、柔肉の甘い罠にはまるべき獲物を待ち構えていた。
「はわっ、はわわわ……」
「はっふぅ~~ん♪ どうかしらこの戦闘服? まだちょっと軽量化が甘いかしらぁ……?」
「いっ、いえ滅相もございません……」
「んふふ♪ それじゃ明日はこれでいくわよ♪ あなた達のも用意しておいたからちゃんと着るのよ……♪」
「あっ、ありがたき幸せにございまするエスパ様~~!」
 わっと色めき立つ戦闘員。目玉は完全ハートマーク。
 どこからどう見ても青少年を悩殺魅了しオナニー猿へと堕落させる超エロエロコスチューム、それを極上の肢体で纏い美魔女エスパはぺろりと舌舐めずりをした。
「あ~ん♪ 違うわぁ……。私の名前はエスミよぉん♪ 組織のために安月給でも必死で頑張って、いつか巡り合う素敵な白馬の王子様を待っている……とっても普通の女の子エスミちゃんよぉ……」 
「はい了解しましたエスミ様……ではなくエスミちゃん! 共に頑張りましょう」
「そうです万歳エビルネイターズ! 我らが野望のため! 全人類全宇宙の恒久平和のため!」
「エビルネイターズ! エビルネイターズ!」
 盛り上がりが最高潮に達した。
 戦闘員エスミこと美魔女参謀エスパは、つかつかと水晶装置に歩み寄りユータに宣戦布告するがごとく、前かがみ美巨乳垂れ下がりポーズをとり性器と同等の淫口をぱくぅと開いた。
「あ~んユータくぅん♪ 明日がとぉっても楽しみ……。お姉さんが色んなこと教えてあげるぅ……♪ サーチっていうのは一方向から見ただけじゃ駄目なのぉ……♪ 例えばこのローアングルとかぁ……そうこの股間のはみ出しエロマンコ肉が見える位置が適当よぉ……♪ んふぅん♪ それができたらこの下乳南半球とか……んっもっと上から魅惑の北半球クレバスも一緒にまとめて……あん駄目ユータ君……変なもの谷間に挟んじゃ……それはまだ早いから……やんやんやぁ~ん♪」
 




  1. 2013/08/31(土) 19:03:53|
  2. SS
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生存と妄想

結構間があきましたが生きてます。

脳ミソがポンコツになったのか飽きたのか老化なのか
脳汁の出具合がよくなく中々テキストが書けず
途中で半端に放り出してるなので
申し訳ないですが音声作品の予定は現在のところないです。


そんなうだうだしてるところに
カードゲームのフレーバーテキストとか
考えているうちに微妙にやる気が出てきたので
妄想を書いておきます。

普通のカードゲームであざとくパンチラとか際どい衣装で
それとなくエロ方面を匂わせる台詞というのが大好きなので
それに特化したゲームを構想しました。


タイトル
聖邪封印リヴァースエンジェルス(仮)

コンセプトは表の顔と裏の顔
一キャラにつき基本は六枚の差分かバリエーション絵がある。

1 聖モード 各三枚
優しい、慈愛、ラブラブでフレンドリー、ほどよくエッチで露出は軽め

2 邪モード 各三枚
裏の顔で露骨にエロ衣装や邪悪な表情を見せる。

聖では優しくてつつましいのに、
邪だとありえないほどの悪口や淫らな態度でせまってくる。

カードを全部集めるとエロイベントシーンを追加。
どんなゲームにするかはあんま難しくなく簡単にした方がいいと思って
プログラムも頼んでみたいけどどうなるか。

自分としては図鑑があって絵とテキストがあるだけで
非常に満足すぎるのですが。(ボイスもあってもいいかも)


以下モンスターの一例


夢幻融解生物スラミン

1
聖 うふふ……。お兄さん疲れていませんか? 私のとろとろローションでマッサージしてあげます……。
  大丈夫です。怖がらないで……本当に気持ちいいんだから……。

邪 素敵な夢を見せてあげます……。甘美な夢。身も心も溶けちゃうような……。
  

2
聖 楽~に楽にしてください……。そうそう……もっと体の力をだら~んと抜いてください。
  今から全身にこのローションを塗りこんでいきますからね……。
  ほら目をつぶって……全て私にゆだねきってください……。

邪 まずは手から……次は足から……。
  じゅぷじゅぷ……ずぷずぷずぷ……。ああ美味しい……♪

3
聖 ローションがすみずみまでいきわたっていいでしょう?
  ほら、ほらほらほら……♪ あら? ここがまだでしたね?
  どうしたのです? そこが固くなっていてはリラックスできないでしょう?
  恥ずかしがらないで……優しく甘くとろとろに包み込んであげますからね……♪

邪 愚かな人間さん。ずっと甘い夢に浸っていなさい……。
  もう二度と目が覚めることはないのですから……。
  そう手足肉体全て溶け落ちようともね……。


いたずら寝取りキューピッドライル

 
1 
聖 ヤッホー! ボクの矢に射抜かれた二人はラブラブになるんだよっ。
  ボクが選んだ運命の恋人さっ。二人の愛は永遠に……なんて素敵なストーリー!

邪 適当に矢を放ってれば簡単に恋人同士っ♪
  人間の心なんて簡単に操れるから笑っちゃうよねっ♪

2
聖 ほらほら、もっと手をつないでチューとかしちゃおうよっ♪
  お互いに愛を深めてハッピーハッピー♪

邪 ああもどかしいなぁ……。
  さっさと押し倒しちゃえばいいのにねっ♪
  どうせ運命は初めから決まっているんだから……。

3
聖 おめでとう! 二人が結婚してくれてボクも鼻が高いよ。
  さぁ祝福の門出に矢を射ってあげる。
  遥かなる繁栄と豊穣、大いなる天空に向かって……それっ♪

邪 さぁてと、早速お兄ちゃんを誘惑しにいこっと♪
  ああこの瞬間本当にたまんな~い♪
  心を操るボクの矢から逃げられるわけがないんだよっ♪
  彼女の前でねっとりやらしく寝取ってあ、げ、るっ♪


調教天使ペルティール

1
聖 私は動物が好きです。心から好きです。
  この愛らしいつぶらな瞳。いつまでも永遠に見守っていたい……。


邪 私は動物が好きですが、もちろん人間も好きです。
  そう……どんより憂いを帯びた、かすかにおびえる瞳が……。

2
聖 あらあら。そんなに指を舐めたらいけませんよ? 
  きゃっ♪ うふふ……なんて節操のない子……。

邪 おや? 私の指先を見てどうかしましたか?
  ふふ……もしかしてあなたもこの子のように指を舐めしゃぶりたいんですか?
  
3
聖 んもうどこに顔を突っ込んでいるのですか……。
  こらこら……いい加減にしないと怒りますよ。めっ。
  んっ、やん、やだ……一体どこを舐めて……。

邪 スカートの中でパンツ見放題……。オマンコペロペロ……。
  むちむちの太ももで顔面騎乗……そして……。
  あらあら。その様子だと想像してしまったようですね。
  いいんですよ。私は人間をペットにするのも大好きですから。
  ほら早く忠誠を誓いなさい。
  可愛らしく従順なマゾ犬に一から調教してあげます……。
    
 
無邪気な小悪魔少女リョーコ

1
聖 お兄ちゃん、リョーコにお勉強教えてよぉ。
  あのね、リョーコね。お兄ちゃんだけが頼りなのぉ……。

邪 もー宿題なんて面倒くさいなぁ……。
  さっさとこのスケベなお兄ちゃんをパンチラで誘惑して
  メロメロにして手伝わせようっと。

2
聖 えーと、この計算はこれでいいの?
  うん……あっ、それでいいんだ……。
  はぁ……お兄ちゃんって頭いい。リョーコ尊敬しちゃぁ~う♪

邪 あーあ、鼻の下伸ばしまくってやらし~い♪
  きっとお兄ちゃんって童貞だよね……。
  もっと露骨に誘惑しちゃおうかな……。
  あっ消しゴム落しちゃった……。お兄ちゃんそれ取ってぇ……♪

3
聖 
  あーんお兄ちゃんのおかげで、こんなに早く宿題終わりっ♪
  ありがとうお兄ちゃん♪ リョーコお礼がしたいな……♪
  んっ……ちゅっ♪ ほら……お礼のキス。
  こんなんじゃ足りないと思うけど……リョーコ恥ずかしくて……。
  ねっお兄ちゃん。また……お勉強教えてねぇ……約束だよぉ……。

邪 あはっ♪ キスだけで真っ赤っ赤なんて可愛い♪
  こうやって期待させとけば次も楽勝だよね。
  まぁかわいそうだから、足コキぐらいはしてあげようかな♪ ふふふ~ん♪  



とりあえずたくさん思い浮かんで楽しかったので
テキストで色々書き溜めておこうかなと思います。
清楚な天使や女神様とかが実はいやらしかったり
悪魔が猫かぶって誘惑してきたりと
そういうのがツボな方向けです。

どうにかこうにか頑張って世に出したいしだい。


後SSも書いたのでグロ目です。


唇魔  ~鮮血に誘われて~


「あむぅ……♪ はむ……はぁん♪」
「むっ……む……くっ……」
 しんと静まりかえる不気味な洞穴の奥、まだ年若い男が唇を女に吸われていた。
 一目妖艶な女。いや女と言っていいものか、どちらかと言えば魔性に属する類の女だった。
 艶かしい肢体に真紅のドレスをたたえて露出度が高い。ぞっとするほど白い太もも、重力に逆らい洞窟の暗がりの中で妖しく自己主張する豊満な乳房。
 男は著しく体の自由を奪われていた。女透き通る紅い瞳。その瞳孔の奥を見つめているだけで何もできなくなっていた。
 唇は荒くめくられ、蛇のように細長い舌で歯茎を丹念になぞられる。女の甘い樹液のような唾液が次々と口内に送り込まれる。濡れた舌がからみ粘膜に浸透する。
 女の唾液はとてつもなく甘かった。今まで味わった砂糖菓子やケーキの何よりも甘い。決して満腹になることはなくいくらでも飲み耽っていたい甘さだった。
「んっ……はぁはぁ……。あぁ……甘いよぉ……」
「うふふ♪ もっと飲んでいいのよ? んっ……」
 恋人のようにひっついていた二人の顔が一時離れる。
 女の容貌。すっと通る切れ長の瞳に鼻梁が高く整っている。適度に均整の取れた美顔が頬骨から抑揚なく顎先にまで行き届いている。はらりと腰まで伸びる鴉のような黒髪が、真紅のドレスと対になり妖艶な雰囲気を醸し出している。
 尻のラインも絶えず扇情的だった。一度くいとステージで腎部をくねらせれば、官能の狂気に染まった男を一人残らず虜にする能があると思われた。
 胸の谷間は常に艶のある脂で湿っていた。女のフェロモンが濃縮された脂だった。乳房は半分以上ドレスにおさまりきらず、いつでも外界に飛び出しそうほどの充実感に満ち溢れていた。
 男はなぜかそんな妖の女にきつく抱きしめられていた。経緯がまるで思い出せない。
 自分は一体――。
 ただ一つわかることは、ここまでは生きて帰れないということだった。それは生存本能の為せる純粋な警鐘なのかもしれない。
「くっ……うぅ……。いっ、いつまでも……」
「あらぁ? もう正気に戻ったの? でも……」
「あっ……」
 女が舌をべろりと垂れた。舌全体に透明な唾液がまぶされて、舌先からぽたりと滴り落ちた。
「ほら、ねっとり犯してあげる。キスで……何度も……」
「ああ……お姉さん……」
 男は簡単に堕ちた。舌の誘惑の蠢きに抵抗できずに。
 ふらふらと夢遊病のように向かう。舌の先が、くるんと手招きをするように丸まった。それが男の脳をねっとり淫靡に刺激した。
「いらっしゃい。ふふふ……♪」
 再び悪魔の美貌が男の視界を染めた。粉雪のような白肌。紅く輝く魅惑の瞳。そして何より魅力なのは――唇だった。
 男はその唇に吸引されていた。さっきまで自分の唇に喰らいついていたもの。唾液も何ものにも変え難いが、この唇だけは唯一無二だった。
 厚ぼったく、性器のようにぷっくりと充血した二枚の貝。ねらぁと光るルージュの口紅もその色香にいっそう彩りを添える。
 女が目をつむり、その唇を突き出し迫ってくる。男が断る理由は何もなかった。まどろむ意識の中、とろけた瞳で一生を誓い合った伴侶のように迎え入れた。
「んっ♪ んんっ♪」
「あん……美味しいよう……」
「んっ……れろれろぉ……♪」
「れっ……あぁ……」
 舌のからめ方も手馴れていた。微妙な舌先で男を誘惑し、挑発しながら外に誘い出し甘くねぶりあげた。
 まるで舌がペニスになったように錯覚した。男はその魔性の手管に翻弄され陶酔してしまった。
「はぁっ、はぁはぁ……。お姉さんお姉さん。舌がすごくいいよう……あぁ……」
「うふふ……♪」
 女はそんな男の反応を心底喜んでいるようだった。胸をつぶれるほど押し付け腰を抱き、歯をカチカチ愛の火花で散らしてまぐわりあった。
「あぅぅ……。お姉さん僕ぅ……そろそろ……あっ」
 雄の本能が自然に鎌首をもたげていた。
 察したのか知っていたのか女の指先が股間にからんでいる。
「これ……出したい? お姉さんの手で……?」
「あっ……」
 トントンと指の腹でノックされる。ぎゅっと脳とペニスの先から汁が漏れ出す。
「ねぇ? どうされたいの? ふふ……」
「あぅ、あぅぅ……」
 もう辛抱がたまらなくなっていた。キスだけでも実は射精してしまいそうでもあったから。
「うふっ、うふふ♪ うふふふ……♪」
 女の手つきが早くなる。妖しく踊り舞うような、しなやかな手つきがさらに射精を促した。
「でっ、でっ、で――」

「おいっ! おまえっ! 離れろっ! そこで何してやがるっ!」

「えっ? あっ? ええっ?」
 それは遠くから聞こえてきた。洞窟の暗がりから、それも一つだけではない。しだいに数を増し五人、十人、いやそれ以上――。
「おおやっと見つけたぜ。一人で姿見えなくなったから足でも滑らせたのかと……」
「おい坊主。俺たちが何をしに来たかわかってるんだろうな? あ? 手間かけさせんなよ全く……」
 ガチャガチャといかめしい鎧と武器を携えた男達。
 そうか。と、男は思いだした。
 ジェローム国の遥か北方に位置する辺境の地。入ったものが二度と出られない、地獄へと通じる洞窟があるらしい。地獄――なんてのは噂話に尾ひれがついたのかもしれない。この世にごまんと存在する伝説もその類だ。
 国王はかなり偏狭な人物だった。自分が生きる世に不可思議なことがあってはならない。光を邪魔する闇は全て取り払わねばならない。国王の命令は絶対である。そして手始めに酔狂な洞窟探検が計画されたのであった。
 男はそんな調査隊の一員だった。ふらふらと生きながらに両親と別れ、天涯孤独の男が志願するもの自然だった。
「あっ、ああ……そっか……僕……」
 思考が戻ってくる。男の瞳にさっと色が戻る。
「んふっ♪ お仲間さん? これは面白くなってきたわね……」
「ああ……離して……」
「うふふ……」
 女の目がにやりと笑う。半開きになった口からは、つうっと唾液が妖しく糸を引いている。
「坊や……して……」
「え……?」
「こ……して……」
 向き合ったまま、聞き取れないほどの囁き声でつぶやかれる。
 とろんと細くなった半目、依然としてまばゆく魅惑的な唇。美貌の女からつむがれる言霊を、どうにかして聞き取りたいと自然に思ってしまう。
 男は急激にまどろんでしまった。せっかく助けに来た仲間達の声が遠くなる。女の妖艶すぎる唇。口内の粘膜にぎゅっと焦点があい、異世界の思考形態へと引きずりこまれる。
「…………おい! お……」
「……何して……早く……」
 誰かの声。言葉が理解できない。
「私の方だけを見るのよ。可愛い坊や……」
「あっ……はぁ……」
 今度ははっきりと聞こえた。お姉さんの唇。女神様の唇。赤い赤い、血管から今まさに産声をあげたような、真っ赤な血液を連想させるような真紅の赤。その唇から絶対に目が離せなくなっていた。魅了、吸引。網膜に直接張り付く唇が、男の心をからめとり背徳的な赤の妄想へと埋没させていく。
「ほぉら……して……ころ…………」
「あぁ……」
「ころし……てぇ……。殺しなさい坊やぁ……」
「くっ……」
「殺しなさい坊や。あいつらを……。お姉さんと坊やの出会いを邪魔する奴らを……」
「あっ……。んっ。そ、そんなぁ……」
 何とも背徳的な誘惑の言葉だった。ただ唇に心ゆくまで魅了された男にとっては、もはや抗えない崇高で絶対的な命令だった。
「んっ……♪ あはぁん……♪ ほらもっと舌の動きを見てぇ……♪」
 舌の先が軟体動物のように蠢く。雄を忘我の境地に誘う、淫靡で悩ましげな扇情ストロークが男の鼻先で演じられた。
(あぅぅ……。お姉さん……)
(いいのよ。もっとお姉さんに溺れなさい。唇に、舌に、粘膜に。細胞一つ一つまでね……)
 二人の間で絶妙な時間が共有された。声に出さなくとも、視線と意思で伝達される相互のテレパシーだった。
(坊やぁ……。わかるでしょう? あいつらを殺しなさい? ほら、もう近くまで来てるわ……。私達の邪魔をする……)
(えっ、でもぉ……)
 かろうじて抗う男。頭の片隅でほのかな理性が行為を押し止めた。
(いいの。何も考えなくていいのよ坊や。お姉さんが命令しているのよ。ほら……このエロい唇のお姉さんがね……んっ♪)
 唇を突き出しキスのポーズを取る。野に咲く紅一点のような一輪の花びら。むっとする甘い匂いで誘い込み、罠にかかった虫を捕食する食虫花のように赤く花咲いていて。
(早く殺しなさい。これは命令よ。殺して殺しなさい……)
(ろす……殺す……?)
(そうよ……坊やはただ真っ赤になればいいの。お姉さんの唇を頭の中に思い浮かべるだけでいいわ)
(ふわぁ……唇……殺す……真っ赤……ああ僕……)
(ほらいきなさい。視界を赤く染めなさい。私のために。わたしのために……。ワタシノタメニワタシノタメ、ワタシノタメワタシノタメ――)
(あぅっ、あぁ……あああ――)
 赤いむっちりとした唇の二枚貝がむっと近づいてくる。女ではなく唇の魔性。ドス黒く赤光る唇そのものが女だった。
「あんっ。お姉さん……僕食べられちゃう……頭から……あっあっああ……」
 身の毛もよだつような、官能の坩堝に視界が赤く染め上げられていく。
 ふんわり香る赤い毛布のイメージが、頭をくるみ胸をくるみぎゅうぎゅうと締め上げた。
 絶え間ない赤のイメージが、どこかしこで飛散し全身隈なくねっとり粘りつき、さらに淫らで堕落的な欲望を陰惨に燃え上がらせた。
 赤、赤、赤。赤赤赤――。
 女の嘲笑するような不気味な声だけが脳裏に絡みつく。
 朦朧とする意識の中、男の記憶は無情にもここで途切れた。 
 

  
 
「んっ♪ じゅぶぶぶ……ちゅぷっ♪ んっんっ……♪」
「あっあっ……ぁ……」
 意識は再び覚醒していた。
 が、男にはこれが現実の状況だとは信じられなかった。
 全身に赤い血のりがべったり塗布され、鼻につく錆びついた臭いに吐き気を催すほどだ。
「うふっ♪ ほらぁ……もっとお口の中に血をぐちゅぐちゅにしてからぁ……」
 女の執拗な口淫が男を責め嬲る。半ばゼリーのようにほどよく凝固した血液を、長い舌にのせ唾液と混ぜながらねちねちと竿と亀頭に塗りこんでくる。
 耐え難い魔性の快楽だった。誰の血かもわからない、通常ならば嫌悪感しかわかないように唾棄すべき行為。
 だが女の創り上げる、血の饗宴に招かれた男にとっては何ものにも変えられない至福の境地だった。
「ん……んぶっ♪ ほら……坊やの体も赤い血でドロドロ……オチンチンはもっとドロドロねちょねちょだけどね……ふふっ♪」
「あっ、ふぅん……はぁはぁ……」
「こんなので気持ちよくなったら本当はいけないのよ? 坊やが自分でやっちゃったぁ……それをねぇ……ぐちゃぐちゃのぉ……ふふっ……うふふふ……♪」
「うっ、ぐっ……うううう……」
 濃厚なフェラチオを交えながらの言葉責め。男は背筋を反り返らせて悶えた。
 ペニスは血の色と同化し、もはやはちきれそうなほど勃起していた。
「ほら見て……坊やぁ……」
「あっ……」
 女が少し離れ、妖艶な上目づかいで見上げる。
 赤く美しい花が咲き乱れる、魅惑的な情景が色づいていた。
 哀れな虫を誘いこむための罠。甘く官能的な芳醇な香りが立ち込めるプール。粘度の高い催淫フェロモンが濃縮されたじゅくじゅくのラブジュース。
 真っ赤な唇が入り口だった。狭そうだったけど、入ってしまえば天国が待ってると思った。
 二人はしばらく見つめあった。そしてゆっくり女が誘惑の口火を切る。
 赤い門が上下に開き、艶かしい糸がつぅっと垂れ落ちた。
「ほら……この中で虜にしてあげる。好きなだけ射精させてあげる。一回だけじゃなく、何回でもよ。濃厚に絡んだ精液もやらしくぐちゅぐちゅして、吐き出さないまままた射精するの。終わらない永遠のループフェラよ。そうすれば坊やはもっと赤くなって私のものになるの。ふふふ……ほら、そろそろいらっしゃい……ここが……ほら――」
 この世のものとは思えない誘惑が男を襲った。
 意識を完全に掌握され、そのまま腰を淫猥すぎる肉の沼地へと突き入れる。
「あぁ……。は、はい……。んっ、ぐっ! あぁぁぁ――――」
 ペニスを口内へ挿入した途端、未曾有の快楽に包まれ射精してしまう。
「あんっ。出る……出ちゃう……あっあっ……んっ……またぁ……」
「んっ♪ んんんっ♪ 出してぇ……もっといっぱい……」
 女の舌がぬるぬると亀頭に絡みつく。
 妖しく蠢動する粘膜。きゅっと根元を締め上げる魔性の唇。
 一度射精してもすぐ射精したいと思う。二度三度、わけもわからず連続で搾り出されてしまう。
「オ、オチンチンがぁ……へ、へんだよぉ……こんなのって……」
「んふっ♪ これが普通よ坊や♪ お姉さんの赤の虜になった子はとっても変態なオチンチンになっちゃうの……。んっ……それにオチンチンだけじゃないけどね……ふふ……」
「えっ、えええ……」
 そうだった。ペニスの快楽だけではなかった。まるで細菌が一部分から一瞬で伝播するように、全身のあらゆるところに気持ちよさが伝わっていく。
 赤い妄想にじぃんと頭が痺れていく。
 目に映るもの聞こえるもの全て赤。赤く塗りつぶしたい。お姉さんがそう望んでいる。
「うふふ……♪ そうよ。いい子ね。全てをささげてしまいなさい……ほらっ♪」
「んっ! くっ、うわぁぁぁ……」
 大きく息を吸い込むように、強烈すぎるバキュームフェラですすりあげられた。
 止まらない射精感覚。余韻を楽しむ暇なく、断続的な快楽地獄が男を魅了し翻弄し尽くしていく。
「あっ♪ んぁっ♪ いいっ♪ これっ♪ ああ……ふわぁ……。な、なくなっちゃう……オチンチンが……あっ……僕自身も……ああああっ♪」
 精神の垣根がぐらぐらと音をたてて崩れ去る。その瓦礫にも淫乱な血液がぬめぬめと浸透し、新たなる魔の生命を構築するため胎動し始めた。
「あぅん……お姉さんもっとぉ……もっと赤くしてぇ……僕ぅ……なりたぁい……。食べてもらってぇ……また赤くぅ……あはっ、あはははは……」
「いいわよぉ……。ほらもっと食べてあげる♪ 坊やは私のお気に入り……可愛い肉人形にしてあげるぅ……ほらほらもっとこっちぃ……んっ……んっ……ん……」  
 男が最後にあげるのは悲鳴ではなかった。
 歓喜の渦に支配された、愉悦の断末魔で人としての生命を永遠に抹消された。


 その後、洞窟への討伐隊派遣は幾度も繰り返された。
 だが訓練を受けたはずの屈強な男達ですらほぼ全滅といういまわしい事態になっていた。
 かろうじて逃げのびた者も、精神をずたずたに破壊され廃人になり病院送りになった。
 彼らはうわごとのようにつぶやく。『赤黒い山のような巨人にみんなやられた……』と。
 討伐隊は中止され、洞窟の入り口はほどなくして封鎖された。
 興味本位で洞窟に侵入する者はいたが、誰一人として生きて戻ることはなかった。 
 

  1. 2013/06/22(土) 16:29:44|
  2. SS
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SS リミットトランス∞

久々のSS。
搾取主体の洗脳誘惑系アイドルグループで、一曲ごとにそれぞれテーマがあったらと思い書きました。
説明が大目で後半言葉責めがあります。

今回は足ですが。他の曲では手とか魔物のスキュラに扮してとかも考えています。


 リミットトランス∞ レッツ足裏パラダイス♪編
  

 リミトラことリミットトランス∞(インフィニティ)は、今や押しも押されぬ超国民的人気アイドルグループである。今までのアイドルの常識を覆す経営戦略により莫大な人気とその礎を築いた。
 その活動形態において、最も顕著と言えるのは特に決まった人数を定めずに、まるで無限に広がる宇宙のように流体し続けているのである。その人数は最低二十数人から、最も多い時では百人すら超過する時もあった。
 ただしグループ名の無限大の意味は、決してそれだけに止まることはない。無限に広がる少女達の限りない可能性。それがリミットトランス∞に秘められた真のメッセージなのである。
 従順、可愛らしい、親しみやすい、優等生。そんな既存の美少女アイドルグループの価値観は、リミトラの登場により脆くも崩れ去ったと言っていい。それほど彼女達の登場は衝撃的だった。
 まず彼女達を一目見て、度肝を抜かれるのはその奇抜な衣装である。とても少女が着用するものとは思えない、扇情的で破廉恥でエロティックな感情を抱かずにはいられないものだった。
 超ミニスカとノースリーブおへそチラ見せは標準装備。一度カメラのアングルを歪めれば、うっすらと汗ばんだ肌に食い込む純白の下着や、桜色のぽちっとしたスイートストロベリーが見え隠れしてしまう。
 もちろん彼女達も、自分達がそういう目で見られていることは知っている。知っているからこそアイドルとして必死で演技するのだ。
 熟れた女性のようにしなを使い魅惑的な媚を売る。しなやかな肢体を妖艶にくねらせて、男を狂わせる魔力を持ったとびっきりのウインクを情熱的に送る。足元を際どくすべるカメラに向かって、健康的な若肉の美味しさをこれでもかと見せ付ける。まだ発展途上の胸をいじらしく寄せて、ずれかけた肩紐を添えてほのかに浅い谷間をアピールする。
 だが肉体より勝るのは、やはりころころと瞬きを繰り返す少女元来の純粋な表情だった。笑い泣き、共に喜び時には怒る。リミトラの歌の歌詞には首尾一貫したストーリーがある。他のアイドルグループには全く欠けた要素、それがリミトラにはある。
 決して綺麗ごとだけでは終わらない、人間の裏側に潜むドロドロの醜悪な感情を、この可憐な十代が多数在籍するアイドルグループが表現しているという事実は何とも時代錯誤でもある。
 退廃、崩壊、無法地帯が広がった地獄を妄想させる世界感。彼女達の住む世界には希望だの愛はもはや存在しない。親への愛、友人への友情、故郷を思う慕情。そんなのはくそ喰らえだと彼女達は考える。
 あるのは略奪強奪、狂気に満ちた魑魅魍魎達がこの世を支配する地獄絵図。強き者が利を得て弱気ものが地を舐める。そんな真っ向からの弱肉強食の世界の中で生み出される倒錯したリビドー。それが彼女達の求める理想の境地なのである。
 決して停滞することはなく常に進化し続ける。その限界ぎりぎりまで煮詰めた先に、果てしない快楽の園が待っている。強大な野心を持った少女達の挑戦は、未だ止まることなくその大いなる潮流を邁進し続けている。




「うふふ……。初めまして落田さん」
「あっ、ああ……」
 落田伸章は、目の前の少女の美貌に圧倒されて、ただ頷いた。
 彼は裏世間において一目置かれているトレーダーだった。普通の人間が一生涯かけて手に入れる収入を、ほんの一晩、それもほんの指先一つで稼ぐようなこともあった。
 天賦の才能に恵まれてもいたし、なおかつ彼には絶妙な嗅覚ともいえる運があった。
 この世界は、一瞬で莫大な借金を背負ってしまうことも少なくはない。落田はやっとつかんだ栄光の階段から、あっけなく足を踏み外し、真っ逆さまに地獄へと転落してしまった人間を何人も見てきた。
 やめられない。稼げば稼ぐほど後には引けない。勝ち続けるしか生き残る道はない。人生を何回か繰り返せる財産を築いても、いつ急転直下の大惨事に見舞われるかわからない。
 落田はその一点においても極めて優秀であったから、ここまでの財を築けたといっていい。大胆に見えて、実は緻密に濃縮計算され尽くした取引。はたからでは強引に思えても、彼にとっては赤信号が次に青信号になるぐらいの確実にセーフティな出来事だった。
 用意周到、何重にも策を張り巡らせて致命的なデットエンドを回避する。抜かりなく、着実に、牛歩の歩みで歩を進める。落田はやはり天才だった。無意識にも意識的にも。
 ただその精緻に組み込まれた歯車が、無垢な少女の手のひらで狂わされてしまうとは、落田には全く思いもよらないことだった。
「私は水蓮院亜矢乃と申します。リミットトランス∞のリーダーでございます。アヤノ様、とよく呼ばれていますわ。以後お見知りおきを……」
 少女がかしこまってちょんとおじぎをした。
 見るからに育ちのいいお嬢様といった風情だ。くるくるカールする長い髪を結わえて後ろに束ねている。目鼻立ちはくっきりと整い、成長すれば今よりももっと美人になるのは明白だった。加えて穏やかな笑み。所作一つ一つに満ち溢れる気品。まるで一家の女主人のような、ほとばしる威厳が彼女にはあった。
 もう他に二人。落田はめくるめくリミトラの少女達、しかもそのトップ3にハーレムともいえる寵愛を受けていた。
 リミトラにまつわる都市伝説で『儀式』というものが存在する。一定以上のお布施をしたものだけに許される、崇高な『儀式』である。
 あまりに情報の出所が定かではないので、全くのほら話であると認知されているが、実はその招待は本当に選ばれた者だけに送られるのである。
 落田はほんのはずみでリミトラのファンになった。世間で言われるような、強引な販売方法も特に思うことはなかった。百万二百万アイドルに使おうが、彼にとっては何の足かせにもならない金額だったから。むしろ新曲を買い情報を集め新しいものにふれ、コンサートにあしげに通う安い趣味だと考えていた。
 いい年してアイドルなんて……と始めこそ思ったが、その考えはリミトラの重厚な世界感に浸るようになってから改めることになる。昨今のアイドルには皆無の、ディープで危険なエロスがそこにはある。普通ならのぞいてはいけない、グロテスクな一面が年端もいかない少女達が演じている。
 そこの事実に落田はただならぬ感銘を受けていた。もちろん彼も男であるから、わざとらしくあざとい挑発的なポーズと仕草を見たい気持ちもあった。しかし彼を突き動かしたのはそれだけではなかった。
 よくはわからないが、かすかに共鳴するような懐かしい気持ち。そんな自己のアイデンティティに関わるような大事な部分に、すっと小悪魔なキューピッドに矢を射られたような気になってしまったのだ。
 落田はその感情を胸にそっとしまいこんだ。なぜだろう。一時の気の迷い。こんな魂胆見え見えのお色気と、じっくり見れば安っぽい三流のエログロ世界に。
 自分が今夢中になっているのも、すぐ熱が冷めるだろうと思っていた。所詮はアイドル。アイドルの意味は偶像。いつかは真実を知る偶像崇拝そのものだから。
 そういうわけで、今回落田が『儀式』と思われる招待を受けたのは、軽い冷や汗を背中にかく結果となった。
 巷で噂でされている『儀式』の実態。謎に満ちた魔性のアイドルグループが、一体裏でどんな密戯を繰り広げているのか。
 そりゃこの人間の欲望渦巻く界隈だから、後ろ暗い部分なんていくらでもあるだろう。リミトラはなおさらそういうダーティーな手段で売り出している。
 ちょっと金を使いすぎたかな、と落田思った。『儀式』の招待は噂ではお布施の多寡で決められているという。
 だがいくら自分が金持ちとは言え、一般人が背伸びしたぐらいの金額しか使っていないのだ。それも目立つような買い方はしていない。あくまでも普通の人として、一般人として。
 落田はこの世界では一目置かれているが、一般世間には表立って顔を広めていない。そんなことをするのは無駄だと思うし、むやみに印象と敵を作っても仕方がない。なにより落田自身が極めて引っ込み思案で人見知りな性格だった。特に難しい人付き合いはなくとも成功できるトレーダーを選んだのもそれが大きい。
 だとすると今回の招待は不思議に思うことがあった。お布施の順でというものの、そのお布施で招待を受けるというのも至極怪しい。いちいちそんなもの一人一人選んでられるだろうか。いや、購入した者の中からランダムで選んでいるのかも。それにしてはかなりの天文学的な確率だった。
 落田の推論は回り回った。が、結局招待を受けることにした。もし自分を選んでいたとしても、別に構わない。最悪いきなり殺されるはずはないだろうと思っていた。
 落田は楽観的だった。マネートレードにおいて、抜群の嗅覚と感性を披露する彼でも、この時ばかりは危機感が欠如していた。
「もー。さっきから何ぼーっとしてるの? あっ私は須藤桃子ことモモちゃんでぇ~す♪ といってももう私のことは知ってるよね? だってこのふくらみかけのおっぱい……それっ♪ ぷるぷるぷるる~んできゃぴきゃぴっ♪」
 ほんの数秒、思考に手間をかけていた。その寸隙を見かねたのか、アヤノの左隣にいた元気とおっぱいがはちきれんばかりの少女が飛び上がった。
 彼女はモモちゃん。自称ふくらみかけの美乳おっぱいがチャームポイントだ。ただそれはモモちゃん自身が言っていることであって、決してふくらみかけではない。むしろ成人女性に匹敵するぐらいの凶悪なおっぱいサイズだ。それをふくらみかけ、なんてワードでごまかすのは小悪魔としかいいようがない。
 くっきり二重瞼で睫もかなり長い。それでいて驚くほどの小顔ゆえに、顔に占める眼球の面積が大きい。アニメの少女とは言わないまでも、じっと見つめられるとその淡い瞳の奥に、永久に吸引されてしまうぐらいの魔力を感じる。
 子供っぽい八重歯も魅力的だった。どこもかしこも愛くるしい。小さな顔に小さな顎。ちょっとはにかめば天使の微笑がこの世の全ての男を灰に帰してしまう。
 つぶらな少女の魅力をぎゅっと詰め込んだ存在。それがリミトラトップ3に君臨するモモちゃんというエンジェルだ。
 そしてその可愛さキュートさに抗うように自己主張するのがおっぱいだ。
 リミトラの衣装はほぼ脇やおへそが甘いし、胸元もかなり甘い。上から覗き込むようなカメラアングルでは乳首が簡単に見えてしまう。そんなドッキリショットを望む男性も多数存在するだろう。
 恥ずかしげもなく際どい衣装を着て、歌い踊る少女。汗ばむ肌、甘い息遣い、はだけてずれかける肩紐。
 ほとんどの少女はそんな自分の痴態に無関心である。どれだけ自分が男の欲情を煽っているか。知ってか知らずかほとんどが無関心を決め込んでいる。
 そしてその穢れを知らない無関心さ、純真さに男は欲情する。何も知らない女の子。小さい女の子。そんな女の子が破廉恥な衣装で性的な歌と踊りを繰り広げる。性に目覚める前のぎりぎりの貴重な一瞬。一度逃したら二度ともどってこない瞬間。そのキラキラしたはじける情熱に、男は魅了され翻弄されるのである。
 それでも中には理解している子もいる。言い方は悪いがこの年でビッチ、セクシーアピール満載の子も存在している。これが意図したことなのかは知らないが、無垢な少女達に混じって、不意打ちのように媚態を見せ付けられると男はたちまちメロメロになってしまう。
 カメラが向かえば、嬉々として腰を振り小ぶりのお尻を突き出し官能のダンスを踊る。それはもうセックスの誘いと言っても過言ではない。だらしなく舌を出し目を細めて挑発、くいくいと手招きしては投げキッスを送る。
 そんなリミトラのセクシーガール筆頭が、今ここにいるモモちゃんだった。
 彼女の巨乳をおしげもなく使った挑発は実に手馴れていた。カメラのアップはまずモモちゃんの胸にいく。舐めまわすようないやらしいアングルで、ねちっこくストーカーのように追い掛け回す。
 だがそこでモモちゃんは少しも嫌な顔なんてしない。むしろ喜んで白い胸元をカメラに晒すのだった。揺れる美乳、リミトラの中で一番の巨乳。ほぼつるぺったんな他メンバーの中で、彼女の存在は否が応にも目立ってしまう。
 誘うようにおっぱいを潰す。もっと見て? と言わんばかりに前かがみになり、真っ赤な舌をぺろりと出して大人の誘惑を仕掛ける。カメラのアップはまだモモちゃんを視姦し続ける。巨乳の深い谷間。笑いながら揉みしだくエンジェルモモちゃん。
 このアップで何人の男が白い精液を放ったか知る由もない。とにかくモモちゃんは実に天使らしい天使だった。
「あ、ああ……知ってるよ。アヤノ様とモモちゃん……と」
 そこで落田は右を見た。
 黒髪ストレートの、すらっと背が高く大人びた顔立ちの、軽薄そうな笑みを浮かべた少女。
「はーい。私は小磯辺彩香でーす。よろしくお願いしまーす」
 サヤカ。少女らしからぬ雰囲気で、どこかとっつきにくさを感じさせる。見た目もそれなりに見栄えがするものの、アヤノ様の圧倒的な威厳に満ちたお嬢様オーラと、モモちゃんの甘すぎるお色気には一歩も二歩も遅れているように思えた。
 その彼女がリミトラのトップ3に選ばれている理由は何なのかと。それは彼女の見た目だけではまず推し量れない。
「あははっ。この人なんか……言っちゃ悪いんですけど、貧相ですね。顔もたいしたことないし……ぼさっとして、もうださださっていうか……。くっくくく……」
 サヤカはそう言い放った。口角がいやらしく曲がっていた。目じりが釣りあがって蛇のように獲物を見据えた。
「あらサヤカさん? 初対面の方にそれはないでしょう? 落田さん? どうか気を悪くなさらないでくださいね?」
「あ、いえ……」
 アヤノ様がすぐ上品に取り繕ってくれた。
 サヤカの持ち味は一言でいうならば毒舌である。それも天然の凶悪な毒物質を所持している。
 彼女の毒は男を一瞬で虜にする毒物だ。危険だ、と思う間もなく喉元にその牙を打ち込まれる。
 妥協はなく欠点という欠点をあげつらう。立て板に水のように流暢に罵詈雑言の洪水が噴火する。彼女の言葉に魅入られた人間は、狂おしい言葉責めの中で絶頂してしまう。
 言葉による洗脳。研ぎ澄まされた鋭利なメスのような声質。倒錯を深めた男は、いつしか彼女の声を聞くだけで勃起するようになる。次にどんなことを言うのか、どんな悪口を言ってくれるのか。下僕になった男達は切実に期待するようになる。
 実際、サヤカのファンに対する態度はまるでアイドルとは思えない。ファンを汚いオタクだと罵り、嫌悪感を露にした表情で気持ち悪がる。
 アイドル失格。それは彼女のためにあると言ってもいい。けれどその傲慢な態度が、ある一定の需要を満たしているらしく、それなりの批判は多々あるものの現在の位置をキープしているのである。
 かくゆう落田も、サヤカの作り上げる暴力的な精神支配の虜となった一人だった。
 初めてリミトラに接した時、落田が目を奪われたのはモモちゃんだった。理由は一言でいうと、わかりやすい、からだった。童顔で愛らしく少女らしからぬ巨乳。ほとんどの男が魅了される、秀逸な記号を持っている。落田ももちろんその例に漏れなかった。
 アヤノ様のように、どこか近寄りがたい雰囲気はない。お嬢様。いつもはどんな暮らしをしているのか。豪華な屋敷で紅茶を飲んだりたわむれに旅行をしてみたり。そんなミステリアスな魅力も男を悩ましく惹きつけるが、落田にとっては少々高嶺の花。手の届かない存在に思えてしまう。
 特にこの場合、落田の財産とは関係ない。彼は精神的にいつまでも満たされない落伍者だったから。
 サヤカの第一印象は壊滅的に最悪だった。なぜリミトラのトップを維持しているかわからない。それほどの悪感情を刺激されたのだった。
 話す度に出てくるのは不満ばかり。あれが駄目だのこれが駄目だの。何より他のメンバーを真顔でけなすのが許せなかった。
 いちいちどうでもいいことまで、重箱の隅をつつくように彼女は攻撃する。何もそこまで、と言わんばかりの内容だった。その都度アヤノ様がフォローを入れて雰囲気が悪くならないようにする。アヤノ様の毒消しがなければサヤカは存在しえないのだろう。アヤノ様の圧倒的な包容力は、リーダーにふさわしいと確信せざるを得ない。
 サヤカはリミトラにはいらない。落田の考えはそう染まっていた。必要ない。粗大ゴミ。よく見ればブス。あのいつもにやけたような表情が気持ち悪い。吐き気がする。それほど嫌っていた。
 だがその固定観念は、あるラジオを境に変わっていった。
 その日のラジオはサヤカとモモちゃんがお喋りをするという内容だった。テーマはよく覚えていない。覚えていてもサヤカの雑言で9割が埋まるのだが。
 サヤカはその日も唯我独尊だった。ぺらぺらと畳み掛けるように不満を繰り出す。必死にフォローし受け答えしているモモちゃんがかわいそうだった。
 落田は辟易し憔悴しきっていた。モモちゃんが目当てだったのに、サヤカのせいで聞く気が起きなかった。吐き気を催すほどの醜悪。天使を握る潰す悪魔がサヤカだった。


 ――でね、ほらリミトラのファンっているじゃん? あいつらって最悪だよね。キモい顔して本当にキモいもん。なんであんなのが存在しているんだろ? ありえないよね? ねぇモモ?

 話題はファンの罵倒へと進行する。有り得ない、こんなこと。サヤカがの悪口もこうして表舞台に立っていることも。全てがおかしい。
 落田はすぐにでも切ろうと思った。聞くだけで不愉快な声。サヤカという存在そのものが嫌だった。

 ――あはっ、笑っちゃうよねー。もーちょっとお洒落してこいってね。…………でもねぇ、必死で底辺のたうち回るゴミ男君がぁ……なんか可愛いっていうかね……うっふふふふ♪ 手のひらでちょっと動かしてみたいっていうか……あははは♪ いや、今の嘘嘘……。

 
 サヤカのフレーズ、可愛い、手のひらで、それを聞いた時落田は背中に雷を受けたような気がした。ペニスがガチガチになり我慢汁が染みた。
 あれほど忌み嫌っていたサヤカの、ほんの一言二言で勃起してしまったのだ。
 屈辱。ではなくて服従への序曲だった。
 その日を境に落田の価値観は180度真逆に展開されてしまった。サヤカの言動一つ一つにじっと聞き込むようになった。彼女はただ毒を持って罵倒しているだけじゃない。好きなだけ毒を吐いた後、さりげなく甘いお菓子を置いていくのだ。
 それは注意してみないとわからないぐらいのほのかな甘さだ。彼女はかなりのやり手だった。あの位置に存在するのも伊達ではないのだ。
 無関心だったネット上の評価もサヤカは高かった。マゾ男をひょいと吊り上げる能力を彼女は有している。それも天才的なレベルの才覚でだ。
 落田はサヤカに入れ込んだ。彼女が話す言葉一つ残らず録音する勢いだった。ファンを罵倒する言葉を自分に重ねて、何度も自慰行為をした。すらりと脚を組みかえられて、豚のようにうずくまる自分を馬鹿にされながら笑われたかった。
 ねっとりとしたつま先が伸びてくる。人生を全否定されながら罵倒されたい。服従したい犬になりたい。全て奪い去って欲しい。



「ふふ……。落田さん? ねぇ落田さん?」
 アヤノ様の細い声。落田はふと妄想から現実に引き戻された。
「あっ、ああ……す、すいません」
「お疲れのようですか? すいませんこちらこそ、突然招待なんかしてしまって……。落田さんも色々とお忙しいでしょうに……」
「い、いえ。僕はちょうど暇だったものですから……」
 元気なくそう言った。
 落田はとぎまぎしていた。あのリミトラのリーダーのアヤノ様、モモちゃん、そしてサヤカが一つの部屋にいる。
 招待状は簡素だった。ただここに来て欲しいと。詐欺のようだが落田は来てしまった。盲目的になりふらふらと、そして幸か不幸か落田は憧れのアイドル達の巣へ幽閉されているのである。
 とあるホテルの一室。部屋はただ白かった。大きめのテレビモニタがーぽつんと置いてある。そして彼女達の容姿――。
 落田はしだいに冷静になった。周りの景色が段々と見えてきた。
「あれ? やっと気づいたお兄ちゃん? そうこれはあの曲。レッツ足裏パラダイス♪ ~踏み踏み支配は楽しいな~ の衣装だよ? ほらぁ、モモはピンクのストッキングでこんな胸あき衣装♪ ラメラメいっぱいで楽しいよ♪」
 モモがひらりとポーズをとる。
 レッツ足裏~はリミトラCDの第三曲目にあたる。ふざけた題名。だがしかし曲調は極めて重厚かつ妖艶で、淫靡な雰囲気なのである。可愛い少女達のたわむれ、リミトラの曲はそんなおままごとレベルで終わるわけではない。
 メンバーは皆セクシーなストッキングをはいている。アヤノ様は黒、モモちゃんはピンク、そしてサヤカは紫と、それぞれ自分の性格にあったような色を選んでいるようだ。
 この曲のPVはあまりにもセクシー過ぎるということで、一時センセーショナルな話題になった。まだ小さな子に。嘆かわしい。何を考えて……。と全うな批判意見が上がったが、いつしかその声は聞こえなくなった。
 一度このPVを見たものは、何かに取り付かれたように魅入ってしまう。ふらふらと催眠にかかったように、サブリミナルでもない直接的な魔力で取り込まれてしまうのだ。
 全員ラメ入りのストッキングを標準装備。それだけで世の男達はM男になり奴隷になった。テカテカとした光沢が、常に誘惑光線を照射し雄の脳髄を呆けさせる。何も言えず、ただ口をぽかんと開けて、少女達の脚を崇拝する奴隷へと洗脳されていく。
 落田もそのPVからもたらされる快感の虜になった。いつもは可愛らしく、時おりセクシーな表情を見せるアイドル達の、大気圏まで針を振り切れた魅惑の演出に心を奪われた。
 リミトラのPVは非常に作りこまれていることで有名だ。そっちの方面に作りこまれて過ぎて、AVよりもずっと素晴らしく、なおかつ高尚だった。いやもうリミトラのPVでしか気持ちよくなれないという声もある。
 PVの大まかな流れはこうだった。迷い込んだのは人知れぬセクシーキャバ。喧騒に満ちた店内。女たちの語らい。しかし相手するのはまだ年若い少女達。
 会話も進みお酒も進む。甘い雰囲気に急速に酔いが進み、男は床へとへばりつく。いつしか少女達の艶かしい脚に惑わされて、ひざまづき忠誠を誓う。もちろん男の姿は当たり前だが微塵もない。常時主観視点で展開されて安心だ。
 年下の少女に転がされて弄ばれる。嘲笑の的になる。脚、脚、脚。むき出しの性交器官に男は悶絶せざるを得ない。
 ソファに座った少女達。足の裏を見せ付けてにやにやしてくる。画面はしだいに足の裏で埋まっていく。思考を支配するように、足の裏で画面はいっぱいになるのである。
 これほど冒険したPVは今まであっただろうか。落田は足裏で画面が埋まった瞬間、ビクンと射精してしまった。それも何度でも使える実用性があった。時には性器に触らずに射精に達することもあった。
 当然、曲のPVではあるから映像に歌詞の後押しも追加される。足裏シーンは少女達の甘い嬌声、それも嘲笑に満ちたこちらを見下す妖精達の囁き中心で組み立てられている。
 脚をお舐めなさい、もっと踏まれたいの? 服従して? もっとこっちへ来て……、等等男のツボを刺激する歌詞も随所にちりばめられている。
 もはやそこに存在するのは少女ではない。何人もの男を誘惑し破滅させてきた妖女達だった。
 ラストは大団円の上から見下しで終わる。何十人もの少女達の顔。舌をぺろっと出して、なお誘惑の手を緩めないものもいる。
 画面は周囲から、細菌が繁殖するように足裏で包まれていく。落田はこのラストがたまらなく好きだった。じわじわと感情をなくされて支配される心地がする。絶え間ない嘲笑の渦。いくつも年下の少女達に、完全に屈服し支配されてしまう瞬間。
 踏まれる、踏まれていく。画面はもう足裏で埋まりきってしまった。ぐりぐりと踏みにじられている。その刺激でまた落田は射精する。
「この曲は思いの他大ヒットしましたわね……。私達に踏み潰されて喜ぶお兄様が、きっと多いのでしょうね……」
「はっ、キモオタ共がはぁはぁしてる姿が目に浮かぶよ。ぞっとするったらありゃしない」
「ん~モモはぁ、足元でうねうねしてるのちょっと好きかも~なんちゃって。でもおっぱいでいじめる方が好きかな~きゃっ♪」
 アヤノ様がモニターのスイッチを入れていた。
 直後に映し出される足裏パラダイスのPV。
 落田が夢にまで見たシチュエーションだ。リミトラのメンバー達と、一緒の部屋の曲のPVを鑑賞できるなんて。感無量の感動でこのまま倒れこんでもおかしくはない。
「うふっ。あの……それでは落田さん。そろそろお話の方を……」
「あっ……はい」
 すっと音もなく、ピタリと背後に張り付かれて囁かれた。距離が近い。アヤノ様の体温、吐息も感じてしまえそうだった。
「率直に申しますと……。落田様に、私達の援助をして欲しいのです……。落田様のお力を……どうか……」
「うっ……」
 やっぱり予想された危機は現実のものとなった。自分は狙われていた。どこから情報を仕入れたのか知らないが、こうやってメンバーを使いお金をせびる作戦だった。
 なんということだ。これはまずい。ただの一ファンとして、グッズやCDにお金かけていれば、資産が続く限り夢の世界の住人でいられる。普通の一般人ならどこかで支障をきたしてしまうかもしれない。しかし落田には既に莫大な財産がある。よっぽどおかしな入れ込み方をしなければ、到底なくなるものではない。
 落田には安心があった。その安心を今覆されていた。落田は自分の愚かさを心底悔いた。
「んっ……。落田さん? どうですか? 私達……もっと大きくなりたいんです……。ですから……」
「くっ、んっ……」
 少女の指がつーっと落田の腹をなぞった。あのアヤノ様に触られている。その事実だけで天にも上る気持ちになってしまう。この劣勢を逆転するのは、もう無理だとわかっていた。自分はまんまと罠にはめられた愚かなネズミ。けれど最低限の抵抗はしてみたかった。
「あっ、ああ……。いっ、いや、君達はもう十分売れているから……。僕なんかの手助けなんかなくても……」
「はぁん……。いえ、色々経費がかかり過ぎて実はトントン、火の車なのでございます……。宣伝に広告に衣装にライブに……特にあのPVには最新技術が使用されていまして……はぁ……」
「あ……」
 首筋に生暖かい吐息が吹き付けられる。少女のぬくもりで誘惑されている。アヤノ様に必要とされている。
 モニターのPVはむなしく映像を垂れ流していた。ちょうど中盤の足裏で埋められる場面だ。思考支配。数分後の自分の姿を予言しているように思えた。
「うっ、うう……。でっ、でも僕は、君達の活動を手助けできるほどのお金は……。ほら、僕一人なんて……ちっぽけな存在で……」
「う、そ。んっ♪」
「ひぃっ!」
 落田は思わず飛び上がった。予期せぬキスを頬にまぶされたから。少女の接吻。それも憧れの手の届かない崇高な女神ともいえる人物から。
「落田さんはぁ……。とっても大金持ちなんですよぉ……。こんな朴訥な雰囲気ですけどぉ……とぉ~ってもお、か、ね、も、ち、でぇ……」
 悪魔のような声色で、アヤノ様がつぶやいた。ぞくぞくしてたまらない。今すぐにでも堕ちてしまいたい。
「えっ? 何々? この人そんなにお金持ってるのぉ? なぁ~んだ。私てっきりそこらへんのキモオタいじめて遊んでるもんだとぉ……。あ~あ、人って見かけよらないね。ああさっきださださ~とか言ってごめんねぇ。今後は改めるからぁ……んっふふふふ♪ あっ、でもやっぱり私って自分に正直だから、今まで通り馬鹿にしたりするかも。人ってお金だけじゃはかれないしっ。うんうん。ねっ、お兄さんって全然オーラないしぃ……」
 一息にサヤカが言った。見直すかと思ったがそうではなかった。でもそこらへんが彼女らしいと思った。
「うふっ♪ モモは知ってたよ。お兄ちゃんってお金持ちぃ♪ あぁ~んモモってお金持ってる人大好きなのぉ……♪ だってぇ……おっぱいの谷間むにゅってしてあげるとぉ……おこづかいいっぱいもらえるからぁ……んっんっ♪」
「あんたが馬鹿だから治療用にあげてるだけよ。知ってる? おっぱい大きい子は馬鹿だって? いっひひひひ」
「む、む~。むぅ~? そ、そうなんですかぁ? モモはお馬鹿になっちゃうんですかぁ?」
「こらこら。お二人さん。喧嘩はいけませんわよ。今は、この落田さんをですね……」
 いきなり争いが始まった、と思えばアヤノ様の鶴の一声でおさまった。やはり彼女はリーダーにふさわしい不思議な力を生まれながらに持っていると感じた。
 だが矛先がこちらに向かい、落田は覚悟を決めた。このまま少女を押しのけて逃げる、という案は思いつかなかった。落田は調教されていた。自分はこの少女達より下、限りなく下。何度も曲のPVを見る度に刷り込まれていた。逃げてもすぐ追いつかれる。力でも勝てない。踏みつけられて足蹴にされて押さえ込まれる。
 落田の心はほとんど堕ちかけていた。ほとんどただ時を待つのみだった。
「ああ~そうだよね~。お得意さんだもんね~。今日はどんな『儀式』? ていうか、この服着てるってことは……」
「そうですわよサヤカさん。脚で……して差し上げましょう。落田様は、きっとこうされるのがお好きでしょうから……」
 サヤカにアヤノ様が雄弁に返した。
「はい了解♪ モモも脚で頑張っちゃうからねぇ……うっふ~ん♪」
 と、言いながら巨乳の少女は胸を揺らした。
「あぁ……。ぼ、僕は君達なんかに……」
「うふふ……。そうですね。私とモモさんはソファに座りましょうか。サヤカさんはそちらに立って……」
「OKアヤノちゃん」
「はい、アヤノ様」
 背中から、アヤノ様の気配が消える。支えを失ったように床に倒れこむ。ふらふらと頭がおぼつかない。
「はい……落田さん。どうぞ」
「むっ」
 倒れこんだ所に無造作に足が乗せられた。アヤノ様の黒ストッキング。ラメが照明に反射して少しまぶしく感じてしまう。
「私もっと♪ それ♪」
「むぐ……」
 モモちゃんの足も追加された。柔らかいぷにぷにの足裏。ピンクのストッキングも甘い匂いがしてうっとりしてしまう。
「ああっ、ああ……。し、幸せ……」
 落田は極楽をかみしめた。年下の少女の足元にひれ伏す倒錯した快感に、身も心も奪われて夢見心地に耽った。
「んふっ。可愛いですね……。先ほどまであんなに抵抗していましたのに……」
「はぁ~ん♪ 何かお兄ちゃんワンちゃんみたぁ~い♪ ほらもっとお鼻こすりつけてぇ~♪」
 顔を二人のおみ足で弄ばれる。視界をふさがれながら堕ちる快感。洗脳映像で調教済みの落田の運命は、既に決まっていた。
「あっ、あれれ? ちょっとアヤノちゃん? 私は何をすればいいの?」
「サヤカさんは……もちろんそれですわ。その、固くなった、……アレを」
「えっ? これぇ? 何こいつ。足で顔踏まれて固くしてんの? キモ~い。 やだぁ~」
「あっ、うっ、うう……」
 キモいと言われて落田は二、三度身震いした。女の子に踏まれる自分。気持ち悪いのは百も承知だ。
「うふふ。ほらどうですか? 段々……私達に全てをゆだねたくなってきたでしょう」
「ゆだねたくなってきたでしょう? きゃぴ♪」
「ほらほら。足でされてるよお兄さん? 女の子の足でさぁ……。いくらお金持ってても、こんなにかっこ悪いんじゃ台無しじゃん。ほらほら……」
「あっ、くっ、ふぅん……むぐ……」
 口に小さな指先がねじこまれる。ストッキングの生地が唾液で濡れていやらしさを際立たせる。
「優しく咥えてくださいな……。ゆっくりとねぶるようにですね……」
「モモの足もしゃぶってぇ~ほらぁ~♪」
「んっんっ……んんぐっ!」
 小さいとはいえ、一度に詰め込まれたからたまらない。落田は顎がはずれそうになりながら悶えた。
「何もがもが言ってるのよ……。キモいんだから早く決めなよこのクズ!」
 股間への衝撃。埋まる視界。罵倒の嵐。意識は闇へと消えかける。
 時間の流れがおかしくなる。自分が何をされているのか行方不明になる。もみくちゃにされて、さらなる深みの中へ沈んでいく。
「あっ……ああ……あぅ……」
 落田は必死で耐えていた。堕ちかけながらもかろうじて崖から手を離さなかった。
「ん……そろそろもう一押しが必要でしょうか。モモさん? そのまま足でしていてくださいな」
「了解しましたです!」
 元気よくモモちゃんが答える。ピンクの両脚が顔面を埋めた。足の指先でしっかりと掌握している。
「ねぇ……落田さん。悪いことは言いません……。このまま……私達に……」
「ああっ、でも……でも……」
 魔性の囁き。耳元にぬるりと這い寄ってくる。
「破滅……したいんでしょう? 落田さん……満たされないのはそのためで……。だから……私達が……」
「うっ、うう……んっん……」
 落田は必死で頭を振っていた。そうしなければ悪魔に心を取り込まれてしまうから。自分の中に潜む悪魔。必死で閉じ込めていた悪魔の産声が。
「ほら落田さぁん……堕ちてください……。アヤノ様の虜に……」
「お兄ちゃんもっとモモの足食べてぇ~ほらほらほらぁ~ん♪」
「あ~あどんどんキモくなってるよこのオチンチン? ちゃんとクリーニング代出してくれるのかな? もちろん慰謝料ももらえるわよねぇ?」
 容赦ない責めが繰り返される。足裏の蹂躙につぐ蹂躙。耳たぶを軽くかぷりとかじられる。それが最終的な屈服の合図となった。
「あっ、あっあのっ! 僕っ! つ、使ってください……。お金っ、僕の……あんっ」
 ついに落田は素っ頓狂な声で叫んだ。
「あらあら……。急にどうしたんですの? あんなに頑なに躊躇していましたのに……」
 アヤノ様の声のトーンが下がっている。表情は見えないがきっとすまし顔で笑っているのだろう。
「ぼ、僕破滅したいんです……。こんなにお金いらないから……。僕っ……ずっとゴミ扱いされて……ああっ……」
 堰を切ったように感情が漏れ出す。誰にも相手にされない自分。社会から投げ出された自分。今の自分は仮ではないかという自問自答。その答えをアヤノ様が知っているような気がした。
「うふふ……。別に破滅する必要はありませんわ。取引……私達はお仲間ですわ。大切な……お、な、か、ま♪」
「あふっ」
 耳元で少女の唇がはじけた。その甘すぎる振動は、容易く脳内を縦横無尽に駆け巡った。
「な、な、なかまぁ?」
「そう、ですわ。こんなに才能ある人を……。破滅なんかしなくていいですわ。ただ私達に協力してくれればいいのです。そしてその見返りに、お兄さんは最新曲のPVと、メンバーの御奉仕、いえ、『儀式』を授かることができるのです。これが絶対的な信頼関係に成り立つものです。……わかりますね? 落田さん?」
「わかった~? ねぇねぇ? アヤノ様が言ってるんだからねぇ~」
「わかったって聞いてんだよ。なぁ?」
 ぐりっと顔面と股間に刺激が走る。一生服従します、という誓約書を突きつけられたのと同等だった。
「んっ、ぐっ……。わ、わかったよ……。僕……仲間……あはあは……。楽しいな……あはあは……」
 落田は盛大に壊れ始めた。逃げられないように見えない首輪をつけられた。
「ありがとうございます。話のわかる人で嬉しいですわ。やはりお金を稼げる人は違いますわ……」
「うふっ、あっ、そうそう……。ぼ、僕偉いから……。もっともっと稼ぐから、君達のためならどんな手を使ってでも……ああんっ」
「ああんお兄様ぁ♪ ずっとついていきますわぁ♪ ……ぎゅ♪」
 常に一定の距離を保つアヤノ様。その彼女がついに垣根を越えた。抱きしめて頬ずりをして接吻を繰り返す。
「あっ、私もお兄ちゃんにぎゅーするの。足のっけてるの飽きたからー。んーむぎゅーぎゅぎゅっ♪」
「んっ、ああぅん……。ほえぇ……あはぁ……。大好きだよぉ……。えへっ、えへえへ……」
 少女達が好意を持って抱きしめてくる。花いっぱいのお花畑が落田の頭に咲き乱れた。
「あれっ? もう終わったの?」
 サヤカがきょとんとした顔で聞いた。
「いえ。まだですわ。最後はここでフィナーレを飾りましょう。さぁみんなで……」
「ああ、そうね」
「はぁ~い♪」
 三人は獲物の下へ向かった。大事に捕まえた貢ぎ奴隷。豊穣な富を提供してくれる愚かな子ネズミの懐へ。
「お兄ちゃん♪ ほら足足足っ♪」
「ほ~らサヤカ様の足をありがたく頂きなさいよ」
「お兄様……」
 ソファから放たれる魅惑のルアーが、妖艶に光輝き美味しそうな動きで誘惑する。
「あんっ。足ぃ……好きなの僕ぅ……んぷっ」
 両目を覆い口を塞ぐ。PVはとうに終わっていたが、落田の終末はたったいま始まった。
「あはっ♪ お顔全部むぎゅむぎゅだよっ♪」
「ほらほらぁ~♪」
「ほら、ぜぇ~んぶ埋まってしまいますよ……?」
「それそれっ♪」
「ぐ~りぐりぐり……」
「あっモモさんサヤカさん? そこの隙間がまだ開いていますわよ? 両脚を使ってもいいですから……」
「あっここですねぇ♪ はぁ~いぎゅっ♪」
「ほらイキなよ変態ちゃん♪ いけいけ……イケよっ!」
「うふふっ♪ うふふふふ……♪ あ、ここが最後ですね……。私が止めを刺してあげましょう……はぁい♪」
「あっあっ……ああっ。あああ……あ――」
 完全なる視界封印。
 顔を少女の足で潰されながら、落田は一生で最も気持ちのよいオーガズムに達した。
 白い欲望は綺麗な放物線を描き、小悪魔な天使達の光り輝くおみ足へと献上した。 
  1. 2013/02/15(金) 22:29:42|
  2. SS
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カードゲーム

カードゲームのSS二編30KBほど。

可愛い女の子モンスターがいて、さらにエッチっぽい技があったりするとドキドキするものです。
味方の同士討ちもあんまりグロくなくて、
プレイヤー間の誘惑もあったりで結構いいシチュだと思います。



 誘惑のカードゲーム ~対決ミリョーネ四天王~



 運命戦記ホイールエンドフォーチュン。
 運命を支配するのはカードのお導き!
 少年勇者ユータの飽くなきバトルの幕が今開けられる!
 


「うふふっ。よくここまで来たわねユータ君。初めまして。私はミリョーネ四天王の一人、ルルアよ。人呼んでフェアリー・ルルア。妖精デッキの扱いに関しては誰にも負けないわ」
「妖精デッキ? ふん、僕のはそんなこけおどしデッキには負けないっ!」
 ユータは腕を組み言い放った。
 ここは誘魔女王ミリョーネの塔。雑魚を蹴散らす突き進むユータの前に立ちはだかったのは、一癖も二癖もあるミリョーネ四天王達だった。
 今でんと目の前にいるのは四天王のルルアらしい。妖精っぽい容姿。一目には可愛らしいがそんなものはバトルには不必要だ。
「言うわねっ。この勝負が終わっても……そんな口が聞けるかどうか……」
「早くしてよ。僕は時間を無駄にするのは嫌いなんだ。どうせ僕の勝ちなんだから」
「むかっ。あったまくるわね君。私一応四天王なのに……しくしく。それじゃ……フォーチュネイトオン! ……レディ……ジャッジ!」
 光る大仰な電子箱。運命戦記ホイールエンドフォーチュンの公式対戦台だ。フォーチュンは簡単に言うとカードバトルである。9マス空いているパネルに、カードを配置しつつバトルを展開するのである。
 前衛、中衛、後衛にそれぞれ三枚づつ配置でき、一ターンごとに攻撃防御待機特殊攻撃を織り交ぜつつ、緻密な戦略を組み立てつつ勝敗を競うのである。
 デッキ構成の妙から勝負は既に始まっている。知略だけでは決して勝てないが、運否天賦でも難しい。勢い、不思議なる運命の力、フォーチュンパワーを味方につけたものが勝利する。それが運命戦記なのだ。
「僕のターン! 精悍な少年剣士アッシュ! 寡黙な少年武道家ヤンルン! ……と一枚伏せカード」
 ユータは手際よく三枚カードを配置した。最初の一ターンは相手に攻撃はできずに設置だけである。戦闘力のあるキャラクターカードとは別に、トラップとして様々な効果をもたらす罠カードも存在する。
 ユータのデッキ構成は先手必勝の布陣だった。素早く行動力の高い少年系のキャラを大目に入れて、序盤から細かいポイントを取りに行く作戦だ。防御には多少の不安があるが、相手に主導権を取らせない戦い方で、一気に勝負をものにしてしまうのが勝ちパターンとなっている。
「へー、つまんないカードばっかりね。それっ。私のターン! 行けっ! 可憐なフェアリーライム! 悪戯な小悪魔ミニィ! 悲劇のマーメイドローラ!」
「…………」
 ルルアがカードを元気よく配置する。が、ユータの目は点になってしまった。
「なっ、何よその顔は……。さぁあなたの番よ。早く……」
「いや、だって……」
 仮にも四天王のボス格である。初ターンからこのカードはありえなかった。ほとんど能力最低に近いフェアリーライムと小悪魔ミニィ。マーメイドは多少ましだが、それでも戦闘要員としては心もとない。
 可愛さと親しみやすさだけを狙った女の子キャラ。現実的な勝ちを目指すためなら全くいらないカード。それをこの子は使ってきている。他にいくらでも強力なカードがあるのに……。一体なぜ?
 ユータの疑問は大きく肥大していった。しかしその答えは出ない。どう考えてもそのキャラは前衛には不都合だから。
「まぁ……いいや……。それじゃ悲劇のマーメイドローラに攻撃! 行けっ!」
 少年キャラ二人の軽快な足さばき。一瞬で敵との間合いを詰めて、連続で攻撃を繰り出す。
 次の瞬間、マーメイドの体は哀れにも真っ二つとなった。血がどばぁと溢れて無駄にリアルな映像が映し出される。このゲームは最新3Dホログラム映像で描写されるので、そっちの点においてはぬかりない。
「きゃっ! ひどい! 何するのよもう……。ん~くやしいから反撃よっ。いっけ~あいつらけちょんけちょんにしちゃえ~」
「わかりましたマスター! それっ……『投げキッス』で少年アッシュ君を攻撃っ! ん~~~っチュッ♪」
「OKマスター! んっ……『小悪魔の笑み』で真面目君を攻撃……。ほら……こっち見てぇ……♪」
 フェアリーと小悪魔が攻撃を開始した。だがしかしこれはダメージを与える技ではない。どんな効果があるかというと、ええと……。
「くくくっ。今さらおろおろしても遅いよ。魅了で操って同士討ち! それそれそれ~♪」
「…………」
 そうか、とユータは合点した。魅了デッキ。相手の心を惑わす術を使い、味方に引き込んで争わせる。自分のキャラが一瞬でも敵になるのだから、それはそれで非常に効果が大きい。ただ遥かなる障害、成功率の低さを考慮しなければだが……。
「チュッ♪ チュッチュッ♪ ほらこっちおいでぇ……♪ ねぇん……♪」
「うふふ♪ 私といいことしてみない……?」
 ひたすら投げキッスを繰り返すフェアリー。妖しく笑う小悪魔。魅了される確率はいくらかはある。人間でしかも少年のキャラはそれ系の耐性が低いのだ。
 ユータは目をつぶった。一人ぐらいなら魅了されても大丈夫。それぐらいなら問題ない。
「……ちぇっ。何できかないのよもー」
「ふぅ……」
 アッシュとヤンルンの表情は平静そのものだった。危なかったがここは僕の運が勝った。
「さてと…お遊びはこれぐらいにして……」
「えっ、ちょ、ちょっとやめてよ。私四天王なのよ? ねっねっ?」
 フェアリーと小悪魔は非常にHPが低い。ほぼ一ターンを無駄にした代償はかなり痛いのだ。後手後手に回ってしまえば、よほどのことがない限り逆転はしない。
「ねぇ? この後妖精三姉妹を召喚するつもりだったのよ? フェアリールーンっていう大技がね……それは魅了確率がすごくて……」
「少年魔術師ジャンと……ニヒルな盗賊アレンでいいか……。ついでに罠カードの束縛の呪いを発動して……」
「ひっ、ひぃぃぃ……」
 八つ裂き、蹂躙。ルルアを守るキャラはいなくなり、直接プレイヤーへとダメージが到達する。耐えても次のターンでほぼ終了だからほぼゲームセットだ。
「ぐっ、ぐぎゃあ……。わっ、私の妖精デッキが破れるなんて……。でも忘れないで欲しいわね……。私はミリョーネ四天王の一人、フェアリー・ルルア……ガクッ」
 謎の捨て台詞を吐いてルルアは倒れた。
 ユータは一息ついてミリョーネを塔を上る。勇者の戦いはまだ始まったばかりなのだ。




「あらよく来たわね。ルルアはどうしたのかしら? んふふ♪」
 わかっているくせに、とユータは思った。
 四天王の二人目。ボディコンで巨乳、すらっと伸びる脚線美がとても色っぽい。濃いルージュの口紅、射るような妖しい視線。全身に大人の危険な色香を、ムンムンに備えたお姉さんといったところだ。
「たっ、倒してきました……」
「あらそう? お姉さんも倒すの? うふっ……♪」
 はっきり言ったつもりが語尾が震えていた。ユータはお姉さんの魅力に取り込まれかけていた。
「もっ、もちろん……」
「ふ~んそうなの……。ミーナお姉さんはルルアのようにはいかないわよ……。それ……フォーチュネイトオン! ……レディ……ジャッジ!」
 バトルが始められた。もう後戻りはできない。ルルアの例から言うと、このお姉さんもきっと魅了デッキを組んでいるのだろう。こっちは相性の悪い少年中心だけど今さら仕方がない。最善を尽くして頑張るしかないんだ。
「あら、私の先手ね。ん~まずは……これね。鉄壁のガードレディ! ……と、二枚カードを伏せておくわね。うふふ……♪」
「む……」
 ガードレディ。防御とHPが非常に高いだけの壁キャラだ。ずっと防御されたら長期戦は必須。いくら確率の低い魅了攻撃でも危険きわまりない。
「うふん♪ どうしたの坊や? 初ターン目から長考? そんなんじゃ先が思いやられるわねぇ……♪」
「くっ、くそっ! アッシュ、! ヤンルン! ジャン! 来いっ!」
 くねくねと悩ましく腰を揺らすミーナ。余裕の表情でほくそ笑み、口の端をぺろりと舐めて蠱惑の容貌を浮かべる。
「あ~ら先手必勝でガードレディを崩そうっていうの? そんなのいけないわよぉ……。ほら、鉄壁の守護神カードを発動……。ふふっ♪ これで当分倒せないわよねぇ……」
「くっ……」
 先手必勝――と考えたのが間違いだった。これでは全員で攻撃してもガードレディを倒せない。予定が完全に狂ってしまった。
「ガードレディに攻撃……それと……」
「うふふ……」
 死んだような気持ちでカードを伏せる。けれどまだ諦めてはいない。諦めない限りは絶対に逆転の目があるから。
「私のターン……。ボディコン四姉妹長女アンナ。それと次女のハンナを召喚するわぁん……」
「あっ、あぁ……」
 ユータの視界を魅力的なキャラ達が埋めていた。むちむちのおっぱいが零れ落ちそうで、テラテラと小麦色に光る肌が美味しそうに色づく。淫靡な大人の色香でユータの心は浮き足立っていた。
「うふっ♪ アンナでぇす……♪」
「私はハンナよぉん……♪」
「うっ、くっ……」
 決してプレイヤーに向けられたわけではない言葉。しかしユータは過敏に誘惑されていた。ボディコンのミーナでさえ早くも魅了されてしまいそうなのに、これ以上追加されてしまったら……。
「うふふ♪ 私ってボディコンキャラ好きなのよ。とっても色っぽくてぇ……誘惑技もいっぱいそろってるしぃ……。ちょっと柔らかいからって使わないのも損よねぇ……♪」
 ミーナが妖艶に微笑む。
 ユータはもう自分の負けを感じとっていた。心が折れかけていた。
「ああっ……はぁはぁ……」
「んふふ♪ そんな手でいいのかしら?」
「ああ……しまった」
 ターンは次々に消化されていく。ユータは細かいミスを犯してしまった。ほんの些細なミスだったが、普段なら絶対に犯さない初歩的なミスだった。
 妖しく揺れるおっぱいと太もも。ぼうっと見蕩れてしまい思考が定まらなくなる。血液があらぬ場所に充血し、卑猥な妄想に支配されようとしていた。
「んふ……♪ 何か張り合いないわね……♪ もう止め刺しちゃおうかしら……。はい……罠カード発動。魅惑の香水よ……」
「くうっ……」
「これで魅了確率大幅アップね。それと……おいでカンナちゃんとエンナちゃん。次のターンは4人がかりで誘惑発動よ……♪」
「く、くそっ……。そんなのさせるかっ……」
 絶体絶命のピンチ。意を決してカードを引くユータ。
 奇跡は諦めない者の前に授けられる。
 引いた。このカードさえあれば……。
「ん……何かいいカード引いたの? ねぇ……何? んっ……できれば使わないで欲しいな……ほら……見て? お姉さんのおっぱいの谷間……。こんなに汗ばんでやらしいのよ? 坊やとバトルしてたら興奮してね……んっ♪」
「うっ……やっ、やめて……ずっ、ずるいよ……」
「何がずるいの? ほらほら……」
 ミーナが双乳をすり合わせて誘惑してきた。汗とフェロモンが交じり合った芳香が、ユータの鼻腔まで伝わり甘い陶酔へと導いていく。
「んふふ……ふふっ♪」
 ボディコン四姉妹達もにやにやと笑っていた。フォーチュンのキャラ達は、直接プレイヤーには干渉しないはずなのに。それでもユータは卑猥な妄想に包まれていた。キャラ達全員が自分の陥落を望んでいるように思えた。
「あっ……うぁ……」
 時間切れ。はっと気づいた時には遅かった。
 ユータの引いたカードは精神の魔反鏡。一時の誘惑攻撃は凌げる。その逆転のきっかけとなるカードを引いたはずだったが、むなしくもチャンスを逸していたのだ。
「あらあら……。勝負の最中にお姉さんのおっぱいに見蕩れるなんて……いけない子。さっさと息の根を止めてあげましょうね……」
 ミーナのたおやかな手のひらがすっと対戦台を撫でる。誘惑組曲の序曲。純真無垢の少年キャラ達に、欲望に染まった淫蕩なキャラ達の甘い鉤爪が襲い掛かっていく。
「あっはぁん♪ アンナお姉さんの『ボディコンテンプテーション』はどうかしらぁん……♪」
「ハンナお姉さんの『誘う太もも』『濡れた指先』『淫らな舌使い』どれがいいのぉ……?」
「カンナはね~『ヒップアタック』『小悪魔ウインク』『誘惑の腰つき』とかしちゃうよぉ……♪」
「んーと、えと、エンナはねぇ……『ロリっ娘上目遣い』とか……『涙目で甘える』とか……」
「あっ……ぁ……」
 自分のキャラ達が呆けた表情で立ち尽くしている。回避するという淡い期待は万に一つも存在しないのだ。魅惑の香水で高められたボルテージは、経験のない羊達を一瞬で虜にしてその肉をむさぼっていく。
「あっふ~ん♪ あ~んあんあ~んこっちも触ってぇ♪」
「んっ、くっ、や、柔らかいよう……」
「んっふ~んこっちの無口な彼も素敵ねぇ……ほらほら……」
「ぅ…………」
「ねぇねぇお兄ちゃん……カンナのお尻でしてあげようか……ねぇねぇ……」
「エンナもカンナお姉ちゃんと二人でするするぅ……。ほら、顔をここにうずめちゃってねぇ……」
「あっ……うぁ……」
 あれほど精悍なアッシュや無口な格闘家も、この絶え間ない誘惑攻撃には太刀打ちできないようだった。瞬く間に大粒のピンクのハートマークに包まれて、頭の上に服従のシンボルをくるくると回していた。
「ふふっ♪ これでみんな誘惑されちゃったわねぇ……ふふっ♪」
「く……」
 ユータは憮然としていた。さすがは四天王。自分の見積もりが甘かったのだった。
「ひ、一思いにやれっ。もう勝負はついた」
「ん、そうね……じゃ……」
「……っ」
 ユータは目をつぶった。盾がいないのだから、プレイヤーは直接ダメージがいくことになる。勝ち目は全く存在しない詰みの状態なのだ。
「たっぷり弄んであげて……ふふ……」
「は~いわかりましたぁ……。ほらアッシュくぅ~んあそこの男が君の悪口言ってたわよ? ほら……ほらほら……」
「うっ……あっ……」
「ねぇヤンルンちゃん……。あっちのぉ、不細工な剣士が可愛いヤンルンちゃんを馬鹿にしてるよ? 最低だよね……」
「…………っ。ぅぁ……」
「ねぇお兄ちゃん……目に映る男はみんなやっつけてぇ~♪ ほらカンナのお尻でいっぱいしごいてあげるからぁ……♪」
「エンナもいっぱいチュしてあげるぅ♪ おっぱいでむにむにしながらチュチュってねぇ……♪」
「はぅ……わ、わかったよ……あぁ……」
 何ということだ。ミーナはプレイヤーを無視して同士討ちを選んだ。敗者への冒涜、というか唾棄すべき蹂躙だった。
「くっ、ぼ、僕を馬鹿にしてるのかっ!」
「あらぁん♪ 怒っちゃった? ごめんなさいねぇ……。魅了デッキの楽しみってぇ……こうやっていたぶって弄んであんあんするのが最高のご褒美だと思うから……ごめんねごめんね……本当にごめんねっ♪」
「…………」
 きゃっきゃっと少女のように笑うミーナ。
 ユータは全人格を否定された気分でいた。だがしかし何もしようがない。勝負は既についてしまっていたから。
 本当に終わり……いや、まだ……。
「あ~んほらほらぁ~。もっと殴りあってぇ~ん♪」
「きゃ~いけいけ~♪」
 見苦しい同士討ち。その中でもターンは経過する。当然カードを引く権利はある。
「……何を考えているか知らないけど、勝負はもうついたのよユータ君。誘惑漬けでもう正気に戻ることはないもの……。
もちろん何か新しくキャラを出しても、速攻で誘惑してあげるから……あはははっ♪」
 ミーナを無視してカードを引く。ハズレ。あのカード、引ければまだ勝機はある。引ければだけど。
「うふふ……。ほら、もういい感じに出来上がってるわね。それじゃ最後の仕上げ……ハーレムスクエアをお見舞いしてあげなさい……」
「は~い了解しましたぁ」
 ミーナの命令にボディコン姉妹達がこたえる。もう服装も乱れに乱れて半裸状態だ。おっぱいもお尻も露出しまくりで目のやり場がない。
 だがここまで卑猥な映像でも、乳首や女の子の大事な部分は映していない。というか描写できないのだろうか。見せない系のエロス。かえって妄想をふくらませて悶々としてしまう。
「アッシュ君。今からお姉さん達が『ハーレムスクエア』してあげるからね……」
「じっとしててね……♪ すごくいいから……」
「カンナは下がいいな……」
「あっエンナも下でくちゅくちゅするのぉ……♪」
「あぅぅ……あぅぅん……」
 ボディコン達の目標がアッシュに向く。
 精悍な少年剣士アッシュ、その姿はもはやへらつき堕落しきった変態少年だった。
 周りをぐるりとおっぱいに取り囲まれている。もみくちゃにされて恍惚の表情を浮かべる。股間の辺りにも童顔の二人がうずくまり、何をしようとしているかは一目瞭然だ。ただやはり描写はされない。甘いピンクのハートイメージがピコピコと乱れ飛んで、それっぽく雰囲気を醸し出しているだけだ。
「あ~んアッシュくぅん♪ おっぱいおっぱいよぉん♪ アンナお姉さんのむちむちおっぱい♪」
「みんなのおっぱいに囲まれて逃げられないでしょう? おっぱいおっぱいおっぱい……♪」
「カンナも爆乳だから安心してぇ……ほらおっぱいでむにむにって挟んでねぇ……」
「エンナもぉ……んっ……んっ……ほらぁ……んっ……」
「はぁぁ……最高だよぉ……あああ……」
 腰をかくかくと振りはじめるアッシュ。さっきまでお色気攻撃を受けていた味方のはずの二人も蚊帳の外だった。そしてユータはもちろん遠い海の彼方だった。
「ねぇアッシュくぅん……お姉さんお願いがあるんだけどぉ……」
「えっ、ええ……何ですかぁ? 僕、お姉さんの頼みならなんでもぉ……」
「んふぅん……。ねっ、今度は手加減せずに……あっちの男をやっつけて……一思いにばっさりね……」
「私からもお願いするわ……。アッシュ君一人いればいいから……」
「お兄ちゃん私からもぉ……」
「むにむにむにっ♪ お兄ちゃんお兄ちゃぁん……♪」
「あっ……あぁ……あぁぁぁ……♪」
 アッシュが桃色の霧に包まれていく。一体中でどんな行為が行われているのか。それは想像に難くない。
「おほほっ♪ ハーレムスクエアの完成ねっ♪ ほら、完全に手駒になった坊やを使って一網打尽にしてあげる♪」
「くっ……くそ……」
 ユータは鈍いうめき声をあげた。どこにこれほどの屈辱があろうか。
 虐殺は的確に遂行されていた。完全に傀儡となった少年剣士が、悪鬼のこどく味方を切り刻んでいる。救いようのない地獄絵図が、この子供向けゲームでディープマイルドに展開されていた。
「きゃ~っ♪ すごいすごい♪」
「あ~んお兄ちゃん大好き~♪」
「やったぁ~。一人やっつけた~。ねぇこっち戻って来て来てぇ♪」
 ついに最初の犠牲者が現れた。仲間の攻撃を背に受け、物言わぬ格闘家はぐったりと地に伏した。
「おほほほっ♪ ハーレムスクエアの恐ろしさはこれからよ……ほほほ……♪」
 ミーナが高笑いをする。
 鮮血に染まったアッシュがふらふらとボディコン空間へと舞い戻った。
「ありがとお兄ちゃん……。ねぇカンナがチュしてあげるぅ……♪ チュッ……チュッチュッ♪」
「エンナもチュウするのぉ……チュ……ムチュッ♪」
「お姉さん達のディープキスもあるわよぉ……♪ これでもっと攻撃力アップしてねぇ……♪」
「そうよぉ……。悪い敵を倒せば倒すほど強くなっていくからねぇ……」
「は、はいありがとうございますぅ……。僕頑張りますぅうう♪」
 恐ろしきかなハレームスクエア。魅了され寝返ったキャラを卑劣な手段で強化し争わせる。危険だ危険すぎる。いや、決してうらやましいとかそんなんじゃなく。
 だがやりすぎた。ユータの堪忍袋の尾は盛大に切れていたのだ。
「ちぇっ、僕のこと馬鹿にしまくりで……。この間に何回カード引いたかわかってるんだろうか……。いい加減……んっ……ん?」
 ユータはにやりと笑った。やっとお目当てのカードを引いたからだ。
 心を失った少年、災厄のエデンボーイ。見た目はひ弱のもやしっ子だが、一発逆転のパンドラストリームスマッシャーを発動することができる。これが決まればあのうざったいボディコン共は一気に消滅してしまうだろう。もちろん心を失っているから誘惑攻撃なんかにはぴくりともしないのである。
「へっ……のんきに遊んでいるから悪いんだ。僕の勝ちだ……」
 ユータはカードを滑らせようとした。
 と、その時――。
「あ~んユータ君? 何しようとしているの?」
「えっ? あ……」
 それまでホログラム映像を注視していたミーナが、ふとこちらに視線を向けた。
 興奮しているのか顔が赤く上気している。目もとろんとうるんでいて、それが妙に色っぽくて引き込まれてしまう。
「ねぇ……何をしようとしていたの? お姉さんに隠れて……ねぇ? もしかして……逆転の一手? そんなの……いけないわよ……ほら……ねっ……」
「あっ、くっ……やっ……」
 ミーナが妖しい手つきで手招きをしてくる。汗で濡れた谷間に風を送るようにひらひらと揺れていた。
「ほら……おっぱい。ユータ君の大好きなおっぱいよ……。ボディコンお姉さんのおっぱい……思い出して? あの剣士キャラにしてあげたみたいにね……むちむちっておっぱい押し付けて誘惑……。メロメロにしてあげた後は……ゲームでは絶対に見れないとってもエッチなことまでしちゃうよ……? んっ♪」
「んっ、ふぁぁ……」
 桃色のウインクと投げキッスがユータを打ちのめした。手に持った逆転のカードがするりと通過しわき道にそれていく。プレイヤー自身の誘惑。ユータは自分にも負けたのだった。
「はい……お姉さん僕……。もう何もしません……。だから……」
「うふっ♪ いい子ね♪ あそこのボディコンお姉さん達もね、ユータ君といいことしたいって思ってるからね……♪」
「えぇ……そんなのぉ……」
 そんなわけはない。あれはあくまでゲームの中のキャラ。
「お姉さんは嘘つかないのよ。ほら、今止めをさしてあげる……」
「は、はいさしてさしてぇ……♪ 今すぐさしてぇ……♪」
 甘え媚びた声で服従を誓う。ついにユータは首をぐいと差し出した。


「あふっ♪ あふっん♪ でっ、出るよぉ……♪ オチンチンから白いおしっこ♪ 出るっ♪ いっぱい出るっ♪」
「うっふん♪ ほらボディコンお姉さん達のメロメロハーレムよぉ……♪ もみくちゃでいっぱいむぎゅむぎゅむぎゅ~~~っ♪」
 ユータは闇の罰ゲームを受けていた。運命のバトルに負けたものには厳しい責め苦が待っているのだ。
「おっほほほ♪ さしもの勇者も私のボディコン魅了デッキにかなわなかったようね。そこで永遠に幻影に弄ばれていなさい……」
「あひぃん……あふぅぅ……出る……また白いのっ……で――」
「出してぇ~もっともっとぉ~♪」
 仮想のボディコン娘達の地獄の愛撫に溺れるユータ。その顔はもはや常軌を逸していた。心と体を二度と戻らないくらいに蹂躙されて、フォーチュンバトラーとして再起不能の状況に追い込まれてしまったのだ。
 これも運命。ユータはその過酷な運命を受け入れるしかなかった。
「あひっ、あふ、あはぁ……♪ おっぱい……お尻……太もも最高えへえへえへへ……」
 また一人の少年がかけがえのない命を散らした。運命の車輪は未だカタカタと回り続けている。






 恐怖のサキュバスデッキ! ユータVSメイラ&レイラ



「私のターン……。あら、どうやら年貢の納め時のようね。可愛い坊や」
「な、何だとう……」
 我らがヒーロー、類稀なる生粋のフォーチュンバトラーユータ。突如現れたおかしな美貌姉妹二人と対戦していた。
 サキュバスを中心とした悪魔族を主軸とするデッキ。その布陣にユータは苦戦を強いられていた。魅了を初めとする精神攻撃、そして強力無比な魔力がユータの陣をぎりぎりと圧迫していた。
「メイラお姉ちゃんもう一息よっ! 相手は青息吐息だからぁ~」
「ふふん。当然、わかってるわよレイラちゃん。この美貌サキュバス使いのメイラ様が、一気に勝負を決めてあ、げ、る♪」
「くっ……」
 ユータはぐっと身構えた。どう考えてみても今の状況は不利。それならば必死で耐えて遠い逆転の目を狙うしかない。
「くっくく。何を考えても無駄よ……。私のカード……出でよ! 幻想のマインドサキュバス!」
「なっ? 何?」
「ふっふふ。サキュバス使いなら当然このレアカードも持ち合わせておくものよ。ただの誘惑攻撃に特化したサキュバスと見紛うことなかれ! マインドサキュバスは物理無効の特殊能力を持つの。さらに加えて能力最高魔法も最高で隙のない完璧モンスターなのよ……おっほほほほほ……♪」
「やった~♪ これでメイラお姉ちゃんの勝利は決まったねっ♪」
「もちろんよレイラ。私が負けるはずがないわ」
 鼻を高くして腕を組むメイラ。
 幻想のマインドサキュバス――。なんてことだ。
 ユータは絶対絶命のピンチに陥っていた。いや、それでも天性の運命感を持つユータには一筋の希望が……。
「まっ、まだ何かある……。まだ……」
「それがないのよユータ君。現実は非常ね。このカードで逆転要素は万分の一も存在しないわっ♪ それっ! 沈黙の魔方陣!」
「うわっ!」
 ユータのフィールドに巨大な魔方陣が刻印される。このカードは二ターンの間魔法が使えなくなる効果を持つ。たかが二ターンされど二ターン。短い間だがこの状況では絶望的すぎた。ただでさえ強力なマインドサキュバスを倒す手段が皆無なのだから。
「うふふん♪ ようやく理解したわね。もう崖っぷちを通り越して脳天破裂寸前よ♪ さぁ……やっちゃいなさい♪ 私の可愛いサキュバスちゃん♪」
「は~い了解いたしましたマスターメイラ♪」
 ふわりと空気のように幻想のマインドサキュバスが舞い上がる。全裸に近いむちむちの肉体を惜しげもなくさらしている。いくらなんでもぎりぎりすぎる。しかしこんな扇情的なキャラでも、最終ラインはきっちり線引きしてある。決してド直球のエロではない。あくまで性的な香りを匂わせながらの正当な魅了行為なのである。
「は~いそこの……んっ……君ぃ……アッシュ君って言うの? ねっ……お姉さん何でも知っているのよ? 君がどんなこと考えているかぁ……隅から隅まで全部ねぇ……♪」
「ええっ。う……そんなの……」
「むぎゅっ♪ ほら逃げないで? 痛くないのよ? お姉さんはいつでもふわふわ優しいんだから……」
「あんっ♪ お姉さん気持ちいい……」
 ユータの懐刀、精悍な少年アッシュが真っ先に魅了攻撃を受ける。レジストする意志はない。確率以前にあのにやけ顔では絶対に期待が持てない。
「あ~んほらぁ……『魅惑の抱擁』と『甘い囁き』でメロメロにしてあげるぅ……♪ むぎゅっ♪ むぎゅむぎゅぅ……♪ ほら耳も貸してぇ……甘くて長~~い舌をれろ~って差し込んでねぇ……♪」
「あああんんっ♪ お姉さんお姉さんんっ♪」
 執拗で無慈悲な魅了連続攻撃がアッシュを襲った。もうハートマークがうざいぐらいに乱れ飛んでいる。後に残ったのは、自分の意思をすっかり奪われた抜け殻のみだった。
「おほ、おほほほ♪ さすがにマインドサキュバスはやりすぎだったかしら。まぁ獅子はいつでも全力を尽くすもの……私の勝利はゆるぎないわ。ほほほほ……♪」
「くうっ……」
 ユータは虚脱してがっくりと膝をついた。その後の出来事は記憶に残らなかった。ただサキュバスに全てを支配されてボロ雑巾にされるのみだった。


「あぅ、あああ……」
「私の勝ち……。案外つまんなかったわね。さて……」
 ユータに突きつけられた敗北の二文字。フォーチュンバトルに負けることは死とほぼ同義。運命の為すがまま罰を受け入れるしかない。
「ねーねーねー。メイラお姉ちゃん? 私も暇だからこのお兄ちゃんと戦っていい? ね? いいでしょ? ねぇ?」
「なっ、な……」
「ああ。それもいいかもしれないわね……。ふふ……聞いたユータ君? この可愛いレイラちゃんが勝負してくれるらしいわよ? 本当に助かったわねぇ……」
「なっ、何だと……そんなの……。僕は負けたんだ。煮るなり焼くなり好きに……」
 いきなり妙な展開になっている。自分は負けたはずなのに、情けをかけられるなんてたまったもんじゃない。
「いいから……ねっいい子は大人しくお姉さん達の言うこと聞くのよ……チュッ♪」
「んっ……んん……」
 突然メイラにキスをまぶされる。唇全体をむっちりと塞がれて息ができない。メイラの淫靡な吐息が思考を埋め尽くす。性器のような赤い唇が顔中を這い回りねっとり舐めしゃぶっていく。
「ぁ……は……ぁん……ぁ……」
「……ふぅ。決まりね。さぁレイラちゃん。ユータ君が勝負してくれるらしいわよ? うふふ……」
「は~い。よかった~。レイラも特性の超メロメロサキュバスデッキ組んできたから~♪」
「あっ、ああ……」
 意識の焦点がずれ脳髄から錯覚する。普通にバトルできる状態では全然ない。
 これは明らかに罰ゲームだった。情けをかける振りしてさらにボロボロにするための――。
「んふっ♪ 大丈夫よユータ君。このメイラお姉さんが、後ろからユータ君のサポートしてあげる♪ ちゃんと今度は勝てるようにね……んんっ♪」
「あっ、背中に……あああ」
 むにむにっと効果音がしそうなほど、柔らかく巨大なおっぱいがユータの背中で押しつぶされた。後ろに回られて、ふんわり抱え込むような感じだ。しかもメイラの両手はユータのあらぬ部分に伸びている。
「こっ、こんなの……ああっ」
「頑張ってねユータくぅん……♪ お姉さんがしっかりフォーチュンバトルの真髄教えてあげるからぁ……♪」
 二、三度すっすっと手の先が股間を責め嬲る。
 ユータはもう破裂しそうなほど勃起していた。年端のいかぬ少年が、熟練した手管を備える美女に抗うことはできなかった。
「ほら……アドバイスする時にはね……こうやってここをこうして伝えてあげるからね……。ちゃんと言うこと聞くのよ……?」
「あっ、はっ、あっ……」
「もーお姉ちゃん長いよー。早く早くー」
 レイラが怒ったように促した。
「ふふ……焦らないの。捕まえた獲物はゆっくりといたぶらなくちゃ……。さ……そろそろ始めようかしら? フォーチュネイトオン……レディ……ほら、ユータ君♪」
「じゃ、ジャッジ……ああんっ♪」
 開始と同時にしごかれた。暗雲立ち込めるユータの運命はもはや残酷に決定付けられていた。


「はぁ……はぁ……僕の先行……。どのカードを……あっ、これがいいかな……獰猛なる百獣王オーライオンしょうか……んっ、くぅっ!」
 ユータが選ぼうとした直後、下半身にずきりと痛みが走る。手加減ほぼゼロの力でユータ自身を握られたからたまらない。
「違うでしょうユータ君? ユータ君の得意パターンは少年キャラで速攻でしょ……? それを曲げて勝てると思ってるの?」
「え、でもぉ……」
「でもじゃないでしょ? ほら、こっちの方がいいわ……。おびえる王子、マローネちゃん。ほら……小さくて可愛らしいじゃない……」
「ああっ、ああ……」
 誘導されるようにカードが置かれる。抵抗しようにも股間をもみもみされているので逆らえない。
 ユータが王子を召喚すると、優しい手つきでしごかれてしまう。何度もされたら必ずや虜になりそうな魅惑の手コキだった。
「あれっ? 少年キャラでいいの? じゃ、私はこれにしよっかな。そ~れキューティーリリス召喚!」
「はぁ~いリリス頑張っちゃうよっ♪ いぇい♪」
 くねっとして萌えオーラ全開のキャラがこの世に生を受けた。見るからに誘惑攻撃を持つモンスターだ。
「それっ。マローネちゃんを『スイートダンス』で誘惑しちゃえ♪ いっぱい目の前でお尻ふりふりしてあげるといいよ~♪」
「了解しました~それそれっ♪ あ~んあぁ~ん私のエッチなセクシーダンスに見蕩れてねぇ~ん♪ いぇいぇいぇい♪」
 純真無垢な王子に小悪魔の魅了ダンスが降りかかる。歯をがちがちさせながらも、次第に目がうつろとなりリリスの妖艶な腰つきに吸引されてしまう。
「あっ、ああ……お姉さぁん……♪」
「いいよっ♪ 来て来てぇ~♪」
 陥落は一瞬だった。せっかく召喚した王子は、ユータの手から離れてレイラの従順な手駒と成り果てた。
「むちっ♪ むちむちむちっ♪ そんなに私のお尻が好きなの君ぃ?」
「う、うんお尻好き好き……」
「そんなに好きなんだ……。ねぇ……もっとお尻でいいことしてあげるから……。私のために戦ってね♪ 約束だよ? それっ♪ むにむに……むにむにむに~っ♪」
「は、はいわかりましたぁ~♪ 僕なんでもしますぅ~♪」
「…………うっ、くっ……」
 キューティーリリスが王子の上に圧し掛かって、さらに魅了を深めようとしていた。残念ながら結合部はわざとらしいハートマークに覆われて見えない。
「あらぁ……。魅了されちゃったわねぇ……。本当に運が悪いわ……。やっぱりバトルには運が必要だから……」
「くっ、誰のせいで……ふぁっ」
「ほらぁ……文句は言わせないよぉ……。次も可愛い少年キャラでお願いね。先手必勝でやっつければ魅了されないんだからぁ……ねぇそうでしょ?」
「あぁぁ……そんなの間違ってる……んぁぁ……でも気持ちいい……あぁぁ……」
 背中に感じるおっぱいの甘い感触。耳を濡らす淫らに湿った吐息。ねちねちと股間をいたぶる妖しい指先。
 ユータは完全に思考を掌握され支配されてしまった。何度も少年キャラを促すメイラ。その度にレイラの誘惑モンスターに魅了され続けていた。
 ユータは間もなく敗北してしまった。何もできずに全てのキャラを魅了されて、その反動を自分自身の胸に受け止めたのだ。
「あらあら……。せっかく頑張ったのにねぇ……」
「えへっ♪ レイラの完全勝利っ♪ 正義は勝つ! いぇい♪」
 レイラが可愛げにポーズを決めて、くるっとターンをする。
 嬉しそうなサキュバス姉妹とは対照的に、ユータには迫り来る地獄の運命が待ち構えていた。
「あっ、ああ……負け……僕の負け……負け……負け……」
「うふふ……。さ、ユータ君……。負けたらわかってるわよね……」
「あぅ、い、いや、こんなの……無効だっ! ノーゲーム……許されるはずがない……」
 ユータは負け惜しみのように言った。通るはずなんて絶対にない。おっぱいを押し付けられて半ば強制的に。だからこんなの……。
「あ~らそんなのってないわよぉ……。だってユータ君お姉さんと一緒に本気で勝負したのにぃ……」
「うっ……だから……それ……が……」
 むにむにとおっぱいが蠢く。意識の糸がぷつんと切れそうになる。
「ねっ、ユータ君……。ユータ君は本当は負けたかったんだよね? エッチなお姉さんキャラに誘惑されて……負けるの……。大好きなんだよねそういうの……」
「えっ、ぇ……」
「こんなバトルしてるのも、エッチなお姉さんと戦うため。わざと少年デッキ組んで、セクシーな女の子キャラに誘惑されるの望んでて……」
「いっ、いや……いや……」
 メイラが悩ましくしなだれかかりながら、耳元で甘く囁いてくる。心を蕩かすピンクのオクターブに頭がどうにかなりそうだった。
「変態、お兄ちゃん……やらしい……。私のキャラもスケベな目でずっと見てたでしょ……?」
「ふぁ……」
 レイラも前からユータに迫ってくる。くりっとした可愛いお尻を突き出しながら、ゆっくりと腰を下ろしてユータの剛直をすっぽり優しく包みこんだ。
「んっ、あっお尻ぃ……」
「うふっ♪ 私の衣装はキューティーリリスのコスプレなんだよ? いいでしょこれ? ほら……お尻……むちむち……♪ あの邪魔なハートマーク中で何されてるのかなぁ~? とかどうせいっぱい想像してたんでしょう? ねぇねぇねぇ~♪ 我慢しなくていいんだよ~今から好きなだけ~♪」
 お尻がくねくねと股間の上で揺さぶられる。きわどいTバックの後ろ姿のグラインドに、みちみちとすりつぶされて悶絶してしまう。
「ほ~らキューティーリリスちゃんのお尻攻撃はどう? ねぇ負けちゃうよ? ほら……下から突き上げてごらんなさいよ」
「あ~んお兄ちゃんのすごく固い固~い♪ あ~んあはぁ~ん♪」
「ぐっ、ぐっ……ぐあぁぁぁ……」
 ユータの辛抱はもう限界だった。美貌の姉妹二人に挟まれて、精液を搾り出されてしまうのは時間の問題だった。
「あぅ、あん……でっ、でっ……」
「何女の子みたいな声出してるのぉ? 恥ずかしいわねぇ……。ほら少年勇者のユータ君……。今君はこのゲームの中にいるのよ……。誘惑攻撃を受けて……魅了されそうなの……。エッチなサキュバスのお姉さん達に囲まれてね……」
「そうだよぉ……。『お尻を突き出す』とか『メロメロヒップアタック』で虜にされそうなのぉ……。ほら裏切ってぇ……私達のものになってぇ……んっんっんっ♪」
「あぅ……はぁぁ……」
 段々と現実感がなくなってくる。少年勇者ユータが自分のキャラ。負けちゃいけない……サキュバスなんかに……でも……。
「ほら、イキなさい……。魅了されて、私達の仲間よ……」
「ねぇほらぁハートマークにぽこぽこ包まれて、とってもいい気分になろっ? ねっねっねっ♪」
 体を弄ばれながら精神も嬲られる。ピンク霧がまとわりついてくる錯覚。これが魅了される直前の視界なのだろう。プレイヤーのままだと決して味わえない至高で極楽の……。
「あんっ♪ 出ちゃう♪ 僕魅了されちゃう~♪」
「いいのよ♪ ほらほらほら♪」
「お尻にもっと来てっ♪ 来てぇ~♪」
 今日一番の圧迫。ぬるりとペニスがTバックの生地とお尻の間に滑り込む。その刺激が引き金となり、精巣から煮えたぎった欲望がどくどくと産声をあげた。
「あっあっあっ♪ 周りがピンク色っ♪ 気持ちいい気持ちいいっ♪」
「ふふっ♪ これが魅了された状態よ? とってもいいでしょう……」
「ああ……私のお尻に白いのべったり……。ふふっ、ふふふ……」
「すっ、すごくいい……本当に……ふぁぁ……」
 ユータにはもはや彼女達しか見えない。マスターの命令を忠実にこなす、キャラクターとしての存在に成り下がってしまった。
「……でもまだ先があるのよ? 魅了されてぇ……与えられた命令をこなすともっとよくなっちゃうんだから……」
「そうだよ♪ エッチなご褒美とかも、ちゃんと用意してあるから……チュッ♪」
「はっ、はいわかりましたぁ……。僕なんでもしますぅ……あはあはあはぁ……」
 耳に細長い舌がしゅっと挿入される。さらなる洗脳の種をねっとり埋め込まれていく。意識は二度と戻ることなく、黒い闇の底に消えていった。
 愚かな勇者ユータの冒険はここで終わってしまった。果たして運命を勝ち取る真の救世主は何処へ……。






 
  1. 2012/09/29(土) 21:46:38|
  2. SS
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